「立ち退き交渉を有利に進めるにはどうすればいいのだろうか」
このようなお悩みを抱える大家さんは少なくありません。立ち退き交渉は、法律の専門知識や交渉術が求められるため、個人で対応するには限界があります。
そこで本記事では、立ち退き交渉を弁護士に依頼するメリットや、気になる費用について詳しく解説いたします。弁護士に依頼することで、交渉がスムーズに進むだけでなく、適切な立ち退き料を受け取れる可能性も高まります。ぜひ参考にしてみてください。
大家さんが直面する立ち退き交渉の難しさ
立ち退き交渉は、貸主である大家さんにとって、想像以上に精神的・時間的な負担が大きいものです。以下では、貸主が立ち退き交渉で直面しがちな具体的な困難について解説していきます。
感情的な対立で話し合いがこじれるケース
立ち退きに関する話し合いには、単なる契約関係だけでなく、感情的な側面が複雑に絡み合うことが少なくありません。特に、借主にとって立ち退きは、長年住み慣れた住まいや生活の基盤、あるいは経営してきた事業の場を失う可能性を意味するため、非常に大きな不安や不満を伴うものです。
貸主からの立ち退き要求に対し、借主が「なぜ今更」「どこへ行けばいいのか」といった思いから感情的に反発してしまうケースが多く見られます。このような感情的な対立が生じると、本来議論すべき「正当事由」の有無や「立退料」の額といった法的な論点から逸れてしまい、建設的な話し合いが非常に困難になります。
借主との間で感情的なしこりや不信感を生み、交渉がこじれてしまう事態も起こり得ます。互いに感情的になってしまうと、冷静な判断ができなくなり、解決に向けた歩み寄りが遠のいてしまう危険性があります。
提示した立ち退き料では納得してもらえない
立ち退き交渉を進めるにあたり、貸主が提示した立ち退き料について、借主から納得を得られないケースはしばしば見られます。
これは主に、借主が新しい住居への移転にかかる費用(引っ越し代や新しい物件の初期費用など)や、それに伴う生活を立て直すための費用を、提示された金額では十分に賄えないと感じる場合に起こります。特に、店舗などの事業用物件の場合は、移転によって失われる営業機会の損失なども考慮する必要があり、立ち退き料の算定がより複雑になります。
また、立ち退き料に関する明確な算定基準は法律で定められていません。そのため、賃貸人側から立ち退き料の計算根拠が十分に示されない場合、借主は提示された金額の妥当性を判断しづらく、貸主への不信感を抱きやすくなります。
さらに、長年住み慣れた場所や地域への愛着が強い借主にとっては、金銭的な補償だけでは十分な納得感が得られにくいという側面もあります。
これらの様々な要因が重なり、結果として借主から高額な立退料が提示され、交渉が難航することは珍しくありません。
立ち退きに必要な「正当事由」の主張が難しい
賃貸借契約の更新拒絶や解約の申し入れには、借地借家法第28条に定められている「正当事由」が必要です。この正当事由とは、単に貸主の都合だけでなく、双方の建物の使用状況や必要性、賃貸借の経過、建物の現況、そして立ち退き料の提供といった様々な事情を総合的に考慮して判断されます。
特に、貸主自身の事情(建物の老朽化による建て替えや自己使用の必要性など)だけでは、正当事由として認められるのは容易ではありません。建物の老朽化を理由とする場合でも、単に築年数が古いだけでなく、倒壊の危険があるなど具体的な危険性を立証するための客観的な証拠が必要となります。
過去の多くの判例を見ても、「正当事由」の判断は個別の事情によって異なり、簡単に認定されるものではありません。一方的な都合や漠然とした理由だけでは、「正当事由」を立証することは非常に難しい課題といえます。
交渉が長期化し、精神的・時間的な負担が増える
立ち退き交渉は、双方の主張が対立すると、解決までに時間を要することが少なくありません。賃貸人と賃借人の間で立ち退きの条件や立ち退き料に関する話し合いが平行線をたどると、交渉期間が1年程度、さらには1年以上から数年に及ぶケースも見られます。
このように交渉が長引くと、貸主側は常に問題解決の見通しが立たない状況に置かれ、大きな不安やストレスを抱えることになります。心身両面で大きな負担となり、精神的な疲弊につながる可能性があります。
