コラム
公開日: 2025.03.06

遺言書があっても遺産分割協議は可能?遺産分割をするための要件を解説|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

遺言書があれば、相続人間の話し合いをすることなく、相続人や受遺者は遺産を受け取ることができます。

しかし、遺言書があっても相続人全員の同意があれば異なる方法で遺産を分割できるのではないかと疑問に思う方もいるでしょう。遺言書の内容に不満を感じたり、家族間で話し合いを重ねた結果、別の分割方法が望ましいと考えたりすることもあるかもしれません。

そこで、この記事では、遺言書がある場合でも相続人全員の同意による遺産分割協議が可能かどうかについて、弁護士の解説を交えて詳しく説明します。

この記事を読むことで、遺言書と遺産分割協議の関係について理解を深め、何が最適な選択であるかが見えてくることでしょう。

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遺言書がある場合の相続の基本

遺言書がある場合の相続手続は、原則として遺言書の内容に従って行われます。

遺言書に記載された内容は、法律で定められた一定の要件を満たしている限り、相続人を拘束する効力を持ち、遺産分割協議を経ることなく遺産が相続人などに承継されることになります。

遺言書の法的な意味

遺言書は、故人(被相続人)の財産を誰にどの程度承継させるかを表明する文書です。遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言がありますが、秘密証書遺言はあまり利用されていません。

民法上、遺言は遺言者の死亡と同時に効力を生じ、相続人はその内容に拘束されます。つまり、遺言があれば、相続人間で遺産分けの話し合い(遺産分割協議)をする必要がなく、遺言の内容に沿って遺産分けが行われます。

しかし、遺言書の存在が絶対的なものではありません。遺言の内容が相続人の遺留分を侵害している場合には、相続人の遺留分は遺言に優先します。つまり、遺言があったとしても、相続人は他の相続人や受遺者に対して、遺留分侵害額の支払いを求めることが認められます。

遺言書に基づく相続の流れ

遺言書に基づく相続の流れは、通常、遺言書の内容に従って進められます。

被相続人の死亡後、遺言書の存在が確認されると、自筆証書遺言であればまず家庭裁判所で検認手続きが行われます。この手続きは、遺言書の形式や内容を確認するためのものです。検認後、遺言執行者が指定されている場合は、その者が遺言の内容を実行していきます。遺言執行者が指定されていない場合は、遺言執行者選任の申立てを行うことになります。

公正証書遺言であれば、検認の手続きは要しません。遺言執行者が指定されていれば、その遺言執行者によって遺言の内容が実現されます。遺言執行を通じて、不動産の名義変更や預金の払い戻しなどの相続手続きが行われます。

遺言執行では、原則として遺言者の意思が尊重されるため、遺言書に記載された財産の分配方法に従って、各相続人や受遺者に財産が引き渡されます。

遺言書に基づく相続の流れは、通常このように進行しますが、後述するように相続人全員の同意があれば、遺言書の内容とは異なる遺産分割協議を行うことも可能です。

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相続人全員の同意による遺産分割協議

遺言書が存在する場合でも、相続人全員の同意があれば、遺産分割協議により遺産分けを行うことができる可能性があります。

ただし、相続人全員の同意を得ることが前提となるため、一人でも反対する相続人がいれば実現することができません。また、遺言執行者が選任されている場合は、その同意も必要となります。さらに、相続人以外の受遺者がいる場合や、遺言書で遺産分割協議が明確に禁止されている場合は、この方法を採用することができません。

原則:遺言があれば遺産分割協議はできない

遺言書が存在する場合、原則として遺産分割協議を行うことはできません。

遺言書は被相続人の最終的な意思を表すものであり、相続人は遺言書に拘束されます。

相続人全員の同意があれば遺産分割協議ができる

遺言書が存在する場合でも、相続人全員の同意があれば遺産分割協議を行うことが可能です。

これまで説明したとおり、遺言書があれば、その遺言のとおり相続手続きが進められますが、相続人全員が合意すれば、遺言の内容とは異なる形で遺産分割することができます。

ただし、相続人全員の同意が不可欠であり、一人でも反対する人がいれば遺産分割をすることはできません。

遺言執行者の同意を得ておく

遺言執行者が選任されている場合、相続人全員の同意による遺産分割協議を行うためには、遺言執行者の同意を得ておくべきです。

遺言執行者は遺言内容を実現する法律上の義務を負っており、相続人が遺言執行者の遺言執行を妨げることはできないとされています。そのため、遺言書と異なる遺産分割を行う際には、遺言執行者の了解が必要となります。

