被相続人とは「財産を残して亡くなった人」、相続人とは「その財産を受け継ぐ権利がある人」です。書類では亡くなった方を必ず「被相続人」と表記します。相続人になれる範囲と順位は法律で決まっており、配偶者は常に相続人、これに加えて第1順位=子(先に亡くなっていれば孫)、第2順位=親・祖父母、第3順位=兄弟姉妹(先に亡くなっていれば甥姪)が順に相続人になります。先順位の人が1人でもいれば、後順位の人は相続人になりません。法定相続分は組み合わせで決まり、配偶者と子なら各2分の1、配偶者と直系尊属なら配偶者3分の2、配偶者と兄弟姉妹なら配偶者4分の3です。内縁の配偶者と再婚相手の連れ子は、法律上の婚姻関係・親子関係がないため相続人になりません。財産を残すには遺言による遺贈、連れ子であれば養子縁組といった生前の手当てが必要です。
この記事のポイント
- 被相続人=財産を残して亡くなった人。相続人=その財産を受け継ぐ権利がある人
- 配偶者は常に相続人になる。内縁関係では相続人にならない
- 順位は第1が子(代襲で孫)、第2が親・祖父母、第3が兄弟姉妹(代襲で甥姪)
- 先順位の相続人が1人でもいれば、後順位の人は相続人にならない
- 法定相続分は、配偶者と子で各2分の1、配偶者と直系尊属で配偶者3分の2、配偶者と兄弟姉妹で配偶者4分の3
- 同順位者が複数いる場合は、その取り分を人数で等分する
- 内縁の配偶者と再婚相手の連れ子は相続人にならない。遺言による遺贈や養子縁組で対応する
- 借金などマイナスの財産も相続の対象。相続したくない場合は相続開始を知った日から3か月以内に相続放棄または限定承認を申述する(民法915条)
- 相続放棄をすると次順位の人に相続権が移る。親族に思わぬ影響が及ぶ点に注意
- 遺言の内容に納得できない場合の手段は、遺留分侵害額請求(知ってから1年以内・民法1046条)と遺言無効確認訴訟の2つ
相続の手続きを進めると、必ず出てくるのが「被相続人」という言葉です。しかし「被相続人とは誰のこと?」「相続人と何が違うの?」「結局どっちが財産をもらう側?」と戸惑う方は少なくありません。本記事では、被相続人・相続人・法定相続人の違いから、誰がどの順位でどれだけ相続するか、手続きの流れまでを、大阪の弁護士が図表でわかりやすく解説します。
- 被相続人(ひそうぞくにん)とは?
- 財産を残して亡くなった人のこと。相続手続きで故人を指す専門用語です。「被」は「〜される側」を表し、被相続人=相続される人を意味します。
- 相続人との違いは?
- 相続人は、被相続人の財産を受け継ぐ人。つまり 被相続人=財産を渡す側(亡くなった人)/相続人=財産をもらう側(生きている人) と、立場が正反対です。
- 誰が相続人になる?
