コラム
更新日: 2024.03.30

マザコン夫と離婚したい!マザコンとの離婚手続きの注意点|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

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夫のマザコンぶりに嫌気が差し、離婚を考える女性は少なくありません。

 自分を生んで育ててくれた母親を大切にするのは、素晴らしいことです。しかし、度を過ぎると結婚生活に支障をきたしてしまうのも事実です。

そこで気になるのは、夫がマザコンであることを理由として離婚できるのか、ということではないでしょうか。あるいは、そもそもご自身の夫が度を超えたマザコンであるのかどうかが気になる方もいらっしゃることでしょう。

そこでこの記事では、マザコン夫とは何かを解説した上で、マザコン夫と離婚する方法や注意点を紹介します。

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マザコン夫とは何か?

膝の上に寝る息子と母親

マザコン夫と「母親思いの夫」には大きな違いがありますが、表面的にはよく似ているところもあります。

そのため、結婚するまでは母親思いの人だと思っていたところ、結婚生活を続けていくうちにマザコン夫だと感じ、幻滅してしまうこともあるものです。

そこでまずは、マザコン夫とはどのような夫のことをいうのかを説明します。

マザーコンプレックスとは?

そもそもマザコンとは「マザーコンプレックス」の略称です。

マザーコンプレックスは法律上の用語ではなく、明確な定義はありませんが、一般的には母親に対して強い愛着や執着を持つ状態のことを指します。

誰しも幼少期に母親に対する愛着や執着を強く持ちますが、成長するにつれて自立心が芽生え、母親とは適度な距離を置くようになるものです。

しかし、なかには大人になっても母親に対して精神的に依存したままで、常に母親の顔色を窺ったり、母親に意見を求めたりするような人もいます。 

このような男性のことを「マザコン」ということもあります。

そして、結婚しても母親に対して精神的に依存したままの男性のことを「マザコン夫」と呼称することがあります。

マザコン夫の問題点

マザコン夫のほとんどは、自分が度を超えて母親に依存していることを自覚していないという問題があります。

母親が息子夫婦のことから家庭のことまで逐一、介入してきますが、マザコン夫はそれを当然のことと考えており、問題意識すら持ちません。

妻としては、夫のことを信頼できないだけでなく、家事や子育てのやり方にまで義母から口出しされ、大きなストレスを抱えることになります。度が過ぎると耐えきれなくなり、離婚問題に発展するのもやむを得ないといえるでしょう。

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マザコン夫の特徴

母親の味方
ばっかり
母親を常に
優先する
いつも母親
と比較する
いつも母親
が同行する

マザコン夫には、次のような特徴があります。ひとことで言えば、母親から自立できていないことがマザコン夫の最大の特徴です。

何事も自分で判断せず母親の意見に従う

マザコン夫は母親に精神的に依存する傾向が強いため、自分の判断できない事態が生じると、夫自身の判断で物事を決めるのではなく、母親の意見に従って判断します。

何でも母親に相談する

マザコン夫は、仕事の事柄だけでなく家庭内の様々な問題(例えば、子供の進学、妻やその実家の付き合い方、自宅の購入等)にまで、妻ではなく母親に相談する傾向があります。

自分自身で判断する自信がないため、精神的に依存する実母に事あるごとに相談し、意見を求めます。

妻よりも母親の味方をする

妻と姑が対立する時、マザコン夫は妻の肩を持つことなく、実母の意見を尊重しがちです。

姑が子育てや家事について干渉をしたり、同居を含めた住居の関係について意見が相違することで、嫁・姑の対立が生じます。

しかし、マザコン夫は妻ではなく姑の味方をする傾向が強いです。

母親の都合を優先する

マザコン夫は、母親の都合を最優先して、家庭の都合を後回しにします。

例えば子供の習い事や発表会が母親の用事と重なっても、母親の用事を優先します。家族との予定が先に入っていても、母親に呼ばれると、母親とのスケジュールを優先することもあります。

