面会交流は、離れて住む親が子どもと定期的に会って、会話をしたり、食事をしたり、時には買い物をするなどして親子の交流を図ることをいいます。面会交流は、子どもにとって、親の愛情を感じ取れる機会となるため、できる限り実施するべきです。
しかし、父母にとっては、関係の悪化している配偶者や元配偶者に接触をする機会にもなり、親にとっては大きなストレスとなることも珍しくありません。
このような父母の対立や葛藤から、監護親が面会交流を拒否したり、制限することもありますが、原則として、このような理由で面会交流を拒否したり、不当に制限することはできません。
ただ、面会交流は父母の信頼関係がベースになるものですので、監護親の負担を可能な限り軽くしてあげることも安定した面会交流のためには重要です。
そこで、監護親のストレスを軽減させるために、監護補助者の協力やFPIC等の第三者機関の利用、面会交流アプリの利用を検討してみましょう。
本記事では、弁護士の視点から対応策を詳しく解説します。
面会交流とは
面会交流とは、子供と離れて暮らす親が定期的に子供と会うことをいいます。面会交流では、公園やショッピングモール等の指定された場所で遊んだり、買い物をしたり、食事をするなどして、親子の交流を図ります。
面会交流の頻度は、月に1回とされることが一般的ですが、事案によってはこれよりも多かったり少なかったりします。
面会交流により、子供は離れて暮らす親からの愛情を感じ取れ、子の健全な成長が促されます。
面会交流の諸条件は、父母の協議により合意した上で進めていきます。しかし、子供の意向を理由に面会交流が実現されないこともあり、その場合には、面会交流の調停手続を通じて、面会交流の協議を進めます。
子どもが会いたくないと思う理由
子どもが親と会いたくないという理由で面会交流を拒否する背景には、さまざまな理由が存在します。
子供が面会交流を拒否する場合、その理由は一つではなく様々な要因が絡んでいることが多いです。親は子供の気持ちを理解しながら、面会交流が子どもにとって利益になるか否かを慎重に検討することが大切です。
以下では、子供が面会を望まないと感じる主な理由について詳しく見ていきます。
監護親による影響から
監護親の意向を意識して、非監護親と会いたくないと言っていることはよくあります。普段から監護親が子どもに対して、非監護親の悪口や消極的な言動を繰り返すことで、子供は面会交流に対して強い抵抗感を抱くことがあります。
特に、年齢の低い子どもについては、監護親の影響を受けやすく、監護親の意を汲んで会いたくないと考える傾向は強いです。
また、子供は本当は非監護親に会いたいという気持ちを持っていたとしても、面会交流に否定的な監護親の顔色を窺って、監護親の望むような発言として『会いたくない』と発言することもあります。
このように、子供が会いたくないと思う理由の一つは、監護親による影響が挙げられます。
習い事や学業のため会える日程がない
子供のスケジュールが忙しいために、子供が親に会いたくないと思うことがあります。
スポーツクラブや進学塾などの習い事によりスケジュールがタイトであるために、会いたくても会えない場合があります。また、スケジュールがタイトであるために、子供が心身ともに疲れているために、親に会いたいという気持ちになれないこともあります。
あるいは、監護親が、子供の習い事を面会交流を実施できない理由に挙げて、面会交流を恣意的に制限しようとしてくることもあります。
同居中に暴力や暴言を受けていた
子供が同居中に非監護親から家庭内で暴力や暴言を経験した場合、心理的なトラウマから面会を拒否することがあります。また、子供に対する直接の暴力ではなかったとしても、子供の面前で監護親に対する暴力が行われていた場合も、同様に子供は深刻なトラウマとなります。
こうした経験は子供の心に深い傷を残し、面会交流を実施することは子供に大きな心身の負担を招き、かえって子の福祉を害します。
子どもが会いたくないと言っている時の面会交流
子供が親に会いたくないと言っている場合、どのような対応を取るべきかについて考えます。
子供の意思を尊重して面会交流を実施しない、あるいは、条件を制限する選択肢がありますが、子供の意思が真意であるかは定かではなく、子の意向を鵜呑みにするべきではありません。
会いたくないという子供の気持ちの背景に何があるのかを考えた上で、面会交流を実施することが子の利益に反する場合には面会交流を制限するべきです。しかし、子供なりに監護親の気持ちを汲んで、会いたくないという消極的な態度を示しているのであれば、面会交流を進めていくべきでしょう。
以下では、具体的な対応方法について詳しく解説します。
会いたくないという子供の意思をどう考えるか
監護親は、子供が会いたくないと言っていることを理由に面会交流を拒否することは珍しくありません。
面会交流は、子供が非監護親との間で面会交流を行うことによって、親の愛情を感じ取り、その親との良好な関係を構築することは、子の健全な成長のために非常に有益なものです。
そのため、子供の言葉を鵜呑みにして、子供が単に会いたくない意向を示しているという事情だけで面会交流を制限することはできません。
子供が親と会いたくない意向を持つ理由や事情は何か、子の年齢や発達状況に応じて自分の気持ちを適切に表明できているかなどを確認する必要があります。その上で、会いたくないという子供の意向が真意であり、面会交流の実施が子の福祉を害するといえる場合には、例外的に面会交流は制限されます。
監護親の影響を受けている場合
