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モラハラを原因とした離婚請求が認められるのか弁護士が解説します

モラルハラスメントの画像

モラハラとは何か?その概要とパワハラとの違いを解説

モラハラは、モラルハラスメントの略語です。

混同しがちな言葉にパワハラ(パワーハラスメント)があります。

パワハラは、地位や権力(power)を利用した嫌がらせ(harassment )のことです。

主に、職場や学校などで立場が上の者が下の者を、言葉、態度、身振りなどによって侮蔑したり、身体的な暴力行為によって傷つけたりする行為を指します。

一方のモラハラは、倫理や道徳といったモラル(moral)に反する精神的な嫌がらせ(harassment)のことです。

一般的に身体的な暴力行為は伴わず、侮蔑的な言動によって他者の人格や尊厳を傷つけて精神的に追い詰め、その心身に傷を負わせる行為が該当します。

具体的には、次のような言動が該当します。

・日常的に暴言を吐く

・嘲笑したり侮辱したりする

・無視を続ける

・行動の束縛や監視をする

・些細なミスを注意する

・実家や知人との付き合いをさせない

 

モラハラは、パワハラと異なり職場や学校の人間関係だけでなく、夫婦や親子、恋人の間でも発生しています。

また、パワハラのように職務上の地位や権力は関係ありません。

いずれにしても、被害者のメンタルヘルスに悪影響を及ぼし、精神疾患や退職または離婚などの原因になるため、社会問題の1つとして認識されています。

モラハラを行う配偶者に対する対応方法については、こちらのコラムを参照ください。

 

モラハラは離婚原因の上位となっている

厚生労働省の「平成30年(2018)人口動態統計の年間推移」によると、離婚件数は20万7000組となっていますが、平成14年の28万9836組のピークと比べて減少傾向となっています。

その一方で、婚姻件数は、平成30年で50万9000組ですが、離婚件数以上に減少傾向となっています。

裁判所の統計データによると、離婚原因の順位は以下のとおりとなっており、精神的な虐待、つまり、モラハラが男女のいずれにおいても、上位となっていることがわかります。

 

【夫の申立ての動機】

1位 性格の不一致

2位 精神的に虐待する

3位 異性関係

 

【妻の申立ての動機】

1位 性格の不一致

2位 生活費を渡さない

3位 精神的に虐待する

 

参照 2019年司法統計|最高裁判所

 

モラハラが離婚調停申立ての動機の上位にランキングされている理由は様々ですが、時代の流れに伴う夫婦感の大きな変化によって、かつては家庭内で解消されてきた問題が解消し切れずに、夫婦関係を破綻させる要因になっているものと思われます。

 

 

モラハラ(精神的な虐待)が離婚原因となるか?

離婚原因とは何か?

モラハラを理由に離婚を申し出ても、配偶者が認めないケースは少なくありません。

そういった場合には、最終的に裁判にまで発展する可能性が高くなります。

このような状況において、離婚を求めて裁判を起こすには、離婚を求めている配偶者において、民法770条の離婚原因が存在することを主張し、これを証明しなければなりません。

 

民法で規定された離婚原因は次の5点です。

・配偶者に不貞行為があった

・配偶者から悪意で遺棄された

・配偶者の生死が3年以上あきらかでない

・配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない

・その他婚姻を継続し難い重大な事由がある

この中で、モラハラを離婚の原因とするには、「その他婚姻を継続し難い重大な事由がある」に該当している必要があります。

 

どんなモラハラが離婚原因になるのか?

では、どのようなモラハラ行為であれば、婚姻関係を継続し難い重大な事由となるのでしょうか。

不貞行為の場合、不貞行為が、配偶者以外の者と性行為やこれに準じる行為で、夫婦が負う貞操義務に反するものですから、このような行為に及んだ場合には、離婚原因に該当することは分かりやすく、説明し易いと思います。

他方で、モラハラ行為の場合、家庭内において、長い時間をかけて積み重ねられた行為が婚姻関係を破綻させるものといえるかを判断します。

そのため、不貞行為のように客観的な判断が非常に難しいといわざるを得ません。

そのような中で、過去の裁判例をヒントに、どのようなモラハラが離婚原因となるのかを考えていきたいと思います。

 

まず、いずれの裁判例においても、モラハラの内容が、相手方の人格を否定するような粗暴な言動、心無い言動が、長期間にわたって執拗に繰り返し行われていることが分かります。

このモラハラ行為が離婚原因となるためには、暴力などのDVに匹敵する程度のものである必要まではないとされています。

その理由としては、DVに匹敵する場合でなくても、日常生活の言動の積み重ねによって、婚姻関係の継続に必要とされる夫婦の信頼を修復できないほどに破壊することは十分にあり得るからです。

