子ども2人の養育費は、義務者の年収だけでなく、権利者の年収や子どもの年齢区分によっては子供2人の養育費は増減されます。
養育費の簡易的な算定には、子どもの人数と年齢に応じた養育費算定表を使用し、義務者と権利者の収入を当てはめて決定します。ただし、これらはあくまで簡易的な数値であり、細かい金額を導くためには標準算定方式による計算が必要となります。さらに、私立学校の学費や習い事、医療費等を考慮して養育費が加算される可能性があります。
一度取り決めをした養育費の変更は、双方の合意があれば可能ですが、相手方が応じない場合には、調停や審判の手続を経なければ認められません。
また、養育費の不払いがある場合には、強制執行や調停手続を行うなどの適切な対応を行うことが求められます。
この記事では、子ども2人の場合の養育費について、義務者の年収別の目安となる金額を詳しく解説します。また、養育費の算定方法や、養育費の変更・不払い時の対応など、気になる疑問にもお答えします。
養育費とは
養育費とは、離婚後に親権を持たない親が負担する、子どもの養育監護に必要となる生活費を指します。養育費の概要について簡単に触れておきましょう。
養育費の内容・内訳
養育費の具体的な内訳について見ていきます。
養育費は、子どもの日常生活に必要な費用全般をカバーするものです。その内訳は、以下のとおりの内容です。
- 衣食住のために必要なお金
- 通常の教育費
- 医療費
いずれも無制限に認められるものではなく、標準的な範囲に留まります。
衣食住の必要には、食費、被服費、住居費、光熱費などが含まれます。教育費は、公立学校の学費や教材費などが対象となります。
養育費の支払はいつまで?
養育費の支払期間についても確認しておく必要があります。
養育費の終期は原則として20歳までとなります。
2022年4月から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられましたが、養育費に関しては従来通り20歳までが原則です。なぜなら、成年年齢の引き下げがあってもなお、高校卒業後に大学等への進学をする割合は高く、18歳以降も未成熟な状態であることに変わりがないためです。
ただし、子どもが20歳を迎える前に就職するなど経済的に自立した場合は、20歳前でも養育費の支払義務が消滅する可能性があります。
子どもが2人いる場合の養育費【年収別】
義務者の年収 | 子ども2人とも14歳以下 | 1人15歳以上、1人14歳以下 | 2人とも15歳以上 |
400万円 | 会社員6~8万円、自営業10~12万円 | 会社員8~10万円、自営業10~12万円 | 会社員8~10万円、自営業10~12万円 |
500万円 | 会社員8~10万円、自営業12~14万円 | 会社員10~12万円、自営業12~14万円 | 会社員10~12万円、自営業14~16万円 |
600万円 | 会社員10~12万円、自営業14~16万円 | 会社員12~14万円、自営業16~18万円 | 会社員12~14万円、自営業16~18万円 |
養育費の算定では、父母の年収と子どもの人数だけでなく、その年齢も重要な要素となります。子どもの年齢が上がるにつれ、教育費などの出費も増えるため、養育費の金額も高くなる傾向にあるのです。
ここでは、父親の年収別に、子ども2人に対する養育費の相場をご紹介します。ただし、これらはあくまで養育費算定表を参考にした簡易的な数値であり、実際の養育費は個別のケースによって異なります。
年収400万円である場合の養育費
年収400万円の場合、子ども2人とも14歳以下であれば、母親に収入がなければ、会社員の父親は6~8万円、自営業の父親は約10~12万円の養育費が相場となります。母親に収入がある場合は、その金額に応じて段階的に減額されます。
2人ともに15歳以上の場合は、会社員の父親で8~10万円、自営業の父親で10~12万円の養育費が必要となる場合もあります。
1人が15歳でもう1人が14歳以下の場合、母親に収入がなければ、会社員の父親は8~10万円、自営業の父親は10~12万円の養育費が相場となります。か
年収500万円である場合の養育費
年収500万円の父親の場合、子ども2人とも14歳以下で母親に収入がないときは、会社員で8~10万円、自営業で12~14万円の養育費が相場です。
2人とも15歳以上になると、会社員で10~12万円、自営業で14~16万円が目安となります。
