コラム
公開日: 2026.08.25

交通事故の慰謝料を増額する方法|基準を超えるのはどんな時か

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。大阪弁護士会所属(登録番号49544)、大阪中小企業診断士会所属(登録番号 420113)、幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

交通事故, 増額が認められる事由を弁護士が解説, 慰謝料の増額 認められる事由

「慰謝料を増額したい」というご相談は、実は二つのまったく違う話が混ざっています。ひとつは、どの基準で計算するかを変える話。もうひとつは、その基準額そのものを上乗せする話です。前者は多くの事案で動きますが、後者は事由が限られます。

この記事では、両方を分けたうえで、基準額を超える「増額事由」として実際に何が認められているかを、裁判例の水準とともに整理します。あわせて、認められにくいこともはっきり書きます。期待と結果がずれることが、被害者にとって一番つらいからです。

結論

増額の大部分は「基準を変える」ことで起きます。自賠責基準や任意保険基準で計算された提示額を、裁判所が用いる基準で計算し直す。ここで金額が数十万円から数百万円単位で動くことは珍しくありません。

基準額そのものを超える増額は、事由が限られます。無免許・飲酒・信号無視・著しい速度違反・ひき逃げといった事故態様の悪質さ、証拠隠滅や不当な責任転嫁といった事故後の対応、症状の重さ、特別な不利益、家族固有の慰謝料。認められる場合の上乗せ幅は、傷害・後遺障害の慰謝料でおおむね1割から2割程度とされています。

後遺障害が非該当でも、後遺症慰謝料が認められることがあります。等級がつかないことと、残った症状が賠償の対象にならないことは、別の問題です。

「見舞いに来ない」「謝罪がない」というだけでは、増額は認められにくいのが実情です。

目次
  1. 「慰謝料の増額」には、二つの話が混ざっている
  2. 第一段階|どの基準で計算するかで、金額は変わる
  3. 第二段階|基準額そのものを超える「増額事由」
  4. 増額事由①|事故態様が悪質なとき
  5. 増額事由②|事故後の対応が著しく不誠実なとき
  6. 増額事由③|症状が特に重いとき、特別な不利益があるとき
  7. 増額事由④|等級や逸失利益で拾えない不利益を、慰謝料で評価する
  8. 増額事由⑤|家族固有の慰謝料を加える
  9. 増額を主張するために、いま残しておくもの
  10. 増額事由がないときに、それでも総額が動くところ
  11. よくある質問

「慰謝料の増額」には、二つの話が混ざっている

ご相談で「増額できますか」と聞かれたとき、私はまず、どちらの話をされているのかを確かめます。同じ言葉でも、中身がまったく違うからです。

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種類何が変わるか動きやすさ
第一段階
基準を変える
同じケガ・同じ通院期間でも、どの基準で計算するかで金額が変わる多くの事案で動く
第二段階
基準額を超える
基準どおりに計算した金額に、事情を理由として上乗せする事由が限られる

インターネットで「慰謝料 増額」と検索して出てくる情報の多くは、実は第一段階の話です。「弁護士に依頼すると慰謝料が2倍3倍になる」といった説明は、基準が変わることを指しています。基準額を超える増額とは別の話です。

両方を分けずに説明されると、「弁護士に頼めば、事情を訴えることで金額がどんどん上がる」という印象を持たれます。実際には、上がるのは主に第一段階であり、第二段階は事由がなければ動きません。

第一段階|どの基準で計算するかで、金額は変わる

三つの基準がある

交通事故の慰謝料には、性格の違う三つの基準があります。

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基準誰が使うか水準
自賠責の支払基準自賠責保険が支払額を決めるときの基準。国が定めている最も低い
任意保険の社内基準任意保険会社が示談の提示額を計算するときの基準。公表されていない自賠責と同程度か、やや上
裁判所が用いる基準裁判所が判決で用いる基準。弁護士が交渉や訴訟で用いる最も高い

大阪では、大阪地方裁判所の交通事故に関する運用をまとめた冊子(通称「緑本」)が用いられます。東京では日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する冊子(通称「赤い本」)が用いられ、両者で入通院慰謝料の水準や算定の考え方に違いがあります。金額の具体的な計算方法は交通事故の慰謝料計算で、自動計算とあわせて説明しています。

相手方保険会社が、みずから裁判所の基準で計算し直すことは通常ありません。担当者が意地悪をしているのではなく、社内の基準に従って計算しているだけです。基準を変えるには、代理人弁護士が就くか、訴訟を起こす必要があります。担当者との交渉で何が起きているかは、保険会社との交渉で整理しています。

第一段階で動く金額の目安

入通院慰謝料を例にすると、自賠責の支払基準では、通院期間と実通院日数の少ないほうに一定額を掛けて計算します。裁判所の基準では、入通院の期間に応じた表から金額を求めます。同じ通院期間でも、後者のほうが高い水準になるのが通常です。

後遺障害が認定されている場合は、差がさらに大きくなります。等級ごとの慰謝料額そのものが基準によって異なるためです。等級認定の手続は後遺障害認定で説明しています。

ただし、基準を変えても手取りが増えるとは限りません。過失割合が争われている場合、慰謝料の額が上がっても、過失相殺で差し引かれる額も比例して増えます。また、弁護士費用を差し引くと手取りが変わらない事案もあります。この分岐点は交通事故の弁護士費用で具体的に書いています。

