ブログ

専業主婦が離婚を成功させるための準備ついて弁護士が解説

専業主婦が離婚を成功させるための準備ついて弁護士が解説

離婚の決断は単に配偶者と別れるだけではなく、その後の生活を大きく左右する重要な事柄です。仕事や育児など離婚後の生活における様々な問題をクリアする必要がありますが、専業主婦はこれらの問題が原因で離婚を躊躇してしまうケースがあります。離婚を行う際は事前の準備をしっかりと済ませることが重要と言えるでしょう。ここでは離婚における専業主婦ならではの問題点や必要な準備の詳細についてお伝えします。

専業主婦ならではのリスクについて

金銭的な問題を理解する

協議離婚をする場合、これは結婚する時と同様に夫婦間の話し合いで決めるものです。当然ながら、これまでの夫婦の共同生活が終わり、単身者として生活をしなければなりません。特に専業主婦の場合、何よりもまずは離婚後の収入について考えなければいけません。

専業主婦は配偶者である夫の収入で生活していますが、離婚後は自分で働く必要があります。婚姻関係さえあれば、夫は妻を扶養する義務がありますから、婚姻費用といった生活費を支払う必要がありますが、離婚をすればもはや赤の他人ですから、この婚姻費用を支払う法的な義務はありません。子どもがいれば夫は子供の養育費を支払う義務はありますが、子どもがいない場合には、夫が妻に対して離婚後に継続して支払続けるお金はありません。

離婚によって配偶者から慰謝料を貰える場合もありますが、それだけに頼ることはできません。また、離婚の原因が自分にある場合は逆に慰謝料を払うことになる可能性もあります。

そのため、離婚後、仕事ができないなどの特段の事情がなければ、早期に就労を開始することは必須と言えるでしょう。結婚後、専業主婦としての期間が長い場合には、仮に就職ができたとしても、正社員ではなく契約社員やパートタイマーに留まってしまい十分な労働条件の下で就労できるとは限りません。

そこで別居は継続するものの離婚については早まらないように離婚後の生活状況を十分にシミュレーションするようにしましょう。

婚姻費用や養育費

先程解説しました婚姻費用や養育費についてですが、離婚をするべきかを判断するにあたっては、婚姻関係を続けることによって継続して受け取れる金額と離婚によって受け取れる金額を対比して、どちらが経済的に有利かをよく精査しなければなりません。

まず、婚姻関係を続けることによって、夫は妻に対して婚姻費用を支払う必要があります。婚姻費用の計算は、裁判所が公開している算定表にしたがって行います。

婚姻費用算定表

この算定表の見方ですが、縦軸が「義務者の収入」つまり夫の収入、横軸が「権利者の収入」つまり妻の収入になります。仮に夫の収入が給与収入で総支給額が500万円、妻が専業主婦で無収入であったとしても、120万円の収入を認定されることが多いです。なぜなら、専業主婦で無収入であったとしても、子どもがいない、あるいは、子どもがいたとして日中就労することができるのであれば、仕事をして収入を稼ぐことができる能力(潜在的稼働能力と言います。)を有しているといえるからです。

夫が500万円、妻が120万円で、14歳以下の子どもが一人の場合、縦と横の赤矢印が交わる「8~10万円」の真ん中あたりが婚姻費用となります。つまり、9万円前後が妥当な婚姻費用額という事になります。

仮に、専業主婦が、住宅ローン付の夫名義の自宅不動産に居住している場合には、専業主婦の妻は居住費の負担を免れていますので、先ほどの婚姻費用額から収入に応じた居住関係費(2万3千円前後)を控除することになります。

このような婚姻費用は、たとえ別居生活が継続されていたとしても、婚姻関係が続く限り、夫が妻に対して負担し続けなければならないものです。

他方で、離婚をすると、夫は妻に対する扶養義務を負わなくなり、未成熟の子どもがいる場合に限り所定の養育費を支払う義務を負うに留まります。

よって、離婚をするか否かの判断では、①ⅰ婚姻関係が続く限り取得できる婚姻費用の金額ⅱ調停や離婚訴訟に至る場合に、いつまで婚姻関係を維持させることができるのかという事情と②離婚後の生活状況(子どもがいる場合には、離婚により児童扶養手当等の手当の金額やその他の助成金を受給できるか)を比較して、離婚か婚姻関係の継続かのどちらが経済的にみて合理的といえるかといった基準をもって判断することも重要です。

児童扶養手当などの受給額を確認する

離婚後の生活状況をシミュレーションするにあたり、離婚後の給与見込額と養育費見込額だけでなく、児童扶養手当やその他助成金の金額をチェックしておくべきです。

一人親のために支給される手当は児童扶養手当に限らず数多く存在しています。自治体特有の手当も存在しているため、お住まいの自治体のWebサイトを確認し、どのような手当を受給できるのか確認しましょう。

