配偶者から離婚を求められ、離婚調停の申し立てを受けたものの、あなたはまだ離婚する気持ちになれないでいるのではないでしょうか。逆に離婚調停の申立てをしたものの、相手方から調停を拒否されている方もいるでしょう。
この記事では、離婚調停を拒否した場合に起こりうる法的効果や、拒否後の具体的な対応方法について詳しく解説します。離婚調停を拒否することで、一時的に離婚を回避できる可能性がある一方で、訴訟に発展するリスクもあることを理解することが大切です。
離婚調停とは
離婚調停とは、裁判所に申し立てを行い、調停委員の助言や提案を受けながら、夫婦間の話し合いを通じて離婚の合意形成を目指す法的手続きのことを指します。
離婚調停は、協議離婚が成立しない場合に、裁判所の関与のもとで行われる話し合いの場です。離婚に関する条件や財産分与などの重要事項について、当事者双方が合意に至ることを目的としています。
離婚調停の流れと手続き
調停のプロセスは、以下のステップで進行します。
- 申立ての準備
- 家庭裁判所に申立てを行うための書類準備
- 必要書類:申立書、事情説明書、戸籍謄本、相続関係図など
- 申立ての提出
- 家庭裁判所への申立て
- 調停期日通知書が郵送
- 離婚調停は夫婦のいずれかが居住地の家庭裁判所で申立て
- 初回調停期日
- 裁判所が調停期日を指定
- 申立てから1〜2ヶ月後に設定
- 調停委員からの手続き説明
- 調停の進行
- 複数回の調停実施(3~5回)
- 申立人と相手方が交互に調停委員と話し合い
- 養育費や財産分与などの具体的な条件についての協議
- 調停成立または不成立
- 合意の場合:「調停調書」として文書化され、離婚成立
- 不成立の場合:審判手続きへ移行
離婚調停と協議離婚・裁判離婚の違い
協議離婚は、夫婦間の話し合いのみで離婚の合意形成を目指すのに対し、離婚調停は裁判所の関与のもとで行われる点が大きな違いです。一方、裁判離婚は、離婚原因の存在を主張・立証し、裁判所の判決によって離婚が成立する点で、調停とは異なります。
離婚調停は、裁判離婚に比べて手続きがシンプルで、当事者の合意を尊重する点で、柔軟性の高い方法だと言えます。ただし、合意が必要な以上、一方が離婚を拒否すれば調停は不成立に終わり、訴訟へと移行するリスクがあります。
離婚調停のメリットとデメリット
離婚調停のメリットは、裁判所の関与により、冷静な話し合いが可能な点です。また、裁判に比べて手続きが簡易で、費用面でも比較的負担が少ないことが挙げられます。
一方、デメリットとしては、合意が必要なため、一方が離婚を強く拒否する場合、調停が長期化したり、不成立に終わるリスクがあります。また、財産分与や養育費などの重要事項について、当事者間で大きな意見の相違がある場合、調停での解決が困難になることもあります。
以上のように、離婚調停は、裁判所の関与のもとで合意形成を目指す手続きであり、協議離婚や裁判離婚とは異なる特徴を持っています。離婚を検討する際は、各方法のメリット・デメリットを十分に理解し、自身の状況に合った方法を選択することが重要です。
離婚調停の拒否
相手方が離婚調停を拒否することで離婚調停が不成立となることがあります。離婚調停を拒否する理由には、離婚原因に争いがあったり、財産分与や養育費などの離婚条件に対立があるなど、その理由は様々あります。
離婚調停を拒否することで生じる事態、メリットやデメリットを詳しく説明します。
離婚調停の拒否とは何か?
