コラム
公開日: 2026.08.26

交通事故の診断書は3種類|経過診断書の重要性を解説

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。大阪弁護士会所属(登録番号49544)、大阪中小企業診断士会所属(登録番号 420113)、幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

交通事故の診断書は3種類。経過診断書の重要性を大阪の弁護士が解説

交通事故に遭うと、「診断書を出してください」と何度も言われます。ところがそのつど求められている診断書は、同じものではありません。警察に出すもの、保険会社に毎月出ているもの、治療の最後に書いてもらうもの——役割がまったく違う3種類が、同じ「診断書」という名前で呼ばれています。

この記事では、それぞれが何のための書類なのかを整理したうえで、いちばん見落とされている書類と、書いてもらえないときにどう考えればよいのかを説明します。

結論

交通事故の診断書は、警察提出用・経過診断書・後遺障害診断書の3種類です。このうち経過診断書は、一括対応がされていれば毎月1通程度、保険会社が病院から取り付けています。ご本人が目にしないまま進んでいることが多い書類です。

この経過診断書が、治療の要否と後遺障害の判断を大きく左右します。実務書は「自覚症状があっても、カルテや経過診断書に書いてなければ、なかったことにされやすい」と指摘しています。

健康保険や労災保険を使うと、自賠責関係の書類を作成してもらえないことがあります。後遺障害の申請に支障が出ますので、使う前に確認してください。

交通事故の診断書は、3種類ある

まず全体像です。事故から示談までの間に登場する診断書は、次の3つに整理できます。

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種類いつ誰に出すか何のため
警察提出用の診断書事故直後警察人身事故として扱ってもらう
経過診断書
(自賠責診断書)
治療中、毎月保険会社治療費の支払と、治療の必要性の判断
後遺障害診断書症状固定のとき保険会社・自賠責後遺障害の等級認定

この記事で中心に扱うのは、真ん中の経過診断書です。3つのうちもっとも数が多く、もっとも説明されていない書類だからです。警察に出す診断書と後遺障害診断書には専用の記事がありますので、そちらへご案内します。

「診断書を出してください」が何を指しているか

相談の場で「診断書はどうすればいいですか」と聞かれたとき、まず確かめるのは誰に出す診断書の話なのかです。ここが食い違ったまま話が進むと、必要な書類がそろわないまま治療が終わってしまいます。

  • 警察から言われたのであれば、人身事故として届け出るための診断書です。事故直後の話です。
  • 保険会社から言われたのであれば、多くは同意書のことか、経過診断書を病院から取り付ける手続の話です。
  • 「症状固定なので」と言われたのであれば、後遺障害診断書です。治療の終わりの話です。

警察に出す診断書|物件事故のままだとどうなるか

けがをしているのに警察に診断書を出さないと、その事故は物件事故(物損事故)として処理されます。後から効いてくるのは、記録が残らないことです。

実務書の指摘

交通事故証明書を取得したら、右下の欄(照合記録簿の種別)が「人身事故」となっているかを確認する。けがをしているのに物件事故になっている場合には、原則として、実況見分調書が作成されない。

実況見分調書は、事故の状況を警察が現場で記録した書面です。これがないと、過失割合が争いになったときに、事故の状況を裏づける材料が乏しくなります。過失割合の決まり方は交通事故の過失割合にまとめています。

気づかないまま進むと、自賠責の手続で止まります。物件事故の交通事故証明書は、右下の欄の記載が違うだけで、見た目は人身事故のものと大きく変わりません。そのまま自賠責に提出すると、「人身事故証明書入手不能理由書を提出するように」と指示されます。聞き慣れない書類を、あとから追加で用意することになります。

実務書は、人身事故の届出は道路交通法上の義務とされているが、加害者の立場を慮って物件事故のままにしている事例も散見されると指摘しています。相手の処分を心配して届け出ないという選択は、実際によくあります。

けががあるのに物件事故になっているのであれば、切替えを検討してください。手続の方法、いつまでにすればよいか、警察に断られたときの対応は物損事故から人身事故への切り替えで詳しく説明しています。

経過診断書|毎月出ていて、いちばん効いている書類

ここからが本題です。治療中、あなたが知らないうちに毎月作られている診断書があります。

一括対応がされていれば、月に1通ほど作られている

相手方の任意保険会社が治療費を病院に直接払っている状態を一括対応といいます。この状態のとき、保険会社は治療費を払うかどうかを判断するために、病院から診断書とレセプト(診療報酬明細書)を取り付けています。

