コラム
公開日: 2025.01.02

親の介護をしない兄弟がいる場合の相続、どうする?遺産を多く受け取れるためには?|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

親の介護を一部の相続人だけがしている場合、相続問題に発展することがあります。介護をしない兄弟がいる場合、遺産分割において不公平感や争族が生じやすくなるからです。

親の介護には、一定程度の労力・費用・時間の負担を生じさせます。そのため、親の介護をした相続人は、親の介護をしたことを遺産分割の手続で有利に働かせたいと考えます。

しかし、親の介護を理由に法定相続分を修正させることはできません。また、親の介護を理由に寄与分を主張することもありますが、寄与分が認定されるためには厳格な条件を満たすことが必要です。その上、寄与分が認定されたとしても、思ったほどの金額が認められるわけではありません。

そこで、親の介護を一部の相続人のみが担っている場合には、生前の対策が重要です。

この記事では、親の介護が相続にどのように影響するのか、また多くの遺産を受け取るためにどのような方法があるのかについて詳しく解説します。

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親を介護しても当然に相続分が増えるわけではない

親の介護を一手に担っていた場合、その見返りとして法定相続分を他の相続人よりも大きくしたいと思うのが自然です。

しかし、親の介護を行ったからといって、法定相続分が自動的に増えるわけではありません。そのため、親の介護を一部の相続人だけが行なっている場合には、相続問題に発展することは珍しくありません。

親の介護をしたか否かに関係なく法定相続分は同じ

法定相続分は、相続人の順位や人数に基づき決定されます。例えば、配偶者と子供2人がいる場合、配偶者の法定相続分は2分の1、子供1人当たりの法定相続分は4分の1であり、それぞれの法定相続分は法律で明確に定められています。そのため、親の介護の有無は法定相続分の決定に際して考慮されません。

そのため、介護を行った兄弟が特別に多くの遺産を受け取る権利は当然には認められないのです。つまり、法定相続分に基づいて遺産が公正に分配されることから、介護を行った相続人が直ちに相続で優遇されることはありません。

親の介護をしない兄弟がいると争族が発生しやすい

親の介護を行った相続人は、その貢献を基に多くの遺産を受け取りたいと考える一方、介護をしなかった相続人は法定相続分に基づく平等を主張することが一般的です。

このような状況では、介護を行った側と行わなかった側の間で遺産分割に関する意見の食い違いが生じやすく、結果として家族間での争族が発生するリスクが高まります。

特に、相続財産が多額であればあるほど、その分争いも深刻化する傾向にあります。円満な相続を実現するためには、事前に話し合いを重ね、双方が納得できる遺産分割の方法を見つけることが重要です。

寄与分が認められれば多く遺産をもらえる

寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加に特別に貢献した相続人に対して、法定相続分に加えて遺産の分割において優遇される仕組みです。 

親の介護が寄与分に該当する場合、介護に対する貢献が評価され、他の相続人よりも多くの遺産を受け取ることが可能となります。

ただし、寄与分が認められるためには相続人全員が寄与分を認めるか、審判手続を通じて寄与分を認定してもらうことが必要となります。寄与分の認定を受けるためには、具体的な証拠と主張が求められることを理解しておくことが重要です。

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親の介護で寄与分は認められにくい

寄与分として介護を認められるためには、単なる日常的な介護を超える特別な貢献が求められます。実際には親の介護が寄与分として認められるケースは限られており、多くの要件をクリアしなければなりません。また、寄与分として認められても、その金額も限定的であるため、期待するほど具体的な相続分の増加を見込むことは難しい場合が多いです。

寄与分とは何か

寄与分とは、被相続人の療養看護等により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、本来的な相続分に寄与分を加えた額をもって、その者の具体的相続分として具体的取得額を算出する制度をいいます。これにより、他の相続人よりも遺産を受け取ることが可能となります。

具体的には、寄与分の相続人は、相続財産から寄与分の金額を控除した金額に法定相続分を掛けた上で寄与分の金額を加算した金額を受け取ることができます。逆に、寄与分のない相続人は、寄与分を引いた相続財産に法定相続分を掛けた金額を受け取るに留まります。

