コラム
公開日: 2025.01.28

離婚時にペアローン、どうする?財産分与の問題とオーバーローンを解説|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

ペアローンを組んでいる夫婦が離婚する時に、ペアローンをどのように処理するかが問題となることは多くあります。

夫婦がペアローンを組む理由は様々です。一方の配偶者の収入や就労状態等から単独で住宅ローンを組めない時やもう一方の配偶者に十分な収入があるような場合などにペアローンを組むことが多いでしょう。

しかし、離婚時にペアローンを解消しなければ、離婚後も住宅ローンの支払いを求められたり、元配偶者との間でペアローンに関するやり取りを継続させなくてはいけません。そのため、離婚時にはペアローンを解消するように努めましょう。

本記事では、離婚とペアローンにまつわるリスクや解決策を詳しく解説します。特に、最近増えているオーバーローンの問題についても触れ、対応策を提供します。

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ペアローンでも離婚はできる

離婚は当事者が合意すれば成立するため、ペアローンを組んでいても離婚自体は可能です。しかしペアローンの返済義務は離婚後も継続する点が最大のネックとなります。

住宅金融支援機構の調査(2023年10月〜2024年3月)によると、ペアローン利用率は22.8%にも上ります。離婚が増加している現代では、ペアローンを清算せず離婚に踏み切るご夫婦のトラブルが増えているのが実情です。

しかし、離婚の手続きだけでは直ちにペアローンが解消されないのです。離婚そのものは双方合意のもと成立しても、その後のローンの支払いや物件の取り扱いをめぐって揉めるケースは多々あります。そのため、名義変更や売却、借り換えなどの具体策や今後の生活設計を踏まえて慎重に進めることが大切です。

参照 住宅金融支援機構 住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2024年4月調査)】

ペアローンとは

ペアローンとは、夫婦やカップルが住居を購入する際にそれぞれ個別に住宅ローン契約をする方式です。

夫婦が共有名義で物件を所有し、それぞれが住宅ローンの借り入れを行うことで、購入可能額を大きくできる点が大きな特徴です。住宅ローン契約は複数に分かれ、「夫が主債務者で妻が連帯債務者または連帯保証人」の形態が採用されます。

また、所得税控除(住宅ローン控除)も夫婦それぞれが受けられるため、単独ローンと比べて有利になるケースがあります。一方、契約そのものが二本立てになる分、諸費用や手続きが増えることや、離婚時に問題が複雑化しやすいリスクもあるため、メリットとデメリットを十分に理解して契約する必要があります。

ペアローンのメリット

ペアローンを組むメリットは以下のとおりです。

  • 借入総額がアップし、希望の物件を購入しやすい
  • 夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられる
  • それぞれが団体信用生命保険に加入でき、万一の保障が手厚い

このように、家計的にも税制上も大きなメリットがあるため、共働きの夫婦が大型の住宅を購入する際に注目されています。

ペアローンのデメリット

一方で、デメリットとして以下の点が挙げられます。

  • 離婚時や不測の事態でも各自の返済義務は消えない
  • 共有名義のため、処分(売却や借り換え)には双方の合意が必要
  • ローン契約が2本になるため、事務手数料や諸費用が割高

特に、支払いが続く中で夫婦関係が破綻した場合に、財産分与の問題とローン返済の問題が絡み合って複雑化しやすい点に注意が必要です。

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ペアローンがある夫婦が離婚するとどうなる?

ペアローンを抱えたまま離婚の話し合いを進めるとき、まず考えるべきは住宅ローンや不動産の登記名義の変更です。現実的には、住宅ローンの名義は簡単に変更できない場合が多く、売却にも時間がかかることがあります。下記ポイントを踏まえた上で対処法を検討しましょう。

ペアローンは離婚しても残る

ペアローンはそれぞれが契約した別個のローンなので、離婚によって住宅ローンそのものが消滅するわけではありません。

財産分与で家をどちらかが引き取ると決めても、相手の住宅ローンをどのように処理するのかという問題が発生するため、単独ローンの時と比べて複雑な調整が必要です。

離婚後に一方が返済できなくなると競売にかかる

離婚時にペアローンを解消せずにいると、離婚後、どちらかがローン返済を滞納することで、共有名義の物件は競売にかけられる可能性があります。競売になれば、市場価格よりも安く落札されるケースも多く、残っている借金を清算しきれないリスクが高まります。大切な資産を失うだけでなく、不足分の返済に迫られます。

離婚後も連帯保証人の責任は変わらない

ペアローンの場合、どちらかが連帯保証人又は連帯債務者になっているケースも多くあります。連帯保証人は主債務者が借金を返せなくなったときに全額返済の義務を負います。離婚して戸籍が別になろうとも、連帯保証の責任はなくなりません。仮に相手が支払いを滞納し続けた場合には、自分に返済請求が来るリスクがあることを認識しなければなりません。

住宅ローンの契約違反となる

金融機関の審査を通す際、ペアローンは「夫婦が共同で居住する」ことを前提にしているケースが多いです。

そのため、離婚によって配偶者の片方がペアローンを解消することなく自宅から退去すると、金融機関に契約違反であると捉えられる場合もあります。特に、住民票が移っているのに名義だけ夫婦のままにしていると問題が顕在化してしまい、住宅ローンの一括返済を求められるリスクもあります。

