コラム
公開日: 2024.08.09

株式も財産分与の対象となる!対象外の株式や財産分与の方法も解説 |難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

離婚時の財産分与では、株式が財産分与の対象となるかどうかで意見が対立することも少なくありません。 

また、株式は預貯金のように分割することが難しい場合もあるため、分け方をめぐるトラブルも起こりがちです。非上場株式では評価額で揉めることも多いでしょう。

この記事では、財産分与で問題になりやすい株式について、どのような場合に分与の対象となるのか、財産分与の方法、評価額の決め方などについて解説します。公平な財産分与を実現するために、ぜひ参考になさってください。 

財産分与の対象となる株式とは 

株式が財産分与の対象となるのは、その株式が「夫婦共有財産」に該当する場合です。なぜなら、財産分与は離婚時に夫婦共有財産を分け合う制度だからです。 

夫婦共有財産とは、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産のことをいいます。 

株式が夫婦共有財産に該当する条件について、以下でみていきましょう。 

婚姻後に取得した株式であること 

第1の条件は、婚姻後に取得した株式であることです。婚姻後に取得した財産でなければ、夫婦が協力して形成したものとはいえないからです。

夫婦の一方が婚姻前から所有していた株式は、夫婦の協力とは無関係に取得した「特有財産」として扱われるため(民法762条1項)、財産分与の対象外となります。 

別居時点で所有している株式であること 

第2の条件は、別居時点で所有している株式であることです。婚姻中であっても、離婚に向けて別居を開始した後に夫婦の一方が取得した財産は、夫婦が協力して形成したものとはいえないからです。

ただし、単身赴任や実家の親を介護するための別居など、夫婦関係が破綻していない場合は、別居中に取得した株式も財産分与の対象となります。

また、あくまでも財産分与の基準時は、別居時となります。そのため、同居中に取得していたとしても、基準時である別居日よりも前に現金化している場合には、別居時点で株式を所有していないため、財産分与の対象ではなくなります。 

配偶者個人が取得した株式であること 

第3の条件は、配偶者個人が取得した株式であることです。

他方で、法人名義で取得した株式や親族名義で取得した株式は、財産分与の対象から除外されます。

法人が取得した株式

配偶者が経営する会社名義で取得した株式は、原則として財産分与の対象外となります。 

ただ、法人であっても経営の実態が個人事業と同等で、法人の財産と経営者個人の財産を実質的に同一視できるケースもあるでしょう。このような場合には、法人名義で取得した株式でも実質的には夫婦が協力して形成したものとみなされ、財産分与の対象となる可能性があるのです(大阪地裁昭和48年1月30日判決など)。 

ただし、法人名義の株式を夫婦共有財産とみなせるかどうかは、個別の事案ごとにさまざまな事情を総合的に考慮して判断しなければなりません。気になる方は、離婚問題に詳しい弁護士へのご相談をおすすめします。

親族が取得した株式

配偶者の親族が取得した株式も同じく財産分与の対象から外れるのが原則です。 

なぜなら、財産分与はあくまでも夫婦の一方または双方が所有する財産を分け合うものだからです。第三者名義の財産は基本的に第三者が所有する財産として扱われるため、夫婦共有財産には該当しません。 

特有財産で取得した株式は除外される

以上の3つの条件を満たす株式であっても、財産分与の対象から除外されるケースがあります。

株式が特有財産に該当する場合です。 

特有財産に該当するケースとしては、夫婦の一方が婚姻前から株式を所有していた場合の他にも、贈与や相続により、夫婦の協力とは無関係に株式を取得した場合が挙げられます。

