配偶者からモラハラを受けて苦しみ、離婚したいとお考えの方も多いことでしょう。
しかし、モラハラの加害者は自分が悪いことをしているという自覚がなく、簡単には離婚に応じないことが多いものです。
そのため、離婚を切り出す前にモラハラの証拠を確保しておくことが重要となります。
ただ、モラハラは目に見える形で残る行為ではないため、証拠を集めることが容易ではないこともあります。
そこで、この記事では、モラハラで離婚するために有効な証拠の種類や集め方、集める際の注意点などを解説します。特に、モラハラの証拠として重要な役割を果たす日記の書き方について解説します。
モラハラとは
モラハラとは、モラルハラスメントの略です。
家庭内におけるモラハラは、家庭内での侮辱的言動、脅迫的言動を意味します。
モラハラは、殴る蹴るの暴力を伴いません。しかし、配偶者の人格を否定するような暴言、侮辱的言動、脅迫的言動は、配偶者に対する精神的な暴力、虐待といえます。
このようなモラハラが家庭内で継続して行われると、モラハラを受けた配偶者には、深い心の傷を残します。
モラハラの具体例
精神的な虐待行為は幅広くモラハラに該当する可能性がありますが、ここでは夫婦間で起こりがちなモラハラの具体的なケース例を紹介します。
・暴言や侮辱で人格を攻撃する ・相手を見下す発言や態度をとる ・不機嫌な態度をとり続けて威圧する ・物に当たることで威嚇する ・相手の些細なミスを責め立てる ・相手の行動を監視し、異常に束縛する ・相手を無視し、会話に応じない ・自分が正しいと信じ、非を認めない ・自分が決めたルールを相手に強制する ・必要な生活費を渡さない ・配偶者だけでなくその親族や友人についてまで度を超えた悪口を言う ・子どもに配偶者の悪口を吹き込む |
他にもさまざまなケースがありますが、精神的な暴力で相手に逆らえないと感じるほどに心が傷ついている場合は、モラハラ被害を受けている可能性が高いといえます。
モラハラの証拠の役割
モラハラは身体的暴力とは異なり、言葉や態度による精神的な攻撃や経済的な束縛です。
そのため、暴力のように形に残りにくく、事後の裁判等において、モラハラの存在を証明することに困難を伴うことが多いです。
そこで、モラハラの存在を証明し、モラハラ被害を受けてきた配偶者が泣き寝入りしないようにするため、モラハラの証拠を計画的に収集しておくことが極めて重要です。
以下では、モラハラのケースで、その証拠が果たす役割を解説します。
精神的苦痛の程度を説明できる
モラハラによる被害の大小は、被害者が受けた精神的苦痛の大小によって決まります。
ただ、精神的苦痛の程度には個人差があるため、実際の被害の程度は本人でなければ分かりません。そのため、自分でメモや日記などに記録していくことが必要です。
モラハラ行為の悪質さが記録されることで、第三者が見ても「相当な精神的苦痛を受けたことだろう」と理解してもらえます。
そして、客観的な事実を書くだけでなく、配偶者の行為によって自分がどのような気持ちになったのかが記載されていると、具体的な被害の深さを証明することができます。
暴言の具体的な内容を説明できる
暴言を吐かれたことやその具体的な内容の証拠として、録音データが最も有効です。発言内容、口調、語気、話すスピード等がそのままの状態で記録されるからです。
他方で、メモや日記では、被害者の感情が介在してしまうため、モラハラの発言内容を忠実に再現することは難しいのが現実です。
価値観の押し付けや生活費の制限を説明できる
配偶者から過剰な価値観を押し付けられ、特定の行動を強制されたり禁止されたりしている場合には、日記や録音によって説明することができます。
できれば、配偶者が価値観を押し付けて命令する発言も録音しておけば、メモ・日記と併せてさらに強力な証拠となります。録音することが難しい場合は、配偶者からいつ、どのようなことを命令されたのかをメモ・日記に具体的に書いておきましょう。
生活費を制限されている場合は、家計簿を付けておけば生活が苦しいことの証拠となります。1ヶ月ごとに家計表を作成すれば、さらに収支が分かりやすくなるでしょう。
子どもへの悪口の吹き込みを説明できる
録音データやラインメッセージ等によって、子どもに対する自分の悪口を吹き込まれていることを説明できます。
できれば、配偶者が子どもに対して悪口を吹き込んでいる発言を直接録音することが理想的です。それが難しい場合は、「お父さん(お母さん)がこんなことを言ってたよ」といった子どもの発言を録音するようにしましょう。
モラハラの証拠の収集方法
モラハラで離婚したいとお考えなら、モラハラ行為が行われていることを、第三者が見ても分かるような証拠を確保することが重要となります。
ここでは、モラハラ行為を証明できる証拠の集め方をご説明します。
会話の録音