また、交渉の度に時間を割かれ、本業や日々の生活に支障をきたすなど、時間的な負担も増大します。解決が見えない状況が続くことは、さらなる精神的負担を招きます。特に、紛争が長期化することによる不利益は、賃貸人の方も決して小さくはありません。


弁護士に依頼するメリットとは?交渉が有利に進む理由
貸主ご自身で立ち退き交渉を進める際に直面しがちな様々な難しさについて見てきました。
立ち退き交渉に伴う困難な状況を打開し、立ち退き交渉をスムーズかつ有利に進めるためには、弁護士に依頼することが非常に有効な選択肢となります。以下では、弁護士に依頼することで具体的にどのようなメリットが得られるのかを詳しく解説します。
法的な根拠に基づき「正当事由」を主張できる
賃貸借契約において、貸主が借主に立ち退きを求める際には、借地借家法第28条に定められた「正当事由」が必要です。
この正当事由を満たすことを法的に主張・立証するには専門的な知識が必要となり、容易ではありません。
弁護士に依頼すれば、借地借家法や過去の判例に基づき、個別の状況に応じた貸主側の正当事由を客観的に組み立て、法的な根拠をもって主張することが可能になります。
貸主自身の感情や個人的な事情を主張するだけでは、正当事由を十分に立証することはできず、借主や裁判所の理解を得ることはできないでしょう。弁護士が法律に基づいた明確な根拠を示すことで、貸主側の主張に説得力が増し、交渉をより円滑かつ有利に進められる可能性が高まります。
適正な立ち退き料を算定し、円滑な合意形成を促せる
立ち退き交渉において、立ち退き料の金額は双方が最も合意に至りにくい要素の一つです。貸主側は立退料をできる限り安価に抑えたい、借主側はできる限り高額にさせたいとそれぞれ考えるのが通常であり、立退料を巡って双方の利害が強く対立することは珍しくありません。
立退料に法的な算定基準は明確に定められていないため、貸主自身で適正な金額を判断するのは難しく、提示額が借主の納得を得られないケースが多く見られます。過少な提示は交渉決裂を招き、過大な提示は不必要な負担となります。
弁護士に依頼すれば、借主の具体的な状況(住居であれば引越し費用や転居先の初期費用、店舗であれば移転費用、工事費、営業補償、借家権価格など)を詳細に検討し、法的に妥当かつ借主が納得しやすい適正な立ち退き料を算定できます。
このように、客観的な根拠に基づき算定された金額を示すことで、交渉が感情的になることを防ぎ、借主の理解と納得を得やすくなります。これにより、スムーズな合意形成が促進され、無用な紛争や交渉の長期化を回避することにつながります。
煩雑な交渉や手続きを一任でき、負担を大幅に軽減
貸主ご自身が立ち退き交渉を行う場合、借主との度重なる連絡や話し合い、感情的な対応を迫られるなど、精神的にも時間的にも大きな負担が生じがちです。交渉が難航すればするほど、その負担は増大し、本業や日常生活にも支障をきたす可能性があります。
弁護士にご依頼いただくことで、こうした煩わしい交渉プロセスを専門家に一任できます。借主との直接的なやり取りはもちろんのこと、立ち退きを求める際に必要となる内容証明郵便の作成・送付、さらには交渉で合意に至らなかった場合の調停や訴訟などの専門知識が求められる法的手続きまで、全て弁護士が代行いたします。
これにより、交渉のストレスや複雑な法的手続きから解放され、心身のご負担を大幅に軽減できます。
借主との直接交渉を避け、冷静な話し合いが可能になる
弁護士に立ち退き交渉を依頼する大きなメリットの一つは、貸主自身が借主と直接交渉する必要がなくなる点です。当事者間の意見の対立が感情的なぶつかり合いに発展し、交渉がこじれてしまうケースも少なくありません。
そこで、弁護士を代理人に就けることで、弁護士が貸主の代理人として交渉の窓口となり、感情論に偏ることなく、法的な根拠に基づいた客観的で冷静な話し合いが可能となります。弁護士は専門家として、法律や過去の先例を踏まえながら、適正な立ち退き条件について論理的に説明し、借主の理解を促すことができます。
弁護士が交渉の緩衝材となることで、無用な感情的対立を避け、交渉をよりスムーズに進めることが期待できます。
合意内容を法的に有効な書面で残し、将来の紛争を予防