大阪市のWebサイトでは多くの手当等が紹介されていますので、参照してください。

 

生活拠点の確保

生活拠点の確保が容易ではないことも専業主婦が離婚を躊躇する原因です。

別居に際し自宅を退去する場合

同居期間中、専業主婦である妻は、夫名義の賃貸物件や住宅ローン付の自宅不動産に居住していることがほとんどです。

別居に際して、専業主婦がこれら夫名義の自宅から退去した場合、一時転居先として、実家や親族の自宅を借り住まいとして利用するケースもあります。しかし、親や親戚にも自分の生活があるので、いつまでも厄介になるわけにはいきません。部屋数や生活費などに余裕がない場合は自分で生活拠点を確保する必要がありますが、離婚によって配偶者の収入が得られなくなった状態では賃貸物件の入居契約が難しいのも事実です。

別居後も自宅に居住し続ける場合

賃貸の場合

他方で、別居後においても、夫名義の自宅に住み続けるケースもあるでしょう。自宅が賃貸物件の場合、賃借人である夫が賃貸借契約を解約するケースがほとんどですので、事実上専業主婦である妻はその自宅から退去させざるを得なくなるでしょう。仮に、賃貸借契約を解約されてから居住し続けた場合、賃貸人であるオーナーから明渡請求や賃料相当損害金の支払請求を受けるリスクもありますので注意を要します。

住宅ローン付自宅不動産

次に自宅が住宅ローン付の不動産の場合、所有者である夫は容易には自宅不動産を売却することはできません。なぜなら、係争中である妻が自宅不動産を占有し続けていることから、このような不動産をわざわざ買い受ける不動産業者や購入希望者が現れにくいからです。

また、夫が、住宅ローンの支払を意図的に滞納させて自宅不動産を競売にかけようと試みることも考えられます。しかし、この方法もあまり現実的ではないです。なぜなら、住宅ローンの支払を滞納させれば、いわゆるブラックリストに登録されることになり、クレジットカードを作成したり、ローンを組むことができなくなるなど、当面の間金融取引を行えなくなるリスクがあります。しかも、競売により自宅不動産を処分する場合、任意売却による処分よりも安い金額で処分されることが多いため、オーバーローン(処分価格より債務残額の方が大きいこと)が大きくなります。自宅不動産の処分痕に残った住宅ローンの残りはすべて夫の負担となります。そのため、夫は住宅ローン付の自宅不動産を処分することは容易くありません。そこで、住宅ローン付の自宅不動産に居住する場合には、安易に自宅不動産を明け渡すのではなく、十分に離婚条件を協議してから自宅不動産を明け渡すか否かを判断するべきでしょう。

 

有利な条件で離婚するための準備

有責配偶者による離婚請求

夫が離婚原因となるような不貞行為やDVに及んでいる場合、妻は夫に対して、これらを理由とした損害賠償請求をすることができます。しかし、これだけに留まらず、夫が不貞行為やDVといった離婚原因を作出している場合、いわゆる有責配偶者となります。有責配偶者は、その配偶者に対して原則として離婚を求めることは信義則に反するとして認められません。特に、未成熟の子供がいるような場合には、一層離婚することが難しくなります。

これはすなわち、いくら夫が離婚を強く希望していたとしても、妻が離婚しない立場を取り続けるのであれば、しばらくの間離婚することができず、離婚できるまでの間、妻に対して婚姻費用を負担し続けなければならないということを意味します。離婚ができない期間はケースバイケースですが、中には10年以上離婚できない事案もあります。

このような状況は、専業主婦からすると、離婚慰謝料や財産分与、養育費といった離婚条件の全般を協議する上で非常に有利な立場で交渉できることを意味します。

同居中に資料収集する必要性

このような不貞行為やDVの事実が存在していたとしても、事後的にこれらを証明できなければ意味がありません。たとえ、不貞行為やDVに関する事情を知っている親族や知人がいて、これらの者が証言できるとしても、客観的な資料がなければ意味がありません。裁判所では、証言、特に本人の証言や本人に有利な証言をし得る第三者の供述は決定的な証拠にはなりにくいです。

その上、一度別居をしてしまうと、夫の動きを把握し辛くなり、離婚原因に関する証拠を収集することは難しくなることが多いです。

さらに、別居後の不貞行為については、別居により既に夫婦関係が破綻しているとして、損害賠償の対象とならない可能性があります。そうすると、別居後に不貞行為の証拠が収集できても、既に婚姻関係が破綻してから行った不貞行為だから違法ではないという反論がされることがあります。