寄与分のある相続人の具体的相続分
=(相続財産-寄与分の額)×法定相続分+寄与分の額
寄与分のない相続人の具体的相続分
=(相続財産-寄与分の額)×法定相続分

寄与分には、以下の類型があり、類型に応じた条件を満たすことが必要となります。

  • 家業従事型(労務の提供)
  • 金銭等出資型(財産上の給付)
  • 扶養型
  • 療養看護型
  • 財産管理型

寄与分の金額は高くない

寄与分として認められる金額は、被相続人の財産規模や寄与行為の態様に応じて異なり、その計算方法には相続財産全体に占めるよう寄与分の割合から算出する方法や寄与分に相当する金額を計算する方法などがあります。

しかし、寄与分が認められたとしても、その金額は、寄与行為を行なった相続人の実感よりも低い金額で認定されることが実務上は多いでしょう。

そのため、介護を行った兄弟が寄与分を主張する際には、期待する金額と現実的な増加幅とのギャップを理解することが重要です。過度な期待を抱くことは、後々のトラブルの原因となる可能性があります。

親の介護で寄与分が認められる要件

親の介護が寄与分として認められるためには、以下の要件を満たす必要があり、扶養義務の範疇に留まると寄与分として認定されることはありません。

扶養義務を超えた特別な貢献であった

子供は親に対して扶養義務を負います。そのため、親の介護が子の扶養義務の範囲内であれば、寄与分には当たりません。

つまり、寄与分にあたるためには、扶養義務の範囲を超えた特別な貢献があったことが必要です。

病気や障害のない親への家事援助は扶養義務の範疇と捉えられることが多いです。

このため、寄与分として認められるためには、親の要介護度、必要とする介護の内容・程度等を踏まえて、扶養義務に基礎に期待される程度を超えた貢献をしているかをチェックする必要があります。

介護や看護が被相続人にとって必要不可欠であったこと

親の介護が親の生活において欠かせないものであったことを示す必要があります。

具体的には、親が療養看護を必要とする病状にあり、子らによる療養看護が必要であったことが必要です。

そのため、親の病状が深刻であっても、完全看護の医療機関に入院していた場合には、親族の療養看護の必要はないため寄与分は認められません。

また、療養看護による寄与分が認められるためには、被相続人の病状として、要介護度2以上の状態にあることが目安の一つとされています。つまり、要介護度1や要支援状態であれば、健康状態が悪化していたとしても、特別な寄与を必要とする病状とまでは言えないことが一般的とされています。

仮に、要介護認定を受けていなくても、当時の被相続人の心身の状況から要介護度を認定できる場合には、寄与分を認定することは理論上可能です。

被相続人の療養看護の必要性を裏付ける資料としては、要介護認定に関する認定調査票のほか、診断書、診療録の写し、死亡診断書、陳述書などの資料を基に被相続人の病状を証明していきます。

寄与行為が短期間ではなく継続して行われていた

寄与分として認められるためには、介護行為が一時的なものでなく、長期間にわたって継続的に行われていたことが必要です。1年以上にわたって療養看護に専従したことが求められるケースが多いです。

継続して療養看護を行ったことを証明するためには、療養看護が必要となったことが分かる診断書

、カルテ、介護に従事していたことが分かる日記、写真、手紙、家計簿、メール、陳述書といった資料を証拠として利用することが挙げられます。

長期間にわたる介護の記録や介護に関する証拠を揃えることで、寄与分としての認定を受けやすくなります。

無償で行ったこと

寄与分を主張するためには、介護に対して経済的な対価を受け取っていないことが条件となります。つまり、寄与分の認定を受けるためには、無償での介護が求められます。

具体的には、介護に対して報酬を受けていても、通常の介護報酬よりも著しく低額である場合には、無償と評価されることもあります。他方で、介護に報いるために生前贈与や遺贈をしている場合には無償とは言えなくなる可能性があります。

