多くの人にとって離婚調停は初めての体験です。そのため、離婚調停を突然申し立てられた時、何から始めるべきか迷ってしまうことがあります。離婚調停は、夫婦間の離婚問題を家庭裁判所の調停委員の仲裁を通じて解決させる手続きです。調停委員が間に入ることで、冷静かつ公正な解決を目指しますが、知識不足や準備不足で不利な状況に立たされることも少なくありません。
今回の記事では、離婚調停を申立られてから、まず最初に取るべきアクションから答弁書の書き方、調停の流れまでを詳しく解説します。
離婚調停とは?
離婚調停とは、家庭裁判所が関与して夫婦の離婚問題を解決するための手続きです。
離婚調停では、離婚問題が家庭内で解決できない場合、中立公正な調停委員が仲介することで、冷静な話し合いを実現でき、スムーズに問題解決を図ることができます。具体的には、夫婦間で、離婚するのか否か、親権や財産分与の問題について意見が対立している場合、調停委員が仲介し、双方の主張を聞きながら妥協点を見つける手助けをします。
離婚調停を申し立てられた時にするべきこと
離婚調停を申し立てられた時は、冷静な対応が求められます。感情的にならず、計画的に手続きを踏むことが重要です。
離婚調停を申し立てられた場合に最初にするべきことや注意点について具体的に解説します。
調停申立ての内容を確認する
離婚調停を申し立てられた場合、まず最初に調停申立ての内容を確認し、正確に把握することが重要です。
これは、調停申立ての内容を理解していないと、申立てに対する反論を具体的に立案することができないからです。
例えば、申立ての趣旨には、申立人が何を求めているのかが記載されています。具体的には、離婚を求めていることに加えて、慰謝料、親権、養育費、財産分与、年金分割に関する記載がなされています。さらに、事情説明書には、申立てに至る経緯が記載されていますので、その内容を確認して申立人の主張内容を把握する必要があります。
具体的な請求や主張を確認し、自分の立場や意見を整理する必要があります。
調停申立ての内容を精査し、これを基に適切な対応を取ることで、有利に調停を進められる可能性が高まります。しっかりと準備をし、冷静かつ具体的な対応を心掛けることが、調停を成功させるポイントです。
離婚するのかを検討する
離婚調停の申立てを受けて、離婚に応じるのか、応じる場合に提示する離婚条件はどのような内容にするのか、逆に離婚に応じない場合になぜ離婚に応じないのかを検討しておくことが必要です。
離婚はこれからの人生に大きな影響を及ぼす決断であり、感情的瞬間的な判断ではなく、冷静に長期的な視点で考えるべきだからです。
また、子供がいる場合、子供の成長に大きな影響を及ぼすため、子供の福祉も考慮しなければなりません。そのため、子供の心理的な負担や生活環境の変化を予め理解し、最善の選択をすることが大切です。
経済的な自立や生活環境の変化についても予め理解しておくべきです。離婚後の生活費や収入について具体的に計算し、自身がどのように生活を維持していくかを考慮する必要があります。
離婚は感情的に決断してしまうと、後々後悔することにもなりかねません。そのため、離婚を決定する前に、さまざまな角度から検討することが重要です。
指定された1回目の期日に出席できるか確認する
離婚調停の申立てを受けると、家庭裁判所から1回目の調停期日が指定されます。
そこで、指定された1回目の調停期日に出席できるのかどうかを事前に確認することが重要です。
期日に無断で欠席すると、調停がスムーズに進行しないだけでなく、不利な状況になり得ます。また、調停委員や裁判官の印象にも影響を与えます。
期日に出席するかどうかの確認を怠らず、その上で、答弁書の作成などの準備事項を早めに行うことで、有利に調停手続を進めることができます。万一、期日に出席できない場合、必ず事前に裁判所に連絡を入れるようにします。
答弁書の作成を準備する
離婚調停を円滑に進めるためには、答弁書の作成をしっかりと準備することが重要です。