監護親の影響を受けて、子供が非監護親に対して強い拒否感や憎悪の念を抱くことはあります。例えば、非監護親の不貞行為を理由に別居・離婚に至っている場合、監護親が子供に別居等に至った経緯を話してしまっていることを理由に、子供が、監護親を裏切った非監護親を許せないという気持ちを抱くことがあります。不貞行為がなかったとしても、別居等に至った原因が非監護親にあることを常日頃から子供に話すことで、子供が親に会いたくないと強く思うことは珍しくありません。
また、監護親が子供に別居等の経緯を話していないとしても、監護親の気持ちを察して、非監護親との面会交流に否定的な意思を示すこともしばしばあります。つまり、非監護親と仲良くすることで監護親に対する裏切りになると考えてしまい(忠誠葛藤)、否定的な意向を示すこともあります。
このように、監護親に配慮して、子供が会いたくないとの意向を示している場合には、面会交流を制限するべきではありません。
ただし、非監護親は、子供に会いたいという強い思いから、監護親の負担や都合を考えずに、一方的な条件を提示することは控えるべきです。子供が非監護親に心を開くように、急ぎ過ぎず一歩ずつ前進させていく思いで面会交流を実施するように努めましょう。
子供に対する暴力等がある場合
非監護親が同居中に子どもに対して暴力を振るうなどの虐待を加えていた場合には、非監護親に対する恐怖心から、会いたくないという子の意向には正当な理由があるといえます。そのため、暴力等の虐待があれば面会交流は禁止制限するべきといえます。
また、非監護親の暴力が子どもに対するものではなく、監護親に向けられたものである場合も、面会交流は制限される場合があります。子供は親に対する暴力であっても強く記憶しており、非監護親に対する恐怖心、許せないという思いを根強く抱いていることはよくあります。そのため、監護親に対する暴力を理由に面会交流の実施が子の福祉を害する場合には、会いたくないという子の意思を尊重して、面会交流を制限するべきでしょう。
子供が会いたくない時の面会交流調停の流れ
父母間の話し合いでは、面会交流が実施できない場合には、面会交流の調停手続きにより解決を目指すことになります。監護親が「会いたくない」という子どもの意思を理由に面会交流を拒否しているような場合には、調停手続では、その子の意向が真意であるのか、意思の背景等を確認することになります。調停委員による調整を経ても面会交流の実施が難航する場合には、調査官による調査を実施したり、試行的面会交流(交流場面調査)が実施されることがあります。
調停委員が会いたくない理由を確認する
まず、家庭裁判所の調停委員から、監護親に対して、子どもの意向やその理由・背景を確認します。非監護親の暴力等の虐待があるケースでなければ、調停委員としては、できる限り面会交流を実施する方向で当事者双方を説得することが一般的です。
面会交流を実施するとしても、監護親が、頻度が少なかったり、面会交流の条件を非常に制限するような内容で条件提示をすることも多くあります。これに反して、非監護親としては、頻度を多くしたい、あるいは、できる限り長く会いたいといった意向を示すことで、父母間の調整ができないことも珍しくありません。
調査官調査が行われる
調停委員の説得によっても、面会交流の合意ができない場合には、調査官による調査が行われることがあります。
家庭裁判所の調査官の調査には、まずは、当事者の意向聴取があります。調査官は、監護親と非監護親に対して個別に面接を実施して、面会交流の意向、その意向の理由と背景事情を聴き取りします。
また、子どもの意向も調査します。調査官は、子どもの年齢に応じた調査を実施します。まず、子どもが小学校高学年以上であれば子の意思を調査します。子どもが小学校中学年、低学年であれば子の心情を調査し、これよりも低年齢であれば子どもの状況調査を行います。特に、父母の対立が強い場合には、子どもは監護親に対する配慮から、意向を示すことも多くあるため、子の意向が真意であるかは慎重に吟味されます。
調査官の調査が終えれば、調査報告書が作成され、当事者双方に開示されます。当事者双方は、この調査報告書の内容を踏まえて、面会交流の条件を調整できないか検討します。
試行的面会交流が行われる
調停委員や調査官の仲裁を経ても父母間の対立が解消されない場合には、試行面会(交流場面調査)を実施することがあります。試行面会とは、家庭裁判所の施設内で、調査官立会いの下で、監護親と非監護親が入れ替わりで子どもと面会してもらい、親と子どもの関係性を調査するものです。
調査官が交流場面を現に見ることで、非監護親と子どもの面会交流を実施できるかを調査します。面会実施まで、非監護親との面会に抵抗感を非監護親が持っていたとしても、いざ試行面会を実施すると、楽しそうな表情を見せることはよくあります。
試行面会を終えると、調査官は試行面会の様子を踏まえた調査報告書を作成します。調査報告書には、試行面会時の様子が詳細に記載された上で、最後に調査官の意見として、面会交流の適切な方法が提示されます。
試行面会において、特段問題なく面会が実施されている場合には、直接の交流が相当であるとの意見が出されます。仮に、子が消極的な態度を示したとしても、直ちに直接の面会交流が否定されるわけではありません。子どもが監護親の様子を気にしていたり、子が終始否定的な態度ではなく心を開く瞬間があるような場合には、監護親の影響も踏まえて、面会交流の実施を促す意見を提示することもあります。
監護親が(元)夫に会いたくないことを理由に面会交流を拒否できるか?