第二段階|基準額そのものを超える「増額事由」

ここからが、この記事の本題です。裁判所の基準で計算した金額に、さらに上乗せが認められる場合があります。これを増額事由といいます。

増額事由として実務上取り上げられるのは、おおむね次の類型です。

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類型具体例認められやすさ
事故態様の悪質さ無免許、飲酒、赤信号無視、著しい速度違反、ひき逃げ認められやすい
事故後の対応証拠隠滅、被害者への不当な責任転嫁、極めて不誠実な対応程度による
症状が特に重い傷害の部位・程度が重篤で、基準額では評価しきれない程度による
特別な不利益事故を原因とする解雇、留年・退学、資格試験の断念立証しだい
等級で拾えない不利益非該当だが症状は残る、逸失利益は否定されたが打撃は大きい増額幅は限られる
家族固有の慰謝料重度の後遺障害で介護が必要になった、死亡事案加算されることが多い
謝罪がない・見舞いに来ない加害者からの連絡や謝罪がまったくないそれだけでは難しい

先に、ひとつ枠組みを共有させてください

増額の話に入る前に、押さえておいていただきたいことがあります。日本の民法は、懲罰的損害賠償という制度を採っていません。最高裁も平成9年7月11日の判決でその立場を示しています。

つまり、慰謝料の増額は「加害者が悪いことをしたから罰として上乗せする」ものではなく、あくまで「被害者が受けた精神的苦痛が、通常の事案より大きい」と評価されるから増えるという建て付けです。同じ結果でも、飲酒運転で起きた事故のほうが被害者の苦痛は大きい——そう説明されて初めて増額されます。

実際上も、賠償金を支払うのは加害者本人ではなく任意保険会社であることがほとんどです。この場合、金額を増やしても加害者への制裁としては働きません。「あの人に思い知らせたい」というお気持ちは当然のものですが、それは民事の賠償とは別の場所で扱われる問題です。

この枠組みを踏まえて、以下、順に見ていきます。

増額事由①|事故態様が悪質なとき

何が「悪質」とされるか

加害者の運転が、単なる不注意にとどまらず、重い過失といえる場合です。実務で挙げられるのは次のようなものです。

  • 無免許運転
  • 飲酒運転(酒酔い運転を含む)
  • 赤信号無視(ことさらに信号を無視した場合)
  • 著しい速度違反
  • ひき逃げ(救護義務違反)
  • 居眠り運転
  • わき見運転
  • 薬物等の影響により正常な運転ができない状態での運転

もっとも、これらに当たれば自動的に増額されるわけではありません。重大性と悪質性の程度を考慮して、増額の有無と程度が判断されるという運用です。

いずれも、事故が起きる前の段階で、加害者がやめようと思えばやめられたことです。結果の重さが同じでも、そこに至る経緯が違えば、被害者が受ける精神的な苦痛も違う——これが増額を認める考え方の根拠です。

これらは刑事手続で問題になるため、記録から確認できます。加害者が危険運転致死傷罪や過失運転致死傷罪で起訴されている場合、刑事記録には呼気検査の結果、速度、信号の状況などが残っています。刑事記録の取り寄せは、増額を主張するうえで実際に効きます。

どのくらい上乗せされるか

死亡事案では、基準額を大きく超える例が知られています。一方で、傷害慰謝料と後遺症慰謝料についても、基準額から1割から1割5分程度を増額する裁判例は少なくないとされています。

横浜地方裁判所 令和3年3月10日判決

被告の過失が極めて初歩的かつ重大であるなどの事情から、基準額に対し、傷害慰謝料を約24パーセント、後遺症慰謝料を約20パーセントそれぞれ増額しました。

つまり、重過失の事案では、後遺障害が残っているケースでも「基準額どおり」で終わらせる必要はないということです。相手方保険会社の提示が裁判所の基準どおりであっても、事故態様によってはさらに上を主張できる場合があります。

死亡事案で認められた水準

死亡慰謝料については、悪質な事案で基準を大きく超えた例があります。

東京地方裁判所 平成15年7月24日判決(東名高速道路事件)

加害者が相当程度酩酊した状態で大型貨物自動車を運転して被害車両に追突し、幼い子ども2人が亡くなった事案です。裁判所は、加害運転者の常習的な飲酒運転や事故後の責任回避的な態度、雇用主企業が飲酒運転の防止に積極性を欠いていた点などを詳細に指摘したうえで、子1人につき本人分2600万円、両親固有分各400万円の合計3400万円ずつを認めました。当時の基準額は2000万円から2200万円程度でしたから、基準の1.5倍を超えたことになります。

ただし、これは同等の事案が見当たらないほど悪質な事案と評価されているものです。この判決を根拠に、どんな飲酒運転事案でも1.5倍になると考えるのは誤りです。

もっとも、悪質な事案でなくても、死亡慰謝料の総額は基準額を上回るのが通常です。裁判実務では、被害者本人の慰謝料に近親者の固有慰謝料を加えると基準を上回ることが多く、特段の増額事由がなくても、一家の支柱で合計3200万円から3500万円が認められることは珍しくないとされています。