離婚調停の拒否とは、離婚調停手続きにおいて、離婚調停に同意せず、離婚調停に応じないことを意味します。
離婚調停を拒否することで、離婚調停は不成立となりますから、調停手続は終了します。これにより調停離婚を回避することはでき、協議離婚に応じない限り、当面の間離婚を回避することは出来ます。離婚調停の拒否それ自体に対して法的なペナルティはありません。調停はあくまでも当事者間で話し合う場ですから、調停離婚を強制することはできないからです。
しかし、夫婦間に離婚原因がある場合には、離婚裁判を通じて離婚請求を認める判決が出される可能性があります。また、調停を拒否したとしても、直ちに夫婦関係が修復されることには繋がりませんし、むしろ、夫婦関係はより一層形骸化していく可能性が高いでしょう。
離婚調停を拒否する方法
離婚調停を拒否する方法は法律等で明確に定められているものではありません。
離婚に応じない意思を強固に示すことで、家庭裁判所が調停成立の見込みが乏しいと判断すれば、調停は不成立となります。また、調停期日に無断欠席し続ければ、調停成立の見込みがないとして調停手続が終了することもあります。
離婚調停拒否のメリットとデメリット
離婚調停を拒否することで得られるメリットもあります。
離婚調停を拒否することで、離婚を回避し、婚姻関係を維持できる可能性があります。特に、夫婦関係の修復の余地がある場合や、子どもの利益を考慮する必要がある場合は、離婚調停を拒否することで時間を稼ぐことができます。
また、離婚に応じない姿勢を示すことで、相手方に再考を促し、話し合いの機会を設けることができる可能性もあります。
他方で、離婚調停を拒否することで、いくつかのデメリットが生じる可能性があります。
まず、調停が不成立となった場合、離婚訴訟を提起するリスクがあります。訴訟になると、離婚原因があれば裁判所の判断で離婚が認められる可能性があります。
また、長期間の別居状態が続くと、それ自体が婚姻関係の破綻とみなされ、離婚が認められやすくなるリスクもあります。さらに、拒否することで、相手方との関係が悪化し、財産分与などの話し合いが難航する可能性もあります。
したがって、離婚調停の拒否は、一時的な解決にはなりますが、長期的には不利益につながる可能性が高いと言えます。
離婚調停を拒否する理由
離婚調停を拒否する理由は様々です。離婚調停を拒否したい心理を理解しておくことは、離婚調停を求める側においても大切です。
離婚したくないから
配偶者に対する愛情を理由に離婚調停を拒否する場合です。
配偶者から離婚調停の申立てを受けても、なお配偶者に対する強い愛情を持ち続け、何とか夫婦関係の修復をしたいと考え、離婚調停を拒否することはよくあります。配偶者に対する愛情だけでなく、子供と一緒に過ごした生活を忘れられず離婚調停を拒否することもあります。
離婚原因に争いがあるから
配偶者の主張する離婚原因に争いがある場合に、離婚調停を拒否することがあります。
配偶者が、離婚調停において、不貞行為、DV、モラハラなどの離婚原因を主張していても、それを裏付ける証拠がない、または、乏しい場合には、安易に離婚原因があることを認めることができないのが通常です。そのため、離婚原因の有無が大きな争点となり、離婚調停の拒否に繋がることがあります。
子供の親権を取りたいから
離婚条件の一つである子供の親権で対立する場合に、離婚調停を拒否する理由となります。
未成年の子供がいる場合、離婚成立時に親権者を指定しなければなりません。子供の面会交流が充実した内容であれば別ですが、対立する父母間では、面会交流は制限されがちです。
そこで、子供の親権者となることを強く希望することで、一歩も譲らない状態に陥り、離婚調停の拒否に繋がることがあります。
財産分与の内容に納得できないから
離婚調停を求める配偶者の主張する財産分与の内容に納得できず、離婚調停を拒否することがあります。
財産分与では、共有財産の内容、特有財産の主張、不動産の評価額などの点で激しく対立することがあります。離婚調停を求める配偶者は、時に自身の利益を増やしたいために、不当な財産分与を求めることもあります。
このように、財産分与の内容に納得がいかないために、離婚調停の成立を拒否することがあります。
