コラム
公開日: 2025.01.17

生前贈与を受けている時に相続放棄できる?注意点や流れを弁護士が解説|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

生前贈与を受けながら相続放棄できるのか、悩んでいる人もいるのではないでしょうか。

結論としては、生前贈与を受けながら相続放棄をすることができます。あくまでも、生前贈与と相続放棄はそれぞれ別の法律行為です。相続放棄では、相続開始後に遺産を処分することを認めていませんが、生前に財産を取得することを禁止していません。

ただ、相続放棄できるとしても、いくつかのリスクがあります。例えば、故人の債権者から詐害行為取消権を行使されたり、その他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。また、相続税を納税しなくてはいけないケースもあります。

本記事では、相続放棄と生前贈与がどのような影響を及ぼし合うのか、注意すべきポイントや手続きの流れを詳しく解説します。

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生前贈与を受けても相続放棄できる

生前贈与を受けている場合でも、相続放棄は可能です。生前贈与と相続放棄は、異なる手続きであり、互いに独立した制度です。したがって、生前贈与を受けたからといって相続放棄ができないわけではありません。

生前贈与とは何か?

生前贈与とは、贈与者が自分の財産を死後ではなく生前に無償で譲渡する行為です。生前贈与は、資産を後世にスムーズに引き継ぐための手段として活用されます。特に、相続税の負担を軽減する目的で、生前贈与は戦略的に計画することが多いです。

ただし、贈与税の基礎控除(110万円)を超える生前贈与については、贈与税が発生するため贈与税の申告が必要となります。 

また、生前贈与の対象となる財産は預貯金や現金となることが多いですが、不動産や株式等の金融資産を生前贈与の対象とすることもできます。

相続放棄とは

相続放棄とは、法定相続人が、はじめから相続人ではなくなることで、相続財産である資産と負債を放棄することを指します。

法定相続人は、相続分に沿って資産と負債を引き継ぐのが原則です。しかし、自分のために相続開始があったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をすることで、借金を含めた相続財産の引き継ぎを拒否することができます。

生前贈与と相続放棄の関係

生前贈与を受けたとしても、相続放棄を行うことは可能です。

これは、法律上、生前贈与が相続放棄をする条件に含まれていないためです。

生前贈与とは、被相続人が生前に財産を他者へ贈与することを指しますが、これを受け取ったからといって、将来的な相続放棄の権利を失うわけではありません。

相続放棄では、相続開始から3か月以内に手続をすること、単純承認となる処分行為等をしないことが条件となりますが、生前贈与を受けていないことは条件としていません。

したがって、生前贈与を受けたていても、相続放棄の条件を満たすのであれば相続放棄を選択できます。

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生前贈与を受けて相続放棄する時の注意点

生前贈与を受けて相続放棄を考える際には、いくつかの重要な注意点を理解しておく必要があります。まず一つ目に挙げられるのは、詐害行為取消権のリスクです。さらに、相続放棄を一度行うと撤回ができないため、慎重に判断することが求められます。特に、相続放棄をする際には期限を過ぎないことが重要で、これを過ぎると放棄が認められないため注意が必要です。

また、配偶者居住権を主張できなくなる点にも留意する必要があります。

最後に、生前贈与をしていても場合によっては相続税が発生することがあります。

これらの点を考慮し、適切に対応するよう心がけることが大切です。

参照|法務省:配偶者居住権とは何ですか?

詐害行為取消権を行使されるリスク

生前贈与を利用して債権者からの債権回収を回避しようとする行為は、詐害行為と見なされる可能性があります。

詐害行為取消権とは、債務者が自らの財産を減少させることにより債権者の債権回収を困難にさせた場合、債権者が処分行為を取り消すことができる権利です。

例えば、贈与者が、債権者に対する支払いができなくなることを知りながら、親族に財産を贈与したことで無資力となった場合、債権者は詐害行為取消権を行使し、贈与された財産を取り戻す手続きを進めることができます。

生前贈与を受ける際には、贈与者の資産状態や債務状況を十分に認識した上で、債権者を害することがないかを慎重に検討することが望ましいです。

相続放棄をすると撤回できなくなる

相続放棄を一度すると、その後撤回できなくなります。相続の放棄をすると、相続開始時から相続人ではないことになり、相続人としての一切の権利と義務を失います。つまり、相続財産中に負債がある場合、その債務を免れることができますが、同時に資産を引き継ぐ権利も放棄することになります。