したがって、相続人全員の同意による遺産分割協議を行う際には、遺言執行者の同意を得ておくことが望ましいと言えます。

相続人全員の同意があっても遺産分割協議ができないケース

遺言書があっても相続人全員の同意により遺産分割協議を行うことが可能ですが、一部のケースではそれが認められないことがあります。

例えば、相続人ではない受遺者が存在し、受遺者が同意しない場合は遺産分割協議を進めることができません。また、遺言書の中で明確に遺産分割協議を禁止する旨が記載されている場合も、相続人全員の同意があったとしても遺産分割協議を行うことはできません。

相続人ではない受遺者が同意してくれない

相続人ではない受遺者が同意しない場合は、相続人全員の同意があっても遺産分割協議ができない可能性があります。

受遺者とは、遺言によって財産を受け取る権利を与えられた人のことです。例えば、相続人ではない孫や兄弟、内縁の妻などです。

この場合、受遺者は遺言に基づいて財産を取得する権利を持っているため、相続人全員の同意だけでは遺産分割協議を進めることができません。受遺者の権利は法的に保護されており、その同意なしに遺言の内容を変更することはできないからです。

受遺者が同意しない理由としては、遺言者の意思を尊重したい、自身の利益を守りたいなどが考えられます。

このような状況では、受遺者との交渉や話し合いが必要になります。場合によっては、受遺者の利益を考慮した新たな分割案を提示するなど、柔軟な対応が求められるでしょう。もし受遺者との合意が得られない場合、遺言の内容に従って相続を進めるか、または、遺言の無効を主張するなどの法的手段を検討する必要があるかもしれません。

遺言書で遺産分割協議が禁止されている

遺言書で遺産分割協議が明確に禁止されている場合、相続人全員の同意があっても遺産分割協議を行うことができません。

遺言者が遺言書に「遺産分割協議を禁止する」旨を明記していれば、その意思を尊重する必要があります。このような場合、遺言の内容に従って相続を進めることが原則となります。

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遺言書がある場合の遺産分割協議のメリットとデメリット

遺言書がある場合でも、相続人全員の同意により遺産分割協議をすることにはメリットとデメリットがあります。

メリット:相続人間の関係性を維持する

遺言書に基づく相続を行わず、相続人全員の同意による遺産分割協議を選択することで、相続人間の関係性を良好に保ち、公平性を維持できる可能性が高まります。

遺言書の内容が一部の相続人に偏っている場合、それに従うと相続人間に不和が生じる恐れがあります。しかし、全員で話し合いを行うことで、各自の事情や希望を考慮しながら、より公平で納得のいく分割方法を見出せる可能性があります。

このように、相続人全員の同意による遺産分割協議は、単に財産の分配だけでなく、親族間の関係性を維持し、将来にわたって良好な関係を築く機会となり得るのです。

メリット:遺留分の侵害状態を解消できる可能性

遺言書が遺留分を侵害している場合、相続人全員の同意による遺産分割協議は有効な解決策となり得ます。この方法により、遺留分を侵害されていた相続人の権利を回復し、より公平な財産分配を実現できる可能性があります。

遺留分制度は、一定の相続人の最低限の相続権を保護するものです。遺言の内容が一部の相続人のみに財産を承継させる偏ったものである場合、他の相続人の遺留分を侵害することがあります。しかし、相続人全員が合意して新たな遺産分割協議を行うことで、遺留分の侵害状態を解消し、法的な紛争を回避することができます。

遺産分割協議によって、遺留分を侵害されていた相続人は、本来受け取るべき財産を取得できる機会を得られます。同時に、他の相続人も、遺留分侵害額請求訴訟などの法的手続きを避けられるメリットがあります。

メリット:柔軟な財産分配の可能性

相続人全員の同意による遺産分割協議をすることで柔軟に財産を分配することできるというメリットがあります。

例えば、遺言の内容が相続人間で不動産を共有させる内容である場合、遺言執行の後、不動産の共有関係を解消しなければならない事態となる可能性があります。また、不動産を取得したくないのに、不動産を受け取る内容となっているような場合もあります。