そのうえで、かなり悪質な事案でも、親族固有分を含めて4000万円前後が上限という見方が実務ではされています。死亡事案の相場と、遺族がすべきことは交通事故の死亡慰謝料で整理しています。

増額事由②|事故後の対応が著しく不誠実なとき

増額の方向に働くもの

事故そのものではなく、事故のあとの加害者の対応も考慮されます。実務で増額事由とされるのは、次のようなものです。

  • 証拠隠滅——ドライブレコーダーの記録を消す、現場の状況を変える
  • 不当抗争——根拠のない主張で争いを引き延ばす
  • 被害者への不当な責任転嫁——事実に反して被害者に非があると主張し続ける
  • 極めて不誠実な対応——正当な理由がないことが明らかなのに、被害者を誹謗中傷する

このうち証拠隠滅が増額事由に当たることは明らかだとされています。一方で、それ以外は程度の問題です。単に立場の違いから感情的な行き違いが生じたという程度では足りません。正当な理由がないことが明らかなのに、という部分が要件です。加害者が自分の言い分を主張すること自体は、不誠実な対応ではありません。

裁判実務では、単に謝罪や見舞いをしなかった、あるいは責任を否定したという一事をもって増額事由とすることには慎重にならざるを得ず、常識に反するような対応をしたなど著しく不相当な場合に限られると解されています。ハードルはかなり高いところに置かれている、とお考えください。

保険会社の対応が考慮された例

相手方保険会社の担当者の態度が悪いことを、増額事由として主張することもあります。実際に考慮された裁判例があります。

神戸地方裁判所 平成10年6月4日判決

信号機による交通整理の行われていない交差点で、右折しようとした貨物自動車と、横断歩道を横断しようとした自転車が衝突し、自転車に乗っていた66歳の女性が亡くなった事案です。加害者側の過失が重大で過失相殺が認められない事案であるにもかかわらず、加害者側の損害保険会社の担当者が遺族に「被害者の過失割合は30パーセント」と告げ、加害者が訴訟では「40パーセント」と主張したことについて、裁判所は相当な権利主張の範囲を著しく逸脱しているとして慰謝料算定の一事由として考慮し、被害者本人と夫・子の慰謝料として計2400万円を認めました。

東京地方裁判所 平成6年1月25日判決

有罪が確定している刑事裁判で完全に否認していたこと、治療費は全額支払うと再三述べていたにもかかわらず、被害者の父親が示談書に押印しなかったことを理由に治療費の支払を一方的に打ち切ったことなどを、傷害慰謝料の算定にあたって考慮しました。

ただし、認められるのは相当に極端な場合です。提示額が低い、連絡が遅い、説明が不十分といった不満は、それ自体では増額事由になりません。上の2件はいずれも、根拠のない過失割合を主張した約束した支払を交渉材料として一方的に止めたという、対応の中身が問題にされたものです。「態度が悪い」という評価ではなく、何をしたかという事実が問われます。

「謝罪がない」だけでは、増額は認められにくい

ここは、正直にお伝えしなければならない点です。

見舞いに来ない、謝罪がないというだけでは、増額は認められにくいのが実情です。刑事手続で加害者が自分の過失を否認したというだけでも、同じことがいえます。

ご相談の場で、この点に最も強い怒りを持たれる方は多くいらっしゃいます。「一度も謝りに来ない」「電話一本ない」——それは当然の感情です。ただ、それを慰謝料の増額という形で実現するのは、実務上むずかしい。ここを最初に共有しておかないと、示談や判決の段階で、もう一度失望させてしまうことになります。

なぜ増額されないのか

理由は、実は納得のいくものです。裁判所が用いる基準の金額そのものが、その程度の不誠実さを織り込んで作られていると考えられているからです。

交通事故では、加害者が見舞いにも来ず謝罪もないという事態は、残念ながら例外ではありません。基準額は、そうした通常起こりうる事態を前提に定められています。だから、それを理由にさらに上乗せするのは二重評価になる——そういう整理です。

裏を返せば、基準額はすでに「加害者が誠実に対応してくれなかった分」を含んだ金額だということでもあります。何も評価されていないわけではありません。

刑事手続で過失を否認することも同様です。否認は被告人に認められた防御であって、それ自体を民事の慰謝料で不利益に評価することには慎重な扱いがされます。

では、謝罪を求める気持ちはどこへ行くのか

慰謝料の増額という形では実現しにくくても、刑事手続のなかで意見を述べる方法はあります。被害者参加や、検察官への意見の提出です。加害者の量刑に対して、被害者側の受け止めを伝える場は用意されています。

民事と刑事は目的が違います。民事で動かないものを、刑事で伝えられることがある——そう整理して、両方の見通しをお話しするようにしています。

増額事由③|症状が特に重いとき、特別な不利益があるとき

症状が特に重い場合

傷害の部位と程度によっては、入通院慰謝料の基準額を増額する扱いが認められています。赤い本は2割から3割程度の増額を、青本(日弁連交通事故相談センター本部発行)は上限の2割程度までの加算を、それぞれ挙げています。