実務書の記述

治療の見通しをもつために、相談者からの聞き取りのほか、診断書(経過診断書。一括対応されていれば月に1通程度作成される。)や診療報酬明細書(レセプト)の取り付け、必要に応じてカルテや検査結果の取り付け、医師との面談等を行う。一括対応されていれば、任意社が診断書とレセプトを取り付けているから、任意社から写しをもらう。

正式には自賠責診断書と呼ばれます。事故日、傷病名、治療経過、入通院期間などが記載された、決まった様式の書類です。病院によって様式が少し違うことがあります。

ご本人は、この書類をふつう目にしません。病院と保険会社の間でやり取りされているからです。しかし保険会社に写しを求めることはできます。治療がどう記録されているかを知りたいときは、遠慮なく求めてください。

なぜ、この書類がいちばん効くのか

実務書は、経過診断書とレセプトの位置づけをこう書いています。

経過診断書の重み

診断書とレセプトは受傷状況、治療内容、症状の推移をみる極めて重要な医証であり、治療の要否や後遺障害の有無の判断を大きく左右する。しかし診断書は極めて簡単にしか書かれていない場合が多く、カルテ等で補充する必要があることが少なくない。

ここに、この記事でお伝えしたいことが2つ含まれています。

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言われていること意味
治療の要否や後遺障害の有無の判断を大きく左右する治療費を打ち切るかどうかも、等級がつくかどうかも、この書類を見て判断されている
極めて簡単にしか書かれていない場合が多い実際に起きていることが、そのまま書かれているとは限らない

重い判断の材料になっているのに、中身は薄いことが多い。これが経過診断書という書類の実態です。だからこそ、後からカルテで補う作業が必要になります。

カルテは、情報の宝庫です

実務書は、カルテや看護日誌は後遺障害認定手続や訴訟での立証活動の強力な武器になると書いています。同時に、事案の弱いところ——支払う側から指摘されそうな点——を早めにつかむためにも役立つとしています。

診断書に書かれていないことが、カルテには書かれていることがあります。後遺障害が問題になりそうな事案では、カルテまで取り寄せて確認する価値があります。

自覚症状は、書いてなければなかったことになる

経過診断書について、実務書にはこう書かれています。

もっとも大事な一文

自覚症状があっても、カルテや経過診断書に書いてなければ、なかったことにされやすい。

むちうちのように、画像では確認しにくい症状ほど、この影響を強く受けます。痛みやしびれがあることを示す材料が、記録しか残らないからです。

「大丈夫です」と言ってしまう

診察は短時間です。忙しそうな医師を前に、いちばん痛いところだけ伝えて終わってしまうことがよくあります。首と腰の両方が痛いのに首のことしか話さなかった、しびれが出ているのに言い出せなかった——こうした行き違いは珍しくありません。

そのときに伝えなかった症状は、記録に残りません。そして数か月後に「実は腰も痛かった」と言っても、経過として説明がつかないと扱われることになります。事故直後から症状を訴えていたか、通院が途切れていないかという経過の一貫性は、後遺障害の判断で重く見られます。

症状を大げさに伝えましょうという話ではありません。むしろ逆で、実際にあるものを、あるとおりに伝えていただきたいということです。遠慮して省略することのほうが、結果として不利に働きます。

お伝えするとよいこと。痛みやしびれがどこにあるか、どんなときに強くなるか、日常生活や仕事の何ができなくなっているか。この3つが記録に残っていると、後の判断の材料になります。

入院しているときは、ご家族に付添ノート——その日の症状、食事やトイレの介助の内容、医師の説明、付き添った人と時間——をつけてもらうと、後々役に立ちます。購入したものの領収書も一緒に貼っておいてください。

診断書の日付から、通院期間を正しく読む

慰謝料は通院期間から計算されます。ですから診断書のどの日付が通院期間なのかは、金額に直結します。ここに落とし穴があります。

実務書の指摘

通院終了月の診断書で、この欄が月末の日付になっていても、最終通院日は月の途中の場合があるので、診療報酬明細書の通院日欄で最後に○がついている日を確認してください。その日までが通院期間です。

経過診断書の期間欄は、月単位で区切って作成されます。そのため最後の月の「至」の欄が、実際には通院していない月末の日付になっていることがあります。ここを鵜呑みにすると、通院期間を実際より長く見積もることになります。