1人が15歳でもう1人が14歳以下の場合、母親に収入がなければ、会社員で10~12万円、自営業で12~14万円が目安となります。
年収600万円である場合の養育費
年収600万円の父親で、子ども2人が14歳以下の場合、母親に収入がなければ、会社員で10~12万円、自営業で14~16万円の養育費が相場となります。2人とも15歳以上になると、会社員で12~14万円、自営業では16~18万円が目安の金額です。
1人が15歳でもう1人が14歳以下の場合、母親に収入がなければ、会社員で12~14万円、自営業で16~18万円が目安となります。
養育費算定表による養育費の計算
子供が2人いる場合の養育費は、養育費算定表を用いて計算することができます。ここでは、子供2人の養育費算定表の見つけ方と、具体的な算定方法をご説明します。
子供2人の養育費算定表を見つけ方
養育費算定表とは、裁判所が公表している養育費を簡易的に算出することのできる計算表をいいます。
養育費算定表は、子どもの人数と年齢に応じて使い分けなければいけません。子供が2人の場合、以下の3つの算定表を使い分けます。子どもの年齢区分は、15歳を基準としますので、子供の年齢に応じて使用する算定表を選択します。
- 2人とも15歳未満の場合:(表3)養育費・子2人表(第1子及び第2子0~14歳)
- 1人が15歳未満く、1人が15歳以上の場合:(表4)養育費・子2人表(第1子15歳以上,第2子0~14歳)
- 2人とも15歳以上の場合:(表5)養育費・子2人表(第1子及び第2子15歳以上)
父母の収入を当てはめる
適切な算定表を選択したら、次は義務者(養育費を支払う側)と権利者(養育費を受け取る側)の年収を当てはめます。年収は、以下の方法で確認します。
- 会社員の場合:源泉徴収票の「支払金額」欄の金額を使用
- 自営業者の場合:確定申告書の課税所得に、各種控除額を加算した金額を使用
会社員の場合、手取額ではなく、社会保険料等が控除される前の額面の給与額を算定表に当てはめます。これに対して、自営業者の場合、収入金額から必要経費や社会保険料等の各種控除を加減した金額を収入として算定表に当てはめます。
この際、義務者が会社員か自営業者かによって、養育費の相場が異なることに注意が必要です。
縦軸と横軸の交差点が養育費の金額となる
義務者と権利者の年収を算定表に当てはめた上で、縦軸と横軸が交わる点を見つけます。
つまり、義務者の収入を縦軸に当てはめた上で、該当する収入額から水平線を引きます。同様に、権利者の収入を横軸に当てはめた上で、該当する収入額から垂直線を引きます。この水平線と垂直線が交わる点が養育費の金額を示します。もちろん、これらはあくまで相場であり、個別のケースにおいては、子どもの教育費や医療費等を考慮し、増額や減額がなされる可能性があります。円滑な養育費の取り決めのためには、専門家である弁護士に相談することをおすすめいたします。
相手方も子どもを監護している場合の養育費
離婚後、子供2人の親権者が分かれている場合、例えば、長男の親権者は父親、長女の親権者は母親に分かれている場合、養育費の算定は複雑になります。
養育費算定表は使えない
養育費算定表は、子供が複数いる場合でも1人の親のみが親権者となっていることを想定して作成されています。つまり、母親が子供2人の親権者であることを前提にそのため、親権者が分かれて子どもを監護している場合、この算定表は適用できません。
よって、両親が子どもをそれぞれ分担して監護している場合には、養育費算定表は向いていないといえるでしょう。
標準算定方式を用いる
親権者が分かれているケースでは標準算定方式を用いて養育費を計算します。
この方式では、両親の基礎収入の算定、子どもの年齢に応じた生活費指数を基に計算を行います。
具体的には、まず両親の年収に所定の基礎収入割合を掛けることで基礎収入を算出します。
例えば、給与収入が450万円であれば、基礎収入は171万円となります。
450万円✖42%=189万円
また、自営業者の収入が450万円であれば、基礎収入は229.5万円となります。
450万円✖55%=247.5万円
給与所得 | |
総収入 | 基礎収入割合 |
0~75万円 | 54% |
~100万円 | 50% |
~125万円 | 46% |
~175万円 | 44% |
~525万円 | 42% |
~725万円 | 41% |
~1325万円 | 40% |