株式を財産分与する方法 

一般的に行われている財産分与の方法は、次の3種類です。

・現物分割…対象財産を現物のままで分け合う方法

・換価分割…対象財産を売却し、得られた代金を分け合う方法

・代償分割…対象財産を夫婦の一方が現物で取得し、もう一方に対して分与すべき金額(通常は評価額の半分)を金銭で支払う方法

株式は預貯金のように分割することが難しい場合もあるので、財産分与の方法を工夫しなければならない可能性があります。

ここでは、ご参考のために、株式以外にも分け方が難しい財産を分与する方法についてご説明します。 

株式・債券・投資信託などの有価証券

株式だけでなく、国債や社債などの債券、投資信託なども、夫婦が協力して形成したものは財産分与の対象となります。 

現物分割による場合は、分与すべき金額分(例:株式なら1,000株のうち500株など)についての名義変更を証券会社へ依頼するとよいでしょう。 

ただし、非上場株式は市場で取引できず、分与するためには株主の承認を得ることが必要です。会社の定款に従い、株主総会の開催など所定の手続きを踏まなければなりません。 

このような手間を回避するためには、換価分割または代償分割によった方がよいでしょう。  

自社株 

自社株には、上場企業の株式を従業員持株会等を通じて購入した株式や自身又は親族が経営する法人の株式を含みます。

自社株も、夫婦が協力して形成したものであれば財産分与の対象となります。

自社株が上場株式の場合は、分与すべき金額分について名義変更したり、その時価相当額を代償分割すればよいでしょう。 

非上場株式を分与する場合は、定款に則った手続きが必要であることに加えて、会社の経営権に大きな影響を及ぼす可能性があることにも注意が必要です。 

例えば、夫が保有する自社株の半分を妻が保有することになると、妻が会社の経営に大きく関与することになります。夫としてはこのような事態を回避したいのが通常でしょうし、妻としても経営への関与などは望まないことがほとんどでしょう。

そのため、自社株(特に非上場株式)を分与する場合には、代償分割による分け方が望ましいといえます。

投資用不動産 

賃貸用のアパート・マンションなどの投資用不動産も、夫婦が協力して形成したものであれば財産分与の対象となります。 

不動産の分与は現物分割で行うことが難しいため、換価分割または代償分割によるのが一般的です。 

ローンが残っている場合は、換価分割によるときは売却代金で残ローンを完済し、残った金額の半分を分与します。代償分割によるときは、離婚時の時価評価額からローンの残高を控除した金額の半分を分与します。  

ローンの残高が離婚時の時価評価額よりも大きい「オーバーローン」の場合は、資産価値がゼロとみなされるため、財産分与の対象にはなりません。 

なお、投資用不動産から生じる賃料収入については、離婚時までに支払期限が到来した分を2分の1ずつに分けることになります。財産分与は離婚時に現存する財産を分け合うものなので、将来発生する賃料収入は分与の対象にならないことに注意しましょう。

株式を財産分与する際の流れ 

次に、株式を財産分与する際の流れをご説明します。 

ほとんどの場合は株式以外にもさまざまな財産があるため、まずは夫婦共有財産をすべてピックアップした上で、以下の手順を同時並行で進めていきます。 

ですが、ここでは特に株式の財産分与に焦点を当ててみていきましょう。 

株式の評価額(離婚時の評価額) 

まずは、財産分与の対象となる株式の金銭的価値を明らかにするために、評価額を調べる必要があります。 

株式などの有価証券の評価額は、原則として離婚時の時価評価額によることとされています。

株式の評価額の決め方は上場株式と非上場株式とで異なりますので、それぞれ後述します。 

財産分与の割合を協議する 

評価額が決まったら、その金額を夫婦でいくらずつに分けるのかを協議して決めます。 

通常は、半分ずつの割合で分けることになります。なぜなら、婚姻中の夫婦はお互いに協力し合って生活するものであり(民法752条)、財産の形成・維持への貢献度は基本的に同等と考えられているからです。 

夫婦の一方が専業主婦・主夫であっても、その家事労働によって家庭を支えているからこそ配偶者が働いて収入を得られるのですから、2分の1ずつ財産を分けるのが基本です。

ただし、どちらか一方の特別な能力や努力によって多額の資産が形成された場合のように、財産の形成・維持に対する貢献度に明らかな差がある場合には、財産分与の割合が修正されることもあります(福岡高裁昭和44年12月24日判決など)。 

例えば、夫が医師や弁護士、大企業の経営者、スポーツ選手などで高収入を得ていて、妻が専業主婦といったケースでは、夫の取り分の方が多くなることもあるでしょう。 

財産分与の方法を協議する 

財産分与の割合も決まったら、どのような方法で分与するのかを協議して決めます。具体的には、現物分割・換価分割・代償分割のうちどの方法によるのかを決めることになります。 