何かにつけて妻と母親を比較する

マザコン夫は、何かと妻を実母と比較しがちです。例えば、料理の味付けや材料、生活スタイルについて、妻と姑を比較しようとします。

仕事をしている妻に対して、専業主婦であった実母と比較して仕事を辞めさせようと求めることもあります。

母親と頻繁にやりとりしている

マザコン夫は母親に精神的に依存しがちですので、実母と頻繁にやりとりをします。

つまり、母親との電話やメールなどを通じて、定期的にスキンシップを行うことで、精神的な安定を得ようとします。

困り事がある時だけではなく、日常的に実母とやりとりをする傾向です。

どこへ行くにも母親がついてくる

マザコン夫の母親も、マザコン夫やその妻に対して、様々な生活場面で強く干渉します。

そのため、マザコン夫の実母は、マザコン夫と頻繁にやり取りをするだけでなく、旅行や外食その他の外出に際して、実母がマザコン夫に同行します。

マザコン夫との離婚のメリット

手錠から解放された両手

マザコン夫の中には、マザコンでさえなければ素晴らしい夫であり、父親であるという人も多いものです。そのため、離婚を迷っている方もいることでしょう。

ここでは、離婚するかどうかを判断する際の参考にしていただくために、マザコン夫と離婚するメリットを紹介します。

離婚による心の解放

マザコン夫と離婚すれば、精神的に大きな解放感が得られます。

マザコン夫は何事についても母親の意見に従い、それを妻にも押し付けてきます。母親の意見が絶対に正しいと信じているので、妻の意見が受け入れられることはありません。

義母が妻に対して直接、様々な意見を押し付けてくることも多いです。妻としては、煩わしさを感じない日はないといっても過言ではないでしょう。

さらに、義母が頻繁に家に来ては食事を一緒にしたり、家族旅行や夫婦での外出にまで義母がついてくるとなると、ストレスを解消することもままなりません。

離婚すれば、夫と義母との縁が切れるので、妻は心の自由が得られます。

新たな人生のスタート

離婚後は、人生の再スタートを切ってやり直すことができます。

夫選びに一度失敗した経験を踏まえて、新たな男性を見つけて恋愛をしたり再婚することもできます。

仕事に全力を注ぐのもよいですし、女手ひとつで子どもを育てていくのも選択肢の一つです。

マザコン夫や義母からの介入がなくなるため、自分の人生の可能性を納得いくまで追求できるようになります。

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マザコン夫と離婚するためには

マザコン夫と離婚するためには、基本的に話し合いで決着を付けるのが得策です。

裁判で一方的に離婚するためには、戦略が必要となります。また、慰謝料請求は基本的に難しいと考えておきましょう。

以下で、ひとつずつ分かりやすく説明します。

夫のマザコンは離婚理由にはならない

法定離婚事由
マザコン

夫がマザコンであるというだけでは、法律上の離婚理由にはなりません。

民法第770条1項では、裁判で強制的に離婚が認められる理由として5つの法定離婚事由が定められています。

① 配偶者に不貞な行為があったとき。
② 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
③ 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
④ 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

しかし、法定の離婚理由のいずれにも「マザコン夫」は該当しません。そのため、夫がマザコンであっても、それだけを理由として一方的に離婚することはできないのです。

マザコンを理由とした慰謝料請求も難しい

マザコン夫に対して、マザコンを理由とする慰謝料請求は認められない可能性が高いです。

そもそも、離婚慰謝料を請求できるのは、配偶者の不法行為によって夫婦関係が破綻した場合です。

配偶者が不貞行為(浮気)やDV、モラハラなどを行ったケースが典型的です。マザコンは性格的なものであり、それ自体は違法ではないので慰謝料請求の根拠にはならないのです。

ただし、マザコン夫が妻に辛く当たり、その行為がDVやモラハラに該当する場合は、DVやモラハラを理由として慰謝料を請求できる可能性があります。

協議離婚を目指す

法定離婚事由がなくても、夫婦が合意すれば協議離婚ができます。

そのため、夫のマザコンを理由として離婚したい場合は、基本的に協議離婚を目指すことになります。

ただし、マザコン夫から離婚の合意を得ることは、簡単ではないことが多いものです。話し合いの際には、夫のマザコンが原因で夫婦関係が破綻していることや、これ以上は夫婦関係を続けられないことなどを具体的に説明しましょう。

そして、時間をかけて夫の理解を得るように努めた方が、離婚できる可能性が高まります。

離婚の話し合いがスムーズに進まない場合は、別居して物理的に距離を置くのが有効です。別居すれば、マザコン夫もことの重大さを悟り、離婚と真剣に向き合うようになることも期待できます。

離婚調停や離婚裁判を進める

どうしても話し合いがまとまらない場合は、離婚調停や離婚裁判といった家庭裁判所での手続きが必要となります。

離婚調停では、家庭裁判所の調停委員が中立・公平な立場で間に入り、夫婦間の話し合いが進められます。

あくまでも話し合いによって解決を図る手続きですが、調停委員の理解を得れば、相手方に対して離婚する方向で助言や説得を図ってくれる可能性があります。

そのため、調停委員に対して夫婦の実情を具体的に話し、夫婦関係が修復不可能なほどに破綻していることを分かってもらうように努めましょう。

マザコン夫との離婚手続きの注意点

虫眼鏡と注意点

マザコン夫との離婚手続きを進める上では、以下の点に注意が必要です。

義母の介入による心理的な負担

マザコン夫と離婚するには協議離婚が得策と説明しましたが、実際には離婚の話し合いにも義母が介入することがほとんどです。

むしろ、夫との話し合いというよりは、義母との話し合いという様相を呈してしまうのが実情でしょう。

そして、義母は息子が悪いとは考えず、感情的になって嫁が悪いと責めてくることが多いものです。そこまで感情的ではなくても、義母に対して理屈は通じないことが多いでしょう。