立ち退き交渉で借主との合意が得られたとしても、その内容を口頭のみで済ませてしまうのは大変危険です。後になって「言った、言わない」といったトラブルに発展し、せっかくまとまった話が無効になる可能性も否定できません。
弁護士に依頼することで、合意した重要な内容を法的に有効な「合意書」として正確に書面に残すことができます。
弁護士が作成する合意書は、専門的な知識に基づき、必要な法的な要件を漏れなく満たしています。これにより、万が一、借主が合意内容を守らなかった場合でも、その書面は、裁判などの手続きにおいて強力な証拠となり得ます。合意書には、借主が退去する具体的な期限(立ち退き日)、立ち退き料の金額とその支払い時期、建物の原状回復を行う範囲など、合意した条件が詳細かつ具体的に明記されます。
これらの項目を書面として残すことで、合意内容に関する双方の認識のずれを防ぎ、一方的な約束の違反といった将来発生しうる紛争リスクを大幅に低減できます。弁護士によって作成された合意書は、貸主側にとって今後のリスク回避の観点からも大きな安心材料となります。
弁護士介入による立ち退き解決事例を紹介
弁護士に立ち退き交渉を依頼するメリットについて解説しました。では、実際に弁護士が介入することで、立ち退き問題はどのように解決されるのでしょうか。このセクションでは、様々なケースでの具体的な解決事例をご紹介します。
【事例1】賃料の滞納を理由に立退料なく明け渡しに成功した事例
賃貸物件で事業を営む借主が断続的に賃料を滞納しているケースでした。以下のとおり、立退料を提供することなく債務不履行を理由に契約を解除し、物件の立ち退きを成功させました。
賃貸物件で最も多く発生するトラブルの一つが、借主による賃料の滞納です。数ヶ月にわたる賃料滞納は、貸主にとって看過できない重大な契約違反にあたります。
そこで、当事務所弁護士が代理人に就任した上で、物件の立ち退きを求めました。まず、賃料の滞納が3か月以上にも及んでいること、過去にも何度も滞納を繰り返していることなどを理由に賃貸借契約の即時解除と物件の明渡しを求める内容証明郵便を送付しました。借主側も自身の滞納状況を理解していたため、任意の明渡しには応じてくれました。ただ、借主からは、明渡期限の猶予とそれまでの賃料の一部の免除を求められました。話合いを拒否して訴訟に至った場合に必要となる期間や費用負担を考え、借主側の要望を受け入れて合意に至りました。
借主の賃料滞納があるケースでは、借地借家法における「正当事由」を要しないため、適切な法的手続きを踏むことで、立ち退き料を支払うことなく明け渡しが実現する可能性が高まります。弁護士の専門知識と法的手続きの活用が、早期解決と無用な費用の回避につながる成功要因と言えるでしょう。
【事例2】建物の老朽化を指摘して立退料の提供を条件に合意解除した事例
賃貸物件は旧耐震基準下で建築された老朽建物でした。ただ、借主側に賃料の不払いなどの契約違反はなかったため、賃貸物件の老朽化と再開発を正当事由として、契約の更新拒絶をしたケースでした。
この事例では、当事務所弁護士が貸主の代理人として借主と交渉にあたりました。弁護士は、建物の老朽化による具体的な危険性や、将来的に発生しうる倒壊などのリスクについて、客観的な根拠を示しながら丁寧に説明を行いました。その上で、立ち退きに応じることによる借主のメリットとして、適正な立ち退き料の提供を提示し、転居費用や新たな生活の再建にかかる負担を軽減できることを伝えました。
立退料として、賃料差額の約2年分と転居費用の合計100万円で合意することができました。加えて、原状回復義務も免除し、賃貸借契約の合意解除を実現させることができました。
以上のとおり、弁護士の専門的な説明と、借主の負担に一定程度配慮した立退料の提示により、双方が冷静に話し合うことができ、その結果、円満な明け渡しが実現しました。
この事例は、建物の老朽化という客観的な状況に加え、適切な立ち退き料を組み合わせ、弁護士が法的知見に基づいて交渉を進めることが、円滑かつ短期間の立ち退き解決につながることを示しています。
【事例3】建物の自己利用(居住)を主張し正当事由が認められた裁判事例
この事例は、貸主ご自身とご家族が居住するために、賃貸している建物からの立ち退きを借主に求めたケースです。
しかし、借主側にも代理人弁護士が就任し、高額な立退料を求めたため、話し合いでの解決に至らず訴訟手続に移行しました。