親の介護により被相続人の財産を維持または増加させたこと

介護が被相続人の財産の維持や増加に寄与したことを示す必要があります。つまり、寄与行為と被相続人の財産の維持増加との間に因果関係があることが必要です。

寄与行為により職業看護人に支払うべき報酬などの支出が免れ、その結果被相続人の財産の維持や増加に繋がったことが必要です。単に、被相続人を精神的に支えただけでは不十分です。

また、介護サービスを受けている場合であっても、利用時間が短時間で、利用限度内であれば、寄与分の認定を受けることができます。他方で、利用限度額を超えた多額の支出がある場合には、被相続人の財産の維持に貢献したとは言えないでしょう。

親の介護に多くの負担を伴ったこと

療養看護の寄与分が認められるためには、療養看護が片手間ではなく、かなりの負担を伴うものであったことが必要です。日中は就労し、夜だけ看護をしていたような場合には、療養看護に専従していたとまではいえません。他方で、専業や専念までは求められていないため、週に数回パートをする程度であれば、認められる可能性はあります。

親の介護の寄与分の計算方法

親の介護が寄与分にあたる場合、その寄与分を金額に換算しなければなりません。

療養看護の寄与分を計算する場合、療養看護の日当相当額に看護日数を掛けた上で、裁量割合を掛けて計算するのが一般的です。療養看護の日当額は、介護報酬基準に基づいて算出されます。

療養看護の寄与分額
=日当✕日数✕裁量割合

ただ、介護報酬は、看護や介護の資格を持ち、これを職業として従事する人に支払われる金額ですから、療養看護を行う親族に向けた報酬額とは異なります。そのため、介護報酬相当額をそのまま寄与分とすることはなく、さまざまな事情を勘案した裁量割合を掛けるのが通常です。裁量割合としては、0.5から0.8とされており、0.7が平均的な数値と言われています。

親の介護に対して多くの遺産を受け取るためには

介護に対して多くの遺産を受け取るためには、事前の準備が必要となります。これまで解説したように、何らの事前準備をすることなく相続が開始されてしまうと、寄与分にかかる主張立証を一生懸命にしなければなりません。

親の介護に対して多くの遺産を受け取るためには事前の準備が必要不可欠です。

具体的には、負担付死因贈与、遺言書の作成、生前贈与、生命保険などを活用する方法です。

以下では、具体的な方法について詳しく解説します。

生命保険を利用する

介護を行った相続人を受取人とする生命保険を活用することで、介護を担った相続人が多くの財産を多く受け取れる仕組みを作ることができます。

具体的には、親が生命保険契約を結び、介護を行った子どもを受取人として指定します。これにより、親が亡くなった際に保険金を介護を行った相続人が受け取ることが可能となります。

その上、生命保険金は受取人固有の財産となり、遺産ではなくなるため、特別受益として遺産分割で考慮されることも原則ありません。ただし、あまりにも高額な保険金を受け取ると、例外的に特別受益として考慮されるため、保険金額の設定には注意を払いましょう。弁護士の助言を受けながら適切に手続きを進めましょう。

負担付死因贈与契約を結ぶ

負担付贈与とは、贈与を受ける人が一定の給付をする義務を負う贈与です。つまり、贈与する人は財産を贈与し、贈与を受ける人は、介護などの負担を引き受けます。

また、死因贈与とは、贈与者が死亡することで、贈与の効力が発生する贈与契約をいいます。

親の介護などの負担を担う受贈者が、定められた負担を約束通りに行わない場合には、負担付死因贈与契約を取り消すことができます。そのため、贈与者側からすると、親の介護の見返りとして財産を贈与することで、確実に介護を受けることができます。他方で、贈与を受ける側からすれば、親の介護をすることでその対価となる財産をもらうことができるメリットがあります。

贈与や負担の内容を明確にするために、契約書または公正証書を必ず作成するようにしましょう。

遺言書を作成してもらう

親が介護を行った相続人に対して、多くの遺産を承継させる遺言書を作成する方法です。

遺言書を作成することで、一部の相続人に対して法定相続分よりも多くの財産を取得させることができますし、相続人間で遺産分割の話し合いをする必要がなくなります。

遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言がありますが、できれば公正証書遺言を作成するようにしましょう。なぜなら、自筆証書遺言だと、要式違反などを理由に無効となるリスクがありますし、紛失したり、相続人が発見できないリスクがあります。他方で、公正証書遺言は、公証人によって作成されるため無効となるリスクはかなり低いですし、公証役場が遺言の原本を預かるため紛失や偽造のリスクはないからです。