暴言や侮辱などのモラハラ発言は家庭内の密室で行われるため、配偶者との会話を録音して証拠化しましょう。
ただし、モラハラ発言だけをピンポイントで録音しても前後の状況が分からないため、モラハラの証拠として使えない可能性もあります。
そのため、ICレコーダーやスマホの録音機能を起動させた状態で洋服のポケットなどに入れて、一部始終を録音するようにしましょう。
また、1度の録音だけでは夫婦喧嘩の範疇だと判断される可能性があります。そのため、ある程度の期間にわたって何度も録音を繰り返すようにしましょう。そうすることで、日常的にモラハラ被害を受けていることの証明が可能となります。
メモや日記をつける
配偶者から受けた行為をメモや日記に記録していくことによっても、モラハラを証拠化できます。いつ、どのような状況で、どのようなモラハラ行為を受けたのかを、できる限り具体的に、詳しく書いていきましょう。
日記の作成方法の注意点については、後述で詳しく解説します。
メールやSNSのやり取りを保存する
配偶者からメールやLINEなどのSNSでモラハラ発言が送信されることもあるでしょう。
その場合は、メールやSNSのやり取りが証拠となります。メールやSNSの履歴には相手の発言内容がそのまま残り、送受信日時も記録されているので、メモや日記よりも信用性の高い証拠として利用できます。
証拠化するためには、配偶者とのやり取りを削除せずにスクリーンショットで画像保存したり、デジカメなど別のカメラで画面を撮影し、その画像を保存しておきましょう。画像として保存しておくことで、必要な場合にはプリントアウトして証拠書類を作成することが可能となります。
診断書や通院履歴の収集
モラハラ被害を受けると心身に不調をきたし、うつ病などで精神科や心療内科に通院する方も少なくありません。そんなときは、医師の診断書や通院履歴もモラハラの証拠となります。
モラハラと精神疾患との因果関係を明確に証明するためには、主治医にモラハラの状況を詳しく話すことが大切です。そして、診断書に「夫(妻)によるモラハラが原因と考えられる」というような記載をしてもらえれば、有力な証拠として使えます。
通院した事実そのものも、モラハラに悩み心身に不調をきたしたことの証拠となるので、診察券や診療費の領収書など通院履歴が分かるものを保管しておきましょう。
第三者の証言や陳述書
モラハラは主に密室で行われますが、親族や友人・知人など第三者の前で暴言や侮辱などのモラハラ行為が行われることもあります。その場合は、モラハラ行為を目撃した第三者からの証言やそれを文書化した陳述書も証拠となります。
そのほか第三者に相談した事実も、モラハラを受けて悩んでいたことの証拠となります。そのため、モラハラ被害を受けているのであれば一人で悩まず、信頼できる人には随時、相談しておくとよいでしょう。
ただし、第三者がモラハラ夫(妻)を恐れたり、争いごとに巻き込まれることを嫌ったりして、証言を渋ることも考えられます。目撃者や相談相手に対しては、いざというときに証言してもらえるように頼んでおいた方がよいでしょう。場合によっては、目撃者や相談相手との会話を録音するなどして記録しておくことも考えられます。
相談窓口への相談履歴
モラハラ問題は、警察署や配偶者暴力相談支援センター、婦人相談所等の公的機関に相談することができます。これらの相談窓口に相談した事実も、モラハラ被害を受けていたことの証拠となります。
証拠化するためには、相談した機関へ個人情報の開示請求を行いましょう。そうすることで、相談記録を入手できます。相談記録には相談した内容や相談を受けた機関が対応した内容などが記載されているので、内容によっては有力な証拠として使えます。
公的機関には無料で相談できますし、相談した秘密も守られます。周りの人には話しにくい悩みがある場合には、公的な相談窓口を利用するとよいでしょう。
モラハラの日記の書き方
日記やノートは、動画や写真に次いで、モラハラの証拠として重要な役割を果たします。
しかし、動画や写真は、機械的にモラハラの状況を記録するため、その記録する過程にモラハラ被害者の心情等は介在しません。
他方で、日記やノートは、モラハラ被害者がその記憶を辿りながら、自身の手でモラハラの状況を記載して作成するものです。つまり、日記やノートは、作成者の記憶による記述により作成されるため、作成者の心情等の主観が介在します。
そのため、日記やノートについては、証拠としての信用性が問題となることが多いです。
そこで、日記・ノートの信用性が十分に認められるためには、その内容や作成方法には注意が必要です。
日記の作成時期やタイミング
日記が、どの時点で作成されているものかがポイントとなります。
継続して作成することが大事
離婚問題が発生する以前から、継続して作成されている日記は、信用性が高いと認定される傾向です。
