ライフスタイルの変化や多様化により、結婚した夫婦の生活の様式も変わってきています。
かつては、夫婦は同居して当たり前でした。今でも多くの夫婦は同居婚を選択します。しかし、その中でもあえて「別居婚」という特殊なスタイルを採用する夫婦もいます。
別居婚は、夫婦の様式として特殊である分、メリットだけでなくデメリットもあります。
夫婦としては、別居婚に伴うメリットやデメリットをよくよく理解をして、納得をした上で別居婚を選択するべきか決めるべきです。
本記事では別居婚について弁護士が解説を加えていきます。
別居婚とは~ライフスタイルとしての別居~
別居婚とは、同居することができない理由もなく、夫婦関係が悪化または破綻していないにもかかわらず、夫婦が自分たちの意思で別々に暮らす場合です。平日は別々に暮らすものの週末は一緒に過ごす夫婦や、何か困ったことがあったときに相談したり助け合ったりするという夫婦など、様々なスタイルがあります。
単身赴任との違い
夫婦が一緒に暮らさない場合には、他にも、夫婦の一方が転勤することになったときに子供の学校等の事情で単身赴任をする場合があります。
単身赴任は、子供や親の介護等の事情から、夫が一人で転勤先に住居を移す場合です。単身赴任は、家庭内の事情から致し方なく住居を異にする場合ですので、別居婚のように同居できるのに居を異にする場合とは異なります。
家庭内別居との違い
夫婦関係が悪化ないし破綻したために、同じ家で暮らしているものの食事も別で話もしないというような夫婦の状況を家庭内別居といいます。
別居婚との違いは、夫婦関係が悪化しているものの、同居をしている点です。
別居との違い
夫婦の一方が自宅を出て別々に暮らすことになった場合もあります。
単なる別居の場合、夫婦関係が悪化したことで、離婚に向けて別居することを指します。別居の理由は様々で、性格の不一致、不貞行為、DV等が挙げられます。
ここでいう別居婚は、そういった事情がないのに、いわばライフスタイルとして別々に暮らす場合を指します。


別居婚は同居義務に反しないのか?
別居婚は同居義務に違反せず法律上認められます。
民法752条は「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と定めています。しかし、例えば単身赴任の場合を考えればお分かりいただけると思いますが、正当な理由がある場合には同居義務違反にはならないと考えられています。
ですから、夫婦が同居しないという合意をしている場合にも同居義務違反にはならないと考えられます。なお、同居義務違反になる場合であっても、同居は無理やりさせても意味はありませんので、強制的に同居させることはできないとされています。
別居婚のメリットとデメリット
別居婚は、一般的な夫婦の生活様式とは異なるため、メリットもあれば、デメリットがあります。
別居婚のメリットやデメリットを十分に理解した上で、別居婚を選択するべきか決定するべきです。
別居婚のメリット
別居婚のメリットを紹介します。
自由な時間を確保できる
別居婚のメリットは、個々人の自由な時間を多く確保できる点です。同居婚であれば、多くの時間を夫婦で共有します。これは良くも悪くも夫婦の個々人の自由な時間が犠牲にされることを意味します。
他方で、別居婚であれば、それぞれが生活の本拠を異にするため、夫婦がお互いに拘束されずに自由に生活できることにあります。
趣味や仕事に集中できる
夫婦の他方の生活リズムに合わせる必要がなく、仕事や趣味に没頭したり、友人との交友関係を深めたりすることができます。
新鮮な関係性を維持できる
同居婚の場合、夫婦の関係がマンネリ化してしまい、いつの間にか新鮮さを失ってしまうことがあるかもしれません。他方で、別居婚であれば、接触する機会が少ない分、新鮮な関係性を維持できる場合があります。


別居婚のデメリット
別居婚にもデメリットはあります。
財産分与が少なるかもしれない
財産分与とは、夫婦が離婚する場合に、その一方が婚姻中に築いた財産(共有財産)を清算するためにその分与を求めることをいいます。
財産分与の対象は別居時点で残っている共有財産を対象としています。
しかし、別居婚であれば、そもそも同居生活を送っていません。そのため、夫婦の経済的な協力関係がないことを理由に共有財産の存在が認められない可能性があります。
共有財産の所在が分からない
財産分与の請求をする場合、どのような財産があるかについては、お互いに財産を開示し、あるいは、相手方に対して財産を開示するよう求めることになります。
しかし、別居婚の場合、相手方がどのような財産を持っているかよく分からない可能性があるので、夫婦の一方が財産を隠した場合には、他方が不利になることもあります。もちろん、同居婚の場合も同じようなことが起こり得ますが、別居婚の場合にはより一層、他方の財産の状況が分からないということがあり得るわけです。
不貞行為に気付きにくい
別居婚であれば、生活の本拠を異にしますから、配偶者の生活状況を把握することが難しいです。そのため、配偶者の不貞行為に気付きにくいデメリットがあります。
また、浮気・不倫の兆候を掴んだとしても、同居されていないことから、不貞行為を裏付ける客観的な証拠を確保する機会を得られないデメリットもあります。
不貞慰謝料が減額される可能性がある
別居婚であっても、夫婦の一方が浮気・不倫をすれば、不貞行為の慰謝料請求をすることはできます。
しかし、婚同居婚の場合と比べると、夫婦関係がやや希薄であると考えられる場合もあるでしょうから、そのような場合には別居婚であることが慰謝料が減額される事由になることもあると考えられます。実際にも、別居婚であることを慰謝料の減額事由とした裁判例も見られます。
不貞行為の故意や過失が否定される可能性
不貞相手に対する不貞慰謝料が認められるためには、不貞相手に既婚者であることを知っていること(故意)、または、知らなかったとしても知らないことに過失があることが必要です。
しかし、別居婚の場合、不貞の相手方が夫婦の一方が婚姻していることに気付かなかったり、夫婦関係が破綻していると誤認したりしたために、不貞の相手方に対する慰謝料が認められない可能性もあります。
夫婦の離婚問題は弁護士に相談を

別居婚では、同居婚のような共同生活の実態がないことから、離婚時の財産分与や慰謝料請求において影響を及ぼす可能性があります。ただ、「別居婚」特有のメリットもあり、円満な夫婦関係を持続できる可能性も十分にあります。
万一、別居婚において、夫婦間の問題が生じる場合には、複雑な法解釈を含む可能性がありますので、早めに弁護士に相談することをおススメします。
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