子なし夫婦の離婚では、子どもに関する問題は発生しませんが、夫婦の意見の相違や性格の不一致などが原因で深刻な問題に発展することがあります。特に、片方だけが子どもを望むケースでは、子どもを持つことへの意見の相違が離婚の原因となることが少なくありません。
また、不妊治療の過程でストレスが蓄積し、お互いを思いやる気持ちが薄れていくことがあります。さらに、不貞行為が発覚した場合、たとえ子どもがいなくても、裏切られた側の精神的ダメージは計り知れません。DVやモラハラも、被害者の心身に深刻なダメージを与えるため、速やかな対応が求められます。
子なし夫婦の離婚のメリットとしては、子どもに関連する事項が争点とならないこと、離婚後に人生の再スタートをしやすいこと、面会交流の必要がないことなどが挙げられます。一方、デメリットとしては、経済的な自立の必要性や、離婚後の各種手続きの負担などがあります。
離婚の際には、DVや不貞の証拠を確保し、経済的な自立のために就職活動を始めることが重要です。また、夫婦の財産を確認し、相手方の収入額を把握しておくことで、円滑な離婚手続きと、離婚後の安定した生活を実現することができるでしょう。
本記事では、子供がいない夫婦が離婚する際に注意するべき点やメリット・デメリットを詳細に解説していきます。
子なし離婚の割合
近年、子なしで離婚に至る夫婦が増加傾向にあります。ここでは、子なし離婚の現状について見ていきましょう。
厚生労働省「国民生活基礎調査」によれば、現在、自らの意思で子どもを持たない共働き夫婦、いわゆるDINKs(Double Income No Kids)は、全夫婦の24%を占めています。子供のいない夫婦の割合は年々増加している傾向にあります。
また、令和4年度離婚に関する統計の概況によれば、親権を行う子供のいない夫婦の件数は81,918件であり、全体の193,253件の42.3%を占めています。
子なし夫婦が離婚する理由・きっかけ
子なし夫婦が離婚に至るには、さまざまな理由やきっかけがあります。ここでは、その主な原因について詳しく見ていきましょう。
子どもに対する考えの対立
子なし夫婦の中には、当初から子どもを持つつもりがなかったカップルもいれば、結婚後に子どもを望むかどうかで意見が分かれるケースもあります。片方だけが子どもを強く望んでいる場合には、その溝が埋まらずに離婚に至ることがあります。
また、不妊治療に対する考え方の違いも、離婚の原因になり得ます。不妊治療を続けたい側と、そろそろ諦めたい側とで意見が対立し、関係が悪化することもあるでしょう。
セックスレスや不妊治療
子なし夫婦の場合、セックスレスが離婚理由になることがよくあります。セックスレスとなる要因は様々ですが、一つ挙げられる要因が不妊治療です。
不妊治療には身体的精神的な負担がとても大きいものです。さらに、不妊治療のタイミング法では、排卵日の機会を狙った性行為が求められるため、性行為自体が義務的に感じる人もいます。
このような不妊治療の特性から、夫婦がセックスレスに陥るケースがあります。そして、夫婦がセックスレスに陥ることで、当然ながら自然妊娠の可能性も低下していき、不妊治療のプレッシャーをより強く感じるようなこともあります。
不貞行為
子なし夫婦の場合、子どもがいないことで夫婦の関係性が希薄となるケースもあり、配偶者が不貞行為に走るリスクが高くなります。
セックスレスの状態が長期間続くと、性的欲求を満たすために配偶者以外の相手を求めてしまうことがあります。この点については、子なし夫婦が必ず不貞行為に及ぶわけではありません。子どもがいても不貞行為をする配偶者はいます。
不貞行為が発覚した場合、子どものいる・いないに関わらず、裏切られた配偶者の精神的ダメージは計り知れません。多くのケースで、不貞行為が離婚の直接的な原因となっています。
DVやモラハラ
子なし夫婦であっても、DVやモラハラが離婚の原因になることは少なくありません。配偶者のもともとの性格・属性によることもありますが、子どもの不妊や不妊治療、セックスレスといった他の要因も絡んで、加害者側の暴力や暴言が行われることがあります。
DVやモラハラは、被害者の心身に深刻なダメージを与えるものであり、当然に夫婦関係を破壊する離婚理由の一つとなります。
子供がいない夫婦が離婚するメリット・デメリット
子供がいない夫婦が離婚する際のメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。このメリットとデメリットをよく理解していただき、離婚するべきか、どのような条件で離婚するべきかを考えてみましょう。