なぜなら、モラハラ以外の日々の出来事も含めて、その都度作成されているものであれば、新鮮な記憶にしたがって記入されている可能性が高いからです。
その上、紛争が発生する前から継続的に記録されているものであれば、モラハラの紛争を意識せずに作成されているものといえるため、より一層信用性は認められやすくなるでしょう。
まとめて作成するのは控える
他方で、離婚問題が生じてから、過去の出来事をまとめて作成した日記については、信用性は低いと認定される傾向です。
過去の出来事をまとめて記載する場合、過去の記憶に沿って作成されるところ、その過去の記憶が正確なものかは定かではありません。
また、既に離婚問題が生じており自己に有利な内容で記載される可能性があるからです。
日記の内容が具体的あること
日記の内容が具体的に記載されているかについても、ポイントとなります。
モラハラを証明するためには、ぼんやりと『モラハラがあった』では足りません。
また、心情的な部分のみが記載され、事実関係を記載した部分が乏しいと、具体的な事実を証明することが難しくなります。
具体的に、どのような言動が、いつ、どのような経緯で行われたのかを特定させることが重要です。
できる限り、事実を具体的に列記することを心がけて下さい。
ノートに書く
ルーズリーフやパソコンは控えます。
携帯のメモアプリや日記アプリを使用することも控えます。
パソコンやアプリを利用した場合には、事後的に加筆修正することができるため、証拠の信用性が低いとされます。
ルーズリーフについても、1枚ずつ自由に抜き差しできるため、日記の連続性が認められなかったり、改ざんの指摘を受けるリスクがあります。
そこで、一冊のノートや日記帳に自筆で記述していくようにします。
ボールペンで書く
日記を作成する際には、加筆修正のできる鉛筆ではなく、消せないインクのボールペンを使用するようにします。
書き直した形跡があれば、紛争が発生した後に自分に有利な形で修正したのではないか疑われる可能性があります。
余白は作らない
日記をつける際には、余白を作ることなく連続して記載するようにして下さい。
不自然な余白を作ってしまうと、改ざんを疑われてしまうからです。
矛盾しないように気をつける
日記の作成にあたっては、矛盾点がないようにします。
日記内の記述にモラハラの内容や時系列に矛盾点が見つかると、その日記の信用性に疑問の目が向けられます。
また、日記内の記述に矛盾がないとしても、その他の証拠と整合しない場合には、やはり日記の信用性が低くなる可能性があります。
そのため、日記をつける際には、日記内だけでなく、客観的な証拠との整合性にも配慮するようにします。
モラハラの証拠を活用する際の注意点
せっかくモラハラの証拠を集めても、配偶者との話し合いや調停、裁判で活用できなければ意味がありません。ここでは、モラハラの証拠を有効に活用するために注意すべきポイントについて解説します。
偽造しない
有効なモラハラの証拠を集めることが難しい場合でも、証拠の偽造は絶対にやってはいけません。
裁判では、相手方に「この証拠は偽造だ」と主張されると、こちら側でその証拠が真正なものであることを証明しなければなりません。証明できなければその証拠は採用されないため、他に有効な証拠がなければ勝訴できません。
のみならず、証拠の偽造が発覚すると有印私文書偽造罪、同行使罪などの罪に問われたり、相手方から慰謝料を請求されたりするおそれがあります。
配偶者からのメールを改ざんしたり、偽造の診断書を作成したり、メモや日記に虚偽の内容を書いたりすることは絶対にやめておきましょう。
証拠を破棄されないようにしっかりと保存する
モラハラの証拠を自宅内に保管していると、配偶者が見つけて破棄してしまうおそれがあります。そのため、証拠はカギのかかる引き出しなどのように、相手方が見ることのできない場所に保管するようにしましょう。
録音データやメールを撮影した写真などの電子データは、クラウドストレージを活用してクラウド上に保存しておくと安心できます。できれば、診断書や相談記録などの証拠書類も撮影し、画像データとしてクラウド上に保存しておけば万全です。
モラハラの問題は弁護士に相談しよう
モラハラの証明は容易ではありません。
モラハラの証明をするためには、動画や写真に加えて、日記をつけることが重要です。
しかし、せっかく作成し続けてきた日記が、信用できないと認定されるのは勿体ないです。
日記をつける以上、モラハラの証拠として十分に信用される内容や方法で作成することが望ましいでしょう。
モラハラの問題で悩まれている場合には、1人で抱え込まずに、できるだけ早い時期に弁護士に相談するようにしましょう。
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