答弁書とは、離婚調停の申立書や事情説明書に記載された内容に対して、相手方が認めるのか否か、相手方自身の主張を記載する書面です。
家庭裁判所から送付される書類の中には、申立書や期日指定書に加えて、答弁書の書式が同封されています。この書式を用いて答弁書を作成しても結構ですが、この書式を用いずに答弁書を作成することも認められています。
答弁書では、申立人が主張している事実や意見に対する見解をはっきりと述べることが求められます。答弁書を提出することで、調停委員に対して自身の言い分を伝えることができ、有利に調停手続を進めることが期待できます。
答弁書の提出期限に従って、答弁書を作成して提出するように心がけましょう。
弁護士への相談や委任を検討する
離婚調停を申し立てられた際には、弁護士への相談や委任を検討することが重要です。
調停手続では、法律の専門知識が必要な場面が多く、一人で対応することは難しいからです。
弁護士に依頼をすることで、離婚調停における答弁書の作成や、調停期日における対応など、法律の知識が要求される複雑な手続きを円滑に進めることができます。
また、弁護士が代理人として調停期日に出席することで、感情的な対立を避け、円滑な進行が期待できます。
以上のとおり、弁護士に委任することで、専門的な書類作成や調停手続きをスムーズに進めることができ、不安やストレスを軽減できます。
落としどころを検討しておく
納得できる妥協点を早い時期から検討しておくことが重要です。
離婚調停の目的は、対立する夫妻が調停手続を通じて合意に達することで離婚問題を解決させることにあります。
そのため、自身の求める離婚条件を固持して一切譲歩しない姿勢では、なかなか合意に達することはできません。
そのため、どの点で譲歩可能かを事前に考えておくことで、スムーズな話し合いが期待できます。
離婚調停の答弁書に書くべきこと
離婚調停を申し立てられた場合、答弁書の内容が重要となります。
答弁書は、あなたの立場や意見を明確に伝えるための文書であり、裁判所や調停委員に対して自分の状況や考えを理解してもらうための大切な手段です。ここでは、答弁書に書くべき具体的な点について解説します。
申立てに対する考えを明確にする
離婚調停を申し立てられた場合、まずは申立てに対する自身の考えを明確にすることが重要です。これにより調停や訴訟において自分の立場や意向をはっきりと示すことができ、調停委員や裁判官に理解されやすくなります。
例えば、「相手の離婚の申し立てには応じられない」としたり、離婚すること自体に異論はないが、慰謝料請求や親権の指定には応じられないといったように、申立ての趣旨に対する考えを明確にします。
申立ての事情に対して認否する
次に、申立書や事情説明書に、離婚調停の申立てに至る経緯が詳細に記載されている場合、記載された事実関係や評価に対して認否します。
認否には、認める、否認、不知、争うの4種類あります。主張された事実関係のうち、認めることができる部分には認めると記載します。逆に、事実と異なる箇所があれば、否認した上で、その理由を記載するのが一般的です。知らない事実であれば、不知と記載することもあります。法解釈や法的な評価部分について異論があれば争うと記載します。
このように、申立人が主張する事実関係等に対して、具体的に認否をすることで、争点となる事実関係を明確にすることができ、効率よく調停手続を進めることができます。
不貞行為やDVがある場合
申立人が不貞行為やDVがあったと主張する場合、これらの行為を裏付ける客観的な証拠が提出されているかを確認しましょう。
もし申立人が不貞行為やDVの証拠を提出していない場合、これらの認否をする前に申立人に対して証拠を提出するように求めることも検討します。証拠の有無がはっきりしない段階で、不貞行為やDVの有無を認否してしまうと、不利になる可能性もあるためです。
逆に、申立人側に不貞行為やDVといった有責行為がある場合には、これらの存在を具体的に主張した上で、裏付けるとなる客観的な証拠を提出するべきかを検討します。例えば、性行為の写真やメール、DVの場合には診断書や怪我の写真などが重要な証拠となります。