離婚後も共有名義のままにするリスク

夫婦関係が解消したにもかかわらず、「片方が住み続けるが自宅名義は共同のまま」という状態を続ける場合もあります。しかし、この方法には大きなリスクが潜んでいます。離婚時に共有名義を整理せずに放置してしまうと、思わぬトラブルに発展することも少なくありません。

維持費がかかる

住宅を所有している以上、毎年の固定資産税やメンテナンス費用が発生します。共有名義のままにしておくと、「実際に住んでいない側」にも固定資産税の一部負担や修繕積立金の支払いを求められる可能性があります。

自由に売却できない

共有名義の場合、売却には双方の同意が必要です。すでに離婚している元夫婦は利害が対立しやすく、不動産の売却手続きがスムーズに進まないことがよくあります。

相続時にトラブルとなる

共有名義の住宅は、離婚後にどちらかが亡くなった場合、その相続人(両親やきょうだい)との間でトラブルとなりやすいです。

元配偶者に子供がいれば、子供が相続人となりますが、子供がいない場合には元配偶者の親や兄弟姉妹が相続人となります。

そのため、元配偶者が死亡すると、長年連絡を取っていない元配偶者の親族と自宅不動産を共有することになり、権利関係が複雑となります。

元配偶者の相続人との共有関係を解消するためには、共有物分割の協議や裁判をしなければならなくなり、より一層自宅不動産の処分が困難となります。

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離婚時にペアローンを解消するためには

離婚の際、ペアローンをどう解消し、どちらが住むか、あるいは売却するかは大きな問題となります。以下に代表的な方法を挙げますので、それぞれの具体的な事情に合わせて検討してください。 

住宅ローンの借り換えをしてローンを一本化する

一般的な解決策の一つが住宅ローンの一本化です。具体的には、離婚後に住み続ける側が金融機関に借り換えを申し込み、自分単独名義の住宅ローンに組み替えます。

ただし、この場合は改めて返済能力の審査があります。離婚後の収入で十分な返済能力があると認められれば、銀行が承認しペアローンを解消できる可能性があります。

なお、借り換え先の金融機関を選ぶ際は、金利や諸費用、保証料などを十分に比較検討してください。

住宅ローンを一括返済する

離婚を機に、手持ちの資金や親族からの資金援助を受けて一括返済できるのであれば、ペアローンを最短で解消する方法です。

完済してしまえば、共有名義の解消は比較的スムーズに進みます。もっとも現実的には、多額の資金をいきなり用意するのは簡単ではないため、この選択肢を取れる夫婦は多くありません。

離婚時に売却をする

不動産を売却して得た売却代金でローンを完済し、残った利益を財産分与するのは理想的な解決策です。アンダーローン(売却額がローン残債を上回る)であれば問題なく完済し、財産分与を現金化することができます。

しかし、オーバーローン(売却額<ローン残債)の場合は売却そのものが難航します。金融機関は担保割れを防ぐため、売却に応じないことが多いからです。売却に応じるとしても、オーバーローン部分の一括返済を求められるのが一般的です。結果的に任意売却や競売に至るリスクも高まるため、慎重な判断と早期の相談が必要です。

オーバーローンの自宅があるときの問題点

近年、売却価格の下落や購入当時の高額なローン契約などにより、売却時に残債が大きく上回ってしまうオーバーローンのケースが少なくありません。

自宅のオーバーローンのケースでは、離婚時の財産分与に際して、オーバーローン部分をどのように処理するべきかが問題となります。

オーバーローンの折半はできない

財産分与は基本的にプラスの財産を対象とするため、ローン残債などの借金を「財産」として折半することはできません。

これはよく誤解されている人もいますが、財産分与は財産の清算を目的としてあるのであって、ローンなどの債務の清算を目的としていません。そのため、債務それ自体を夫婦間で分担することはできません。

そのため、自宅不動産がオーバーローンしている場合、オーバーローン部分の半分を相手方に負担させることはできません。

財産分与でプラスの財産と相殺できることもある

もし他に預貯金や株式などの資産がある場合は、残債のオーバーローン部分とプラスの財産を相殺することは認められる場合があります。たとえば、夫の預貯金が1000万円、オーバーローン部分が500万円であれば、1000万円から500万円を引いた残額500万円の限度で財産分与の対象とすることができます。

ただ、常にオーバーローン部分とプラスの財産との通算が認められるわけではありませんので注意しましょう。

売却時に残債の支払を銀行側から求められる

オーバーローンで売却を進める場合、オーバーローン部分の一括支払いを銀行から求められます。このオーバーローン部分をどちらが用意するのか、あるいは連帯して返済していくのかを事前に協議しておくことが重要です。

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ペアローンを抱えた夫婦が離婚する場合、住宅ローンの名義変更や売却、オーバーローンへの対処など複雑な問題が生じやすいです。特にオーバーローン時の売却にはオーバーローン部分の処理をどのように処理するべきかが双方の対立点となります。

離婚後も返済義務や共有名義のリスクが残ることを理解し、早期に弁護士へ相談することが重要です。状況に応じて、一括返済や借り換え、売却など複数の選択肢を検討しましょう。時間と手間がかかる問題ですが、丁寧に手続きを進めることで将来のトラブルを大幅に減らすことができます。ぜひ一度、プロの意見を聞きながら行動に移してみてください。

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