入院期間の読み方も同じです。診断書が複数ある場合、最初の診断書の「自」の日付が入院日、最後の診断書の「至」の日付が退院日になります。

通院期間が確定したら、そこから慰謝料を計算します。金額の出し方は交通事故の慰謝料計算で、大阪の基準にもとづいて自動計算できるようにしています。

一括対応が打ち切られると、診断書に「中止」と書かれる

治療の途中で、相手方保険会社から「今月末で治療費の支払いを終了します」と言われることがあります。このとき、経過診断書にも変化が起きます。

実務書の記述

頚椎捻挫・腰椎捻挫等の事案は、症状があっても、対人社が医療照会の結果等を根拠に一方的に一括対応を打ち切る(医療機関等に直接支払うことをやめる)ことがある。一括対応が打ち切られると、経過診断書に「中止」と記載される。

「中止」という言葉は強く見えますが、これは治療が終わったという意味ではありません。保険会社がその病院への支払いをやめた、という事実が書かれているだけです。治療の必要性を判断するのは医師であって、保険会社ではありません。

打ち切りの時期は、決まっていません

いつ打ち切られるかは、事故の状況と症状によって変わります。実務書には、次のような目安が書かれています。

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事案打ち切り・打診の時期
比較的軽微な事故のむちうち・腰椎捻挫3か月程度
軽微とはいえない事故のむちうち・腰椎捻挫3〜6か月程度
修理費が数万円に留まる軽微事故で、他覚所見がない一括対応がされても1か月で打ち切られることが少なくない

「むちうちは6か月まで」と決まっているわけではありません。実務書が挙げているのは上の幅で、1か月で打ち切られることもあれば、それより長く続くこともあります。医療機関と整骨院を併用している場合に、先に整骨院の一括対応だけを打ち切られることもあります。

また、通院頻度が低い場合や、通院を続けているのに症状の改善が見られない場合も、打ち切りの引き金になりやすいとされています。

打ち切られた後の通院は、無駄になりません

一括対応の打ち切りと、賠償の対象として認められる治療期間は、別の問題です。打ち切り後に自費で通院した期間も、治療の必要性が認められれば、慰謝料や治療費の対象になります。

打ち切りを通告されたときに何をすればよいか——主治医に必要性を書面にしてもらう、症状固定の見込み時期を示して交渉する——といった具体的な対応は交通事故の保険会社との交渉に、症状固定を誰が決めるのかは交通事故の症状固定にまとめています。

健康保険や労災を使うと、書いてもらえないことがある

ここはあまり知られていないのに、後から大きく効いてくるところです。

一括対応が打ち切られたとき、あるいは過失がある事故のとき、健康保険や労災保険を使って治療を続けることがあります。交通事故でも健康保険・国民健康保険は使えますので、これ自体は正しい選択です。ところが、思わぬところで支障が出ます。

実務書の指摘

労災保険や健康保険を使用した場合、自賠責診療報酬明細書を作成してくれない可能性があります。また、それに加えて、自賠責診断書や自賠責後遺障害診断書等の、自賠責関係の書類一切の作成をしてくれない病院もあります。

このままでその病院への通院を継続した場合、後々、後遺障害申請時等に多大な支障をきたしてしまいますので、労災保険や健康保険を使用するにあたり、事前に、自賠責関係の書類の作成をしてもらえるのかを確認することが無難です。仮に、これら書類の作成は一切できないとの回答であれば、今後のことも考え、転院を視野に入れたほうがよいかもしれません。

さらに注意が必要な運用があります。実務書は、健康保険や労災保険を使用するにあたり、あらかじめ、自賠責様式の診断書を発行しない旨の同意を求める医療機関もあると指摘しています。窓口で渡される書面に、そうした条項が含まれていることがあるということです。

後遺障害の申請ができなくなる、ということ

自賠責の後遺障害等級認定は、原則として書面審査です。提出した書類だけで判断されます。ですから自賠責様式の後遺障害診断書が手に入らなければ、そもそも申請の土俵に上がれません。

健康保険や労災に切り替えるときは、その場でひとこと確認してください。「自賠責の診断書や後遺障害診断書は書いていただけますか」。これだけです。治療が終わってから聞いたのでは間に合いません。

医師に、診断書の交付義務はあるのか

「医師法に診断書の交付義務があると聞いたのに、なぜ断られるのか」——もっともな疑問です。実務書は、この点を正面から論じています。

医師法の義務は、公法上のもの

出発点

医師法に規定されている診断書交付義務は公法上の義務とされ、そこから直ちに、私法上の診断書交付義務を負う(つまり、患者に診断書交付を請求する権利がある)とは考えられていません。