もっとも、裁判例をみると、重傷の事案でも基準額を増額した例はそれほど多くありません。理由のひとつは、請求する側が最初から基準額どおりで請求してしまっていることにあると指摘されています。

請求していないものは、認められません。重傷事案では、基準額どおりの請求が過少になっていないかを検討する必要があります。裁判所が職権で増額してくれるわけではないからです。

基準表はあくまで目安です。「何日通ったからいくら」で済ませるのではなく、現実にどのような苦痛と不自由があったかを踏まえて主張立証すべきだとされています。増額の実務は、ここに尽きるといってよいと思います。

入院期間の長短は、そのまま金額にならない

ここは誤解の多いところです。入通院慰謝料は入通院の期間を基礎に算定されますが、一切の事情が考慮されるため、必ずしも基準どおりにならないのは当然だとされています。裁判官の側からも、そう明言されています。

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事情扱い
養育・介護のため、または仕事の都合で予定より早く退院した増額が考慮される
生死が危ぶまれる状態が継続した増額が考慮される
入院の必要性に乏しいのに入院していた減額が考慮される

つまり、長期間入院していたほうが当然に入通院慰謝料が高額になる、というものではありません。逆に、事情があって早く退院した方が、そのぶん低い金額で我慢しなければならないわけでもありません。

「生死が危ぶまれる状態が継続した」という増額事由は、あまり知られていません。ICUでの期間が長かった、意識が戻らない時期が続いた——そうした経過は、通院日数の集計では表れません。診療記録から拾って、明示的に主張する必要があります。

特別な不利益がある場合

事故によって、慰謝料の基準額では評価しきれない不利益が生じた場合、加算が検討されます。実務で挙げられている事情は、想像よりずっと幅があります。

  • 事故を原因とする解雇、転職・退職、またはそのおそれ
  • 昇進・昇給の遅れ
  • 留年、退学、学校の欠席
  • 資格試験や受験の断念
  • 後遺障害が出現するのではないかという不安、悪化する可能性
  • 趣味を楽しめなくなったこと
  • 被害者側の事情(幼い子どもがいる、仕事の都合など)で、無理をして入院期間を短縮した

斟酌される事情はこれらに限られません。「基準表に載っていないから請求できない」ということはないとお考えください。

とくに趣味を楽しめなくなったことは、ご相談で挙げられることが少ない項目です。長く続けてきたスポーツや楽器ができなくなった、旅行に出られなくなった——ご本人にとっては生活の中心だったものが、賠償の話では出てこないまま終わることがあります。お聞きしていなければ、こちらから主張することはできません。

いずれも、事故との因果関係を立証できるかどうかが分かれ目です。解雇であれば、解雇通知の理由、就業規則、休業期間との対応関係。留年であれば、出席日数や単位の記録。「事故のせいで」という説明だけでは足りず、事故がなければその不利益は生じなかったといえる資料が要ります。

増額事由④|等級や逸失利益で拾えない不利益を、慰謝料で評価する

ここは、あまり知られていないわりに、実際のご相談で使う場面が多いところです。

慰謝料には、精神的な損害を金銭で埋め合わせるという本来の役割のほかに、財産的な損害の賠償では不十分な場合に、それを補うという役割があると指摘されています。損害があることは分かるのに立証がむずかしい、あるいは制度の枠に収まらない——そうした不利益を、慰謝料の側で評価するという考え方です。

後遺障害が非該当でも、慰謝料が認められることがある

後遺障害の等級が非該当だった場合、「もう何も請求できない」と受け止められる方が多くいらっしゃいます。そうとは限りません。

たとえば、歯を2本失って補綴した場合(3本以上でなければ14級になりません)や、14級の認定基準に達しない醜状のように、自賠責の認定基準には届かず等級が非該当であっても、後遺症慰謝料が認められることがあります。

名古屋地方裁判所 令和6年4月19日判決

16歳の男性に、左上肢・左肩・右腕部の複数の瘢痕が残った事案です。局部の痺れはあるものの日常生活に直ちに影響を及ぼすとは認められないとされましたが、裁判所はプールや銭湯などの利用において相当程度の苦痛を与えるとして、後遺症慰謝料50万円を認めました。

さいたま地方裁判所 平成29年6月1日判決

37歳の男性会社員に残った疼痛について、14級9号に該当するとまではいえないとしながら、後遺障害慰謝料80万円を認めました。

赤い本はこうした扱いを「無等級」と呼んでいます。等級がつかないことと、後遺症が賠償の対象にならないことは、別の問題だということです。非該当とされたときの対処は後遺障害認定にまとめています。

14級が複数あるとき

14級に当たる後遺障害が複数ある場合、自賠責保険の扱いと同じく14級の基準額しか認めない傾向がありますが、近時は実態を考慮して増額する裁判例もみられるとされています。複数の部位に症状が残っているのであれば、そのまま基準額で受け入れる必要はありません。

逸失利益が否定されても、慰謝料で調整されることがある

後遺障害が残っていても、それが労働能力の制限に直接つながらないと判断されると、逸失利益が認められないことがあります。外貌の醜状障害が典型です。醜状痕はそれ自体が身体の機能を左右するものではないため、等級に対応した労働能力喪失率がそのまま採用されることは稀で、事例ごとに個別に判断されています。