弁護士は貸主の代理人として、建物を自己使用する必要性を具体的に整理し、客観的な証拠を基に裁判所に主張しました。例えば、なぜその建物でなければならないのか、他の代替手段はないのかといった点を、客観的な証拠を示しながら詳細に説明しました。借地借家法に基づき、貸主側の建物の使用を必要とする事情が、借主様の事情と比較してより重要であることを、説得力をもって主張しました。
裁判所は、貸主側の主張に正当事由があると判断し、これを前提とした和解勧告をしました。裁判官を通じた和解協議を経た結果、貸主側が引越費用を負担する内容で物件の明渡しを認める和解が成立しました。
弁護士に依頼してから立ち退き完了までの流れ
実際に弁護士に依頼した場合、立ち退き問題はどのようなプロセスを経て解決へと向かうのでしょうか。弁護士に立ち退き交渉を依頼した場合の一般的な流れを概説します。
ステップ1:法律相談と今後の交渉方針の確認
弁護士に立ち退き交渉を依頼する際、まず最初に行うべき重要なステップが法律相談です。
初回相談では、抱えている立ち退き問題の経緯、貸主が立ち退きを通じて実現したいこと、対象となる物件や借主の現在の状況などを、できる限り詳細に弁護士に伝えることが不可欠です。
正確な情報を提供することで、弁護士から適切な法的アドバイスを得られます。
相談をスムーズに進めるためには、関連資料を事前に準備しておくと良いでしょう。具体的には、以下の資料が役立ちます。
- 借主様との間で交わした賃貸借契約書
- これまでの立ち退きに関する交渉の経緯を記録したメモ
- 物件の現況がわかる写真
弁護士は提供された情報に基づき、借地借家法などの関連法規や過去の裁判例を踏まえ、法的な観点から立ち退きの実現性やその見通しについてアドバイスを行います。
これらのアドバイスを踏まえ、弁護士と貸主が協力し、今後の具体的な交渉方針を策定します。
ステップ2:代理人として交渉を開始する旨を通知
ステップ1で今後の交渉方針が定まったら、弁護士は貸主の代理人として、借主に対し「受任通知」を送付します。この受任通知は、弁護士が正式に立ち退き交渉の代理人に就任したことを借主へ知らせる重要な書面です。
受任通知には、今後、立ち退きに関する一切の連絡や交渉は貸主自身ではなく、弁護士を通して行うこと、そして借主が貸主に直接連絡することを控えるよう求める内容が記載されます。これにより、交渉の窓口が弁護士に一本化され、貸主自身が直接対応する精神的・時間的な負担が軽減されます。
また、通知の時点で更新拒絶や解約申入れをしていない場合には、時期を踏まえながら更新拒絶や解約申入れの通知も行うことで、立ち退きの意思を伝えます。この場合に、貸主側の建物使用の必要性等を具体的に説明することで、立ち退きの申し入れに理由があることを伝えます。
ステップ3:立ち退きの時期や立ち退き料などの条件交渉
ステップ2で弁護士が代理人となった通知を借主が受け取った後、弁護士は貸主の意向を踏まえ、具体的な立ち退き条件について借主との交渉を開始します。
借主側が立ち退きに応じない場合にはその理由を探っていきます。応じる意向があっても、借主側が求める条件を聞き取ります。借主側との折衝を通じて、立ち退きの具体的な時期、借主へお支払いする立ち退きの金額、明け渡しまでの猶予期間、物件の原状回復をどこまで行うかといった点について、双方の希望をすり合わせていきます。
交渉が難航した場合に備え、事前に貸主様と代替案、譲れない条件、譲歩できる範囲などを明確にしておくことも重要です。これにより、不必要な長期化を防ぎ、円滑な解決につながる可能性が高まります。
交渉がまとまらない場合は、次のステップとして調停や訴訟といった法的手続きを検討することになります。
ステップ4:交渉がまとまらない場合の調停・訴訟手続き
ステップ3の交渉で借主との合意に至らなかった場合、弁護士は次の手段として、調停や訴訟といった法的手続きを検討します。
まず検討されるのが「調停」です。調停は裁判所で行われる話合いの手続きで、裁判官1名と調停委員2名からなる調停委員会が当事者双方から事情を聞き、合意による解決を促します。
調停でも解決しない場合、最終的な手段として「訴訟」を提起します。訴訟は、裁判所が双方の主張や証拠に基づいて法的な判断を下し、判決によって紛争を解決する手続きであり、その判決には強制力が伴います。弁護士は、貸主の主張を法律構成し、必要な証拠を収集・提出します。