医師(又は医療法人)の患者に対する私法上の診断書交付義務の有無は、結局のところ、医師と患者との間の診療契約の内容によることになります。

つまり、医師法があるから当然に請求できる、という単純な話ではありません。患者と医師の間の診療契約に、その義務が含まれているかどうかで決まります。そこで、次の2つが問題になります。

  • 診療契約の内容に、そもそも診断書の交付義務は含まれているか。
  • 含まれているとして、自賠責様式の診断書を交付することまで必要か。

裁判例が示していること

下級審裁判例

1つ目については、当然に医療契約の内容とされていると判断されています(東京地方裁判所昭和48年8月17日判決)。

2つ目については、特定の使用目的に応じた定型的な診断書の交付が社会的に慣行として確立している場合は、患者に対し、診療契約の内容として、当該目的に応じた事項を診断書の記載として盛り込む義務を負うことがあり得ると述べられています(東京地方裁判所平成14年7月26日判決)。

この2つを踏まえて、実務書は次のように整理しています。

自賠責様式の診断書は、社会的に慣行として確立していると言える。したがって、交通事故の被害に遭ってその治療を受ける前提であれば、自賠責様式の(少なくともその記載事項を盛り込んだ)診断書を交付することも、その診療契約の内容として含まれていると解釈できる。

そのように解釈できる場合、医師は診療契約上その交付義務を負うことになり、この結論は、健康保険や労災保険の使用の有無にかかわらず、左右されるものではないと考えられる。

言い方を選べば、通ることがあります。「書く義務があるはずだ」と正面からぶつけるより、「自賠責の様式で、この項目を入れて書いていただけませんか」と具体的にお願いするほうが現実的です。様式は保険会社からもらえます。

それでも断られる場合は、自費で取り付けるという方法があります。その場合は領収書を必ず保管してください。加害者に請求するときの資料になります。

整骨院に通う場合、医証が足りなくなる

仕事の都合で病院の診療時間に行けず、夜まで開いている整骨院に通うという方は多くいらっしゃいます。その選択自体は責められるものではありません。ただ、書類の面では別の問題が起こります。

整骨院から出るのは、診断書ではありません

整骨院(柔道整復師)から出るのは施術証明書・施術費明細書です。事故日、傷病名、施術経過、施術期間、施術内容の内訳や施術関係費が記載されます。病院では診断書と診療報酬明細書が別の書類になりますが、整骨院等では一体となって作成されます。実務書は、これらをめぐって支払側の保険会社ともめることが多いとしています。

病院の診断書にない傷病名が、施術証明書だけに書かれていることがあります。整骨院で「腰も診ておきましょう」と言われ、病院では首しか診てもらっていない、といった場合です。

実務書は、この場合、病院が診断していない傷病についての施術費の回収が非常に困難となると注意を促しています。整骨院で新しい部位を施術してもらったのであれば、その部位を病院でも診てもらってください。

後遺障害への影響

自賠責の後遺障害認定においても、仕事や日常生活に支障をきたす症状が続いていても、医療機関への通院が少なく、医証で治療内容や症状推移を確認できなければ、後遺障害等級非該当とされるおそれが大きい。

ここでいう医証とは、医師が作成した書類——診断書、レセプト、カルテ、画像——のことです。整骨院の施術証明書は、これに代わりません。

症状は続いているのに、それを示す医師の記録がない。整骨院だけに通っていると、この状態になります。実務書も、診療時間等により医療機関の受診が難しいために整骨院で施術を受ける場合でも、なるべく医療機関も受診するように勧めるべきだとしています。

整骨院の施術が通院として評価されるかどうかは交通事故で整骨院に通っていい?で詳しく説明しています。

後遺障害診断書|症状固定のときに書いてもらうもの

治療を続けても症状が残った場合、最後に書いてもらうのが後遺障害診断書です。これまでの経過診断書とは別の様式で、症状固定のときに作成されます。

労災を使っている方は、ここで2通必要になります。業務中や通勤中の事故で障害(補償)給付の請求を考えている場合は、自賠責用の後遺障害診断書と、労災保険用の診断書の2通が必要です。二度手間にならないよう、自賠責の後遺障害診断書を医師に作成してもらう際に、併せて労災保険用の診断書もお願いしてください。労災と自賠責の関係は交通事故で労災は使わない方がいい?にまとめています。