この場合に、逸失利益を否定する一方で、後遺障害慰謝料を高く認めるという調整がされることがあります。

東京高等裁判所 平成20年9月4日判決

13級に相当する後遺障害について、労働能力の制限に直接つながるものではないとして逸失利益を否定する一方、被害者が受けた精神的打撃は著しいとして、後遺障害慰謝料を270万円と認めました。

加算される金額の目安

外貌の醜状障害について慰謝料が加算される場合、その額は100万円から200万円の幅といわれており、近時の裁判例でも、おおむねこの範囲に収まっているものが多いとされています。

判断の分かれ目は、他者との対人関係において被害者が消極的になってしまうほどの醜状痕であるかどうかです。人前に出ることを避けるようになった、髪型や服装で隠すようになった、仕事の内容を変えた——そうした生活の変化を具体的に示していくことになります。

順序としては、まず逸失利益そのものを認めさせる主張を尽くすべきです。慰謝料での調整は、それが通らなかったときの受け皿です。

そのうえで実務的に重要なのは、逸失利益が認められない場合に備えて、あらかじめ慰謝料への加算を予備的に主張しておくことです。主張していなければ、裁判所が職権で調整してくれるわけではありません。

逸失利益の計算と、労働能力喪失率・喪失期間の争い方は交通事故の逸失利益で説明しています。

増額事由⑤|家族固有の慰謝料を加える

本人の慰謝料とは別に請求できる

被害者本人の慰謝料とは別に、近親者が自分自身の精神的苦痛について慰謝料を請求できる場合があります。民法711条は、生命を侵害された場合について、父母・配偶者・子の慰謝料請求権を定めています。判例はこれをさらに広げてきました。

請求できるのは父母・配偶者・子だけではない

条文に挙がっているのは父母・配偶者・子ですが、実際にはこれに限られません。条文が挙げる者と実質的に同視することができる身分関係があれば、条文の類推適用によって固有の慰謝料を請求できると解されています。

  • 内縁の配偶者——相続人ではないため相続による請求はできませんが、固有の慰謝料は請求できます
  • 兄弟姉妹——最高裁昭和49年12月17日判決は、被害者の妹について認めています
  • 祖父母、孫

ただし、兄弟姉妹・祖父母・孫については、認められるかどうか、認められるとしていくらかの判断にあたって、被害者との間に特別に緊密な関係があったかどうかが問題になります。この点の具体的な主張立証が必要です。「妹だから」「祖父だから」というだけでは足りません。

なお内縁の配偶者は、慰謝料とは別に、扶養を受けていた利益の侵害としても賠償を請求できる場合があります。

実務でよく問題になるのは、次の二つの場面です。

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場面扱い
死亡事案父母・配偶者・子について認められる。裁判実務では、本人分に近親者固有分を加えて基準額を上回ることが多い
重度の後遺障害本人が要介護状態となり、介護のために近親者の自由が奪われる場合に認められることが多い

後者は、後遺障害慰謝料が高額になる大きな要因になっています。高次脳機能障害や遷延性意識障害など、常時の介護が必要になる事案では、本人の慰謝料に加えて家族分が認められることで、総額が大きく変わります。高次脳機能障害の事案では、この点が常に検討課題になります。

最高裁判所 昭和45年7月16日判決

7歳の男児が、頭蓋骨折、右眼失明、左眼の視力が矯正不能なほど低下、両耳の感音性難聴、歩行異常という重度の障害を負った事案です。最高裁は、両親の精神的苦痛は「死亡した場合に比してもまさるとも劣らない」として、両親に固有の慰謝料を認めた原判決を維持しました。

介護の負担だけが理由ではない

家族固有の慰謝料というと、身体介護の負担だけが問題になると思われがちですが、そうではありません。

  • 易怒性が強い高次脳機能障害の場合に、同居する家族が受ける苦痛も対象になりえます。人柄が変わってしまった家族と暮らすことの負担は、介護時間では測れません
  • 事故を目撃したことによるストレスも考慮されます

札幌高等裁判所 令和5年5月30日判決

下肢を切断して5級の後遺障害が残った9歳女児の母親について、事故の状況を目撃してPTSDと診断され通院していること、介護のために転職して収入が減少していることなどを認め、母親に固有の慰謝料150万円を認めました。

この判決が示しているのは、家族固有の慰謝料が「何時間介護したか」だけで決まるものではないということです。事故を見てしまったこと、生活を作り替えざるを得なかったこと——それぞれが評価の対象になります。

赤い本も、増額事由のひとつとして「被害者の親族が精神疾患に罹患した場合」を挙げています。ご家族が事故のあとに心療内科や精神科にかかっているのであれば、その通院自体が主張すべき事実です。ご本人の治療のことで頭がいっぱいで、ご家族の受診は誰も口にしないまま終わることが少なくありません。

