不動産事業を運営する上で、契約書、クレーム対応、従業員のトラブルなど、法的リスクは常に隣り合わせです。特に中小企業では、法務部門が充実しているとは限りません。
そこで重要となるのが、顧問弁護士の存在です。顧問弁護士は、法的トラブルを未然に防ぐだけでなく、発生した法的な問題にも迅速に対応し、不動産事業の成長を力強くサポートします。この記事では、不動産業界特有の事情を踏まえ、 顧問弁護士の選び方から活用方法までを徹底解説します。
なぜ不動産会社に顧問弁護士が必要なのか?その理由とメリット
不動産取引は、宅地建物取引業法をはじめとする様々な法律に規制されており、その法的リスクは多岐にわたります。契約内容の不備や物件の瑕疵、説明義務違反など、一つ間違えれば重大なトラブルに発展し、多額の損害賠償責任を負う可能性も否定できません。これらの複雑なリスクに対し、専門的な法律知識を持つ弁護士のサポートは不可欠と言えます。
不動産会社が顧問弁護士を必要とする具体的な理由を解説します。
不動産業界特有の法的リスクとは?
不動産取引には、様々な法的リスクがはらんでいます。不動産取引に関係する法令は、民法、宅地建物取引業法(宅建業法)、借地借家法、建築基準法など多岐にわたります。また、不動産取引に関係するトラブルも、契約不適合責任、説明義務違反、賃料増額、立退問題といったように多岐にわたるため、不動産取引を行うにあたっては、正確な法令の知識と経験が求められるものです。
不動産取引は、取引額が高額になることも多いため、些細なミスが予想を超える大きな損失を招くリスクがあります。
顧問弁護士がもたらす具体的なメリット
顧問弁護士を持つことは、不動産会社にとって様々な利点をもたらします。
まず、トラブル発生時に迅速かつ的確な対応が可能となるため、問題の長期化を防ぎ、時間的および精神的なコストを大幅に削減できます。経営者が本来の業務に集中できる環境を整えることができます。
次に、契約書や重要事項説明書などの各種書面の作成やリーガルチェックを依頼することで、将来の紛争リスクを未然に低減させ、取引の安全性を高めます。
さらに、日頃から気軽に法律相談ができるため、「予防法務」の観点から潜在的な紛争リスクを早期に発見し、事前の対策を講じることができます。これにより、予期せぬトラブルによる経営への影響を最小限に抑えることが期待できます。
また、不動産業に特化した弁護士から、最新の法改正情報や判例に基づいた的確なアドバイスを得ることもできます。
法的トラブルを未然に防ぐ「予防法務」の重要性
先ほど紹介した「予防法務」とは、トラブルが発生する前に潜在的な法的リスクを特定し、これに対する対策を事前に講じることをいいます。特に不動産業界においては、契約不適合責任や重要事項説明義務違反など、一度紛争化すると解決に多大な費用や時間を要し、事業継続にも影響を与えかねないリスクが数多く存在します。特に、トラブル発生後に訴訟対応などを行う場合、解決までには膨大な時間とコスト、そして経営者や従業員への精神的な負担が伴います。
こうした深刻な事態を回避するためには、問題発生後の「事後対応」ではなく、事前にリスクを洗い出し、対策を講じる「予防法務」の考え方が非常に重要となります。顧問弁護士による予防法務を日頃から実践していれば、これらの負担を大幅に軽減することが可能です。適切な契約書の作成やリーガルチェック、法律相談の体制整備などを通じてリスクを低減することは、結果的に紛争を予防し、効率的な経営に繋がります。


不動産業における顧問弁護士の活用シーン比較:トラブル解決から事業拡大まで
不動産業の事業活動においては、多種多様な法的リスクに直面する可能性があります。
以下では不動産業界における顧問弁護士の具体的な活用シーンを、個別の事例を通して詳しく解説します。
契約書・重要事項説明書のリーガルチェックによるリスク回避事例
不動産取引における契約書や重要事項説明書は、宅地建物取引業法に基づき作成が義務付けられた非常に重要な書類であり、強い法的拘束力を持ちます。
不動産取引では、宅建協会や全日などの各団体の書式を用いることが一般的です。一般的な取引であれば、書式をそのまま利用しても差し支えありません。
しかし、特殊な取引において、書式をアレンジすることなくそのまま利用すると予期せぬトラブルを招くこともあります。
事例を一つ挙げます。居抜き物件を賃貸するケースにおいて、賃貸借契約書のリーガルチェックを適切に行なったことで、事後のトラブルの発生を予防することができました。
具体的には、居抜き物件では、物件内に各種設備が残置された状態で貸し出されるため、賃貸期間中に各種設備が故障などの不具合が生じることがよくあります。故障や交換に際して、誰が費用負担をするのかを契約書に明記していないと、賃貸当事者間でトラブルになることがあります。
そこで、契約者のリーガルチェックを通じて、権利義務関係を明確にしました。その他にも、各取引の個別事情に応じた契約書を作成することで、不動産取引のトラブルを未然に防いできました。
