不貞行為を理由とした慰謝料請求をする場合、慰謝料請求をする方が、不貞行為の存在を証拠に基づいて主張立証しなければなりません。つまり、慰謝料請求をする方に立証責任があるということを意味します。
では、不貞行為を立証するために役立つ証拠とはどのようなものがあるのでしょうか?
については、別コラムをご参照ください。
1 LINEやメール等のやりとり
LINEやメールの画面のスクリーンショットや写真、バックアップデータを不貞行為の存在を裏付ける証拠として提出することは頻繁にあります。これらLINEメッセージが不貞行為の存在を証明できる有意な証拠となるか否かは、その内容次第です。
単に継続したやりとりの存在が確認できるだけでは、不貞行為の証拠としては「弱い」と考えます。
また、「愛してる」「好き」等の愛情表現を述べるやりとりについても、その他の客観的証拠の状況にもよりますが、このやりとりのみでは不貞行為の証拠としては「やや弱い」と考えます。
他方で、やりとりの内容から肉体関係を伴う面会をしていることが強く推認できるような内容のやりとり、例えば、ラブホテルに行く約束をするやりとりあるいは面会当日の待ち合わせに関するやりとり、性行為後の感想を述べるやりとりなどがある場合には、不貞行為の証拠として「強い」と考えます。
また、性行為そのものを撮影した写真やラブホテル内で撮影された写真をLINEやメール上で送受信している場合には、不貞行為の証拠としては、「かなり強い」と考えます。
上述のとおり、LINE等のやり取りの内容が肉体関係を推認させるに十分なものかどうかがポイントです。
ただ、不十分な内容であったとしても不貞行為の存在を証明できないわけではありませんので、継続して証拠収集に努めるべきでしょう。また、十分な内容でなかったとしても、男女間で継続してやりとりをしていることの証明に役立ちますので、できるだけ消去することなく保全に努めてください。
2 探偵や調査会社の調査報告書
配偶者や不貞相手を追尾した様子を撮影した、探偵や調査会社による調査報告書も証拠として提出されることは頻繁にあります。
これらも同様に、調査報告書の内容が不貞行為の存在を裏付けるに十分なものか否かがポイントです。
配偶者と相手方がラブホテルに入退室する様子が撮影されている場合や、入室する様子あるいは退室する様子のいずれかが撮影されている場合も、不貞行為の証拠としては「強い」と考えます。時々あるご相談として、「入室(退室)だけでなく退室(入室)の様子も撮影されている必要があるか?」ですが、ラブホテルに配偶者と相手方が入室していること状況を明確に証明できるのでしたら、退室の様子までは必須ではないと考えます。
ビジネスホテルに入退室する様子が撮影されているケースではどうでしょうか。ラブホテルとの違いは、ホテルを利用する用途が性行為に限定されていないという点です。ただ、入室する日時・入室する部屋の間取り・入室時間・相手方の関係性(会社同僚の場合、業務上の必要からビジネスホテルを利用したという反論がされることがあります。)を踏まえ、ビジネスホテルへ入室あるいは退室する様子が撮影されている場合には、不貞行為の存在を証明できるケースが非常に多いと考えます。
ホテルではなく自宅での宿泊の様子を撮影した場合はどうでしょうか。相手方からは、プラトニックの関係であり性行為には及んでいないという反論はよくなされます。その他の客観的な状況にもよりますが、成人した異性が夜を共にしたのであれば、肉体関係も伴っていると判断されることが比較的多いと考えます。
なお、探偵や調査会社の調査費用について、これが不貞行為に基づく損害といえるか否かという点も頻繁に問題となります。時に、調査費用が弁護士費用どころか慰謝料額よりも高いケースもあります。調査費用の全額が損害として認定されるケースは非常に稀ですので、調査会社等に依頼される場合には、調査費用があまり高くならないようにご留意されるべきと考えます。
3 その他
上述しました1と2以外にも、不貞行為を認める配偶者や不貞相手の覚書等の文書や音声の録音データが提出されることもよくあります。いずれも、不貞行為を証明できるだけの内容が含まれているかが重要です。また、作成過程において、無理矢理書かされたなどの主張もなされることがありますので、作成内容だけでなく、作成に至る過程についても留意するべきでしょう。
4 最後に
不貞行為があるだろうと強く考えていても、それを裏付けるに十分な証拠がないケースはよくあります。同居をしているうちに、できる限りの証拠を収集した上で、別居あるいは離婚をすることが肝要かと思います。
ご不明な点がありましたら、一度ご相談ください。

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