さらに、多くの事案では、モラハラ行為のみで婚姻関係の破綻を認定するのではなく、その他の事情も考慮しながら、夫婦関係が修復できない程に破綻しているかを認定しています。

例えば、

①別居期間やその間に関係修復のための努力

②性生活の有無や程度

③モラハラを受けた側の性格や属性(穏和で大人しく、面と向かって反論できない)

④行為を受ける配偶者本人以外の関係者に対する言動

などが挙げられます。

 

 

 

東京地方裁判所平成16年4月28日判決

【事案】

①平成11年8月夫は妻を鍵を掛けてベランダに閉め出した後、窓を開けて家に入れた妻の顔を平手で打ち、

 

「離婚する。出ていけ。」

 

と怒鳴った。

②平成12年長男出産後も事あるごとに

 

「妻失格だ。」

「常識がない。」

「お前は狂っている。」

「夫に反発するんじゃない。」

「毎日遊んでいるくせに口答えするな。」

などと怒鳴り、

 

また、

「お前には母親の資格はない。」

「子供は俺のおふくろに育ててもらう。」

「そもそもお前は親の教育がなっていない。」

 

などと罵倒することもあった

③平成15年5月4日昼ころ、夫は妻に対し、妻の両親の前で、

 

「もう限界だ。離婚です。妻はすぐに引き取って下さい。」

「当然婿入りの話は白紙です。」

「子供は鹿児島の母が育てると言っている。私も鹿児島に帰るかどうか考えているところだ。」

「△△の家の教育はなっていない。俺は△△の家の面倒など見てられない。」

 

などと怒鳴る。

④翌5月5日、妻は「実家に戻るので話し合いは実家に来て下さい。」とのメモを残し、長男を連れて実家に帰った。

⑤その日の夕方、夫は、酔って妻の実家にやって来て、怒鳴ったり、門扉を壊したりしたため、警察官が通報で駆けつけるということになった。

 

【判決理由】

妻の離婚の意思が極めて堅固な原因は、夫の酔余の言動、特に妻の人格を無視したとも言える夫の暴言に起因することが大きいと認められるにもかかわらず、夫は、自己の言動について反省をすることがなく、かえって、妻のヒステリー的性格やうつ病に原因を転嫁させているから、今後、婚姻関係を修復し、改善することは期待できない。

妻の主張する離婚原因が、主に夫の発言によるものであり、別居期間も1年足らずであることなどを考えても、現時点において、婚姻生活を修復することは困難であり、婚姻関係は完全に破綻しているものと認められるから、民法770条1項5号の離婚事由があるものというべきである。

 

 

東京地方裁判所平成17年3月15日判決

【事案】

①夫は心臓の持病のある妻に対して

 

「さっさと心臓移植でもしてこい。」

 

などの暴言を浴びせた。

②平成8年11月緊急入院した際、夫は妻に

 

「なぜ突然入院した。人の不便も考えろ。」

 

と述べてわずか5日間の入院のみで退院させた。

 

③退院後も妻に対し、

 

「都合が悪いから具合が悪いふりをする。」

「いつまでもぐずぐずしやがって」

「いっそ、聞こえなくなる手術でもして来い。」

 

などと暴言を吐いた。

④平成14年夏ころ、夫は連日のように午前3時から5時頃になると、妻に対し、食事を作ることを要求し、すぐに従わないと怒りを爆発させ、テーブルをたたいたり、床を蹴ったりするなどした。

 

⑤夫は、愛犬に対して

 

「うるさい、殺してしまえ。」

 

などといいながら、腹を蹴飛ばしたり、たたいたりすることがあった。

 

⑥平成15年7月、夫は、妻の義弟方やその実家に対し非常識な時間帯に電話をかけ、妻に対しても

 

「義弟の職場に乗り込んで仕事を辞めさせてやる。」

 

などと怒鳴るようになった。

⑦平成15年8月に入ると、妻に対し、義弟に関して

 

「連れてきて土下座させろ。」

「謝らないなら、殺してやる。」

「お前が行って連れて来い。断ったら刺せ。」

「女房なのだから、お前が刺せ。」

 

などと怒鳴り、妻が義弟方に行かず、電話もしないでいると、

 

「犬を殺すぞ。」

 

などと原告を脅したりした。

⑧8月14日朝、夫は妻に対し、

 

「義弟の実家に電話をして、義弟に謝らせるようにいえ。」

「義弟方を探し出し、義弟を連れてきて土下座して謝らせろ。」

 

と指示し、妻が躊躇していると、

 

「犬を殺すぞ。」

 