離婚条件に対する考えを明確にする
離婚条件に対する考えを明確にすることは、離婚調停をスムーズに進めるために非常に重要です。
離婚条件のうち、慰謝料、親権や養育費、財産分与がよく争点となります。
まずは、申立人が主張する離婚条件の具体的な内容を確認します。その上で、これに対する自身の意見や反論を明確にします。
不明瞭な点があれば、申立人に対して、明らかにするように求めたり、資料の提出を求めることもあります。
感情的な記載は控える
答弁書には、申立人の主張に対する認否に加えて自分自身の主張を記載します。
しかし、読み手の立場を考えずに感情的な記載ばかりする書面は控えるべきです。時に感情的な記載も必要なこともありますが、答弁書や主張書面では、淡々と具体的な事実と法的な評価の主張をすることが求められます。
ダラダラと書かない
答弁書は、調停委員や裁判官に読んでもらう文書です。整理されていない取り止めのない文章は、調停委員や裁判官に自分の主張を理解してもらうことが難しくなります。
ダラダラとした冗長な文章は控え、端的に事実や主張を示した要領を得た文章となるように心がけましょう。
申し立てられた側が離婚調停を欠席したら不利になるか?
離婚調停を申し立てられた際には、指定された調停期日に出席するべきか悩むことは多いでしょう。不出席がどのような影響を与えるのか、詳しく見ていきましょう。
調停不成立となり離婚訴訟に進む
離婚調停が不成立となった場合、離婚問題は訴訟手続に進む可能性が高くなります。
調停期日を欠席する場合、調停が成立する余地がないと捉えられてしまい、調停が不成立となる可能性があります。ただ、実務上は1回目の期日を欠席してすぐに調停が不成立となることはあまりありません。2回連続で欠席した場合に調停が不成立となり終了する可能性は高いでしょう。
調停が不成立となり終了しても自動的に離婚裁判に移ることはありません。別途離婚訴訟を提起することで裁判手続に移行します。
訴訟には時間と費用がかかります。さらに夫婦間の対立は一層激しくなる可能性も高いです。そのため、調停手続を無断で欠席せず、できる限り調停手続を通じて話し合いの機会を持つようにしましょう。
調停に代わる審判が出る
調停を欠席すると、調停が不成立となるだけでなく調停に代わる審判が出される可能性があります。
調停に代わる審判とは、家事調停が成立しない場合に、家庭裁判所が職権で判断を下す審判をいいます。
答弁書を提出せずに調停手続に欠席した場合に、裁判所が提出した資料等から相当と考えられる内容で家庭裁判所が審判を出すことがあります。
そのため、調停が不成立となるだけでなく、申立人の請求する内容を認める審判が出されてしまう可能性があります。なお、調停に代わる審判は、審判書を受け取ってから2週間以内に異議申立てをすることができますが、これを経過すると審判は確定してしまいます。
調停委員の印象が悪くなる
調停に欠席すると、調停委員の印象が悪くなります。
調停委員は、中立公正な立場から夫婦間を仲裁することで、夫婦間の問題を解決しようと働き掛けます。調停手続をできる限り有利に進めるためには、調停委員に悪い印象を持たれないようにするべきです。
しかし、無断で調停を欠席すると、調停委員から、不誠実、不真面目といった悪い印象を持たれてしまいます。
このように、調停を申立てられた側が欠席すると、真剣さが欠けていると判断されることがあります。そのため、調停に欠席せず、真摯に対応することが大切です。
婚姻費用の審判が出されてしまう
離婚調停を欠席することで、婚姻費用の審判が一方的に出される可能性があります。
離婚調停は婚姻費用の調停とセットで申し立てられることはよくあります。
調停期日を欠席することで、離婚調停は不成立となり終了する可能性はありますが、婚姻費用の調停は不成立となり自動的に審判に移行します。
審判手続においても、同様に欠席すると、不利な内容の審判が出されてしまいます。審判に対して即時抗告という不服申立てをすることはできますが、それすらもしなければ、審判は確定してしまい、強制執行を受けてしまいます。