ただ、遺言を作成したとしても、他の相続人の遺留分は補償されます。つまり、遺留分を侵害する遺言を作成した場合、遺留分の侵害額の限りで、他の相続人に対して金銭を支払う必要があります。そのため、遺言を作成する場合には、遺留分対策にも配慮しておくべきでしょう。

生前贈与してもらう

生前贈与とは、親が生きているうちに子どもに対して財産を贈与することです。相続開始に先立って財産を受け取ることができます。

しかし、遺産分割をする際に、生前贈与は特別受益として考慮されますし、贈与税の税負担を負わなければなりません。

暦年(1月1日~12月31日)の贈与が110万円以下であれば贈与税は非課税となりますが、これを超えれば贈与税が発生するため、生前贈与をする場合には注意しましょう。

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親の介護で寄与分を認めてもらう方法

遺産分割協議において、他の相続人が親の介護を評価して、寄与分を認めてくれる場合には問題はややかしくありません。しかし、親の介護を担っていない他の兄弟が寄与分を認めようとしない場合には、家庭裁判所の手続きを通じてその貢献を主張立証する必要があります。

以下では、具体的な方法について詳しく解説します。

相続人全員に寄与分を認めてもらう

寄与分を認めてもらうためには、相続人全員が親の介護を担った相続人の貢献を理解し認めた上で、これを踏まえた遺産分割の合意をすることが必要です。

全員の同意が得られる場合には、相続手続きがスムーズに進み、紛争の激化を防ぐことができます。

全員の同意ができた場合には、寄与分の内容や金額を明記した遺産分割協議書を必ず作成しましょう。遺産分割協議書を作成しなければ、寄与分の合意をしたかが不明瞭となるだけでなく、その後の相続手続も進めることができません。

遺産分割調停と寄与分を定める処分調停を申し立てる

相続人間で寄与分に関する合意が得られない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。遺産分割調停の申し立てと同時に寄与分の調停申立てをすることもあります。または、遺産分割の調停手続の中で寄与分の話し合いを行い、寄与分の話し合いが進展しない場合には、将来の審判移行も見据えて、遺産分割調停申立後に寄与分の調停申立てをすることもあります。

調停では、家庭裁判所の調停委員が間に入り、相続人間での遺産分割の話し合いを調整します。この過程で、介護の貢献を考慮した遺産分割の方法が模索されます。

話し合いの結果、相続人間で合意ができれば調停は成立します。調停に基づき相続手続きが行われます。

審判手続で解決させる

調停で解決できない場合、家庭裁判所での審判手続に移行します。

審判手続きは、裁判所が当事者の主張と証拠に基づき事実関係を審査し、法的な判断を下すプロセスです。

寄与分については、介護の実態や貢献度に関する証拠を提出し、裁判所の判断を仰ぎます。裁判所は、提出された主張や証拠を総合的に判断し、寄与分の認定を行います。

審判手続きでは、裁判官が終局的な判断を示すことで紛争を解決させる手続ですので、調停のように当事者間の話し合いの要素は薄いといえます。

つまり、審判手続きは一刀両断的な解決となるため、相続の実態に沿わない内容となることもあります。できれば、遺産分割協議や調停により解決を図ることが望ましいといえます。

親の介護と寄与分の問題は難波みなみ法律事務所に

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親の介護を1人の相続人が担っている場合、相続の場面では相続人間の不和を招きます。つまり、相続の場面では親の介護が法定相続分に直接反映されないため、相続人の対立の原因となることがあります。

多くの遺産を受け取るためには、寄与分の主張をすることが挙げられますが、寄与分の認定は簡単ではありません。そこで、生命保険、遺言書の作成、生前贈与、負担付死因贈与などの手段を活用することが有効です。これらを適切に活用することで、介護の貢献を相続に反映させることが可能となります。

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