コラム
更新日: 2024.08.19

離婚調停の不成立とは?不成立になるケースや不成立後の流れ|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

弁護士が解説離婚問題離婚調停の不成立 不成立となるケースやその後

調停手続が難航し、離婚調停が不成立に終わるケースがあり、多くの人がその後の対処に悩んでいます。

離婚調停は家庭裁判所を通じて離婚を目指す手続きですが、常にスムーズに進むとは限りません。調停が不成立になる理由には、相手方の欠席続行、離婚原因や離婚条件の対立、子供の親権に関する争いが挙げられます。

不成立後には離婚協議の再開、離婚裁判への移行、別居状態の継続、審判への移行が考えられます。

離婚調停の成立を実現させるために重要なのは離婚への明確な条件提示と客観的な証拠の確保、調停委員との良好な関係維持、そして経験豊富な弁護士への相談です。

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離婚調停の不成立とは

離婚調停の不成立とは、当事者間で合意が成立する見込みがない場合において、調停手続を終了させることをいいます。

合意が成立する見込みがあるか否かは、調停委員会の判断に委ねられます。そのため、当事者が不成立を求めても、調停委員が調停の成立する余地があると判断すれば調停は続行されます。

離婚調停が不成立で終わる割合

離婚調停が不成立となる割合は、令和4年の司法統計によれば28%です。つまり、4件には1件が不成立となっています。

他方で、離婚調停が成立する割合は、約45%に達しており、半数近くは調停成立に至っていることが分かります。

離婚調停の不成立を争う方法はあるのか

離婚調停が不成立となっても、当事者はこれを争うことはできません。

不成立となる前に、争点となっている事項について譲歩を見せたり、裏付けとなる客観的な証拠を提出するなどして、合意が成立する見込みがあることを具体的に主張し、調停手続の続行を求めるようにするしかありません。

離婚調停の取り下げとの違い 

離婚調停の取下げは、離婚調停の不成立と同じように調停手続を終了させるものです。

しかし、調停の取り下げは、申立人の一存で行いますが、離婚調停は裁判所の判断により決定される点で取下げとは異なります。

さらに、離婚訴訟は調停手続を先行させなければ提起することができません(調停前置主義)。しかし、取下げの場合、実質的な調停活動が行われたとは言えなければ、取下げ後に離婚訴訟を提起することができない点でも調停の不成立と異なります。

なお、離婚調停が取り下げられる割合は、約15%になっています。その内の4分1が協議離婚が成立していることを理由に取り下げられています。

調停をしない措置(調停拒否・なさず)との違い

調停手続が終了するものとして、『調停をしない』というものがあります。これを調停拒否や『なさず』と呼んだりします。

調停をしない割合は、約0.8%でかなり少数ではあります。

調停をしない措置は、調停事件が調停をするのに適当ではない場合に裁判所の判断で行われます。

例えば、次のような事情がある場合です。

  • 求める内容が公序良俗に反している
  • 調停の当事者が意思能力を欠いている
  • 不当な目的で調停の申立てをした
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離婚調停が不成立となるケース

離婚調停が不成立となるのは、両者間の決定的な対立点が解消できず、合意に至らない場合です。

以下で紹介するようなケースでは、離婚調停が不成立となります。

相手方が欠席を続ける

離婚調停が不成立となるケースの一つに、相手方が調停に欠席を続けることが挙げられます。

調停手続は、当事者双方の話を聞いて解決を目指す手続きであるため、一方が出席しなければ、調停を進めることができません。 

当事者の一方が調停期日に欠席し続けると、離婚調停は不成立となります。

離婚原因に争いがある

離婚調停が不成立になる主な理由のひとつに、離婚原因に関して対立が強い場合です。

離婚原因とは、民法で定められている離婚請求が認容される離婚理由を言います。民法で定められた離婚原因は次のとおりです。

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • 回復の見込みのない強度の精神病
  • その他婚姻を継続しがたい重大な事由

