コラム
公開日: 2026.01.23

賃料値上げに上限はあるのか?賃料増額の正当な理由や流れを弁護士が解説

, , , 不動産問題, 賃料増額の交渉ステップを解説します, 賃料増額の上限 値上げの理由と手続,

長期間にわたって賃料を据え置きしている場合、相場賃料と比べて現行賃料が不相当になったり、固定資産税等が高騰して現行賃料では採算が合わなくなることで、賃料の値上げに踏み切ることがあります。

しかし、賃料の値上げを求めるにしても、いくらまで求めることができるのか判断に迷うことがあります。ただ、結論を先に述べますと、法律上、値上げを求める賃料額の上限は規制されていません。

この記事では、賃料の値上げに上限はあるのか、どのような場合に賃料増額が認められるのか、弁護士が値上げの正当な理由や交渉の流れを解説します。

初回相談30分無料

無料相談
ご予約はこちら

【電話相談受付中】

受付時間 9:00〜22:00

【来所不要・土日祝も対応】

電話・LINE・ウェブでの相談可能です
1人で悩まずに弁護士に相談ください

賃料の値上げに法律上の上限はない

賃料値上げには法律上の具体的な上限は定められていませんが、貸主が一方的に無制限に増額することはできません。

以下では賃料増額の基本について解説します。

賃料増減請求権を定めた「借地借家法」とは

賃料の増減に関する規定の根拠となっているのが「借地借家法」であり、借地借家法第32条には「賃料増減請求権」が定められています。これは、賃貸借契約で定めた賃料が、その後の社会経済情勢の変化などにより、実情に合わなくなった場合に、貸主・借主の双方が、将来に向かってその賃料の増額または減額を請求できる権利です。

賃料増減請求権を行使するための法律上の主な要件は、以下の経済事情の変動が挙げられます。

  • 土地や建物に対する税金(固定資産税など)や、管理費などの維持コストの増減
  • 土地や建物の価格の上昇・低下
  • 近隣の類似物件の賃料相場との乖離

これらの事情を総合的に判断し、現在の賃料が客観的に見て不相当と認められる場合に、賃料の増減請求が認められます。

賃料の値上げには借主の合意または裁判所の手続きが不可欠

賃料の値上げを有効にするには、原則として、以下のいずれかの方法が必要となります。まず、貸主と借主が話し合い、双方の合意に基づいて賃料の増額に合意する方法です。借主が賃料の値上げに合意しない場合には、裁判所の手続きを通じて賃料の値上げを確定させることになります。具体的には、簡易裁判所に「民事調停」を申し立て、それでも解決に至らない場合は「訴訟」を提起して、裁判所が最終的な判断を示します。

借主は、賃料の値上げに納得できない場合でも、賃料の支払いを拒否することはできず、借主は「自らが相当と考える額の賃料」(通常は値上げ前の賃料)を支払い続ける必要があります。貸主がこの受け取りを拒否する場合、借主は法務局にその賃料を供託することになります。

「不増額特約」がある場合は要注意

賃貸借契約における「不増額特約」は、契約で定めた期間中は賃料を上げないという取り決めです。借地借家法に関連し、当事者間の合意に基づくため原則として有効とされています。

そのため、賃貸借契約書に明記されていれば、貸主は不増額特約を理由に一方的な賃料値上げを請求できません。

しかし、この特約が無効となるケースもあります。特約期間が長期に及び、契約時に予測できなかった著しい経済変化が生じた場合は、「事情変更の原則」により特約の拘束力が否定される可能性があります。

賃料の値上げを検討する際は、まず契約書に不増額特約の記載がないか、詳細に確認することが重要です。

初回相談30分無料

無料相談
ご予約はこちら

【電話相談受付中】

受付時間 9:00〜22:00

【来所不要・土日祝も対応】

電話・LINE・ウェブでの相談可能です
1人で悩まずに弁護士に相談ください

賃料の値上げが認められる事情とは

賃料値上げには現行賃料が不相当となる事情が必要で、貸主の一方的な都合では認められません。以下では、賃料増額が認められるために必要となる事情の変動を解説します。

周辺物件の家賃相場との乖離

賃料の値上げが認められるためには、周辺にある同等レベルの物件の家賃相場と比較して、現在の賃料が著しく低い場合です。長期間にわたって賃料が据え置かれている物件では、周辺相場との乖離が顕著になるケースも珍しくありません。

賃料相場との乖離が大きくなった場合、借地借家法第32条1項で賃料増減の判断要素として挙げられている「近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったとき」という要件に該当します。

