コラム
公開日: 2025.01.28

離婚時に持ち家に妻が済む場合の注意点を弁護士が徹底解説|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

離婚時に「持ち家に妻が住む」選択をされる方は少なくありません。

しかし、住宅ローンや自宅名義の問題、財産分与の取り決めなど、考慮すべき重要ポイントは多岐にわたります。安易に決定すると、後から思わぬ問題が露見することもありますので、正しい知識を得て、より有利な結論を導けるよう準備することが大切です。

本記事では、離婚に際して妻が持ち家に住む際の注意点を、ローンや名義変更、財産分与などの多角的な視点から弁護士が詳しく解説いたします。

初回相談30分無料

無料相談
ご予約はこちら

【電話相談受付中】

受付時間 9:00〜22:00

【来所不要・土日祝も対応】

電話・LINE・ウェブでの相談可能です
1人で悩まずに弁護士に相談ください

離婚後に妻が住宅ローン付自宅に住み続けるためには

離婚後に、妻が引き続き住宅ローン付きの自宅に住むためには、複数の手段が考えられます。ここでは、それぞれの選択肢の概要やメリット・デメリットを整理して解説します。

まずは、主な方法を下表にまとめました。ご自身の経済事情や、夫との話し合いの結果を踏まえて、最善の方法を検討してください。

方法メリットデメリット
名義変更+ローン引継ぎ法的関係が明確になる金融機関の承認が必要で実現困難
ローン借り換え契約違反リスクの回避が可能妻の収入面で審査が厳しくなる
賃貸方式(夫名義のまま)金融機関の審査を必要としない契約違反リスク、夫との継続的関係が必要、滞納リスク
夫の支払継続妻の経済的負担が大きく軽減夫の支払い不履行リスクが残る
一括返済将来的なリスクから解放多額の資金が必要

妻が住宅ローンを借りて名義変更をする

妻自身が住宅ローンを新規で借りることで、自宅に関係する法律関係を明確にすることができます。

自宅の所有権を夫名義から妻名義へ変更し、妻が新たに住宅ローンを借り入れて、妻がこれを返済する方法です。メリットとしては離婚後の家の権利関係がはっきりし、離婚後に夫と住宅ローンに関連するやり取りを続けなくても良くなることが挙げられます。

一方で、妻が金融機関の審査を受けなければならないため、妻の収入や信用状況によっては借り入れができない可能性もある点に注意が必要ですし、離婚後に住宅ローンの返済をする経済的な負担も必要となるため、離婚後の家計収支をシミュレーションすることが必要です。

夫から妻に住宅ローンの債務引受をする

夫が組んでいる住宅ローンを、妻が引き継いだ上で、夫の債務を免除する方式です。これを法律用語で免責的債務引受と呼ばれています。

メリットとしては、新たに住宅ローンの借り入れをせずに済む点や離婚後に元夫と住宅ローンに関するやり取りをする必要がなくなる点にありますが、住宅ローンの承継には金融機関の承諾が必要です。その上で、夫婦間の債務承継には、厳格な審査を経なければならないため、簡単なプロセスではありません。

住宅ローンの名義を変えずに妻が夫に家賃を支払う

自宅名義と住宅ローンの名義は夫のままにしておき、妻が夫に家賃相当額を支払う形を取る方法です。

住宅ローンの返済は夫が続け、妻は夫との間で賃貸借契約を結んで離婚後も自宅に住み続けます。アパートなどを借りるより住環境は変わりませんが、夫とのコミュニケーションを続ける必要があるだけでなく、夫の住宅ローンの支払い遅延のリスクが発生します。また、金融機関の規約によっては、債務者本人が居住しない場合に銀行から住宅ローンの一括返済を求められる可能性があります。契約違反に該当するリスクがないか、必ず事前に確認しておきましょう。

自宅の名義変更だけをして住宅ローン額を夫に支払う

家の名義を妻に変更する一方、住宅ローンの名義を変更せずに夫が住宅ローンを返済する方式です。

しかし、先ほどと同様に、自宅の所有権を妻に移転させながら、自宅を退去した夫が住宅ローンを支払い続ける場合、金融機関との契約に違反するリスクがあります。また、夫が住宅ローンの支払いを怠るおそれがあります。住宅ローンの支払いを怠ると、自宅が競売により売却されることになります。そうなると、妻はたとえ自宅の所有権を持っていたとしても、自宅からの退去を強いられてしまいます。