このように、遺言の内容が必ずしも相続人側の意向に沿っていないこともあります。その場合には、遺産分割協議を行うことで、それぞれの相続人の意向を踏まえながら財産を分配できる可能性があります。

デメリット:遺言者の意思との乖離

遺言書があっても相続人全員の同意による遺産分割協議を行う場合、デメリットは遺言者の意思との乖離が生じることです。

相続人全員の同意による遺産分割協議では、遺言書の内容と異なる財産分配が行われる可能性があります。これにより、被相続人の意思が尊重されない財産の分配となることもあります。

デメリット:相続人間で遺産分けの話し合いをする必要

相続人全員の同意による遺産分割協議を行う場合、相続人間で遺産の分け方について話し合いを行う必要があります。

これは時間と労力を要する作業であり、場合によっては相続人間の関係性に悪影響を及ぼす可能性があります。

遺産分割協議では、各相続人の意見や要望を聞き、それぞれの事情を考慮しながら合意形成を図る必要があります。この過程で、相続人間の利害関係が対立したり、感情的な衝突が生じたりする可能性があります。特に、遺言書の内容と大きく異なる分割方法を提案する相続人がいる場合、話し合いが難航する可能性が高くなります。

相続人全員の同意を得られない時の対応

相続人全員の同意を得ることが難しい場合、いくつかの対応策が考えられます。

一つの選択肢として、遺言書の無効を主張することが挙げられます。また、遺留分侵害額請求権の行使も考えられます。

いずれの場合も、弁護士のアドバイスやサポートを受けることが重要です。

遺言無効を主張

遺言書があっても相続人は遺言無効を主張することができます。

遺言書が自筆証書遺言であれば、法定の形式的な要件を満たさなければ遺言は無効となります。例えば、自筆証書遺言はその全文、日付及び氏名を自書した上で、印鑑を押さなければなりませんが、これらが一つでも欠けていると、遺言は無効となります。また、遺言の形式的な要件を満たしていても、遺言者に遺言能力がない状態で遺言が作成されている場合にも、遺言は無効となります。例えば、遺言者が重度な認知症やアルツハイマー病に罹患しており、遺言の内容を理解できるだけの判断能力を有していないような場合です。遺言能力が欠けていることは、医学的に説明できることが重要となります。

遺言無効の主張が認められると、遺言書は法的効力を失い、相続人間で遺産分割協議をすることになります。ただし、遺言無効の主張が認められるためには、十分な客観的な証拠が求められます。

遺留分侵害額請求を行使する

遺留分侵害額請求は、遺言書の内容によって自身の遺留分が侵害されたている場合に、遺留分の侵害を受けている相続人が行使できる権利です。

遺留分侵害額請求を行使することで、侵害された遺留分を取り戻すことができ、法定相続分の一定割合を確保することができます。

遺留分侵害額請求を行使する際は、まず遺留分の算定が必要となります。遺留分は被相続人の法定相続分の2分の1と定められています。算定された遺留分額を基に、実際に相続できる財産や受け取った生前贈与との差額を計算し、その差額分を請求することになります。

遺留分侵害額請求権の行使期間は、相続開始と遺留分の侵害を知った時から1年以内、または相続開始から10年以内と定められています。

遺留分請求を行使することにより、遺言書の内容を完全に覆すことはできませんが、法律で保護された最低限の相続分を確保することが可能となります。

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遺言書がある場合でも、相続人全員の同意があれば遺産分割協議による相続が可能となります。

この方法には、相続人間の関係性や公平性を維持できるメリットがある一方で、遺言者の意思と異なる結果になる可能性もあります。遺産分割協議を行う際は、遺言執行者の同意を得ることや、受遺者が相続人でない場合の対応にも注意が必要です。

また、遺言書で遺産分割協議が明確に禁止されている場合は、この方法を取ることができません。相続人全員の同意が得られない場合は、遺言無効の主張や遺留分侵害額請求などの対応策があります。

相続に関する問題は複雑であり、弁護士のアドバイスを受けることで、円滑な相続手続きを進めることができるでしょう。

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