認めてもらうために主張立証すること

家族固有の慰謝料は、家族というだけで自動的に認められるわけではありません。次の点を具体的に主張し、資料で裏づける必要があります。

  1. 同居の有無と、生活の実態。住民票だけでなく、実際にどのような生活を送っていたか。同居していない場合でも、日常的な行き来があったのであれば、その事実を示します。
  2. 交流の親密さ。連絡の頻度、行事への参加、経済的な援助の有無など。事故前の関係が具体的に見えることが大切です。
  3. 介護の負担。1日のうち何時間、どのような介護をしているか。仕事を辞めた、勤務時間を減らしたといった事実があれば、その資料。
  4. 同居によって受ける苦痛。本人の状態を日々見続けることの負担、夜間の対応、外出できない状態など、生活がどう変わったかを具体的に書きます。

赤い本・青本は、基準額のなかに近親者の慰謝料を含むという立場をとっています。それでも裁判実務では、本人の慰謝料に近親者固有分を加えて基準を上回る扱いが多いのが実情です。特段の増額事由がなくても、そうなることがあります。

増額を主張するために、いま残しておくもの

増額事由は、あとから作れません。事故直後から示談交渉に入るまでの間に、記録として残っているかどうかで決まります。

ひとつ、性質を整理しておきます。財産的な損害——治療費や休業損害の金額は、請求する側が立証しなければなりません。これに対し慰謝料の金額そのものは、立証の対象ではありません。いくらが相当かは、諸般の事情を踏まえて裁判所が判断する事項だからです。

ですから、証拠で示すべきなのは「金額」ではなく「事情」のほうです。どれだけつらかったかを金額に換算して証明する必要はありません。何が起きたか、生活がどう変わったかを、資料で裏づけていくことになります。

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増額事由必要になる記録いつ集めるか
事故態様の悪質さ実況見分調書、供述調書などの刑事記録。ドライブレコーダーの映像刑事事件の終了後(早めに手続を確認)
事故後の対応加害者や保険会社とのやり取りの記録。日付・相手・内容のメモその都度
症状の重さ診断書、カルテ、画像。治療の経過が追える医証治療中から
特別な不利益解雇通知、就業規則、成績・出席の記録、受験票など不利益が生じた時点
非該当でも残る症状症状の経過が分かる医証。日常生活のどこに支障が出ているかの具体的な記録治療中から
家族固有の慰謝料介護の記録、勤務先の退職・転職・時短の資料、家族の通院記録、家族の陳述書介護が始まった時点から

刑事記録は、刑事事件が終わってからでないと取り寄せられないのが原則です。裁判が確定する前に示談してしまうと、悪質さを裏づける資料を見ないまま金額を決めることになります。重過失が疑われる事案では、示談を急がないほうがよいのはこのためです。

やり取りの記録は、その場でしか残せない

事故後の対応を増額事由として主張する場合、必要なのは「不誠実だった」という評価ではなく、いつ、誰が、何を言ったかという事実です。これは記憶では足りません。

  • 電話のあと、日付・担当者名・言われたこと・こちらが答えたことをメモに残す
  • 重要なことは書面かメールで求める
  • 加害者本人からの連絡があれば、内容と日時を記録する

手帳でもスマートフォンのメモでもかまいません。あとから作った記録より、その日のうちに書かれた短いメモのほうが、はるかに信用されます。交渉の場面ごとの注意点は保険会社との交渉にまとめています。

増額事由がないときに、それでも総額が動くところ

増額事由が見当たらない事案でも、受け取る総額が動く余地はあります。むしろ、慰謝料の上乗せより、こちらのほうが金額の幅は大きいことが多いのが実際です。

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動くところ何を争うか影響の大きさ
後遺障害の等級非該当を14級に、14級を12級に。等級が一つ変わると慰謝料も逸失利益も変わる非常に大きい
過失割合事故態様の認定。1割違えば総額の1割が動く大きい
逸失利益の基礎収入実収入か、賃金センサスか。若年者・主婦・自営業で争いになりやすい大きい
労働能力喪失期間むちうちで5年とされているのを、症状の実態に即して争う中程度
休業損害日額の算定、休業日数の認定。主婦の場合の扱い中程度
訴訟にする遅延損害金と弁護士費用相当額が加算されうる認容額の1割前後

まず見るのは、慰謝料ではなく等級と過失割合

ご相談を受けたとき、私が最初に確認するのは慰謝料の額ではありません。後遺障害の等級が症状に見合っているかと、過失割合の前提となる事故態様の認識が事実と合っているかです。

後遺障害等級は、慰謝料と逸失利益の両方の基礎になります。等級が一つ動けば、増額事由による1割2割の上乗せよりも、はるかに大きく総額が変わります。非該当とされた場合の対処や、等級の見直しについては後遺障害認定で説明しています。

過失割合も同じです。総額が1000万円の事案で過失が1割違えば、100万円が動きます。相手方保険会社が示した割合は、あくまで相手方の主張です。決まり方と争い方は交通事故の過失割合で整理しています。

逸失利益の計算方法と、労働能力喪失期間の考え方は交通事故の逸失利益で、休業損害の日額と日数の数え方は主婦の休業損害で説明しています。提示額の内訳を費目ごとに見る方法は示談金の相場と内訳にまとめました。

訴訟にすると加算されるもの

示談では付かないものが、判決では付きます。ひとつは遅延損害金、もうひとつは弁護士費用相当額です。弁護士費用相当額は、認容額の1割程度が加算されるのが一般的な扱いです。