このようなことから、無理をしないように同居している間に有利となる客観的資料を収集するように努めてください。

有利な証拠の集め方

離婚原因となる事情に応じて収集方法は様々です。

不貞行為に関しては、LINEやメールの写真、ラブホテルの利用履歴、調査事務所(探偵社)の調査報告書などが証拠として提出することが多いです。注意点としては、探偵社の調査費用については、その全額が損害として回収できるわけではありません。通常は不貞行為の証明に直結したような調査に要した時間に限り損害として認められる傾向です。ただ、調査以前から既に不貞行為を証明できるだけの証拠を有している場合には、調査費用の一部についても損害と認められないこともあります。

DVやモラハラについては、LINEやメールの履歴、暴行を受けた痕の写真、医師の診断書、日記、録音や録画データといった証拠が提出されることが多いです。日記については、事後的に記憶を辿りながらまとめて作成してもあまり意味はありません。その都度日記に具体的に書き留めておくことが重要です。いずれも、事後的に裁判に発展するかもしれないという予測の下で、予め計画的に収集しておかなければならないものです。そのため、夫の暴力や暴言が常軌を逸していると感じれば、念のため様々な方法で記録化しておくようにしましょう。

財産分与に備える

離婚に関する金銭の問題と言えば慰謝料や子供の養育費というイメージがありますが、それ以外にも離婚に関する金銭の問題は存在します。離婚における金銭のやり取りで問題になりやすいのが財産分与です。

離婚に際して、夫婦の共有財産を対象として、財産額の多い方から少ない方に分けることです。

基本的には別居した時点で、夫と妻が所有している共有財産を5:5の割合によって分与します。

財産分与において問題となりやすいのが、①財産の有無や内容と②共有財産か特有財産か?です。

①については、相手方が別居時点において有している財産がどのような内容で、どこにあるのか、具体的には、預金であれば、金融機関名だけでなく、どこの支店なのか、投資信託であれば、投資信託を有している形跡はあるものの、取引をしている証券会社がどこか?といった問題が生じやすいです。特に預金については支店名まで分からなければ調べようがないこともありますので、同居中に夫側の財産構成を把握しておくようにしましょう。ちなみに、夫の別居時点の退職金も財産分与の対象となりますので、忘れないようにして下さい。

②については、結婚前から有していた預金、相続した遺産、両親から贈与を受けた財産などは、共有財産には当たりません。ただ、これらについては、預貯金の履歴や契約書などの客観的な資料により特有財産であることを証明できなければ、共有財産として扱われますから注意を要します。

子供との面会交流を実施する

離婚するにあたって、財産分与、慰謝料、養育費といった様々なお金に関わる事項を決めなければなりません。夫婦関係が破綻しており、互いに冷静に協議ができる状況にはないことがほとんどです。そのため、夫側も、財産分与や慰謝料について一歩も譲らないという態度を示してくることも多いです。

そのような状況で、一つの打開策として機能するのが子供の面会交流です。

本来、子供の面会交流と財産分与等の離婚条件は別の問題ですし、面会交流は子供のための権利ですから、面会交流を離婚条件の交渉材料に使うことは適切ではありません。

しかし、多くの離婚事案では、妻側は子供の面会交流に消極的になることが多く、そのことが夫のフラストレーションを溜める要因となっていることも多いです。

そこで、面会交流を行うことが子の福祉に反するような特段の事情がないのであれば、面会交流を積極的に実施するようにします。特段の事情もないのに、面会交流を頑なに拒否することはあまりお勧めしません。

離婚事例に詳しい弁護士を頼る

弁護士と言えば裁判で活躍するイメージがありますが、実際は様々な問題について法律の知識に基づいたアドバイスを行うのが主な仕事です。離婚問題についても同様であり、有利な条件で離婚を成立させるためのアドバイスを求めることができます。

弁護士に相談することで離婚における問題点を正しく認識できる他、法律の専門家にアドバイスしてもらったことで精神的な疲労の軽減を期待できます。

弁護士にアドバイスしてもらったことが励みになり、最後までやり遂げる意思の強さに繋がると言えるでしょう。調停や裁判にまで至った場合でも弁護士に依頼することで有利に話を進めることが可能ですが、そのためには離婚に至る原因を客観的に見据えて冷静に対処する姿勢が必要です。

できるだけ早めに、無料法律相談などを利用しながら、信頼の置ける弁護士に相談しておくことが肝要です。

準備することは多いが諦めないことが肝心

離婚するのは個人の権利ですが、離婚した後の生活を考えると躊躇してしまうのも事実です。特に専業主婦の場合は働き口を見つけることが容易ではないため、諦めてしまうケースも少なくありません。しかし、事前の準備をしっかりと行い、正しい知識を持つことで離婚後も安定した生活を営むことが可能になります。準備する事柄が多いので決して簡単ではありませんが、諦めずにやり遂げることが肝心と言えるでしょう。

PAGE TOP