コラム
更新日: 2024.07.25

婚姻費用の審判とは?審判の流れや注意点を解説|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

弁護士解説 離婚問題 婚姻費用の審判 審判の流れや注意点

婚姻費用の問題は、多くの夫婦にとって重要な課題です。

婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を継続するために必要な生活費のことを指し、別居後の妻や子供の生活を支える重要な役割を果たします。

他方で、婚姻費用を負担する夫側からすれば、大きな経済的な負担を伴うことも多くあります。

そのため、婚姻費用の問題は夫婦間で深い対立を招くことも多くあります。時に、調停手続では解決に至らず審判手続に移行するケースもしばしばです。

この記事では、婚姻費用に関する審判手続の流れと注意点について詳しく解説します。審判手続の具体的なステップや注意点を理解し、適切に対応するための知識を身につけましょう。

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婚姻費用の審判とは

婚姻費用の審判とは、婚姻費用分担請求の調停手続が不成立となった後に移行する裁判所の手続です。

婚姻費用とは、夫婦が生活を送るために必要となる生活費をいい、衣食住の費用のほか、医療費や未成熟子の養育費や教育費などが含まれます。

婚姻費用の審判手続では、当事者から提出された主張書面や証拠に基づいて、裁判官が婚姻費用の金額や支払期間等について終局的な判断を示します。

婚姻費用の調停手続との違い

婚姻費用の審判と調停手続は異なる手続きです。調停手続は家庭裁判所の調停委員の仲裁を通じて夫婦間の合意を目指す話し合いの場であり、当事者双方が合意することを前提としています。

一方で、審判手続では裁判所が一方的に決定を下す手続であるため、調停手続のように当事者双方の話し合いの要素は薄くなります。

調停では、当事者間の合意を目指して話し合いを進めていきますが、合意の成立が難しい場合は、調停が不成立となり審判へ移行します。

調停に代わる審判との違い

調停が不成立となる場合でも、調停手続の事情を考慮して、事件の解決のために必要な審判をすることがあります。これを調停に代わる審判といいます。

調停手続が不成立となる点で審判手続と同じです。しかし、調停に代わる審判は、審判手続を経ることなく、調停手続で提出された書面や証拠等を基に、調停の不成立後すぐに出される点で異なります。

調停に代わる審判は、相手方が欠席する場合、双方の対立点が小さい場合、条件の一致はあるものの合意という形式を心情的に望まない場合に活用されます。

調停に代わる審判の告知を受けた日から2週間以内であれば異議申し立てをすることが認められており、異議申立てがされた場合には審判手続に移行します。

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婚姻費用の審判に移行するケース

婚姻費用の調停がうまくいかない場合、審判に移行することが考えられます。ここでは、具体的にどのようなケースが審判に移行する要因となるのか解説します。

婚姻費用の金額に争いがある

婚姻費用の金額や条件について対立が強く、合意に至らない場合には、審判手続に移行することが一般的です。

調停では両者の合意が必要ですが、合意が得られない場合、裁判所が最終的な判断を示す方法である審判に進む必要があります。

特に、夫婦の一方が収入を隠していたり、確定申告書の内容が不自然であるなど、収入額に争いがある場合には、合意に至らず審判となることがあります。

相手方が調停期日に出席しない

相手方が調停期日に出席しない場合、調停手続は不成立となり審判手続に移ることがあります。

相手方が欠席する場合、先ほど紹介した調停に代わる審判となるケースもありますが、調停手続の状況を踏まえて審判手続に移行することもあります。

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婚姻費用の審判手続の注意点

婚姻費用の審判手続に進む際には、いくつかの重要な注意点を把握しておくことが重要です。

以下では、審判手続の際に特に留意すべきポイントについて詳しく解説していきます。

収入資料を適切に提出する

婚姻費用の審判手続において、正確な婚姻費用を算定するためには、収入資料を適切に提出することが非常に重要です。

特に源泉徴収票や給与明細は、収入の正確な証拠として不可欠な存在です。これらの資料があることで、裁判所は当事者の収入状況を正確に把握でき、公正な判断を示すことができます。

例えば、会社員であれば毎年発行される源泉徴収票や給与明細といった資料が収入を証明する主要な資料となります。

一方で、フリーランスや自営業者の場合、確定申告書に加えて所得証明書等が収入の証拠として有力です。

これらの書類を適切に提出しなければ、実際の収入よりも高額な収入額を認定されてしまうリスクがあります。

私学加算や歯列矯正等の証拠資料を確保する

私立学校や歯列矯正等の特別費用の主張と立証を尽くします。

婚姻費用には、子供の教育費や医療費も含まれています。しかし、子供の教育費は公立学校の教育費を、医療費は標準的な医療費を想定しています。そのため、私立学校の授業料や歯列矯正等の高額な医療費を含んでいません。

そこで、これらの特別な事情による支出を必要とする場合には、婚姻費用の加算が認められます。

ただ、常に特別費用の加算が認められるわけではありません。算定表や標準算定方式により算定される婚姻費用のみでは著しく不公平といえることが必要です。

私立学校への進学に同意していることや歯列矯正等の治療を必要とする理由などを具体的に主張・立証しなければなりません。これらの特別な事情による主張立証について、出し惜しみすることなく、早い時期に主張と立証を尽くすべきです。

主張書面を出し尽くす

審判で有利な結果を得るためには、主張書面を出し尽くすことが不可欠です。

審判手続では、当事者から事情を聴取する審問を行うケースもありますが、裁判官の判断の基礎となるのは主張書面で示される主張内容とこれを裏付ける収入資料等の客観的な資料です。