相手の思い通りに離婚したくない
ただ単に配偶者の思い通りに離婚したくないという心情から離婚調停を拒否することがあります。
配偶者に対する愛情でもなく、財産分与や慰謝料といった離婚条件も対立していないものの、申立人の思うがままに離婚成立させることに釈然とせず、離婚調停を拒否することもあります。
離婚調停を拒否する時の注意点
離婚調停を拒否する際には、注意点があります。心情的に離婚調停を拒否すると不利になることもあります。
離婚訴訟に移行した場合のリスクを検討する
離婚調停が不成立となった後に待っている離婚訴訟の結論を予測することが肝心です。
心情的に離婚調停を拒否することは稀ではありません。
しかし、心情面だけでなく戦略的に離婚調停を拒否するべきかを精査するべきです。
このまま離婚訴訟に移行した場合、予想される判決が自分にどの程度の負担になるのか、判決までの期間とその間に負担するべき婚姻費用などを総合的に考えて、本当に調停を拒否することが有利となるのか深く見直すことが大切です。
こだわっている離婚条件が、このまま争い続けてもおよそ認められない内容であれば、潔く譲歩することも戦略の一つです。
調停拒否をする理由を明示する
離婚調停を拒否する具体的な理由を明示するべきです。
理由も告げずに、只々離婚調停を拒否すると、調停手続はすぐに不成立となり終了してしまいます。離婚訴訟となった場合に想定される負担やリスクを踏まえると、離婚調停の場で話し合いをすることも大事です。
そこで、配偶者の譲歩や翻意を促すために、離婚調停を拒否する理由を具体的に示してみましょう。
調停に応じる選択肢も検討する
離婚調停に応じたくない気持ちは持ちつつも、離婚調停に応じることのできる条件を考えておくことも必要です。
離婚調停を拒否したからといって、必ずしも夫婦関係の修復ができるわけではありません。また、別居期間が長期に及べば、離婚を拒否していたとしても、いずれは離婚請求が認容されます。そのことも踏まえながら、打算的に離婚条件を検討しておくことは必要です。
離婚調停が拒否された場合の対応
離婚調停では、夫婦間の合意が調停成立の大前提となります。したがって、どちらか一方が離婚を拒否した場合、調停は不成立となります。離婚調停が不成立に終わった場合、調停手続は終了しますので、戸籍上の夫婦関係は継続することになります。
離婚調停が不成立となった後のステップを説明します。
離婚訴訟(離婚裁判)を提起する
離婚調停が不成立に終わった場合、次のステップとしては、離婚裁判の提起が考えられます。離婚裁判では、裁判官が当事者双方の主張や立証を踏まえて離婚の可否を判断します。
ただし、離婚裁判において離婚請求が認められるためには一定の法定離婚事由(民法770条1項各号)の存在が必要です。単に性格の不一致や価値観の相違では、離婚判決は出ません。離婚を求める側は、法律上の離婚原因を主張・立証する必要があります。
離婚裁判の流れ
離婚調停から離婚裁判に移行する場合、まず、家庭裁判所に離婚訴訟を提起します。離婚調停が不成立となれば当然に訴訟手続に移行するわけではありませんので注意が必要です。
離婚訴訟を提起する場合には、離婚原因があることを記載した訴状とこれを証明できる証拠を提出しなければなりません。訴状には、離婚を求める理由や請求の内容を具体的に記載する必要があります。
離婚裁判では、裁判官が双方の主張を聞いたうえで、離婚の可否を判断します。裁判の過程では、財産分与や子どもの親権など、離婚に伴う様々な問題についても争点となります。
離婚裁判における離婚原因と立証
先述のとおり、離婚裁判で離婚が認められるためには、民法770条1項各号に定める法定離婚事由の存在が必要です。具体的には、以下のような事由が挙げられます。
- 不貞行為があったこと
- 悪意で遺棄したこと
- 3年以上の生死不明
- 強度の精神病にかかったこと
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由があること
離婚を求める側は、これらの事由の存在を裁判所に対して証拠をもって証明する必要があります。一方、離婚に反対する側は、これらの事由が存在しないことを反論することになります。
離婚裁判で争点となる財産分与と親権