これらの手続きは専門知識が必要で煩雑ですが、弁護士に一任することで貸主の負担は大幅に軽減されます。弁護士が専門家として手続きを進行させ、合意または判決による最善の解決へと導くのです。
ステップ5:合意書の作成と明け渡しの実行
交渉を経て、借主との間で立ち退きに関する具体的な合意が成立した場合、その合意内容を明確に書面に残しておくことは極めて重要です。
口約束だけでは、後々になって「言った、言わない」という認識のズレやトラブルに発展し、せっかくの合意が無意味になるリスクも考えられます。弁護士は、この最終的な合意内容を反映させた、法的に有効な「立ち退き合意書」を作成します。
立ち退き合意書には、今後の不要な紛争を避けるため、以下の項目などを詳細かつ具体的に記載することが一般的です。
- 建物の明け渡し期日
- 合意された立ち退き料の金額、支払い方法、支払い期日
- 敷金の返還に関する取り決め
- 建物の原状回復義務の範囲や方法
- 物件内に残された借主の残置物の取り扱い
- 合意期日までに明け渡しが実行されない場合の「損害金」について
合意書作成後、いよいよ実際の物件の明け渡しが実行されます。弁護士は、合意書に定めた明け渡し期日に立ち会い、借主からの鍵の返却を受けたり、物件の状態確認を行ったりします。残置物がないかなど、合意内容通りに明け渡しが完了するまで、貸主を専門家の視点からサポートします。
弁護士が最後まで立ち会うことで、トラブルなくスムーズに手続きを完了させることができます。
立ち退き交渉を弁護士に依頼する際の費用相場
立ち退き交渉を弁護士に依頼するにあたり、最も気になる点の一つが弁護士費用です。弁護士費用にはいくつかの種類があり、どのような費用が発生し、その総額がどのくらいになるのか、事前に把握しておきたいと考えるのは当然のことです。
相談料|まずは無料相談の活用を
立ち退き交渉について弁護士に相談する際、まず検討したいのが法律相談にかかる費用、いわゆる「相談料」です。弁護士への相談料は、一般的に30分あたり5,000円から1万円程度が相場とされています。
当事務所では、初回30分の相談を無料とさせていただき、30分以降については、30分毎に5000円(税別)の相談料を頂戴しています。
無料相談の際には、以下の点について確認しておくと良いでしょう。
- 問題の法的な見通し
- その弁護士の立ち退き交渉における経験や実績
- 正式に依頼した場合の費用概算(着手金、報酬金など)
限られた相談時間を有効に使うためにも、聞きたい点を事前に整理しておくことをお勧めします。
着手金|交渉を始める前に必要な費用
弁護士に立ち退き交渉を正式に依頼する際に、交渉に着手してもらう前に支払う費用が「着手金」です。この費用は、弁護士が事件を受任し、解決に向けて活動を開始するために必要となる初期費用です。着手金の金額は弁護士事務所によって異なりますが、一般的な相場としては30万円から40万円程度とされることが多いようです。
当事務所では、立ち退きの対象とする物件の固定資産税評価額をベースに、以下の割合を適用して算定します。ただし、最低着手金は30万円(税別)としています。
- 300万円以下の場合 8%
- 300万円を超えて3000万円以下の場合 5%+9万円
着手金は、あくまで弁護士が案件に着手するための費用であり、立ち退き交渉の結果、つまり立ち退きが成功したかどうかにかかわらず、返還されない費用です。したがって、たとえ交渉が成立しなかった場合でも、支払った着手金は戻ってこないことを理解しておく必要があります。弁護士との契約前に、以下の点についてしっかりと確認し、不明な点は納得いくまで質問することが、後々のトラブルを防ぐ上で非常に大切です。
報酬金|立ち退きが成功した場合の費用
報酬金は、弁護士に立ち退き交渉を依頼し、借主が物件を明け渡すなど、弁護士の活動によって最終的に立ち退きが成功した場合に発生する費用です。これは、依頼の成果に応じて支払う「成功報酬」にあたります。
報酬金の算定方法は弁護士事務所によって異なりますが、一般的には、弁護士の活動によって依頼者が得た「経済的利益」を基準に計算されます。経済的利益とは、例えば、立ち退きによって得られる不動産の評価額や、争点となった立ち退き料の額などを指します。この経済的利益に所定の割合を適用して報酬金を算出することが多いでしょう。