このような義母の介入により、妻としては、一般的な離婚のケースよりも話し合いにかかる心理的な負担が重くなってしまいます。

代理人弁護士に依頼する

義母の介入によって話し合いが進まない場合には、弁護士に離婚協議を依頼するのがおすすめです。

弁護士は、代理人として夫や義母との話し合いを代行します。そのため、妻が別居していれば、弁護士に依頼することで、夫や義母と直接やりとりする必要も一切なくなります。弁護士を立てることで、心理的な負担が大きく軽減されることでしょう。

そして、弁護士は、あなたにやり直す意思がないことを夫や義母に対して明確に告げた上で、冷静に交渉します。

弁護士という法律の専門家が毅然とした態度で交渉することで、夫や義母も離婚に応じる可能性が高まります。

離婚を保留にして別居を継続する

ただ、弁護士に依頼したとしても、法定離婚事由がなければ一方的に離婚することはできません。その場合には、離婚を保留にして別居を継続することが有効です。

別居は、夫婦関係が破綻していることの現れでもあります。そのため、別居が長期間に及ぶと「婚姻を継続し難い重大な事由」があるものとして、裁判で離婚が認められるようになります。

どれくらいの期間、別居が継続すれば裁判で離婚が認められるのかというと、一般的には3~4年以上が必要です。ただし、マザコン夫や義母からの仕打ちによって辛い思いをしていたという事情と併せて考えれば、2~3年の別居でも離婚が認められる可能性はあります。

具体的に必要な年数はケースによって異なるので、弁護士に相談して確認することをおすすめします。

婚姻費用を請求する

離婚のために別居を続ける場合、その間の生活費が不足することもあるでしょう。そんなときは、夫に対して婚姻費用を請求しましょう。

婚姻費用とは、夫婦が生活していくために必要なお金のことです。別居していても法律上の夫婦である限り、婚姻費用を分担して負担する義務を負っています。そのため、別居中は収入が低い配偶者から収入が高い配偶者に対して、婚姻費用の支払いを請求できるのです。

請求できる金額の目安は裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」に掲載されているので、参考になさってください。

参考:裁判所|養育費・婚姻費用算定表

婚姻費用の支払い額や支払い方法は、夫婦で話し合って決めるのが基本です。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の「婚姻費用の分担請求調停・審判」で決めることができます。

なお、婚姻費用は基本的に請求してからの分しかもらえません。以前の分を遡って請求することは基本的にできないので、別居したら早めに請求手続きを行いましょう。

離婚前に試すべきこと

マザコン夫に辛い思いをさせられているとしても、早急に離婚を切り出すのは考えものです。

状況にもよりますが、離婚を迷っているのであれば、まずは以下のようなことを試してみましょう。

夫(マザコン)の理解を深める

マザコンは長年の親子関係の中で培われてきた性格のようなものなので、夫が悪いわけではありません。妻の立場としては納得できなくても、夫の立場でみれば、母親を尊重したいという気持ちも理解できるかもしれません。

夫の性格やマザコンに対する理解が深まれば、夫への正しい接し方も分かってくるかもしれません。

夫婦間のコミュニケーションの改善

夫婦間のコミュニケーションにおいては、妻であるあなたが夫をリードするように心がけることが有効です。

マザコン夫は、母親のような存在に甘えたい、引っ張ってほしいという心理を強く持っているものです。そこで、あなたがその役割を果たすことで、夫は徐々に母親への依存から離れていく可能性があります。

また、夫を褒めてあげるのもおすすめです。仕事のことでも、家事や育児を手伝ってくれたことでも、何でも褒めて自信を持たせるようにしましょう。

夫が自信を持てば、徐々にですが自立心が強まり、母親とは適度な距離を置いて家庭に目を向けるようになることが期待できます。

マザーコンプレックスに適切に対処する

夫のマザーコンプレックスに対処していくなかで重要なことは、夫を必要以上に傷つけないようにしながら、自立心を強めるように仕向けることです。

そのためには、夫に対して義母の悪口を言うことは控えましょう。義母のことを悪く言うと、夫は母親の味方となってしまうため逆効果です。

対立を避けて理解し合う

夫と対立を避けて理解し合うためには、あなたが義母と仲良くなることが有効です。夫に対しても義母に対する感謝の言葉を日常的に伝えると、さらに効果的です。

あなたが義母と仲良くしていると、夫も安心しますし、あなたのことも母親の仲間であり、味方だと認識するようになります。

カウンセリングを通じた解決策

マザコンは病気ではなく性格のようなものなので、完全に直すのは難しいです。直すというよりは、子どもを育てるつもりで夫の自立心を育てていくような、地道な努力が必要となります。

少しでも改善の効果を高めるためには、カウンセリングの利用がおすすめです。できれば、夫婦2人で専門のカウンセラーに相談してみましょう。夫に対して、心理学の見地から適切なアドバイスをしてもらえるはずです。 

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