調停で口頭で述べていたとしても、これが審判手続で判断の基礎となるとは限りません。重要な主張は、主張書面により明快に行われなければなりません。書面を提出したとしても、的を得ない心情的な主張を羅列させても、その主張は裁判官の心証形成に影響を与えない可能性があります。

主張書面を出す際には、争点に必要な事項を分かりやすく明示した文書を適切な時期に提出することが重要です。

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審判手続のデメリット

審判手続は、裁判官による最終的な判断が示されるため紛争を終結させるメリットはあります。

しかし、審判手続には、調停手続と比べてデメリットがいくつかあります。

婚姻費用額が不利になる

婚姻費用の審判において、分担額が希望どおりにならないリスクがあることを理解しておくことが重要です。

調停手続では、当事者双方の話し合いを通じて合意を目指していくため、自身の希望をある程度考慮される場合もあります。

しかし、審判手続では、双方の主張と収入資料等の証拠を基に終局的な判断が示されます。そのため、当事者の希望を考慮しない一刀両断的な判断となることも多くあります。

未払い婚姻費用の一括払いを求められる

婚姻費用の審判において、未払いの婚姻費用を一括で支払うように求められます。

婚姻費用の支払義務は、調停の申立時などの請求時から発生します。

婚姻費用の支払いが滞ることで生活に困窮する可能性があるため、迅速な対応が必要です。このため、一括払いの要求が発生します。例えば、半年以上にわたって婚姻費用が支払われなかった場合、審判によりその分が一括して支払うよう命じられることがあります。婚姻費用の未払いが続くと、一括払いのリスクが発生するため注意が必要です。

弁護士への依頼が必要となる

審判手続を有利に進めていくために弁護士に依頼することが必要となることもあります。

調停手続は、当事者間の話し合いを基調とするプロセスです。できれば調停手続から弁護士に相談や依頼をすることが望ましいですが、話し合いの要素が強いことから弁護士に依頼しないこともあります。

しかし、審判手続においては、話し合いの要素は少なく、法的な主張と立証を的確に行うことが求められます。

婚姻費用の審判手続の流れ

婚姻費用に関する適切な判断をしてもらうためには、婚姻費用の審判手続の流れを正しく理解することが必要です。ここでは、婚姻費用の審判手続の主な流れについて解説します。

婚姻費用の審判手続は、大きく分けて以下のステップで進行します。

  1. 裁判官の審問を行う
  2. 主張書面を提出する
  3. 審判を出す

各ステップを詳しく見ていくことで、審判手続の全体像を把握しましょう。

裁判官の審問を行う

審判手続の中で裁判官の審問を行うこともあります。

審問とは、裁判官が、審問期日に出頭した当事者に対して、事情の聞き取りを行い事実の調査を行う手続をいいます。

審問では、争点となっている事項について裁判官から聴き取りが行われますが、ケースによっては、話し合いによる解決を打診されることもあります。

調停手続において当事者双方から主張や資料が十分に提出されているような場合には、審問を実施せずに書面の審理のみで審判を行うこともあります。

主張書面と証拠を提出する

婚姻費用の審判手続を適切に進めるためには、主張書面を提出し、必要となる主張を漏れなく行うことが不可欠です。

主張書面は裁判官に対して、当事者の主張や証拠を明確に伝えるための重要な手段であり、この書面がなければ裁判官は正確な判断を下すことが難しくなります。

指定された提出期限までに主張書面を提出して自分の主張を確実に伝えることが、婚姻費用の審判手続で有利に働くポイントとなりますので、可能な限り詳細かつ具体的に準備しましょう。

審判が出る

審判手続において、十分な審理が尽くされれば、審判期日が指定され、審判書を送達する方法で審判の内容が告知されます。

審判を受け取った日の翌日から2週間を経過すると、審判は確定することになります。

確定した審判は、確定判決と同じ効力を持っているため、相手方が婚姻費用の支払いをしない場合には、強制執行の手続をとることができます。

異論があれば即時抗告を出す

審判の内容に異論がある場合には、審判書を受け取った日の翌日から2週間以内に原裁判所(審判を出した家庭裁判所)に対して即時抗告を提出する必要があります。

審判の結果に不満があっても、即時抗告の期限を過ぎてしまうと審判の内容が確定してしまい、事後的に審判の内容を覆すことは難しくなります。そのため、審判書を受け取ったら、すみやかに内容を確認し、必要であれば抗告状を提出しましょう。

調停をせずに審判できない

調停手続を経ずに、いきなり審判を受けることは原則できません。

婚姻費用の審判申立てをしたとしても、裁判所は当事者の意見を聞いた上で、手続を調停手続に移行させるのが原則となります。

なぜなら、当事者間の関係を悪化させることを防ぎつつ、義務者による任意の支払いを促すために、話し合いをベースとする調停手続を経ることが望ましいと考えるからです。

ただし、緊急性が高い場合、離婚調停において婚姻費用に関する協議を十分にされているものの調停が成立する見込みが乏しい場合については、婚姻費用の調停を経ずに審判手続で審理されることもあります。

婚姻費用の問題は弁護士に相談を

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婚姻費用の問題が発生した場合、専門家である弁護士に相談することを強くおすすめします。

婚姻費用の計算や調停・審判の手続きには、専門的な知識が必要です。

また、調停や審判の各プロセスには、専門的な知見だけでなく、これに対応する精神的な負担も招きます。

弁護士に相談や委任をすることで、足りない法律の知識をカバーできるだけでなく、弁護士が代理人となることで精神的な負担も軽減させることを期待できます。

婚姻費用の問題で悩んでいるなら、すぐに信頼できる弁護士に相談しましょう。

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