と脅すなどした。

⑨妻は、別居PTSDの診断を受けた。

⑩夫は、弁護士からの書面を確認したにもかかわらず、その後においても、妻の携帯電話に執拗に、かつ、時間帯を問わず、かけるとともに、妻の職場に手紙や葉書を送るなどした。

 

【判決理由】

以上の認定事実によると、婚姻関係は、長年にわたる夫の妻に対する身体的精神的虐待によって妻の意思が夫から離反して家出し、別居が継続してもはや修復の余地がなくなっており、客観的に破綻を来しているものと認められるから、婚姻を継続し難い重大な事由があるというべきである。

 

東京地方裁判所平成17年6月10日判決

【事案】

①平成11年ころから、夫は日常的にほとんど機嫌の悪い状態となり、妻の発言を無視し、言葉を掛けるのは、妻に用事があるときと怒るときだけであった。

妻には、

 

「バカ」

「この野郎」

「てめえ」

「ボケッ」

「コラッ」

 

などという言葉を繰り返し連続して怒鳴るようなった。

かねてより機嫌が悪くなると、いらだって物を蹴飛ばしたり、まきちらしたりすることもあった。

そのほか長男に暴力を振るったり、飼犬を虐待することもあった。

 

② 夫のこのような言動は平成14年頃から顕著となるとともに、同年3月ころからは、長男についても

 

「バカ男」

「バカ」

 

などと言うようにもなった。

 

③夫は妻に唾を吐きかけたり、平成14年ころからは、食べ物や飲み物をまき散らしたりするようになった。

④ 妻は、平成14年6月、子ども2人及び飼犬を伴って家を出て別居するに至った。

⑤妻による調停申立後、夫は、妻の両親や姉の夫の会社に、怒鳴った電話をかけたり他人の人格を否定するファックスを送りつけたりすることなども少なくなかった。

 

【判決理由】

夫婦関係は、別居を開始させ離婚調停を申し立てて一定期間を経過したころには、婚姻関係は破綻したものと判断することが相当である。その原因は、平成11年ころ以降とりわけ顕著となった妻を侮辱する被告の面罵や罵倒、物を投げつけたり、まき散らしたり、長男や飼犬にまで暴力を振るうなどという行為にある。

妻の離婚請求は理由がある。

 

 

モラハラを証拠で証明する必要

モラハラを離婚原因とさて認定してもらうためには、具体的な証拠が必要になります。

特に、モラハラは家庭内で行われることがほとんどであるため、これを事後的に裁判所内で証明することは容易ではなく、予め裁判手続を見越した証拠収集の準備が必要となるでしょう。

裁判では離婚の成立だけでなく慰謝料の請求も可能ですが、そのためにも具体的な証拠が必要です。

証拠集めの主な方法としては、

 

①モラハラ行為の録画や録音、

②メモや日記などによる記録、モラハラに該当するメールやSMSの保存、

③医師の診断書

 

等が考えられます。

また、これら客観的な資料のほか、証人尋問の証言や当事者尋問による供述に加えて、尋問中の応答状況も事実認定を補強するものになります。

さらに、家庭裁判所調査官による子の意向調査に関する調査報告書の内容を事実認定の証拠としてする裁判例もあります。

 

 

①録画や録音

モラハラ行為の録画や録音では、隠しカメラを設置したりICレコーダーを常に持ち歩いたりして、加害行為を客観的に記録しておことが重要です。

これらの記録化は秘密録音録画で行います。

むしろ、録音等をすると告知した上で、モラハラ行為を記録することはほぼ不可能でしょう。

録画や録音は、モラハラの声のトーン、声量、発声のスピード、行為者の表情を分かりやすく説明することができ、手紙やメールなどの証拠では伝え切れない部分も証明できる有用な証拠です。

モラハラ行為の証明においては、録画や録音が裁判官に対して、最もモラハラの内容やその程度を伝え易い客観資料と言えるでしょう。

可能な限り多くの録画や録音データを収集するように心がけましょう。

 

②メモや日記

メモや日記はなるべく克明に記述することで信憑性が深まります。

モラハラに該当するメールやSMSは、誤って削除してしまうケースが少なくありません。

そういったケアレスミスを想定した対策として、スクリーンショットによる撮影が推奨されています。

なお、日記の場合、モラハラ行為を受ける都度、書き残すように心掛けてください。

日記がモラハラ行為を証明する有用な証拠となるためには、過去のモラハラ行為を振り返ってまとめて記録したものでは不十分です。

なぜなら、過去の記憶を辿って作成した日記の場合、その過去の記憶が事実に沿った正確なものとは評価されにくいからです。

そのため、モラハラ行為の都度、新鮮な記憶を基に作成されたもので、数回の記録に留まらず、継続して作成されたものであることが重要となります。

 

