コラム
最終更新日:2024.04.27

遺留分を認めない遺言に拘束力はない!遺言を用いた遺留分対策|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

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遺留分請求を認めない遺言を作成することで、遺留分対策になると考えてしまうかもしれません。

遺留分請求を控えて欲しいという遺言者の気持ちを残すことはできても、相続人を法的に縛ることはできません。

つまり、遺留分を侵害したり、遺留分請求を認めない遺言それ自体は法的に有効ではあっても、相続人が遺留分侵害額請求を行使することは自由です。

遺留分対策のために、遺言を用いることはよくありますが、遺留分請求を禁じる文言だけでは遺留分対策にはなりません。生前から適切な遺留分対策をしておくことが重要です。

本記事では、遺言を認めない遺言の意味と遺留分対策を解説します。

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遺言書とは

遺留分を認めない遺言の効力について解説する前に、「遺言とは何か」という基本的な事項を解説したいと思います。

遺言書の役割

遺言書とは、故人(被相続人)が生前に、自分の死後に相続財産を誰にどれだけ承継するかを示した文書です。遺言書があれば、相続開始後に相続人間で遺産分けの話し合い(遺産分割協議)をすることなく、遺言書の内容に従った遺産分けをすることができます。逆に、遺言書がなければ、法定相続人全員で遺産分割協議をし、協議ができなければ調停や審判といった手続をしなければなりません。

この点で、遺言は、被相続人の意思に沿った相続を実現できるだけでなく、相続人間の負担を軽減できる点で重要な役割を果たします。

遺言書の種類

遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。この中でも、自筆証書遺言と公正証書遺言が実務上よく利用されています。

自筆証書遺言とは、遺言者が遺言の本文全文を自筆で記述する遺言です。他方で、公正証書遺言は、公証役場の公証人が、遺言者の意向を踏まえて作成する遺言です。

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遺留分とは何か

遺留分とは、相続人のため、遺産に対して法律上必ず守られる最低限の取り分です。遺留分は、兄弟姉妹を除く法定相続人に認められています。つまり、配偶者、子、直系尊属が遺留分の権利を持っています。

遺留分の割合は、法定相続分の2分の1とされています。ただ、相続人が親などの直系尊属の場合には、3分の1とされています。遺留分は、遺言や生前贈与によって侵害することができない法律上の権利です。

遺留分の目的

遺留分は、被相続人の死後、相続人の生活を保障するために認められたものです。

仮に、最低限保障される遺留分が存在しなければ、遺言さえ作成しておけば、特定の相続人に遺産を一切承継させないことが可能となります。しかし、このような事態は、相続人間の不公平を生むだけでなく、相続人の生活の不安を招きます。

遺留分を認めない遺言の効力

たとえ遺言で遺留分の請求を認めない文言があっても、相続人はこれに拘束されません。つまり、たとえ遺留分を否定する文言があっても、遺言による遺留分の侵害があれば、相続人は遺留分侵害額請求を行使することが認められています。

なぜなら、遺留分とは、遺言によっても侵害されない最低限保障された相続人の相続権です。つまり、遺留分は遺言に優先する権利であるからです。

そのため、遺言書で、遺留分の請求を制限するような規定や遺留分を否定するような規定を設けても、その規定は法的な意味を持たないものになります。

遺留分を侵害する遺言は無効になるのか?

遺留分を侵害する遺言であっても、遺言自体が無効になるわけではありません。

遺言によって、遺言者自身の財産をどのように処分するかは、遺言者の自由です。しかし、遺言の効力を遺留分よりも優先させてしまうと、遺留分制度を認めた意味がなくなってしまいます。

そこで、遺言により遺留分を侵害すると、相続人は、遺留分侵害請求をすることはできます。その限りで、遺言は遺留分に劣後することになりますが、遺言全体を無効にする必要まではありません。つまり、遺留分を侵害する遺言も有効となります。

ただ、遺留分請求をするか否かは、相続人の自由です。遺留分の侵害を知ってから1年以内に遺留分の請求をしなければ、遺留分請求はできなくなります。この場合には、遺言の内容の通りに遺産相続されることになります。

遺留分請求の制限は付言事項になる

付言事項とは、法的な拘束力はないものの、遺言者の最終的な気持ちを表明するものです。例えば、遺言書を作成した経緯やきょうだい仲良く過ごして欲しいなどの希望を記載するものです。

遺言者の作成においては、法的な効果は持たないものの死後の紛争を予防したい思いから、付言事項を残すことがよくあります。

遺言書内の遺留分請求の行使を認めない文言は、この付言事項になるだけであって、法的な効果はありません。

遺留分を持たない相続人の相続対策にはなる

子供や親がいないケースでは兄弟姉妹も相続人となります。遺言書がなければ、兄弟姉妹は法定相続分として合計4分の1の権利を持っています。

ただ、兄弟姉妹には、遺留分を持ちません。兄弟姉妹が先に死亡している場合、その子ども(甥・姪)も代襲相続人となりますが、同じように遺留分を有しません。

そのため、兄弟姉妹に遺産を一切相続させない遺言書を作成した場合、兄弟姉妹は遺留分請求を行使することができないため、被相続人の意思通りの相続を実現させることができます。

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遺留分対策のためにするべきこと

遺留分対策のため、遺言で遺留分請求を認めない規定は法的な効果はありません。ただ、遺留分対策のためにできることはいくつかあります。

遺留分放棄をしてもらう

被相続人の生前に、相続人自身が家庭裁判所に対して、遺留分放棄をする手続きを行うことで遺留分対策となります。ただ、遺留分の放棄は、遺留分を放棄する相続人自らが、家庭裁判所に対して申立てをしなければなりません。このように、遺留分放棄はその相続人にとって不利益となるため、相続人が遺留分放棄に見合うメリットを享受できない限り、なかなか遺留分の放棄に応じることはありません。

他の相続人にも遺産を渡す遺言を作成する

他の相続人が遺留分請求することを控えるようにするため、遺留分に相当する金額あるいは遺留分を若干下回る金額を遺贈する遺言書を作成することが考えられます。

他の相続人に対して、一切の財産を残さない遺言書は、相続人に不公平感を強く生じさせるため、遺留分請求を行使する方向に働きます。

他方で、法定相続分には達しないにしても、他の相続人にも幾分かの遺産を残す遺言の内容にしておくことで、遺留分請求に対する意欲を下げることを期待できます。

他の相続人に対して生前贈与をしておく

生前、被相続人から他の相続人に対して遺留分に相当するような資産を生前贈与することが遺留分対策な一つとなります。

遺留分の権利者が生前贈与を受けていると、その限度で遺留分の侵害額を小さくすることができます。特に、権利者側の生前贈与には、義務者側にあるような期間制限もありません。

そこで、生前贈与をすることで遺留分請求を予防することを期待できます。ただ、生前贈与をしたことが客観的に分かるようにするため、贈与契約書や合意書などの書類を作成しておくことが非常に重要です。

生命保険を活用する

生命保険を活用することで、遺留分対策となります。

生命保険金は受取人固有の財産となりますので、遺留分の対象から外れます。そのため、遺産の一つである預貯金を保険料に充てることで、受け取れる資産の金額を変えることなく遺産総額を減らすことができます。

ただ、生命保険金が遺産総額に比較して高額になり過ぎると遺留分の対象となるため、注意が必要です。

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遺留分の請求は完全に防ぐことは困難です。

ただ、遺留分請求を控えるようにするための対策は行うことができます。遺留分の対策は、相続の開始後に行うことは非常に難しく、生前から綿密な計画の下で実施することが大切です。

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