離婚調停の流れ
離婚調停がどのように進行するのかを知ることは、その後の対応に大きな影響を与えます。以下では、離婚調停の一般的な流れについて詳しく解説します。
申立書や事情説明書が届く
まずは、自宅宛に離婚調停の申立書や事情説明書が届きます。その他に答弁書の書式や1回目の期日を知らせる期日指定書も同封されています。
申立書には、申立人が求める申立ての内容が具体的に記されています。事情説明書には、生活状況や資産状況、申立てに至る具体的な事情が記載されています。
申立書や事情説明書が届いた時は、その内容をよく読み、申立人の主張内容を理解することが重要です。
1回目の調停期日
1回目の調停期日では、調停委員が双方の主張を直接聞き取る初めての機会であり、今後の調停の進行に大きく影響します。
調停期日では、申立人と相手方は異なる時間(例えば、申立人は10時、相手方は10時20分)で裁判所に出頭した上で、専用の待合室で待機することになるため、双方が直接会わないような配慮がされています。
調停期日では、調停委員が申立人と相手方の主張を聞き取り、双方の対立事項を明確にします。
この対立事項を次回以降で調整していくために、調停委員から次回の調停期日に向けた準備事項が指示されます。具体的には、主張書面や資料の提出を求められます。
また、おおよそ1ヶ月半程先の日時を次回の調停期日に調整します。
2回目以降の調停期日
2回目以降の調停期日も重要であり、しっかりと準備をして臨む必要があります。
初回の期日だけで解決するケースは稀であり、多くの場合は3〜5回ほどの調停が必要となります。2回目以降の期日では、争点となっている事項について合意形成に向けて話し合いを重ねていきます。
調停委員から指示された準備事項を提出期限までに適切に対応をしていき、歩み寄るべき事項は歩み寄り自身に有利な条件で手続を進めていきましょう。
調停成立
双方が合意に達すれば調停は成立します。
調停が成立する場合には、調停調書が作成されます。
調停調書には、調停離婚することに加えて、申立ての対象となっている事項について記載されます。例えば、財産分与や親権、養育費などが双方の話し合いで決まれば、調停調書に明記されることになります。
調停不成立
離婚調停が不成立となる場合があります。これは両者が話し合いを重ねても合意できない場合で、調停が成立せず、次のステップに進むことになるためです。例えば、財産分与や子どもの親権に関する意見が一致しない場合、調停が不成立となります。
調停が不成立となれば調停手続は終了します。離婚裁判は、調停不成立後に訴訟提起をすることで初めて開始されます。
離婚調停は申し立てられたら不利になるか?
離婚調停を申し立てられた側が必ずしも不利になるわけではありません。
調停は夫妻両方の言い分を公平に聞く場であり、申立てられた側が一方的に有利・不利になることはありません。
ただ、離婚をしたくない、離婚の話し合いすらしたくない場合、申立人の意向により離婚調停の申立てを受けることで、半ば強制的に離婚の話し合いに巻き込まれてしまいます。その点で、申し立てられた側はある程度の負担を余儀なくされます。
離婚調停を申し立てられたら難波みなみ法律事務所に相談を
離婚調停を申し立てられた場合、専門家の助けを借りることが極めて重要です。離婚調停では感情的になりがちですが、冷静な判断が求められます。
そこで、離婚調停が申し立てられた際には、まず落ち着いて弁護士に相談することが非常に重要です。また、離婚調停の対応を弁護士に依頼することで、専門的な知識と経験を持つ弁護士があなたの立場を守り、可能な限り有利な方向に進むようにサポートをします。
難波みなみ法律事務所は離婚問題全般に注力しており、離婚調停の解決に向けて真摯に取り組んでいます。ご自身で頑張り過ぎずに、適切に弁護士に相談することが重要です。
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