③診断書

医師の診断書も、裁判では重要な証拠の1つになります。

そのため、モラハラが原因で心身に不調が生じた場合には、必ず病院に行って医師の診察を受けておくことが大切です。

診断書の作成を依頼する際には、可能な限り、具体的な症状、これによって受ける影響(就労が可能か否か等)、症状が発生するに至った経緯を記載してもらうように申し出ましょう。

 

モラハラで離婚を請求して結果を得るまでの一般的なプロセスとは

協議離婚

モラハラを原因として離婚したい場合には、まず配偶者に当事者間の話し合いを申し出たうえで協議離婚を目指します。

離婚調停や離婚訴訟は、後述するように裁判所を介した手続であるため、時間を要することが多く、また、諸々の費用もかかります。

そのため、まずは離婚協議を進め、負担の少ない速やかな解決を目指します。

当事者だけで話し合うことも可能ですが、不安な場合は弁護士に相談したうえで法的な理論武装をしておくと安心です。

多くの離婚は協議でまとまりますが、相手が加害行為を認めなかったり感情的になったりして、成立に至らないケースも少なくありません。

また、慰謝料、親権や養育費、財産分与といった離婚条件を理由に離婚がまとまらないこともよくあります。

こういった場合には、家庭裁判所に家事調停を申し出て調停離婚を目指すことになります。

なお、離婚時に決めておかなくてはいけない事項は、親権者を誰にするのかといった点のみです。

その他の財産分与、養育費、年金分割といった金銭請求は、離婚後に請求することは可能です。

そのため、これら金銭請求に関する離婚条件が理由で離婚協議が進展しないのであれば、これら金銭請求にかかる条件を棚上げにして、離婚を成立させることも一つの手です。

ただ、離婚を急ぐあまり、かえって将来の交渉を難しくすることもありますから、離婚条件を棚上げにして離婚するか否かは慎重に検討されるべきでしょう。

 

離婚調停

家事調停とは、裁判官1名と男女1名ずつの委員によって構成された調停委員会によって、家庭問題を解決するための斡旋を行う手続きのことです。

原則として裁判官は調停の場には加わらず、主に2名の調停委員が双方の意見を聞き取ったうえで解決策を提示します。

調停期日の当日は、調停室に2名の調停委員が在室し、申立人と相手方がそれぞれ入れ替わりで調停室に入室し、調停委員に対して、各当事者の言い分を話します。

調停期日では、申立人と相手方が対面しないように配慮されています。

離婚調停は、1月半から2ヶ月に一回の頻度で行われます。

事案にもよりますが、3回から5回ほど調停期日を実施します。

調停委員の仲裁により、双方が納得すれば調停離婚は成立しますが、一方が調停に応じなかったり離婚や慰謝料の支払いを拒否したりすれば不成立となります。

こういった場合の最終手段として用意されているのが、家庭裁判所による離婚裁判(人事訴訟)です。

 

離婚訴訟

離婚訴訟は、原則として当事者が裁判所に出廷して行われます。

ただ、弁護士に対して委任している場合には、証人尋問を実施する場合は除き、訴訟当事者が裁判所に出廷することはありません。

離婚訴訟では、1か月半から2ヶ月に一回の頻度で裁判期日が行われます。

しかし、夏季休暇や長期休暇などがある場合には、さらに先の日程が裁判期日となることもあります。

このように、離婚訴訟では、短くても1年の時間を要します。

証人尋問を実施したり、手続が控訴審まで移行しているような場合には、さらに時間を要してしまいます。

そのため、訴訟手続の長期化により、精神的に過大な負担が生じることがよくあります。

訴訟手続では、双方が述べた言い分や提示した証拠を裁判官が精査して、認定した事実を基礎に判決を出します。

しかし、先程述べた長期化による不都合を避けるために、裁判官は和解協議を提案することが多くあります。

和解協議は、双方や一方が納得できない部分を裁判官の仲介による協議で解決に導き、長い裁判による当事者の負担を軽減するための方策です。

 

最後に

モラハラ行為を理由として離婚請求には、上述したとおり、事前の証拠収集が非常に重要となります。

しかし、モラハラを行う配偶者と同居している期間、弁護士や専門家に相談する機会もないかもしれません。

ただ、配偶者の言動や対応に異常さを感じ始めたのであれば、第三者に対してまずは相談してみましょう。

そのうえで、専門的な判断や対応を必要とするのであれば、ぜひ当事務所にご相談下さい。

当事務所では、初回相談30分を無料で実施しています。

対応地域は、大阪市、東大阪その他大阪府全域、和歌山県、奈良県、その他関西圏全域となっています。

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