夫が離婚後も住宅ローンを支払って無償で居住する

離婚後も夫が「ローンを支払い続ける代わりに妻が無償で住む」ことを合意で決める場合です。

妻にとっては、住居費の負担を避けられるため、大変魅力的な選択肢ですが、夫が途中で支払いを滞らせるリスクが拭えません。夫が再婚や経済的に困窮した場合、支払いが難しくなるケースは珍しくありません。仮に、公正証書や調停などで取り決めをしたとしても、夫による住宅ローンの支払いを完全に確保する手段には限界があります。

妻が住宅ローンを一括返済して名義変更する

妻が貯蓄や資産の取り崩したり、あるいは実家の援助などで夫名義の住宅ローンを完済し、自宅の所有権を妻に変更する方法です。通常、住宅ローンの残高で夫婦間で売買契約を締結する方法がよく採用されます。

将来起こりうるローントラブルから解放されるメリットがあります。しかし多額の資金が必要となるため、実現できるかどうかは妻の経済事情次第です。夫からの財産分与や慰謝料と併せて、資金計画を入念に立てる必要があります。

LINEで法律相談 こちらから友達追加
クレジットカード利用可

名義変更せずに妻が住宅ローン付自宅に住み続ける時の注意点

どうしても住宅ローンの名義変更ができない場合、現実的な対応策として、名義を夫のままにしておく選択があります。

しかし、この方法には複数のリスクがあり、後から取り返しのつかない問題に発展するケースも少なくありません。以下では、主に考えられる注意点やリスクをご説明します。

住宅ローンの滞納のリスク

名義が夫のままになっている以上、夫が住宅ローンの返済者となります。

しかし、夫がローンを滞納してしまうと、競売リスクにより妻が住み続けられなくなる可能性があります。特に慰謝料や養育費と引き換えにローンを払うという取り決めをしている場合でも、夫が住宅ローンの滞納を重ねると、金融機関は夫婦間の取り決めとは関係なく担保権を実行することができます。

住宅ローンの支払いは長期間に及ぶため、完済するまで住宅ローンの滞納によるリスクが付きまとうことは理解しておきましょう。

児童扶養手当の受取りが制限されるリスク

離婚後、妻がひとり親になる場合、ひとり親の手当として児童扶養手当を受け取れる可能性があります。

児童扶養手当は、子供を扶養する人の所得と養育費の金額を踏まえて支給されるのかが決まります。

元夫が、離婚後も元妻や子供のために住宅ローンを支払い続けていると、住宅ローンに相当する養育費が支払われていると捉えられる可能性があります。そのため、住宅ローンの金額によっては、児童扶養手当の受取額が制限されるリスクがあります。

自治体によって運用は異なるため、夫婦間で合意をする前に、あらかじめ自治体の窓口で確認してみましょう。

自宅の明渡をする時に原状回復の問題が生じるリスク

妻が夫名義の自宅に住み続ける場合、契約の終期を定めることが一般的です。例えば、子供の義務教育を終えた時や成人した時などです。

妻が夫に対して、自宅不動産の明け渡しをする際に、原状回復の問題が生じる可能性があります。自宅不動産に損耗があったとしても、それが通常の使用収益に伴うものなのか、故意や重過失による損耗(特別損耗)なのか、仮に、特別損耗であるとしても、それが夫と同居中に生じたものか、離婚後なのかが問題となる可能性があります。

原状回復の問題を避けるためにも、離婚時に夫婦間で合意書や契約書を作成し、住み続ける妻の原状回復義務の範囲や内容をできる限り明確にしておくことが大切です。

銀行から一括返済を求められるリスク

住宅ローンの契約には「住宅ローンの債務者がその家に住む」という条件が付いていることが一般的です。

離婚後、名義人である夫が自宅から離れて暮らしている場合、契約違反と判断され、金融機関からローンの一括返済を求められる可能性があります。金融機関に発覚されないために見過ごされているケースも散見されますが、常にリスクを抱えているということは認識しておく必要があります。