- 配偶者は常に相続人。血族は①子ども ②親 ③兄弟姉妹の順に優先され、上位が1人でもいれば下位は相続できません(民法890条・887〜889条)。
1被相続人・相続人・法定相続人の違い【一覧表で即わかる】
相続でつまずきやすいのが、似た言葉の区別です。漢字一文字「被」の有無で、財産を渡す側と受け取る側という正反対の立場を表します。まずは3つの言葉を一覧で整理しましょう。
| 用語 | 意味(誰のこと) | 立場 | 状態 |
|---|---|---|---|
| 被相続人 | 財産を残して亡くなった人(故人) | 渡す側 | 死亡している |
| 相続人 | 被相続人の財産を実際に受け継ぐ人 | もらう側 | 生存している |
| 法定相続人 | 民法上、相続する権利を持つと定められた人 | もらう側(候補) | 生存している |
被相続人とは「財産を残して亡くなった人」
被相続人とは、自身の財産を残して亡くなった方を指す専門用語です。「被」という漢字は「〜される」という受け身を表し、被相続人=相続される人(財産を引き継がれる人)を意味します。相続手続きは、被相続人が持っていた財産(遺産)を相続人に引き継ぐ手続きで、この「財産」には次のものが含まれます。
- プラスの財産:預貯金、不動産、株式、自動車 など
- マイナスの財産:借金、未払いのローン、保証債務 など
相続人とは「財産を受け継ぐ権利がある人」
相続人とは、亡くなった方(被相続人)が遺したプラスの財産とマイナスの財産の両方を、法律に基づいて受け継ぐ人のことです。誰が相続人になるかは民法で範囲と順位が定められています。相続人となるための主な条件は次のとおりです。
- 同時存在の原則:被相続人が亡くなった時点で生存している必要があります。
- 胎児の扱い:被相続人の死亡時に胎児だった場合、無事に生まれれば相続人になります(民法886条)。死産の場合は相続人になりません。
- 相続放棄:相続放棄をした人は、はじめから相続人でなかったものとして扱われます。
結局どっち?被相続人と相続人の関係を図解
「相続人と被相続人はどっちが財産をもらう側か分からない」という声は多いものです。ポイントはシンプルで、亡くなった人=被相続人(渡す側)/その財産を受け取る人=相続人(もらう側)。たとえば父が亡くなり、母と子が財産を受け継ぐケースなら、父=被相続人、母と子=相続人です。
この関係を整理した書類を「相続関係説明図」といい、誰が法的な相続人かを明確にして戸籍の内容をわかりやすくまとめることで、その後の手続きを円滑に進められます。


2誰が相続人になる?法定相続人の範囲と順位
被相続人の遺産を誰が受け継ぐかは、民法によって範囲と優先順位が定められています。この法律で定められた相続人を法定相続人と呼びます。配偶者は常に相続人となり、血族には次の順位があります。
| 立場 | 該当者 | 順位のルール |
|---|---|---|
| 配偶者 | 法律上の夫・妻 | 順位に関係なく常に相続人(民法890条) |
| 第1順位 | 子ども・孫(直系卑属) | 1人でもいれば第2・第3順位は相続不可 |
| 第2順位 | 親・祖父母(直系尊属) | 第1順位がいない場合に相続人 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹・甥姪 | 第1・第2順位がいない場合に相続人 |
常に相続人になる「配偶者」
被相続人に配偶者がいる場合、その配偶者は血族相続人の有無や順位にかかわらず常に相続人となります(民法890条)。ここでいう配偶者とは、役所に婚姻届を提出した法律上の夫婦を指します。なお、子どもや親がいない場合の相続については「相続人が配偶者のみになるケースと手続き」で詳しく解説しています。
第1順位:子ども・孫
第1順位は被相続人の子どもです。子どもには実子・養子(養子縁組により法律上の親子となった子)・認知された子が含まれます。子どもが被相続人より先に亡くなっていた場合は代襲相続により、その子ども(被相続人から見て孫)が代わりに相続人となります。孫も亡くなっていれば、さらに下の曾孫へと引き継がれます(再代襲)。
第2順位:親・祖父母
第1順位の子や孫が1人もいない場合、次に相続人となるのが第2順位の直系尊属(親・祖父母)です。まず親(父母)が対象で、両親とも存命ならどちらも相続人、一方のみ存命ならその方が相続人となります。親がすでに亡くなっている場合は祖父母が相続人になります(民法889条1項1号)。
第3順位:兄弟姉妹・甥姪
第1順位・第2順位がいずれも存在しない場合に相続人となるのが兄弟姉妹です。兄弟姉妹が先に亡くなっていた場合は代襲相続により甥・姪が相続人となります。詳しくは「甥・姪が相続人となるのか?代襲相続や注意点」もご覧ください。