ただ、「〇〇円乖離していれば必ず認められる」といった明確な基準は法律上定められていません。また、借地借家法で列記された事情も例示列挙となるため、相場賃料との乖離以外の事情も考慮して現行賃料が不相当であるかを判断することになります。

固定資産税や管理費など維持コストの増加

賃料増額請求が認められるための理由として、不動産の租税その他の負担の増加が定められています。この負担の増減とは減価償却費、維持修繕費、固定資産税等の公租公課、保険料などの必要諸経費の増減を意味しています。

そもそも、賃料は、土地や建物の使用の対価に加えて必要諸経費で構成されています。そのため、賃料の構成要素である必要諸経費の負担が増加すると純賃料の金額が小さくなってしまい、現行賃料を維持することが不相当になります。

このような経費負担の増加は、客観的な根拠として賃料値上げの必要性を裏付ける材料となります。

経済事情の変動(物価や地価の上昇)

借地借家法第32条1項は、賃料増減請求権の根拠の一つとして「土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動」を挙げています。 

上述したように賃料は、土地建物の使用対価(純賃料)を含むため、土地建物の価格が上昇すれば、それに伴って賃料を増額させる必要があります。その他に消費者物価指数、通貨供給量、労働賃金指数などの指標が変動した場合にも、現行賃料を維持しておくことが不適切となるため、賃料増額の理由となります。

貸主側の個人的な事情

賃料の値上げは、貸主側の個人的・主観的な都合では認められません。例えば、関係性の悪い借主に嫌がらせをしたい、収益を増やしたいといった事情だけで賃料増額を請求しても、それは認められません。

ただし、賃料が当事者の個人的な関係性や事情を根拠に低額に定めており、その賃料額の基礎となっている事情が無くなった場合には、賃料増額の理由になると回されています。

トラブル回避のための賃料値上げ交渉4ステップ

以下の項目では、賃料の値上げを実現するための交渉プロセスを4つのステップで解説します。

ステップ1:賃料値上げの客観的な根拠をまとめる

賃料の値上げ交渉を成功させるには、感情的な主張ではなく、客観的なデータに基づいた根拠を示すことが重要です。貸主はまず、周辺の賃料相場を詳細に調査し、現在の賃料が市場相場から乖離しているかを確認します。

また、土地や建物の時価が賃料を合意した時点と比較して値上がりしている場合には、時価額の高騰を裏付ける資料、例えば、路線価や固定資産税評価証明書などを準備することが必要です。

ステップ2:賃料値上げの通知書を作成・送付する

賃料の値上げ交渉では、「言った、言わない」といった不必要なトラブルを避けるため、書面での通知が不可欠です。口頭での伝達だけでは証拠が残らず、事後的に紛争へと発展するリスクがあります。

賃料増額の通知書を作成する際には、以下の項目を漏れなく記載しましょう。

  • 賃貸借契約の内容
  • 現行賃料が不相当になった理由
  • 値上げする賃料額
  • 賃料値上げをする時期
  • 回答期限

この通知書の送付方法として最も確実なのは、配達証明付き内容証明郵便の利用です。内容証明郵便は、郵便局が「いつ」「どのような内容の郵便を」「誰から誰へ送ったか」を公的に証明するサービスであり、後日の裁判で証拠として活用できます。

ステップ3:借主と協議を試みる

賃料増額の通知書を送付した後は、電話や対面で借主と直接話し合いの機会を設けることが重要です。借主との話し合いの場で意識すべき主な点は次の通りです。 

まずは、客観的な理由に基づいた説明を心がけることです。周辺相場データや固定資産税の資料など、具体的な数値や資料を示しながら、賃料増額の必要性を説明します。次に、冷静かつ丁寧な態度が必要です。交渉中は感情的にならず、常に冷静さを保ち、丁寧な態度を心がけましょう。高圧的な態度や一方的な主張は避け、借主の言い分にも真摯に耳を傾けることが不可欠です。

ステップ4:合意書面を作成する

賃料の値上げ交渉が合意に至った際には、その内容を必ず書面で残すことが極めて重要です。口頭での約束は、「言った、言わない」といったトラブルに発展するリスクが高いため、証拠となる書面を作成することで、将来的な紛争を未然に防げます。

合意書には、以下の項目を具体的に記載してください。

  • 賃貸借契約の内容
  • 改定前の賃料と改定後の賃料(月額)
  • 賃料改定の適用開始日
  • 合意した日付
  • 貸主と借主の氏名または名称、住所、署名・捺印