この書類の位置づけ

後遺障害診断書の記載内容は、後遺障害認定に直結し、その後の経過を支配する。自賠責の損害調査は原則として書面審査であり、後遺障害認定は自覚症状が医学的に裏付けられているかどうかにかかる。

ここでも同じ問題が起きます。実務書は、後遺障害診断書の作成を主治医に丸投げしてしまうと、簡単な記載しかされないことがあるため、必要な情報を記載してもらうための工夫が必要だとしています。

経過診断書に書かれてきたことが、ここで効いてきます。治療中ずっと訴えてきた症状は、後遺障害診断書にも自然に書かれます。逆に、途中で伝えていなかった症状を最後だけ書いてもらっても、経過として説明がつきません。

自覚症状欄の書き方、医師への頼み方は交通事故の後遺障害診断書に、等級認定の手続と非該当だったときの対処は後遺障害認定にまとめています。

3種類の診断書は、つながっています

警察に出す診断書があるから事故の記録が残り、経過診断書があるから治療の経過が残り、その積み重ねの上に後遺障害診断書が乗ります。どこか1つが欠けると、その先が弱くなります。

治療中は、目の前の症状のことで精いっぱいだと思います。それでもいま作られている記録が、後の判断材料のすべてになるということだけは、頭の片隅に置いておいてください。

診断書のことで迷われたら、治療中にご相談ください

経過診断書に何が書かれているか、健康保険に切り替えて大丈夫か、いまの通院の仕方で後遺障害の申請ができるか——これらは治療が終わってからでは取り返しがつきません。

難波みなみ法律事務所では、交通事故のご相談を承っています。弁護士費用特約が使えれば、ご自身の負担なくご依頼いただける場合があります。

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よくある質問

Q. 交通事故の診断書は何種類ありますか。

A. 大きく3種類です。事故直後に警察へ提出して人身事故として扱ってもらうための診断書、治療中に保険会社へ提出される経過診断書(自賠責診断書)、症状固定のときに作成される後遺障害診断書です。それぞれ提出先も目的も異なります。このうち経過診断書は、一括対応がされていれば月に1通程度作成されており、治療の要否や後遺障害の有無の判断を大きく左右します。

Q. 経過診断書とは何ですか。見たことがありません。

A. 治療中に医療機関が作成する自賠責様式の診断書で、事故日、傷病名、治療経過、入通院期間などが記載されます。相手方保険会社が治療費を病院に直接支払っている一括対応の状態では、保険会社が病院から取り付けているため、ご本人が目にしないまま進んでいることがほとんどです。保険会社に写しを求めることができます。

Q. 診断書に自覚症状が書かれていないと、どうなりますか。

A. その症状がなかったものとして扱われやすくなります。実務書も、自覚症状があってもカルテや経過診断書に書いてなければなかったことにされやすい、と指摘しています。特にむちうちのように画像で確認しにくい症状では、記録がほとんど唯一の材料になります。痛みやしびれがどこにあるか、どんなときに強くなるか、生活や仕事の何ができないかを、遠慮せず医師に伝えてください。

Q. 診断書の期間欄が月末になっています。そこまで通院したことになりますか。

A. なるとは限りません。経過診断書は月単位で作成されるため、最終月の欄が月末の日付になっていても、実際の最終通院日は月の途中であることがあります。診療報酬明細書の通院日欄で最後に○がついている日を確認してください。その日までが通院期間です。慰謝料は通院期間から計算されますので、ここを取り違えると金額が変わります。

Q. 診断書に「中止」と書かれていました。治療は終わりですか。

A. 治療が終わったという意味ではありません。相手方保険会社が一括対応、つまり病院への直接の支払いをやめたときに、経過診断書に「中止」と記載されます。治療の必要性を判断するのは医師であって保険会社ではありません。打ち切りの時期と、賠償の対象として認められる治療期間は別の問題ですので、打ち切り後に自費で通院した期間も、必要性が認められれば対象になります。

Q. むちうちの治療費は、いつ打ち切られますか。

A. 決まっていません。実務書は、比較的軽微な事故で3か月程度、軽微とはいえない事故でも3〜6か月程度で打ち切られるまたは打ち切りを打診されることが多いとしています。ただし修理費が数万円に留まる軽微な事故で他覚所見がない場合は、一括対応がされても1か月で打ち切られることが少なくないとも指摘されています。通院頻度が低い場合や、通院を続けているのに改善が見られない場合も注意が必要です。