3どれくらいもらえる?法定相続分の計算例
遺言書がない場合、遺産は相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で分けます。その際の目安となる割合を法定相続分といい、民法900条で定められています。あくまで「目安」であり、相続人全員が合意すれば異なる割合で分けることも可能です。代表的な3ケースを見てみましょう。
ケース① 配偶者と子どもが相続(遺産6,000万円)
配偶者が2分の1、子ども全員で残りの2分の1を等分します。子どもが2人なら、それぞれ4分の1ずつです。
| 相続人 | 法定相続分 | 相続額 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 1/2 | 3,000万円 |
| 子ども1 | 1/4 | 1,500万円 |
| 子ども2 | 1/4 | 1,500万円 |
ケース② 配偶者と親が相続(遺産6,000万円)
子どもがいない場合、配偶者が3分の2、親が残りの3分の1を相続します。両親とも存命なら3分の1を2人で分け合います。
| 相続人 | 法定相続分 | 相続額 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 2/3 | 4,000万円 |
| 父親 | 1/3 | 2,000万円 |
ケース③ 配偶者と兄弟姉妹が相続(遺産4,000万円)
子ども・親がいない場合、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が残りの4分の1を相続します。兄弟姉妹が2人なら、それぞれ8分の1ずつです。
| 相続人 | 法定相続分 | 相続額 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 3/4 | 3,000万円 |
| 兄弟1 | 1/8 | 500万円 |
| 兄弟2 | 1/8 | 500万円 |
4相続開始後の手続きの流れ【5ステップ】
大切な方が亡くなられた後、残されたご家族は相続手続きを進めていくことになります。相続発生から遺産分割完了までの大まかな流れを5つのステップで解説します。
1遺言書があるか探す自宅の金庫・仏壇・貸金庫や、法務局の自筆証書遺言書保管制度を確認。自筆証書遺言を自宅で発見したら勝手に開封せず、家庭裁判所で「検認」を行います(公正証書遺言・法務局保管分は検認不要)。
2相続人を確定させる被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と、相続人全員の現在の戸籍謄本を集めて相続人を確定します。本籍地を何度も移していると複数の役場から取り寄せる必要があります。
3被相続人の財産を調査する預貯金・不動産・株式などプラスの財産と、借金などマイナスの財産をすべて洗い出し「遺産目録」を作成。相続放棄を検討する際の重要な資料になります。
4遺産分割協議を行う遺言書がない場合、相続人全員で分け方を話し合い「遺産分割協議書」にまとめます。全員の署名・実印・印鑑登録証明書が必要で、1人でも欠けると協議は無効です。話し合いがまとまらない場合は「遺産分割協議がまとまらない時の対応」を参考にしてください。
5名義変更・相続登記・相続税申告預貯金の解約、不動産の相続登記、必要に応じて相続税申告を行います。
5被相続人・相続に関するよくある疑問Q&A
| 方法 | 対象者 | 条件・ポイント |
|---|---|---|
| 遺言による遺贈 | 内縁の妻・連れ子 | 被相続人が生前に遺言書を作成し財産を与える意思表示をする(最も確実) |
| 養子縁組 | 連れ子 | 法律上の親子関係が成立し、実子と同じ相続権を持つ |
| 特別縁故者制度 | 内縁の妻 | 法定相続人が1人もいない場合に限り、家庭裁判所への申立てで財産分与が認められる可能性(例外的措置) |
6相続の悩みは難波みなみ法律事務所へ

本記事では、相続の第一歩として「被相続人」と「相続人」の違い、法定相続人の範囲と順位、法定相続分の計算例、手続きの流れを解説しました。相続は一生に何度も経験するものではないため、法律用語や手続きの複雑さに戸惑う方も少なくありません。遺産をめぐるトラブルを避け、故人の意思を尊重した円満な相続を実現するには、基本知識を備えておくことが重要です。
この記事を読んでもなお不安な点や疑問が解消されない場合は、一人で抱え込まず、弁護士の力を借りることを強くおすすめします。初回相談30分無料です。
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