作成した合意書は、元の賃貸借契約書と併せて大切に保管してください。これにより、賃貸借契約の内容が明確になり、安心して賃貸経営を継続できます。

初回相談30分無料

無料相談
ご予約はこちら

【電話相談受付中】

受付時間 9:00〜22:00

【来所不要・土日祝も対応】

電話・LINE・ウェブでの相談可能です
1人で悩まずに弁護士に相談ください

賃料値上げを拒否された時の対処法

賃料の値上げ交渉は、貸主が客観的な根拠に基づき、丁寧に交渉を進めたとしても、借主から拒否されるケースが少なくありません。

以下の項目では、賃料の値上げを拒否された際によく発生する具体的なトラブル事例と、その対処法を段階的に解説します。

値上げに合意してもらえない場合

賃料の値上げに借主が合意しないまま、従来の賃料が支払い続けられることは、珍しいことではありません。借地借家法第32条2項では、賃料増額の協議が整わない場合、借主は「相当と認める額の賃料」(通常は値上げ前の賃料)を支払えばよいと定められているため、賃料の値上げを拒否したとしても、一方的に契約の解除を求めることはできません。

この場合には、後述する賃料増額請求の調停申立てを行ったり、調停前に代理人弁護士を選任した上で代理人を通して再協議を試みることになります。

通知を無視・連絡が取れない場合

賃料値上げの通知書を送付したにもかかわらず、借主から返答がなく、電話やメールにも応じてもらえないケースは少なくありません。

もし通知が届いているにもかかわらず連絡が取れない場合は、再度内容証明郵便で返答するように求めることがあります。最終的にそれでも応答がない場合は、民事調停や訴訟といった法的手段へと進むことを検討せざるを得ません。

賃料増額の民事調停を検討する

賃料の値上げ交渉が決裂した場合や応答を得られない場合、「民事調停」という手続きが有効な選択肢となります。 

調停手続は、裁判官と調停委員が間に入り、当事者間の話し合いをサポートしながら解決を図る制度です。借地借家法に基づく賃料増額に関する紛争では、原則として訴訟の前に調停を経る「調停前置主義」が採用されており、交渉が決裂した際の重要なステップとなります。

民事調停は、訴訟に比べて費用が安く、手続きが比較的簡易であり、非公開で行われる点が大きなメリットです。手続きの流れとしては、申立て後、1か月から2か月に1回程度の頻度で調停期日が開かれ、当事者は裁判所に出頭して話し合いを進めます。調停が成立する見込みがないと判断された場合は不成立として終了します。

しかし、もし合意に至れば、その内容が「調停調書」として作成されます。この調停調書は、裁判上の和解と同一の法的効力を持つため、合意内容が確実に守られることになります。

賃料増額の訴訟手続

民事調停が不成立となった場合、最終的な法的手段として「賃料増額請求訴訟」に進むことになります。

訴訟手続では、貸主が訴状を提出し、双方の主張と立証が繰り返され、最終的に裁判所が判決を下します。このプロセスは調停手続きと比べて複雑であり、解決までに半年から1年以上かかることも珍しくありません。

訴訟には経済的な負担も伴います。裁判所に納める印紙代に加え、弁護士に依頼する場合は着手金や報酬金が発生します。これに実費や、裁判所が選任する不動産鑑定士の鑑定費用が加わるため、負担するべき費用は高額になりがちです。

また、訴訟にはリスクも存在します。必ずしも希望通りの値上げが認められるとは限らず、裁判所の判断によっては期待を下回る結果となることもあります。また、訴訟を通じて借主との関係が決定的に悪化し、修復不可能になる可能性も高いでしょう。長期的な賃貸経営を考慮すると、訴訟は慎重に検討すべき最終手段と言えます。

まとめ:安定した賃貸経営には入居者との良好な関係構築が鍵

親身に対応します お一人で悩まずにお気軽に相談ください。 初回相談30分無料 不動産問題ならお任せください。

賃料の値上げに法的な上限はないものの、正当な理由や借主の合意、または裁判所の手続きが不可欠であることを、本記事で詳しく解説しました。

賃料値上げを円滑に進めるためには、法的な正当性を備えるだけでなく、借主の理解と協力を得るための丁寧なコミュニケーションが不可欠です。感情的にならず、客観的なデータに基づいて論理的に説明し、段階的な値上げや設備交換といった入居者側のメリットも提案することで、円満な解決へと導きやすくなります。 

関連記事

「離婚」カテゴリーのピックアップコラム

「遺言・相続」カテゴリーのピックアップコラム

「労働問題」カテゴリーのピックアップコラム

「顧問契約」カテゴリーのピックアップコラム

「債務整理」カテゴリーのピックアップコラム

「不動産」カテゴリーのピックアップコラム

よく読まれている記事

PAGE TOP