双方が離婚原因について異なる主張を続け、折り合いが付かない場合には、調停手続が難航してしまうことがあります。例えば、不貞行為を理由に離婚を求めたり、離婚条件として慰謝料請求をしているケースで、相手方が不貞行為の存在を強く否認している場合には、離婚調停の成立は困難といえます。

離婚原因に関する争いがある場合には、調停を成立させることが困難となり、結果として調停が不成立となることが少なくありません。

財産分与や慰謝料等の離婚条件に争いがある

離婚調停で最も争われる点は、財産分与や慰謝料等の離婚条件です。

これは、夫婦間の心情面だけではなく、離婚後の経済的な自立にも関係するため、双方の利害が強く対立しやすいからです。

例えば、当事者の一方が、共有財産の開示を拒否したり、特有財産の主張を固持するような場合、財産分与の対立が激しくなります。

また、浮気・不倫やDVを行なった配偶者(有責配偶者といいます)による離婚請求の場合には、相手方が離婚に応じなかったり、かなり厳しい離婚条件を提示するなどして、対立関係がより強くなり調停が不成立となることも多いです。

このように、離婚調停において、財産分与、慰謝料、養育費等の離婚条件について対立が激化している場合には、調停は不成立となることが少なくありません。

子供の親権に争いがある

離婚調停が不成立となる大きな要因の一つに、子供の親権を巡る争いが挙げられます。

子の親権問題がある場合、双方の親が親権者になりたいと強く望み、一歩も引かない状態となることで、合意に至らないことがあります。

多くのケースでは、子供を監護し続ける親が親権を得ることが多いのですが、子を監護していない親が、離婚訴訟に移行した場合の親権の見通しを立てられず、親権の主張に固執してしまうことで、調停が不成立となることが多いです。

このように、未成年の子供の親権を巡る争いは、離婚調停を複雑化させ、不成立の原因となることがあります。

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離婚調停が不成立となった後の流れ

離婚調停が不成立となれば、調停手続は終了します。

調停が不成立となれば、自動的に別の手続きが開始されるものではありません。

夫婦の対立状況を踏まえて、どのプロセスが適切であるかを検討しましょう。ただ、いずれのプロセスを選択するにせよ、弁護士等の専門家のアドバイスを受けることが重要となります。

離婚協議を行う

離婚調停が不成立となった場合、離婚協議を再度行うことが選択肢の一つとなります。

離婚協議は、夫婦間で話合いをすることで離婚を成立させるプロセスです。夫婦が互いに話し合いをすることができる関係にあれば、離婚協議は迅速で簡易な手続きですので、有効な手段といえます。

例えば、離婚調停の不成立後、当事者の一方が翻意して離婚条件に関する主張を軟化させるような場合には、協議離婚が成立できる可能性があります。

もし、離婚協議により合意に至る場合には、合意内容を明確にしておくために、合意書または公正証書を作成するようにしましょう。

調停不成立後の相手方の状況を踏まえながら、離婚協議を重ねるべきか検討しましょう。

離婚裁判(離婚訴訟)を提起する

離婚調停が不成立に終わった場合、解決策として離婚裁判を提起することがあります。

調停が不成立となった後に選択される最も多いプロセスが離婚裁判です。

離婚裁判とは、当事者の双方が主張と立証を繰り返し行うことで審理を進め、裁判官が判決を下すことで終局的な解決を図るプロセスです。

離婚裁判では、裁判官が当事者双方の主張内容と証拠を踏まえながら最終的な判断を示しますので、調停手続のように合意できないために解決できないという事態は生じません。ただ、離婚裁判であっても、判決前に裁判官から和解の勧告が行われることがほとんどです。和解協議を経て裁判上の和解が成立することで解決するケースも多くあります。

離婚裁判を提起することで、法的な手続きを用いて離婚問題の解決を図ることができます。

いきなり離婚裁判はできない

離婚調停を経ることなく離婚裁判をすることは原則としてできません。これを調停前置主義といいます。

そのため、離婚裁判を提起する際には、調停手続を経たことを証明するために、調停の不成立調書又は事件終了証明書を提出することが求められます。

しばらく別居を続ける

離婚調停が不成立に終わった場合、しばらく別居を続けることは、当事者間の緊張を和らげ、感情の高ぶりによる衝突を避けるために有効な手段です。

調停中に感情的になってしまい、冷静な話し合いが難しい状態にあった夫婦が、数ヶ月の別居期間を経ることで、高ぶった感情を冷却させることができます。その後、再び話し合いを行い、双方が納得のいく条件で離婚に至るケースもあります。