実際にリーガルチェックを怠ったために発生したトラブルでは、問題解決に多大な時間とコストがかかります。
弁護士による事前のリーガルチェックは、こうした大きな損害を防ぐための「予防法務」として極めて有効です。
賃料滞納・建物明渡し問題の迅速な解決サポート事例
賃料の滞納や建物の明渡し請求は、不動産会社やオーナーにとって、時間的にも精神的にも大きな負担となる問題です。
家賃の督促から始まり、内容証明郵便の送付、さらには訴訟提起や、その後に続く強制執行といった法的な手続きが必要になることもあります。
これらの手続きには専門的な知識が求められ、対応を誤ると解決が長引いたり、新たなトラブルを招いたりする恐れがあります。
顧問弁護士にこれらの対応を依頼すると、手続きが格段にスムーズに進みます。
例えば、家賃滞納の初期段階から弁護士が介入し、専門的な知見に基づいた内容証明郵便の送付や、賃借人との交渉を行うことで、訴訟などの法的な手続きに進む前に解決に至るケースもあります。また、やむを得ず建物明渡訴訟を提起することになった場合でも、訴状作成から裁判手続き、判決後の強制執行まで、一連の流れを代理してもらえるため、貸主側の負担は大幅に軽減されるでしょう。
威圧的な賃借人に対しても、弁護士を通じた毅然とした対応が有効となる事例も見られます。早期に弁護士へ相談することで、適切な初動対応が可能となり、問題の迅速な解決につながりやすくなるでしょう。
立退交渉のサポート事例
立退交渉の依頼を受けるケースも多くあります。
立退交渉のうち、賃料不払いなどの債務不履行がある場合には、これを理由に賃貸借契約を解除することで明渡しを求めることができます。他方で、このような明確な債務不履行が見当たらないような場合には、慎重に手続きを進めていくことが求められます。また、当事者間での折衝を進めると、感情的な対立を生んでしまい、交渉が停滞することはよくあります。さらには、交渉担当者とオーナーとの間で連携が十分にできていないために、立退控除と矛盾するような対応をしてしまっていることも珍しくありません。
そこで、立退交渉に着手する前の早期の段階から顧問弁護士に相談することで、計画的に交渉を進めることができます。万が一、当事者による立退交渉が頓挫する場合でも、顧問弁護士に対してスムーズに委任することができるため、迅速な対応が期待できます。
日常的な法律相談と的確なアドバイス(紛争予防)
日々の不動産業務の中で、「この対応は法的に問題ないか?」「この契約条項で大丈夫か?」といった細かな疑問が生じることは少なくありません。こうした些細な疑問であっても、適切な対応を怠れば、後になって大きなトラブルに発展する可能性があります。
顧問弁護士がいれば、経営者や従業員は、こうした日常的な法務に関する疑問点を気軽に相談できる環境が整います。
弁護士からの的確なアドバイスを受けて、日々の業務における判断や対応を修正することで、将来的な法的リスクを大きく低減させることが可能です。
従業員の労務問題(採用・解雇・ハラスメント等)への対応
不動産業界でも、従業員の採用や解雇、日々の労務管理を巡る問題が増えています。
従業員の解雇は、普通解雇、整理解雇、懲戒解雇など様々な種類があり、それぞれに法的な要件が定められています。これらの要件を満たさずに安易に解雇を行った場合、従業員から不当解雇として訴えられるリスクがあります。解雇が無効となれば、バックペイや解決金などの経済的な負担を強いられ、大きなダメージとなります。顧問弁護士は、解雇理由の妥当性や法的に適切な手続きをサポートすることで、紛争の回避や最小化を図ります。
さらに、セクシャルハラスメントやパワーハラスメントといったハラスメント問題が発生した場合、企業は事実確認や被害者・加害者への対応、再発防止策の策定など、迅速かつ適切な対応が必要です。ハラスメントの対応を誤ると、企業の信用失墜や損害賠償請求につながる可能性もあります。顧問弁護士は、法的な観点から調査手法や対応方針についてアドバイスを行い、具体的な手続きを支援します。
労働時間管理や残業代未払いなど、日常的な労務管理にも多くの法的課題があります。顧問弁護士は、就業規則の見直しや賃金設計を提案したり、個別の事案に対する適切な対応方法について具体的な助言を行います。これらの専門的なサポートを受けることで、労務リスクを低減し、安心して従業員を雇用できる環境を整備できます。
顧客クレームへの適切な対応と交渉
不動産業を営む上で、顧客からのクレームは避けて通れない課題です。顧客クレームでは、「説明と異なる物件だった」「重要事項説明が不十分だった」といったトラブルが頻繁に発生します。顧問弁護士は、こうしたトラブル発生時に、事実関係の確認をした上で、的確なアドバイスを行います。これにより、問題の長期化や悪化を防ぐことが期待されます。
当事者同士での解決が難しい状況では、弁護士が代理人として相手方と交渉を進めることで、感情的な対立を避け、法的な根拠に基づいた建設的な話し合いを促進します。
社内規程整備や従業員向け法務研修の実施
不動産会社にとって、就業規則、賃金規程、ハラスメント防止規程といった各種社内規程の整備は極めて重要です。
