お子さんが交通事故に遭うと、親としては「慰謝料はどうなるのか」「うちの子にも過失があると言われないか」「将来にどんな影響が残るのか」と不安が尽きません。子どもの交通事故には、大人の事故とは違う特有の論点があります。過失相殺の考え方、親(監督者)の過失の扱い、通院への付き添い、そして将来の逸失利益です。この記事では、負傷したお子さんの親の視点で、子どもの事故で特に問題になる点と、親がすべきことを解説します。慰謝料の金額計算や逸失利益の詳しい計算方法は関連記事へリンクします。
Q. 小さい子どもにも「過失相殺」で慰謝料が減らされますか?
A. 子ども自身の過失が考慮されるのは、物事の危険を理解できる能力(事理弁識能力。おおむね5〜6歳程度)が備わっている場合です。それより幼い子は、本人の過失を理由に減額されません。
Q. 「親が見ていなかったから」と減額されますか?
A. 親など監督者の過失は「被害者側の過失」として考慮されることがあります。ただし、保育士や幼稚園の先生など、親と一体とはいえない人の過失は含まれません。
Q. 親は何をすべきですか?
A. 人身事故として届け出て、通院を続け、記録を残すことです。子どもの事故は将来の逸失利益や後遺障害の再評価も関わるため、早めに弁護士へ相談してください。
子どもの過失相殺|「事理弁識能力」がポイント
過失相殺とは、被害者側にも不注意があったときに、その分だけ賠償額を減らす仕組みです(民法722条2項)。子どもの場合、本人の過失を考慮するには、事理弁識能力——物事の危険を理解して行動する能力——が備わっていることが必要です。加害者に賠償責任を負わせる「責任能力」までは不要ですが、事理弁識能力は必要、というのが判例です(最高裁昭和39年6月24日)。
この能力の目安は、小学校入学のころ(おおむね5〜6歳)とされます。したがって、これより幼い子は、飛び出しなどがあっても本人の過失を理由に慰謝料を減らされることはありません(一方で、小学2年・8歳の子に過失相殺を認めた最高裁の例もあります)。保険会社が幼児の事故で当然のように過失相殺を持ち出してきても、鵜呑みにする必要はありません。
親(被害者側)の過失は考慮される|ただし保育士等は別
子ども本人に事理弁識能力がなくても、親など監督者の過失が事故に影響した場合は、「被害者側の過失」として過失相殺で考慮されることがあります。これは、被害者と身分上・生活関係上一体をなす者(親や配偶者など)の過失は、公平の見地から被害者側の過失として扱う、という考え方です(最高裁昭和42年6月27日)。
もっとも、この「被害者側」に含まれるのは親などに限られます。保育士や幼稚園・学校の教員など、親と一体とはいえない立場の人の過失は含まれません(同判決)。「保育園で預かっているときの事故だから」といった理由で、親の側の過失として一律に減額されるわけではありません。
子どもは「交通弱者」として過失が小さく見られる
仮に子ども本人の過失が問題になる場合でも、子ども(幼児・児童)は歩行者や自転車の中でも「交通弱者」として保護され、過失割合は小さく修正されるのが実務の扱いです。同じ飛び出しでも、大人と子どもとでは評価が変わり、子どもの側が有利に見られます。相手方の保険会社が大人と同じ基準で高い過失を提示してきても、そのまま受け入れる必要はありません。事故態様ごとの過失割合の考え方は、過失割合の記事で解説しています。
保育園・学校の管理に問題があったとき
通園・通学中や、園・学校の管理下での事故で、施設側の安全管理に落ち度があった場合には、事故を起こした運転者とは別に、園・学校の側に安全配慮義務違反の責任を問えることがあります。誰にどのような請求ができるかは事故の状況によって変わるため、園・学校での事故は、その時の状況や管理体制も記録しておいてください。
子どもの入通院慰謝料と親の付き添い
子どもがケガをした場合の入通院慰謝料は、基本的な考え方は大人と同じで、入通院の期間・実通院日数に応じて算定します。金額の相場や計算方法は関連記事で解説しています。子ども特有の点として、次の費用も見落とさないようにします。
| 費目 | 内容 |
|---|---|
| 通院付添費 | 幼い子で一人では通院できない場合、近親者が付き添えば通院付添費が認められます |
| 付き添いのための親の休業損害 | 子どもの通院・入院に付き添うため親が仕事を休んだ場合、その収入減が損害と認められることがあります |
| 入院付添費・入院雑費 | 入院に付き添った場合の費用や、入院中の雑費 |
付き添いが必要だったことを示すため、ケガの内容や医師の指示を記録しておいてください。
子どもの逸失利益|まだ働いていなくても請求できる
後遺障害が残ったり亡くなったりした場合、まだ働いていない子どもでも逸失利益(将来得られたはずの収入の減少)を請求できます。将来の就労は確実だからです。実務では、賃金センサスの全年齢平均賃金を基礎に、原則として18歳から67歳まで働くものとして計算します。中間利息の控除は就労を始める18歳を起点に調整します。子どもの成績や能力の優劣で金額に差をつけることはせず、平均賃金を一律に用いるのが通例です(将来の進路は誰にも分からないためです)。女の子の場合も、女性だけの平均賃金ではなく、男女を合わせた全労働者の平均賃金で計算するのが一般的で、男女の格差を是正する扱いがとられています。
計算式は次のとおりです。18歳未満の子は、まだ働き始めていない事故時から18歳までの期間を差し引くため、2つのライプニッツ係数の差を用います。
| ケース | 計算式 |