初回相談30分無料

無料相談
ご予約はこちら

【電話相談受付中】

受付時間 9:00〜22:00

【来所不要・土日祝も対応】

電話・LINE・ウェブでの相談可能です
1人で悩まずに弁護士に相談ください

妻が住宅ローンの借り換えをする時のプロセス

妻が新たに住宅ローンを組み直して自宅に住み続ける方法は、大変有効な選択肢のひとつです。しかし、審査から融資実行まで、いくつかの段階を踏む必要があります。以下に、その一連の流れをまとめました。

評価額と残債を調査する

最初に行うべきは、不動産の評価額と現在残っているローン残債の確認です。不動産査定を不動産業者に依頼し、どの程度の価値があるのか把握しましょう。また、住宅ローンの明細を取り寄せて、現在の残債などを確認します。

これらの情報を基に、自宅不動産を買受けるだけの価値があるのか、夫名義の住宅ローンの残高を踏まえてオーバーローンなのか否かを確認します。

住宅ローンの仮審査(事前審査)をする

次に、金融機関で仮審査を受けます。

妻の年収や勤務状況、完済時の年齢、健康状態、信用情報などを基準に仮審査が行われます。事前審査の結果は、3〜4営業日後に出されるのが多いようです。

本審査をする

仮審査が通れば、必要書類を準備し本審査に移行します。

本審査とは、正式に住宅ローンの申し込みをすることで実施される審査を言います。

本審査は、仮審査よりも厳しい基準で申告内容を精査されるため、かりしんさが通っているからといって、必ず本審査が通るわけではないため、注意しましょう。本審査では、完済時の年齢、年収や勤続年数、年収に対する返済額の割合、担保価値などを踏まえて、返済能力があるかを審査されます。

融資の実行をする

本審査に通過したら、金融機関との間で金銭消費貸借契約を結び融資実行となります。合わせて自宅不動産に抵当権設定の手続きも行います。これと並行して、自宅不動産の売買契約等を締結して、自宅不動産の所有権を移転させるとともに、夫名義の住宅ローンの抵当権抹消登記の手続きも行います。

自宅不動産を売却する場合の財産分与

どうしても妻名義でローンを承継できない、あるいは、夫が住宅ローンの支払いを続けることも難しい場合、不動産を売却する選択肢も検討せざるを得ません。売却後にその代金を分配することで、公平な財産分与を実現します。売却の可否や財産分与の方法は、残債との関係によって大きく変わります。

オーバーローンの場合

オーバーローンとは、自宅の評価額より住宅ローン残高が上回っている状態です。たとえば家を売って2,000万円でしか売れないのに、ローン残債が2,500万円残っている場合などが該当します。この場合は売却してもローンが完済できず、差額500万円をどのように清算するか問題になることが多いです。

オーバーローン部分のうち半分を妻に負担させることは原則としてできません。なぜなら、財産分与は共有財産の清算であっても債務の清算は予定していないからです。ただし、夫婦間で債務の分担を合意できれば別です。また、オーバーローン部分を夫のプラスの財産と相殺することは認められています(通算説)。オーバーローンしている場合には、売却するべきか、売却せずにどちらかが住み続けるべきかを十分に検討しましょう。

アンダーローンの場合

アンダーローンのケースは、自宅の評価額がローン残高を上回るため、ローンを完済したうえでプラスの資産が残る状態です。たとえば、売却価格が2,500万円、残債が2,000万円であれば500万円がプラス分になります。

この500万円を財産分与の対象とし、通常は夫婦の共有財産として折半するのが原則です。

離婚時の住宅問題は難波みなみ法律事務所へ

親身に対応します お一人で悩まずにお気軽に相談ください。 初回相談30分無料 離婚問題ならお任せください。

離婚時に持ち家に妻が住み続ける場合、住宅ローンの名義や支払い方法に応じて色々なリスクが発生し得ます。

できる限り合意書や調停条項に様々なリスクを踏まえた規定をも受けておくことで、不意に自宅から退去しなけらばならない状況を回避するようにしましょう。あらゆるリスクを踏まえた交渉や合意書の作成には、専門的な知識が必須です。日今後の生活を安定させるためにも、事前に弁護士に相談した上で、適切に離婚手続きを進めていきましょう。

まずは、気軽に弁護士に相談をしてみてください。

当事務所では、初回相談30分を無料で実施しています。

お気軽にご相談ください。

対応地域は、大阪市、東大阪市、和歌山市、大阪府全域その他関西圏全域です。

よく読まれている記事

PAGE TOP