相続放棄をしたい背景は多種多様ですが、相続放棄後にプラスの財産が見つかった場合でも、放棄の撤回は認められません。

このように、相続放棄は非常に大きな決断です。そのため、手続きを始める前にしっかりとした調査と検討が求められます。

相続放棄の期限を過ぎないように注意する

相続放棄を検討している場合、相続放棄の期限を過ぎないように注意することが非常に重要です。相続放棄の申述は、被相続人が亡くなったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に行う必要があります。この3ヶ月間は熟慮期間と呼ばれ、相続を受けるか放棄するかを決定するための期間です。この期間内に相続放棄の申述をしなかった場合、相続を承認したものとみなされることになります。

相続放棄をするか否かを判断するにあたっては、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や未払い金といったマイナスの財産も含め、全容を把握することが重要です。

そこで、遺産額が多額であったり、複数の負債がある場合には、早期に弁護士に相談して、相続財産の調査を進めることが推奨されます。もし、相続放棄の期限が過ぎてしまった場合は、相続放棄の申述が認められないことが多いため、期限を過ぎないよう計画的に進めることが何よりも重要です。

配偶者居住権を主張できなくなる

相続放棄をすることで、配偶者居住権を主張することができなくなります。

配偶者が、故人の持っていた建物に相続開始時に居住していた場合、遺産分割によってその居住建物に無償で住み続ける権利を得ることができます。これを配偶者居住権といいます。

しかし、配偶者居住権は、相続人としての地位を有していなければ取得することができません。そのため、配偶者が相続放棄を選択すると、相続人としての地位を失うため、配偶者居住権も主張できなくなります。

ただ、相続放棄をしても、2号配偶者短期居住権を得ることはできます。2号配偶者短期居住権とは、居住建物の所有権を取得した人が配偶者に居住権の消滅を申入れしてから6か月が経過するまで配偶者はその居住建物に居住できる権利をいいます。この短期居住権は、相続放棄をした場合でも主張することができますが、いずれは退去しなければなりません。

そのため、長期的に住居の安定を確保するため、配偶者居住権の存在を理解した上で、相続放棄するべきか検討しましょう。また、相続放棄することが予想される場合には、生前に居住建物を贈与することも検討しましょう。

遺留分侵害額請求を受けるリスク

生前贈与を多く受ける場合、他の相続人の遺留分を侵害するリスクがあることには注意が必要です。

遺留分とは、法定相続人が最低限取得できる相続分を指します。もし生前贈与によってこの遺留分が侵害されると、他の相続人は遺留分侵害額請求を行う権利を持ち、贈与を受けた者から一定額の返還を求めることが可能です。

具体的には、相続人の大部分の財産を生前贈与したことで、相続開始時に遺留分を下回る遺産しか残っていない場合には、相続人の遺留分を侵害することになります。この場合には、遺留分権利者が遺留分侵害額請求を行うことになります。この請求は、相続開始後1年以内に行う必要があり、それを過ぎると権利が消滅します。

そのため、生前贈与を受ける場合には、遺留分侵害額請求を受けるリスクを理解した上で進めていきましょう。

ただし、遺留分の対象となる生前贈与は、相続人に対する贈与であれば相続開始前10年間、相続人ではない人に対する贈与であれば相続開始前1年間にされた贈与に限定されます(原則)。

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生前贈与でも相続税が発生することも

生前贈与を受けた場合でも、相続税が発生する可能性があります。税負担についても留意しながら進めていきましょう。

相続開始前7年以内に生前贈与をしている場合

相続開始前7年以内に贈与を受けた財産は、相続税の課税対象として加算されることがあります。

税制の改正により2024年1月1日以降の生前贈与については、その対象期間が3年から7年に伸長されました。ただ、相続開始前3年間の生前贈与はそのまま持ち戻しの対象となりますが、4年以上前の生前贈与については、100万円を控除した後の残額が持ち戻しの対象となります。