|---|---|
| 後遺障害が残った場合 | 基礎収入 × 労働能力喪失率 ×(事故時から67歳までのライプニッツ係数 − 事故時から18歳までのライプニッツ係数) |
| 亡くなった場合 | 基礎収入 ×(1 − 生活費控除率)×(事故時から67歳までのライプニッツ係数 − 事故時から18歳までのライプニッツ係数) |
「基礎収入」には賃金センサスの全年齢平均賃金を用い、「ライプニッツ係数」は中間利息(先に受け取ることで生じる利息分)を差し引くための係数で、法定利率(現在は年3%)に基づいて決まります。具体的な金額のシミュレーションは、関連記事の慰謝料計算ページをご覧ください。
重い後遺障害・死亡と、親の固有の慰謝料
お子さんに重い後遺障害が残った場合や、亡くなった場合には、親自身も固有の慰謝料を請求できます(民法711条ほか)。これは子ども本人の慰謝料とは別に、親の精神的苦痛に対して認められるものです。死亡事故の慰謝料の相場や、遺族がすべきことは関連記事をご覧ください。
子どもの後遺障害の特殊性
子どもの後遺障害は、大人と違って成長にともなって症状や影響が変化することがあります。高次脳機能障害などは、成長して求められる能力が高度になるにつれて障害が顕在化することもあり、症状固定の時期や等級の判断が難しい場合があります。将来の影響を見据えて、慎重に等級認定を進めることが重要です。後遺障害認定の流れは関連記事で解説しています。
事故直後に親がすべきこと
- 必ず「人身事故」で警察に届ける。実況見分調書が事故態様(過失割合)の重要な証拠になります。
- すぐに受診し、通院を続ける。子どもは症状をうまく訴えられないことがあるため、気になる点は親が医師に伝えます。
- 事故の状況・目撃者・ドライブレコーダーを確保する。過失割合の交渉で決め手になります。
- 保育園・幼稚園・学校にも事故の状況を確認する。園・学校での事故なら、その管理状況も記録します。
- 示談を急がない。子どもは逸失利益や後遺障害の影響が大きく、金額が動きやすいため、提示に納得できないうちにサインしないでください。
弁護士に相談するメリット
子どもの事故は、過失相殺の反論、将来の逸失利益、後遺障害の等級、親の固有の慰謝料など、争点が大きく金額も動きやすい類型です。適正な賠償を組み立てるだけで、結果が大きく変わることがあります。弁護士費用特約を使えば自己負担なく依頼できる場合もあり、お子さんが被害者なら親の特約を使えることもあります。ご自身や家族の保険を確認してみてください。
よくある質問
幼い子どもの飛び出しでも過失相殺されますか?
本人の過失が考慮されるのは、危険を理解できる能力(事理弁識能力。おおむね5〜6歳程度)が備わっている場合です。それより幼い子は、本人の過失を理由に減額されません。ただし親など監督者の過失が「被害者側の過失」として考慮されることはあります。
「親が見ていなかった」と減額されるのは正しいですか?
親など監督者の過失が事故に影響していれば、被害者側の過失として考慮されることがあります。もっとも、事故態様によって程度は変わり、提示された割合が妥当とは限りません。鵜呑みにせず検討が必要です。
保育園で預かっているときの事故です。親の過失になりますか?
保育士や幼稚園・学校の教員は、親と一体とはいえないため、その過失は「被害者側の過失」に含まれないとされています(最高裁昭和42年6月27日)。園で預かっている間の事故を理由に、親の過失として一律に減額されるわけではありません。
まだ小さい子でも逸失利益は請求できますか?
できます。将来の就労の蓋然性があるため、賃金センサスの全年齢平均賃金を基礎に、原則18歳から67歳まで働くものとして計算します。金額が大きくなりやすいので、安易な示談は避けてください。
子どもの通院に付き添った費用や、仕事を休んだ分は請求できますか?
できることがあります。幼い子で付き添いが必要なら通院付添費が、付き添いのため親が仕事を休めばその収入減が損害として認められることがあります。付き添いの必要性がわかる記録を残してください。
親も慰謝料をもらえますか?
お子さんが亡くなった場合や重い後遺障害が残った場合には、親も固有の慰謝料を請求できます(民法711条ほか)。子ども本人の慰謝料とは別に認められます。
子どもの後遺障害はいつ判断すればいいですか?
子どもの後遺障害は成長にともなって影響が変化することがあり、症状固定の時期や等級の判断が難しい場合があります。将来の影響を見据えて慎重に進める必要があるため、早めに弁護士へご相談ください。
保険会社に高い過失割合を提示されました。
子どもの事故では、飛び出しなどを理由に高い過失割合を提示されることがあります。事理弁識能力の有無や事故態様を踏まえて反論できる場面は多いので、鵜呑みにせず弁護士にご相談ください。
子どもの事故は、過失割合の反論・将来の逸失利益・後遺障害の等級・親の慰謝料まで、争点が大きく結果が動きやすい類型です。難波みなみ法律事務所は交通事故(被害者側)を着手金無料でお受けし、元裁判官の弁護士が損害算定や立証の見立てもお伝えします。初回相談30分無料、電話・メール・LINEで対応します。
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監修:難波みなみ法律事務所 代表弁護士 南 宜孝(大阪弁護士会)。大阪市中央区西心斎橋2-4-3 難波御堂筋ビル403/電話 06-6786-8103(受付9:00〜22:00)。初回相談30分無料。