これらの規程が企業の実態に合っているか、また最新の法改正に対応できているかが、法的リスクを回避する上で鍵となります。特に労働法関連など改正頻度が高い分野では、弁護士による継続的なチェックが不可欠です。
顧問弁護士は、これらの社内規程の作成や改訂をサポートし、最適な規程の整備を実現します。
また、顧問弁護士は、宅地建物取引業法、個人情報保護法、労働関連法規など、不動産業務に深く関わる法律知識やコンプライアンス意識向上のための研修プログラム企画・実施をサポートします。

失敗しない!不動産に強い顧問弁護士の選び方と比較ポイント
不動産に関する法的トラブルは専門性が高く、不動産業界の実情や慣習への理解が不可欠です。そのため、幅広い分野を扱う一般的な弁護士ではなく、不動産法務に精通した弁護士を選ぶことが重要です。
顧問弁護士を選ぶ際には、以下で紹介するような、いくつかのポイントがあります。
不動産業界の専門知識と実績の豊富さを見極める
不動産業界の法務は専門性が高く、民法、宅地建物取引業法、借地借家法など、多岐にわたる複雑な法律が関係します。
顧問弁護士を選ぶ際は、これらの不動産関連法規に関する深い知識はもちろん、不動産取引の実務経験や、具体的な紛争解決実績が豊富にあるかを確認することが非常に重要です。こうした経験を持つ弁護士であれば、業界の状況を踏まえた、より現実的で的確なアドバイスを期待できるでしょう。
これまでの解決実績、コラムの数や内容の専門性、口コミの内容などに加えて、相談時のやり取りを踏まえて、不動産業の専門性を有しているかを見定める必要があります。
コミュニケーションの円滑さと相性の良さ
顧問弁護士とは、単に法律の専門家としてだけでなく、貴社のパートナーとして長期的な関係を築いていくことになります。そのため、弁護士の専門知識や実績だけでなく、コミュニケーションの取りやすさや人柄、そして自社との相性が非常に重要になります。
初めての面談時には、弁護士が専門用語を避け、平易な言葉で分かりやすく説明してくれるかも大切です。弁護士の人柄や話し方が自社の雰囲気と合うか、信頼関係を築いて日々の些細なことも気軽に相談できる相手かどうかを確認してみましょう。
料金体系の明確さと費用対効果のバランス
顧問弁護士を選ぶ上で、料金体系は重要な比較ポイントの一つです。
料金体系が明確であることは、安心して依頼するための大前提です。顧問契約前には、月額顧問料に含まれるサービス範囲(例:相談回数、時間制限、契約書チェック件数など)、別途費用が発生するケース(例:訴訟対応、契約書作成、実費など)、およびその計算方法を具体的に確認することが重要です。
顧問弁護士と良好な関係を築き、効果的に活用する秘訣
顧問契約をしたものの、日頃のコミュニケーションが不足していたり、どのように活用すれば良いか分からず、十分に活用できていないケースも残念ながら存在します。顧問弁護士を最大限に活かすためには、単に契約関係にあるだけでなく、信頼に基づいた良好な関係を築き、効果的なコミュニケーションを心がけることが不可欠です。
定期的な情報共有と相談の習慣化
顧問弁護士を最大限に活用するためには、日頃からの「情報共有」と「相談の習慣化」が不可欠です。単に問題が発生したときだけではなく、定期的にミーティングの機会を設けるなど、弁護士は貴社の事業状況をより深く理解できます。
また、顧客からのクレームの初期段階、事業計画の変更、あるいは、社内で発生した問題の兆候など、些細なことでも積極的に共有し、相談する習慣をつけましょう。
これにより、弁護士は潜在的な法的リスクの存在に早期に気づき、問題が大きくなる前に適切なアドバイスや対策を講じることが可能になります。
些細な疑問や懸念も遠慮なく相談する姿勢
顧問弁護士と良好な関係を築き、その専門知識を最大限に活用するためには、「こんな小さなことを相談しても良いのだろうか」といった心理的なハードルを取り除くことが重要です。
日々の不動産業務において、契約書の細かい解釈や、顧客からの些細なクレームなど、弁護士に聞くべきか迷うような疑問や懸念は少なくありません。
しかし、小さな問題であっても早期に相談することで、問題が大きくなる前に適切な対応策を講じることが可能となり、結果としてトラブルの発生そのものを未然に防ぐ「予防法務」につながります。
不動産業の顧問弁護士は難波みなみ法律事務所へ

不動産会社にとって顧問弁護士がいかに重要であるか、ご理解いただけたことと思います。不動産業界特有の複雑な法的リスクに対し、顧問弁護士は、単なるトラブル発生時の対応にとどまらず、契約書チェックや日常的な相談を通じた予防法務、賃料滞納や売買トラブル等への迅速な解決サポート、労務問題への対応など、多岐にわたる側面から不動産会社を強力に支援します。
信頼できる顧問弁護士は、これらの法的リスクを効果的に軽減させ、安心して本業である不動産事業に集中できる環境を整備してくれます。
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