離婚するメリット
子供がいない夫婦が離婚する際には、いくつかのメリットがあります。以下では、そのメリットについて詳しく説明します。
子どもに関連する問題が争点とならない
子どもがいる夫婦では、親権・養育費・面会交流はかなり激しく対立することも珍しくありません。しかし、子供がいない夫婦の場合、子どもがいない以上、離婚時に子供の親権や養育費、面会交流などの問題が争点となることはありません。このため、離婚協議がスムーズに進む可能性が高くなります。
また、子供の心情を考慮する必要がないため、夫婦間の問題に集中して解決策を探ることができます。結果として、離婚手続きがより円滑に進められる傾向にあります。
離婚後に人生の再スタートをしやすい
子供がいない夫婦の場合、離婚後に新たなパートナーとの再婚や、キャリアチェンジなどの人生の再スタートを切りやすいという特徴があります。子育ての責任・負担がないため、自分の人生設計に集中できるからです。
また、交際や再婚をする場合でも、子連れ特有の問題が生じにくいというメリットもあります。
面会交流や養育費を通じた接触をする必要がない
子供がいる夫婦の場合、離婚後も面会交流を通じて子供との関係を維持する必要があります。また、子どもの養育費の取り決めをしている場合には、定期的に養育費の支払いが行われます。
そのため、子の養育費や面会交流を通じて、元配偶者とメッセージや電話によるやり取りをしたり、場合によっては対面しなければならないこともあり、大きなストレスになることもあります。
しかし、子供がいない夫婦の場合は、離婚後にそのようなやり取りをする必要がないため、元配偶者と接触する必要が生じません。つまり、子供がいない夫婦であれば、離婚後に相手との関わりを完全に断つことができ、人生の再スタートを切りやすいといえるでしょう。
離婚するデメリット
一方で、子供がいない夫婦が離婚する際には、いくつかのデメリットもあります。以下では、そのデメリットについて詳しく説明します。
経済的な自立をする必要
離婚後は経済的に自立する必要があります。これは子なし夫婦特有のデメリットとまではいえないでしょう。
子供がいれば養育費を受け取ったり児童扶養手当などのひとり親の手当・支援があります。しかし、子なし夫婦であれば、これらを受け取ることはできません。
子供のいる・いないに関わらず、離婚後の経済的な安定を図ることは重要です。特に、専業主婦だった場合は、離婚後の生活設計に困難を感じることが多いでしょう。十分な蓄えがない場合は、離婚後の生活の立て直しに時間がかかる可能性があります。
離婚後の各種手続をしなければならない
離婚後は、戸籍や住民票、各種契約の名義変更など、様々な手続きを行う必要があります。時間と手間がかかってしまうため、離婚をする際は離婚後の各手続も理解しておくことが大切です。
子どもがいない夫婦の離婚時の注意点
子どもがいない夫婦が離婚する際には、子どもに関する問題は発生しませんが、それ以外の重要な問題を解決する必要があります。ここでは、子なし夫婦が離婚する際に特に注意すべき点について解説します。
DVや不貞の証拠を確保する
DVや不貞行為が離婚原因となった場合、慰謝料請求のために証拠を確保しておくことが重要です。DVの場合は、怪我の写真や診断書などを保管しておきましょう。
不貞行為の証拠としては、ホテルへの入室時の写真や、不倫相手とのメールやLINEの履歴などが有効です。
これらの証拠は、離婚協議や調停、裁判において、慰謝料の金額を決定する際に重要な役割を果たします。
経済的な自立のために就職活動を始める
離婚後の生活を安定させるためには、先ほど解説したように経済的な自立が不可欠です。
専業主婦であった場合は、早めに就職活動を始めることをおすすめします。
ハローワークや民間の職業紹介サービスを利用して、自分に合った仕事を探しましょう。また、必要に応じて、職業訓練や資格取得のための講座を受講することも検討してください。離婚前から経済的な準備を進めておくことで、離婚後の生活への不安を軽減できます。
夫婦の財産を確認する
離婚の際には、夫婦の財産分与についても合意する必要があります。そのため、離婚前に夫婦の財産状況を正確に把握しておくことが重要です。
不動産、預貯金、株式、退職金など、夫婦が所有するすべての財産をリストアップした上で、財産分与の対象となる財産と対象外となる財産を選別し、財産分与の金額を算定しましょう。この情報は、財産分与の交渉において重要な根拠となります。