当事務所でも、立ち退きによって明渡しを受けた不動産の評価額をベースに以下の割合を適用して報酬金を算出します。
- 300万円以下 16%
- 300万円を超え3000万円以下 10%+18万円
実費|手続きにかかるその他の費用
弁護士に立ち退き交渉や関連する法的手続きを依頼する場合、着手金や報酬金といった弁護士費用とは別に、事件を進める上で実際に発生する費用があります。これが「実費」と呼ばれるものです。具体的な実費の例としては、借主へ意思表示を行うために送付する内容証明郵便の郵送費用、調停や訴訟に移行した場合に裁判所に納める印紙代や予納郵券代(切手代)などがあります。また、弁護士が物件の現地確認や裁判期日のために移動する際の交通費、事案によっては不動産の専門家へ鑑定を依頼する場合の費用なども実費として計上されることがあります。
立ち退き交渉で頼れる弁護士の選び方3つのポイント
実際に弁護士への依頼を検討する際、どのような弁護士に任せれば良いのか、迷われる人も少なくないでしょう。立ち退き交渉は専門的な知識や経験が求められるため、適切な弁護士を選ぶことがその成否を大きく左右すると言っても過言ではありません。
立ち退き交渉に関する実績がある
弁護士選びにおいて、貸主側の立ち退き交渉に関する実績は、非常に重要な判断基準の一つとなります。過去にどのような貸主側の案件を扱ってきたのか、具体的な件数や種類を確認することが重要です。
面談時には、これらの実績について、具体的な交渉戦略や法的主張をどのように展開して解決に導いたのか質問してみるのも良いでしょう。実績豊富な弁護士は、借主側の様々な反論や要求を予測し、法的な視点から的確に対応できるため、交渉を有利に進め、早期解決につなげられる可能性が高まります。
費用体系が明確で、事前に詳しい説明があるか
弁護士に依頼するにあたって、費用に関する透明性は非常に重要です。
費用の種類や各金額が契約前に明確に示されているかを確認することは、後々の金銭トラブルを防ぐ上で非常に重要です。
さらに、事案の進行状況によって追加費用が発生する可能性はあるのか、あるとすればどのような条件で発生するのかについても確認することが大切です。これにより、全体の費用感をより正確に把握でき、安心して手続きを任せられるかを判断できます。
明確な費用体系と丁寧な事前説明は、弁護士との間に信頼関係を築く上でも非常に重要な要素となります。
迅速かつ丁寧な対応で、コミュニケーションが取りやすいか
立ち退き交渉は、借主との間で様々なやり取りが必要となり、解決までに時間を要する場合もあります。そのため、依頼する弁護士とのコミュニケーションが円滑に進むかどうかも、弁護士選びの重要なポイントです。問い合わせに対する返信が迅速であるか、メールや電話での連絡がスムーズに取れるかなどを確認しましょう。
また、実際に面談した際に、分かりやすい言葉で丁寧に説明してくれるかどうかも見極める必要があります。専門用語を多用せず、疑問や不安に対して親身に耳を傾け、寄り添った対応をしてくれる弁護士であれば、安心して任せられるでしょう。
立ち退き交渉は難波みなみ法律事務所へ

賃貸物件の立ち退き交渉は、貸主にとって、さまざまな困難を伴うのが実情です。借主との間で感情的な対立が生じたり、提示した立ち退き料で納得が得られなかったりすることは少なくありません。また、立ち退きを求める上で不可欠となる「正当事由」の主張・立証には専門的な法知識が必要であり、個人で対応するには限界があります。さらに、交渉が長期化するほど、精神的、時間的な負担は増大してしまいます。
こうした複雑な立ち退き交渉を円滑かつ有利に進めるためには、弁護士に依頼することが有効な手段となります。 弁護士は法律の専門家として、借地借家法に基づいた「正当事由」を法的な根拠をもって主張し、過去の判例などを踏まえながら適正な立ち退き料を算定することができます。弁護士が貸主の代理人として交渉の窓口となることで、借主との直接交渉を避け、感情的な対立を防ぎ、冷静な話し合いを進めることが可能になります。
もし現在、立ち退き問題でお困りであれば、一人で抱え込まず、まずは弁護士に相談することをおすすめします。