財産状況に応じて、できる限り公平かつ簡易的な方法で財産を分与できるように検討するとよいでしょう。 

離婚協議書を作成する 

以上のことが決まったら、離婚協議書を作成しましょう。財産分与の合意は口頭で成立しますが、口約束だけでは「言った・言わない」のトラブルが生じるおそれがあるので、合意内容を明記した離婚協議書を作成しておくことが大切です。 

公正証書で離婚協議書を作成すれば、相手が約束を守らない場合には裁判をしなくても強制的に支払いを求めることが可能となります。

上場株式と非上場株式の評価額の決め方

上場株式と非上場株式とでは、評価額の決め方が以下のように異なります。

 上場株式は市場価格で決める 

上場株式の場合は市場における取引価格(株価)が形成されているので、市場価格が評価額となります。 

基本的には離婚成立日の終値が評価額となりますが、現実にはそれよりも前の時点で評価額を決めることが多いでしょう。「別居を開始した日」、「財産分与の合意をした日」、「すべての離婚条件を取り決めた日」など、双方が納得できる基準日を協議で決めれば、評価額を決めやすくなります。 

ただし、上場株式の株価は常に変動することにも注意が必要です。変動の幅が大きい場合には、直近3ヶ月間の平均株価を参考にするなどして公平に評価することも必要となります。 

評価額の算出が難しい場合に公平な財産分与を実現するためには、弁護士に相談した方がよいでしょう。 

非上場株式は会社規模に応じて算出する 

非上場株式の場合は市場価格が形成されていないため、評価額を計算する必要があります。 

財産分与の際に非上場株式の評価額を算出する方法は、主に以下の3つです。

方式 計算方法 適している会社の規模
類似業種比準方式  会社の規模や業種が類似した上場会社を見つけ、その株式の市場価格を参考にして対象会社の株価を算出する。大規模な会社  
配当還元方式    対象会社の株式を保有している場合に得られる配当額を基準として株価を算出する。配当していない会社の株価を算出する場合は、1株当たりの年配当金額を2円50銭と仮定するのが一般的。規模を問わない    
純資産価額方式 対象会社の資産から負債を差し引いた金額を基準として株価を算出する。中小規模の会社 

非上場株式の財産分与が問題となるのは中小・零細企業のケースが圧倒的に多いため、実務上は純資産価額方式を用いることがほとんどです。 

ただし、純資産価額方式で株式の評価額を正確に算出するためには、会計などの専門的な知識を要しますし、手間もかかります。 

やはり、公平な財産分与を実現するためには、離婚問題に詳しい弁護士に相談するのがおすすめです。

株式を財産分与した際に税金はかかるか? 

株式の財産分与によって譲渡所得が発生した場合には、分与を受けた側に所得税及び住民税がかかることがあります。 

譲渡所得とは、簡単にいうと、その株式の取得時の評価額よりも譲渡時の評価額の方が高い場合に生じる、差額分の利益のことです。 

譲渡所得の計算にあたっては、財産分与したときの時価額が収入額とした上で、、取得費と譲渡費用を引いた金額に対して譲渡所得の課税がされます。

ただし、分与された財産の金額が夫婦共有財産の総額や離婚原因など諸般の事情を総合的に考慮しても多すぎる場合には、贈与されたものとみなされる可能性があります。その場合は贈与税の課税対象となることもあるので、注意が必要です。 

財産分与の問題は弁護士に相談を

夫婦共有財産の中に株式が含まれている場合には、その株式が財産分与の対象となるかどうかを判断する必要があります。 

財差分与の対象となる場合には、どのような方法で分与すればよいのか、株価をどのように評価すればよいのかも問題となります。 

これらの問題について的確に判断し、公平な財産分与を実現するためには、専門的な知識が要求されます。 

また、他の財産との兼ね合いや、財産分与の割合などで意見が対立することもあるでしょう。 

そんなときは、弁護士に相談することで財産分与の正しいやり方が分かりますし、相手と交渉するプロセスを弁護士に委任することもできます。 

当事務所では、初回相談30分を無料で実施しています。 

面談方法は、ご来所、zoom等、お電話による方法でお受けしています。 

離婚時の財産分与でお困りの方は、お気軽にご相談ください。対応地域は、大阪難波(なんば)、大阪市、大阪府全域、奈良県、和歌山県、その他関西エリアとなっています。

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