遅延損害金は事故日から発生します。示談までに時間がかかっている事案ほど、この差は大きくなります。「増額事由はないが、提示額に納得できない」という場合、訴訟という選択肢そのものが金額を動かすことがあるということです。

ただし、訴訟には時間がかかります。解決までに1年を超えることも珍しくありません。増える見込み額と、かかる期間と、ご本人の負担を並べて、どちらを選ぶかを一緒に決めるようにしています。費用倒れになる分岐点は交通事故の弁護士費用に具体的な数字で書いています。

よくある質問

Q. 弁護士に依頼すれば、慰謝料は必ず増額されますか。

A. 必ずとはいえません。多くの事案では、自賠責基準や任意保険基準で計算された提示額を裁判所の基準で計算し直すことで金額が上がります。ただし、すでに裁判所の基準に近い提示がされている場合や、過失割合が大きい場合、弁護士費用を差し引くと手取りが変わらない場合もあります。依頼前に、増える見込み額と費用の両方をお示しします。

Q. 加害者が一度も謝りに来ません。慰謝料は増額されますか。

A. 見舞いに来ない、謝罪がないというだけでは、増額は認められにくいのが実情です。理由は、裁判所が用いる基準の金額そのものが、その程度の不誠実さを織り込んで作られていると考えられているからです。基準額はすでにその分を含んだ金額であり、さらに上乗せするのは二重評価になるという整理です。刑事手続で加害者が自分の過失を否認したというだけでも同様です。増額事由として評価されるのは、証拠隠滅、不当抗争、被害者への不当な責任転嫁など、常識に反するような対応をしたといえる程度のものに限られます。

Q. 加害者が悪質なら、罰として多く払わせることはできますか。

A. できません。日本の民法は懲罰的損害賠償という制度を採っておらず、最高裁も平成9年7月11日の判決でその立場を示しています。慰謝料の増額は罰ではなく、被害者が受けた精神的苦痛が通常の事案より大きいと評価されるから増えるという建て付けです。また、実際に支払うのは加害者本人ではなく任意保険会社であることがほとんどですから、金額を増やしても加害者への制裁としては働きません。

Q. 事情があって早く退院しました。慰謝料は減ってしまいますか。

A. 期間が短いことがそのまま金額に反映されるとは限りません。養育や介護のため、あるいは仕事の都合で予定より早く退院した場合には、増額が考慮されるとされています。逆に、入院の必要性に乏しいのに入院していた場合は減額が考慮されます。長期間入院していたほうが当然に高額になるというものではありません。なお、生死が危ぶまれる状態が継続した場合も増額事由とされています。

Q. 事故で趣味が続けられなくなりました。慰謝料に反映されますか。

A. 斟酌される事情のひとつとして挙げられています。慰謝料の算定で考慮される事情は幅が広く、趣味を楽しめなくなったこと、昇進・昇給の遅れ、転職・退職やそのおそれ、後遺障害が悪化するのではないかという不安なども含まれ、これらに限られません。ただし主張しなければ考慮されませんので、生活のどこが変わったかは遠慮なくお話しください。

Q. 相手が飲酒運転でした。どのくらい増額されますか。

A. 事案によりますが、傷害慰謝料と後遺症慰謝料について、基準額から1割から1割5分程度を増額する裁判例は少なくないとされています。横浜地方裁判所令和3年3月10日判決は、被告の過失が極めて初歩的かつ重大であるなどとして、傷害慰謝料を約24パーセント、後遺症慰謝料を約20パーセント増額しました。死亡事案ではさらに大きく認められた例もあります。

Q. 増額事由を主張するには、裁判をしなければなりませんか。

A. 示談交渉の段階でも主張はできますが、相手方保険会社が社内基準を超えて増額事由を認めることは多くありません。実際に増額が認められるのは訴訟や、交通事故紛争処理センターの審査手続によることが多いのが実情です。ただし、主張しておくことで示談の水準が上がる場合はあります。

Q. 保険会社の担当者の態度がひどいのですが、増額の理由になりますか。

A. 実際に考慮された裁判例があります。神戸地方裁判所平成10年6月4日判決は、過失相殺が認められない事案であるにもかかわらず、加害者側の保険会社の担当者が遺族に「被害者の過失割合は30パーセント」と告げ、訴訟では40パーセントと主張したことを、相当な権利主張の範囲を著しく逸脱しているとして慰謝料算定の一事由として考慮しました。ただし認められるのは相当に極端な場合で、提示額が低い、連絡が遅い、説明が不十分といった不満は、それ自体では増額事由になりません。問われるのは態度という評価ではなく、何をしたかという事実です。

Q. 刑事記録はどうやって取り寄せるのですか。

A. 刑事事件が終了したあとに、検察庁に対して閲覧・謄写を請求します。原則として刑事裁判が確定するまでは取り寄せられません。実況見分調書や供述調書には、速度、信号の状況、呼気検査の結果など、増額事由や過失割合を裏づける事実が記録されています。重過失が疑われる事案では、これを見てから示談の判断をすることをおすすめしています。