Q. 健康保険を使って治療を続けても問題ありませんか。

A. 交通事故でも健康保険・国民健康保険は使えます。ただし注意点があります。健康保険や労災保険を使用した場合に自賠責診療報酬明細書を作成してくれない可能性があり、自賠責診断書や自賠責後遺障害診断書など自賠責関係の書類一切を作成しない病院もあります。後遺障害の申請時に大きな支障が出ますので、切り替える前に、自賠責関係の書類を作成してもらえるかを必ず確認してください。

Q. 病院から「自賠責の診断書は書かない」と言われました。

A. 事前に同意を求められることもあります。実務書は、健康保険や労災保険を使用するにあたり、あらかじめ自賠責様式の診断書を発行しない旨の同意を求める医療機関もあると注意を促しています。一切作成できないという回答であれば、今後のことを考えて転院を視野に入れたほうがよい場合があります。治療が終わってからでは間に合いませんので、早い段階で確認してください。

Q. 医師には診断書を書く義務がないのですか。

A. 医師法に規定されている診断書交付義務は公法上の義務とされ、そこから直ちに患者に交付を請求する権利があるとは考えられていません。私法上の交付義務の有無は、医師と患者との間の診療契約の内容によることになります。もっとも下級審裁判例は、診断書の交付は当然に医療契約の内容とされていると判断しており(東京地方裁判所昭和48年8月17日判決)、特定の目的に応じた定型的な診断書の交付が社会的慣行として確立している場合は、その目的に応じた事項を盛り込む義務を負うことがあり得るとしています(東京地方裁判所平成14年7月26日判決)。

Q. 自賠責様式の診断書は、書いてもらえるはずということですか。

A. 実務書はそのように整理しています。自賠責様式の診断書は社会的に慣行として確立していると言えるため、交通事故の被害に遭ってその治療を受ける前提であれば、自賠責様式の診断書を交付することも診療契約の内容に含まれていると解釈できる、というものです。そしてこの結論は、健康保険や労災保険を使用しているかどうかに左右されないと考えられるとしています。

Q. 診断書を自費で取り付けた費用は、請求できますか。

A. 一括対応がされていない場合は、自賠責様式の書式を用いて作成してくれるよう医療機関に依頼することになりますが、断られることもあります。自費で取り付ける場合は、加害者への請求に備えて領収書を保管しておいてください。なお労災を使っている場合は、労働局に対する個人情報開示請求でレセプトを取得することができ、健康保険の場合は健保組合等に開示請求します。

Q. 整骨院の施術証明書では足りませんか。

A. 医師が作成した医証の代わりにはなりません。自賠責の後遺障害認定では、仕事や日常生活に支障をきたす症状が続いていても、医療機関への通院が少なく医証で治療内容や症状推移を確認できなければ、非該当とされるおそれが大きいとされています。実務書も、診療時間の都合で医療機関の受診が難しく整骨院で施術を受ける場合でも、なるべく医療機関も受診するように勧めるべきだとしています。

Q. けがをしたのに物件事故のままです。診断書を今から出せますか。

A. 切替えの手続を検討してください。けがをしているのに物件事故になっている場合、原則として実況見分調書が作成されません。過失割合が争いになったときに事故状況を裏づける材料が乏しくなります。また、物件事故の交通事故証明書をそのまま自賠責に提出すると、人身事故証明書入手不能理由書を提出するよう指示されます。人身事故の届出は道路交通法上の義務とされていますが、加害者の立場を考えて物件事故のままにしている例も見られます。

Q. 経過診断書の内容が実際と違う気がします。どうすればよいですか。

A. カルテを取り寄せて確認する方法があります。実務書も、診断書は極めて簡単にしか書かれていない場合が多くカルテ等で補充する必要があることが少なくない、としています。カルテや看護日誌は後遺障害認定手続や訴訟での立証活動の強力な武器になり、同時に事案の弱いところを早めにつかむためにも役立ちます。後遺障害が問題になりそうな事案では、取り寄せて確認する価値があります。

Q. 入院中にしておいたほうがよいことはありますか。

A. ご家族に付添ノートをつけてもらうことが勧められています。その日の症状、食事やトイレなど介助の内容、医師の説明、付き添った人と時間を記載し、購入したものの領収書も添付しておくと、後々役に立ちます。入院期間そのものは、診断書が複数ある場合、最初の診断書の「自」の日付が入院日、最後の診断書の「至」の日付が退院日になります。

この記事は、交通事故の実務書の記述および裁判例をもとに、難波みなみ法律事務所の弁護士が作成しました。個別の事案については、具体的な事情によって結論が変わることがあります。

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