~1475万円 | 39% |
~2000万円 | 38% |
自営業者 | |
総収入 | 基礎収入割合 |
0~66万円 | 61% |
~82万円 | 60% |
~98万円 | 59% |
~256万円 | 58% |
~349万円 | 57% |
~496万円 | 55% |
~563万円 | 54% |
~784万円 | 53% |
~942万円 | 52% |
次に、子どもの年齢に応じて設定された生活費指数を用いて、子ども一人あたりの生活費を計算します。
年齢区分 | 生活指数 |
15歳未満 | 62 |
15歳以上 | 85 |
これらの数値が確定できれば、以下の数式に当てはめて養育費の金額を算出します。
子供の生活費=義務者の基礎収入✖子供の生活費指数÷(子供の生活費指数+義務者の生活費指数) 養育費の金額=子供の生活費✖義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入) |
具体的な計算方法
例えば、以下のケースであれば、父親が母親に支払う養育費は約7万円になります。
義務者側も子どもを養育している場合には、子ども全体に配分される生活費を計算したうえで、その金額を権利者が養育する子供と義務者が養育する子供の生活費指数で按分することで、負担するべき養育費を算出することになります。
- 長男17歳(生活費指数85)
- 長女8歳(生活費指数62)
- 長男の親権者は父、長女の親権者は母
- 父の基礎収入は500万円
- 母の基礎収入は250万円
①子らの生活費:500万円✖(62+85)÷(100+62+85)=2,975,708円2,975,708円×500/750=1,983,805円 ②父が負担するべき養育費:1,983,805円×62/147=836,707円836,707円÷12月=69,725円 |
養育費に関するよくある質問
養育費についてよくある疑問にお答えします。
離婚後に義務者の年収が増減すれば、養育費は変わるのか?
離婚後に養育費の取り決め時に想定していないような年収の増減があった場合には、養育費の増減を求めることができます。
養育費は、重大な事情の変更があった場合には変更することが認められています。重大な事情の変更としては、再婚に伴う養子縁組や子供の誕生に加えて、収入の大幅な増加や減少が該当します。一方で、単に金額に不満があるというだけでは、変更が認められにくいのが実情です。
原則として、養育費の金額は双方の合意があれば変更することができます。ただし、合意が得られない場合、一方的に変更させることは出来ず、家庭裁判所の調停を経る必要があります。
義務者が養育費を払わない場合どうすればよいか?
養育費の不払いは、子どもの健全な成長を脅かす深刻な問題です。義務者が支払いを拒否する場合の対応手順を確認しておきましょう。
まず、養育費の取り決めがない場合です。この場合、当事者間での話し合いを試み、支払いを促します。それでも応じない場合は、内容証明郵便を送付し、法的措置を取ることを通告します。並行して、弁護士への相談を検討するとよいでしょう。話し合いによる解決が難しい場合は、家庭裁判所での調停を申し立てを行い、養育費の取り決めに向けて話合いを進めます。
他方で、養育費の取り決めがある場合です。例えば、公正証書、調停、審判、判決、裁判上の和解により養育費の取り決めがされているにもかかわらず、相手方がこれを遵守しない場合には、差押えを行います。差押えを行う場合、義務者の預貯金だけでなく給与や賞与、退職金などの賃金を差し押さえることで未払いの養育費を強制的に回収することができます。養育費の差押えの場合、賃金の手取り額の半分の限度でのみ差押えをすることができます。
養育費の問題は難波みなみ法律事務所に
養育費をめぐる問題は、ひとり親家庭の経済的基盤を揺るがしかねません。子どもが1人だけでなく2人いる場合、子供の養育監護に必要となる心労はとても大きいだけでなく、これに必要となる経済的な負担は大きなものとなります。
子どもが安心して健全に成長するためには、養育費を適切に取り決めた上で、確実に回収できるように対応していきましょう。
当事務所では、初回相談30分を無料で実施しています。
面談方法は、ご来所、zoom等、お電話による方法でお受けしています。
お気軽にご相談ください。
対応地域は、大阪難波(なんば)、大阪市、大阪府全域、奈良県、和歌山県、その他関西エリアとなっています。