離婚裁判では、離婚の可否だけでなく、財産分与や子どもの親権などについても争点となります。財産分与は、婚姻期間中に夫婦で協力して得た共有財産をどのように分けるかという問題です。
また、親権とは、未成年の子どもの身上監護と財産管理をどちらの親が行うかという問題です。親権者の決定に当たっては、子どもの利益が最も優先されます。裁判所は、父母双方の意見を聴取したうえで、子どもにとって最善の環境を提供できる方に親権を与えることになります。
婚姻費用を請求しておくことが重要
離婚訴訟を提起すれば、解決までに1年から2年ほどの期間を要することがしばしばあります。その間の生活費を確保するために、婚姻費用を請求することを検討しましょう。
婚姻費用とは、配偶者と子どもが社会生活を送る上で必要となる生活費を指し、夫婦の収入額や家族構成に応じて計算されます。
婚姻費用は収入の少ない配偶者が収入の多い配偶者に対して請求するのが一般的です。例えば、専業週主婦やパートタイマーの妻が正社員として就労する夫に対して婚姻費用を請求するケースが一般的です。
婚姻費用は、別居から離婚するまで受け取り続けることができます。そのため、離婚訴訟が解決するまで婚姻費用を受け取り続けることで、経済的な不安を解消させることが大切です。
離婚調停拒否に関する FAQ
離婚調停の拒否に関連するよくある質問と回答をまとめました。
離婚調停を拒否し続けることは可能か
離婚調停における合意形成は、あくまで当事者双方の意思に基づくものです。したがって、どちらか一方が離婚に同意しない場合、調停は不成立に終わります。
つまり、離婚調停を拒否し続けることは可能です。ただし、相手方が離婚訴訟を提起した場合、裁判所の判断により離婚が認められる可能性があります。
離婚調停から裁判に移行する際の費用
離婚調停が不成立に終わり、離婚訴訟に移行する場合、以下のような費用が発生します。
- 訴訟費用(収入印紙代):13,000円から(親権、財産分与、慰謝料請求等を求めるかによって変動します)
- 弁護士費用:着手金30万円~50万円程度、報酬金30万円~60万円程度
- その他の実費(郵送料、交通費など)
ただし、これらの費用は事案の複雑さや弁護士事務所によって異なるため、個別のケースに応じて見積もりを取ることが重要です。
離婚調停の拒否に弁護士は必要か
離婚調停を拒否する場合、法的な観点から適切な対応を取ることが重要です。特に、相手方が弁護士を立てている場合、自分も弁護士に依頼することで、適切なアドバイスを受けられます。
弁護士に依頼することで、以下のようなメリットがあります。
- 法的な観点から、離婚調停拒否の是非や対応方法についてアドバイスを受けられる
- 相手方との交渉を弁護士に任せることで、精神的な負担を軽減できる
- 離婚訴訟に移行した場合、適切な主張・立証活動を行える
したがって、離婚調停の拒否を検討する際は、弁護士に相談することをおすすめいたします。弁護士の専門的な知見を活用することで、適切な対応方針を立てられるでしょう。
まとめ
離婚調停は、裁判所の調停委員の助言を得ながら、夫婦間の合意形成を目指す手続きです。調停での合意が必要なため、一方が拒否すれば離婚は成立しません。離婚調停を拒否する際は、調停委員を通じて拒否の意思を明確に伝える必要があります。ただし、拒否し続けることで、離婚を求める配偶者が離婚訴訟を提起するリスクがあります。
離婚調停が不成立に終わった場合、離婚訴訟への移行が次のステップとなります。訴訟では、離婚原因の存在を主張・立証する必要があり、子どもの親権や財産分与なども争点となります。長期の別居は、婚姻関係の破綻と認定されるリスクがあるため注意が必要です。
心情面だけで離婚拒否し続けるよりも、何が自分自身にとって有利となるのかを総合的に判断し、調停拒否一辺倒ではなく、いろいろな選択肢も持ち合わせておくことも大事です。
離婚問題で困ったときは一人で抱え込まずに弁護士へ相談しましょう。
難波みなみ法律事務所は離婚問題全般に注力しており、円満な離婚の実現にも真摯に取り組んでいます。ご自身で頑張り過ぎずに、適切に弁護士に相談することが重要です。
初回相談30分を無料で実施しています。
面談方法は、ご来所、zoom等、お電話による方法でお受けしています。