このように、別居を一時的な冷却期間として設けることで、たとえ離婚調停が不成立になったとしても、離婚を成立できる場合があります。

なお、別居生活を続ける場合には、生活費(婚姻費用)の請求を忘れないようにしましょう。

調停に代わる審判となることも

離婚調停が不成立になった場合に、家庭裁判所が相当と認めるときは、事件の解決のために調停に代わる審判をすることができます。これを調停に代わる審判と言います。

調停に代わる審判は、2週間以内に異議申立てをしなければ、審判は確定し、審判離婚が成立します。

調停に代わる審判は、当事者間で離婚自体や離婚条件について調整できているものの、心情的な理由から合意したくないような場合や調停期日に当事者の一方が出席できないものの、離婚や離婚条件について合意できている場合等で利用されます。

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離婚調停を成立させるための注意点

離婚調停をスムーズに進め、調停を成立させるには、留意すべきポイントがあります。

離婚問題に精通した弁護士のサポートを受けながら離婚調停に臨むことが調停成立の近道となります。

離婚条件を明確に示す

離婚条件を明確に示すことは、調停手続を円滑に進めるために非常に重要です。

離婚調停では、財産分与、慰謝料、子供の親権など多くの離婚条件が取り上げられるため、離婚条件を調停の早い段階から明確にしておくことで、当事者双方の対立点が明確となり、争点に絞った協議を重点的に行うことができます。

早い時期から離婚条件を詳細に検討し、調停手続で明確に提示することは、調停を無駄なく迅速に進めるために極めて重要です。

客観的な証拠を十分に確保する

離婚調停を成立させるためには、自分の主張を裏付ける客観的な証拠の確保が非常に重要です。

客観的な証拠は調停委員会に対して、自分の主張が具体的な事実に基づいていることを示し、説得力を持たせるために不可欠です。また、客観的証拠があれば、相手方も争点となる事実関係を強く争ってこない可能性があります。

たとえば、不貞行為を理由に離婚を求める場合、その事実を証明できるメールのやり取りや写真などは強力な証拠となります。

客観的な証拠を確保し、これを調停手続に早期に提出することで争点となる問題を速やかに解消することができます。

調停委員と対立しない

調停委員との信頼関係を築くことは、離婚調停をスムーズに進める上で重要な鍵となります。

調停委員は中立な立場にありますから、一方当事者の肩を持つようなことはありません。

しかし、時に、調停委員が相手方の主張の代弁者であるかのように勘違いをしてしまい、調停委員に対して不信感を抱き関係性を悪くすることがあります。調停委員と敵対関係になっても、得をすることはありません。

したがって、調停委員との関係を良好に保つように努めて、調停手続を有利に進めていきましょう。

離婚問題に強い弁護士に依頼する

離婚調停を自身に有利な形で成立させるためには、離婚問題に強い弁護士に依頼することが重要です。

弁護士に依頼することで、自身に有利な離婚条件を検討し、あなたの利益を最大化するために代理人として相手方と交渉を進めます。また、調停手続を弁護士に一任することができるため、あなたに代わって調停期日に出席して調停委員に対する説明・主張を行います。

ただ、弁護士は、法律の専門家ではありますが、弁護士にも得意・不得意の分野があります。

そこで、弁護士で離婚調停を有利に解決させるためにも、離婚問題に詳しい弁護士のサポートを受けるべきです。

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多くの方にとって離婚調停は初めての経験です。その上、調停手続では、財産分与や慰謝料など、専門的な事柄も多く取り上げられ、専門的な知識と経験が求められます。そこで、離婚調停を有利に成立するため、離婚問題に特化している弁護士に相談することが賢明です。

何か問題に直面した場合、遠慮せずに専門家に相談することが重要です。

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