相続時精算課税を利用している場合

相続時精算課税を利用して生前贈与を受けていても、相続放棄することはできます。

相続時精算課税とは、60歳以上の父母や祖父母が20歳以上の子供や孫に対して贈与する際に、最大2500万円までであれば贈与税が生じない制度です。

ただ、贈与税がかからないとしても、相続時に相続税が発生します。つまり、相続財産に相続時精算課税による贈与財産を加えて相続税を計算することになります。

基礎控除内や債務超過であれば相続税はかからない

生前贈与を加えた金額が相続税の基礎控除内であったり、債務超過であれば相続税の負担はありません。

相続税の基礎控除額は、以下のとおりです。

3000万円+600万円×相続人の人数

そのため、相続財産がこの基礎控除額を超えない場合には、相続税の申告は必要ありません。

また、相続税は、プラスの財産からマイナスの財産を控除した残額が基礎控除額を超えた場合に課税されます。そのため、借金が多いため債務超過となれば、相続税は課税されません。

相続税の具体的な取り扱いについては、個々のケースで異なることが多いため、税理士や弁護士に相談することが推奨されます。

相続放棄以外の対処法

相続放棄以外の対処法として、まず考えられるのは限定承認です。

もう一つの方法は、親の生前に債務整理を行うことです。生前に適切な債務整理を行うことで、相続時に負債の問題を避けることができます。

限定承認をする

限定承認は、相続において重い負担を避けつつ、プラスの財産を承継することができる有効な選択肢となります。

限定承認をすることで、相続人が受け取る財産の範囲内でのみ債務を引き継ぐため、相続した財産を超えて債務を負担しなくても済みます。

しかし、限定承認を行うためには、相続人全員の同意が不可欠で、その手続きは相続放棄と比べて複雑です。また、自己のために相続開始を知った日から3ヶ月以内に手続きをする必要があるため、迅速に進めることが重要です。

生前に債務整理をする

親の生前に債務整理をしてもらうことです。

債務整理は自己破産、個人再生、任意整理の3種類があり、それぞれの方法には特徴があります。

まず破産は、すべての債務を免除する手続きですが、財産を失うリスクがあります。一方、個人再生は債務を一定額まで減額できる債務整理です。最後に任意整理では、将来利息のカットや支払期間の延長を通じて月々の負担を軽減できます。

これら債務整理を行うことで、相続人に負担を残さないようにすることができます。

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相続放棄の流れ

相続放棄を考える際には、まず相続財産の調査が大切です。

次に、相続放棄の手続きを進めるために必要な書類を集めます。必要書類が整ったら、管轄の家庭裁判所に相続放棄の申述を行います。この申述は相続開始を知った時から3ヶ月以内に行う必要があり、期限を過ぎると放棄が認められないことが一般的です。

相続財産の調査

相続放棄をするにあたっては、被相続人の相続財産の調査が必要な場合があります。特に、相続財産の調査において、信用情報の照会は重要なステップです。

まず、信用情報機関への照会は、被相続人の借入や返済状況を確認する有効な手段となります。具体的には、CIC、JICC、全国銀行協会などの信用情報機関に対し、故人の債務状況の照会を行います。

また、被相続人の通帳を確認し、借入の記録や口座引落の履歴、振込履歴をチェックすることも大切です。インターネットバンキングを利用している場合には、取引履歴の取得が必要となるため、事前に準備を進めておくとよいでしょう。

相続放棄の書類(戸籍謄本)の取り付け

相続放棄の申述をするためには、戸籍謄本などの必要書類を取り付ける必要があります。

必要とされる戸籍謄本は、申述する人と被相続人との関係によって異なるため、漏れのないように取り付けをしましょう。また、被相続人の住民票の除票又は戸籍の附票も必要となります。さらに、相続放棄の申述書の書式を準備した上で、必要箇所に記入をしましょう。

管轄裁判所に相続放棄を申述する

最後に、家庭裁判所に相続放棄の申述をします。

必要書類を添付した上で、被相続人の住所を管轄する家庭裁判所に提出します。あくまでも、被相続人の住所地の裁判所となるため、間違えないように注意しましょう。

家庭裁判所に相続放棄の申述が受理されれば、家庭裁判所に相続放棄の受理証明書の発行をしてもらいましょう。

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生前贈与を受けた場合でも相続放棄は可能ですが、詐害行為取消権のリスクや遺留分侵害に注意しなければなりません。また、相続税の問題やその他の相続人への影響を考慮する必要があります。

これらの要素を総合的に判断し、自分にとって最適な選択をすることが大切です。相続に強い弁護士の意見を参考にしながら、自分の状況に最適な方法を見つけましょう。

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