監護親の非監護親に会いたくないという思いを理由に面会交流を拒否することは可能なのでしょうか。
原則拒否できない
監護親が面会交流時に非監護親に単に会いたくないという理由だけで面会交流を拒否することは基本的に認められていません。
面会交流は子どもの健全な成長を促すための子の重要な権利です。したがって、監護親の「会いたくない」という感情だけを理由に面会交流を拒否することはできません。
子供の面前での暴力・DVがあった場合
非監護親の監護親に対する暴力やドメスティックバイオレンス(DV)がある場合には、面会交流時に「非監護親に会いたくない」と考えるのも自然なことです。また、暴力が子どもの面前で行われていた場合には、子どもに対する虐待に該当します。
そのため、非監護親の監護親に対する暴力がある場合には、面会交流を拒否することに正当な理由があるといえます。
高葛藤だけを理由に面会交流を制限できない
父母間の葛藤が強いという理由から、非監護親に会いたくないとして面会交流を拒否することはできません。
離婚紛争等を通じて、父母間の感情的な対立が激しくなり、心理的な葛藤が強くなることはよくあります。そのため、このような葛藤が強い事案では、監護親が面会交流を断固拒否することはしばしばあります。しかし、父母間の対立を理由に面会交流を拒否できるとなると、監護親の感情次第で容易に面会交流を拒否することが認められてしまいます。
そのため、葛藤が高いだけでは、面会交流を拒否することは基本的にはできません。
元夫に会いたくない場合の対応とは?
元夫又は元妻と面会交流を通じて会いたくないと考えることはよくあります。元配偶者と会うことで大きな不安感・恐怖心を抱くこともあり、安定した面会交流を実施することが難しくなります。
以下では、非監護親と会わないようにするための具体的な方法について詳しく説明します。
面会交流の方法を工夫する
面会場所や方法を工夫することで、元配偶者に会わないようにして面会交流を実施させることができます。
例えば、あらかじめ受渡場所と時刻を指定した上で、少し早い時刻に指定場所に到着して、子どもをその場で待機させる方法です。この場合には、監護親と非監護親が直接対面することは回避できます。ただ、子供が幼年である場合には、保護者がいない状態で子供を受渡場所に放置することになるため適切ではありません。あるいは、受渡場所を監護親の祖父母宅として、受渡しを祖父母に委ねる方法も挙げられます。
監護補助者に協力してもらう
監護親の両親、きょうだい等の監護補助者に協力を求めることが挙げられます。面会交流時の受渡や立ち合いを監護補助者に依頼することで、監護親が非監護親と会わずに済みます。受渡しの協力だけであれば大きな負担とまではいえませんが、面会交流中の帯同を依頼すると、監護補助者に対して大きな負担を強いることになるため、監護補助者に無理な協力とならないように調整することが大切です。
第三者機関(FPIC)に協力してもらう
家庭問題情報センター(FPIC)などの第三者機関に面会交流の協力を求めることもあります。FPICでは、面会交流の付き添いから、受渡しや連絡調整を行うなど、面会交流に関する様々な支援をしています。FPICを利用することで、非監護親に会いたくないという監護親の思いは実現されます。
ただ、FPIC等の第三者機関を利用する場合には、いくつかの条件をクリアしなければなりませんし、有償となるため、この費用負担を誰がするのかが問題となることもあります。
面会交流アプリを利用する
近年では、面会交流をサポートするアプリが登場しています。これらのアプリを活用することで、面会交流のスケジュールの調整が事務的となり、父母のストレスを軽減させることができます。ただし、アプリを用いることで直ちに「会いたくない」という意向が実現できるわけではなく、アプリを用いながら、面会交流の方法を工夫するなどして双方の心理的な負担を軽くしていきましょう。
参照|raeruラエル
面会交流の問題は難波みなみ法律事務所へ
面会交流は、子供が親の愛情を感じることができ、親と子供との絆を築くための重要な機会です。
しかし、面会交流は、子供と一緒に暮らさない非監護親の自由気ままに実施することはできません。当然、子供の気持ちや監護する親の負担にも配慮し、できる限り子や監護親の負担とならないような工夫が求められます。
父母間の直接のやり取りでは感情的な対立をより一層激化させ、父母の葛藤を高めてしまいます。その上、精神的な負担も大きくなります。
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