Q. 後遺障害が非該当でした。慰謝料は諦めるしかありませんか。

A. そうとは限りません。自賠責の認定基準に達せず等級が非該当であっても、後遺症慰謝料が認められることがあります。歯を2本失って補綴した場合や、14級の認定基準に達しない醜状などが例です。名古屋地方裁判所令和6年4月19日判決は複数の瘢痕が残った16歳男性に50万円を、さいたま地方裁判所平成29年6月1日判決は14級9号に該当するとまではいえない疼痛に80万円を認めています。等級がつかないことと、残った症状が賠償の対象にならないことは別の問題です。

Q. 14級の後遺障害が複数あります。慰謝料は増えますか。

A. 自賠責保険の扱いと同じく14級の基準額しか認めない傾向がありますが、近時は実態を考慮して増額する裁判例もみられるとされています。複数の部位に症状が残っているのであれば、基準額のまま受け入れる必要はありません。それぞれの部位でどのような支障が出ているかを、具体的に主張していくことになります。

Q. 逸失利益が認められないと言われました。慰謝料で埋められますか。

A. 一定の調整はされます。外貌の醜状障害のように労働能力の制限に直接つながらないとされる後遺障害では、逸失利益を否定する一方で後遺障害慰謝料を高く認めた裁判例があります。東京高等裁判所平成20年9月4日判決は270万円を認めました。外貌の醜状障害で慰謝料が加算される場合の額は100万円から200万円の幅といわれており、近時の裁判例もおおむねこの範囲に収まっています。まずは逸失利益そのものを認めさせる主張を尽くしたうえで、認められない場合に備えて慰謝料への加算を予備的に主張しておくのが順序です。

Q. 兄弟や祖父母でも、固有の慰謝料を請求できますか。

A. 請求できる場合があります。民法711条が挙げる父母・配偶者・子に限られず、これらと実質的に同視できる身分関係があれば、条文の類推適用によって固有の慰謝料を請求できると解されています。最高裁昭和49年12月17日判決は被害者の妹について認めました。内縁の配偶者も同様です。ただし兄弟姉妹・祖父母・孫の場合は、被害者との間に特別に緊密な関係があったかどうかが問題になりますので、その点の具体的な主張立証が必要です。

Q. むちうちでも増額されることはありますか。

A. 事故態様が悪質であれば、傷害の程度にかかわらず増額事由として主張できます。一方、症状が重いことを理由とする増額は、傷害の部位と程度が重篤な場合を想定したものですから、むちうちで認められることは多くありません。むちうちの事案で総額を動かすのは、後遺障害14級の認定を得られるかどうかであることがほとんどです。

Q. 家族の慰謝料は、同居していないと請求できませんか。

A. 同居していなくても請求は可能です。ただし、同居の有無は判断材料のひとつですから、同居していない場合は、交流の親密さや、事故後にどのような負担を負っているかを具体的に主張立証する必要があります。連絡の頻度、行事への参加、介護のために通っている実態などを、資料で示していきます。

Q. 事故が原因で会社を解雇されました。慰謝料は増えますか。

A. 特別な不利益として加算が検討されます。ただし、事故と解雇の因果関係を立証できることが前提です。解雇通知に記載された理由、就業規則の規定、休業期間との対応関係などの資料をそろえる必要があります。なお、解雇による収入の減少は、慰謝料とは別に休業損害や逸失利益の問題としても検討します。

Q. 過失割合が争われていても、増額の主張はできますか。

A. できます。ただし、慰謝料が増額されても、そこから過失相殺で差し引かれます。過失が3割であれば、増額分の3割も差し引かれるということです。過失割合が大きい事案では、増額を主張するより、過失割合そのものを争うほうが総額への影響が大きい場合があります。

Q. 示談したあとで、増額を求めることはできますか。

A. 原則としてできません。示談書には、記載した内容以外に債権債務がないことを確認する条項が入っているのが通常だからです。示談後に予想外の後遺症が判明した場合など、例外が認められることはありますが、限られた場面です。示談書にサインする前に内容を確認することが重要です。

Q. 増額を主張すると、示談が長引きますか。

A. 相手方が受け入れなければ、訴訟や紛争処理センターの手続に進むことになりますので、解決までの期間は延びます。増える見込み額と、延びる期間と、その間の生活への影響を並べて判断していただくことになります。当事務所では、見込みを数字でお示ししたうえで、ご本人に選んでいただくようにしています。

増額の余地があるかどうかを、先にお伝えします

提示された金額がどの基準で計算されているか、増額事由といえる事情があるか、等級や過失割合に動かせるところがないか。これは提示書と診断書を拝見すれば、その場である程度お答えできます。難波みなみ法律事務所では、交通事故の被害者の方の初回相談を30分無料でお受けしています。

電話 06-6786-8103(受付 9:00〜22:00)/夜間・土日祝、電話・メール・LINEでのご相談にも対応しています。弁護士費用特約をお使いいただける場合もあります。

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監修:難波みなみ法律事務所 代表弁護士 南 宜孝(大阪弁護士会・登録番号49544/中小企業診断士)。大阪市中央区西心斎橋2-4-3 難波御堂筋ビル403。交通事故の被害者側のご相談を大阪で承っています。

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