相手方の収入額を確認しておく
離婚協議中や離婚成立までの期間、扶養義務を根拠に婚姻費用を請求することができます。特に、専業主婦であったり、収入額がパート収入程である場合には、積極的に婚姻費用を請求することで、離婚成立までの生活を安定させましょう。
婚姻費用の金額を決定する際には、相手方の収入額が重要な判断材料となります。
そのため、離婚前から相手方の収入に関する情報を収集しておくことが非常に大切です。給与明細・源泉徴収票や確定申告書などの資料を確保し、必要に応じて弁護士に相談して適切な婚姻費用の金額を算定してもらいましょう。
離婚前から綿密に情報を収集し、適切な対策を講じることで、円滑な離婚手続きと離婚後の安定した生活を実現することができるでしょう。
離婚の手続きの流れ
離婚には、協議離婚、調停離婚、そして裁判離婚の3つの方法があります。子なし夫婦の場合、親権や養育費の問題がないため、比較的スムーズに進められる可能性が高いですが、財産分与や慰謝料などの問題については、慎重に対応する必要があります。
協議離婚
協議離婚は、夫婦間で直接話し合いを行い、合意に達した場合に離婚届を提出することで成立する離婚の一つです。子なし夫婦の場合、主に財産分与、慰謝料、年金分割について協議することになります。
合意後は、離婚届を提出し、離婚が成立します。離婚条件を明確にしておくために、必ず離婚協議書を作成し、公正証書にすることを強くお勧めします。これにより、将来的なトラブルを防ぐことができます。
調停離婚
協議離婚が成立しない場合、離婚調停の申立てを選択することになります。離婚調停では、調停委員が仲介役となり、調停離婚の成立に向けて話し合いを進めていきます。
調停手続では、夫婦が直接対面での話し合いを避けることができるため、離婚協議よりも冷静に話し合いを進めることができます。
3回から5回ほどの調停期日を経て、離婚するか否かに加えて、財産分与、慰謝料、年金分割等の離婚条件について調整できれば、調停離婚が成立します。他方で、調停手続を経ても調整しきれない場合には、離婚調停は不成立となります。
離婚裁判
調停でも合意に達しない場合、最終手段として離婚訴訟(離婚裁判)を選択することになります。
裁判離婚では、不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、強度の精神障害(回復見込みなし)、その他の重大事由といった法定離婚事由が認定される場合には、たとえ相手方が離婚を拒否したとしても離婚を認める判決が出されます。そのため、離婚原因を裏付ける客観的な証拠を確保しておくことが重要です。
離婚裁判では、準備書面による主張やこれを証明する証拠の提出が求められ、専門的な知識や経験が必要となります。そのため、離婚裁判では、特に弁護士のサポートを受けることが非常に重要です。法的な知識と経験を持つ弁護士が、適切な主張と証拠提出を行うことで、有利な判決を得ることができます。
婚姻費用の調停申立てを忘れずに
離婚手続きを進める際、婚姻費用の調停申立てを忘れないようにしましょう。婚姻費用とは、別居中の生活費のことを指し、離婚成立までの期間、生活を安定させるために請求することができます。
離婚手続は、長期に及ぶことがよくあります。離婚成立するまでに、経済的に不安定な生活を強いられてしまうと、離婚の話し合いも有利に進めることが難しくなる可能性があります。
そこで、経済的に安定させ離婚後の生活をスムーズに開始させるためにも、早期に婚姻費用の請求を行いましょう。子なし夫婦の場合、子どもの養育費がないため、婚姻費用の算定はシンプルになる傾向があります。
子なし夫婦の離婚問題は難波みなみ法律事務所に
子供がいない夫婦が離婚を考える場合、子供の親権、養育費、面会交流などの子供にまつわる問題が対立することはありません。
ただ、子供がいない夫婦が離婚を考える場合、子なし夫婦特有の問題やメリット・デメリットがあるため、本当に離婚するべきかを慎重に検討しましょう。
離婚すると決断したとしても、離婚後の生活やキャリアを踏まえて、ご自身に有利な形で合意できるように用意周到に資料の確保や就職活動の開始などを実践しましょう。
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早めの相談が問題解決の第一歩です。専門家の助けを借りることで、迅速かつ適切な対応が可能となり、問題の早期解決が期待できます。
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