コラム
公開日: 2026.08.25

交通事故の保険会社との交渉|担当者は誰の代理人か

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。大阪弁護士会所属(登録番号49544)、大阪中小企業診断士会所属(登録番号 420113)、幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

交通事故のあと、相手方の保険会社の担当者から連絡が入ります。治療費を病院に払ってくれ、示談の話も進めてくれる。親身に対応してくれる方も少なくありません。

ただ、この担当者が誰のために交渉しているのかは、はっきりさせておいたほうがよいことです。保険の約款には、その答えが書かれています。この記事では、大阪で交通事故の被害者側を扱う弁護士が、交渉の相手方がどういう立場の人で、どの場面で何を確認すべきかを説明します。

結論から

Q. 相手方の保険会社の担当者は、中立の立場ですか。

A. 中立ではありません。任意保険の約款は、示談代行について「被保険者のために」折衝や示談を行うと定めています。被保険者とは加害者のことです。

Q. 治療費を払ってくれているのは、保険会社の義務ですか。

A. 義務ではありません。治療費を病院へ直接払う扱い(一括対応)には法律上・約款上の根拠がなく、保険会社のサービスとして行われているものです。裁判例も、保険会社に一括対応の義務はないという立場をとっています。

Q. 直接やり取りしたくない場合はどうなりますか。

A. 代理人弁護士が就く場合や、ご自身の保険会社が示談代行をする場合には、相手方保険会社との直接のやり取りを断ることができます。約款も、被害者が直接の折衝に同意しない場合を、示談代行を行わない場合として挙げています。

担当者は、誰のために交渉しているのか

約款には「被保険者のために」と書かれている

任意保険の約款には、保険会社が示談を代行することについての条項があります。文言は保険会社によって多少違いますが、おおむね次のように定められています。

当会社は、(中略)当会社が被保険者に対して支払責任を負う限度において、当会社の費用により、被保険者の同意を得て、被保険者のために、折衝、示談または調停もしくは訴訟の手続(弁護士の選任を含みます)を行います。

(任意保険の約款・当会社による援助または解決に関する条項)

「被保険者のために」とあります。被保険者とは、保険をかけている側、つまり加害者です。担当者は、加害者の側に立って交渉しているということが、約款そのものに書かれているわけです。

費用は保険会社が負担し、必要なら弁護士を選任することもできます。相手方には、事故処理を日常的に扱う専門の担当者が付き、場合によっては弁護士も付く。被害者だけが一人で対応しているという状態は、構造上よく起こります。

担当者が2つの立場を兼ねている

実務では、任意保険会社は2つの人格を持つと整理されています。1つは、被害者から直接請求を受ける当事者としての立場。もう1つは、加害者の代理人としての立場です。同じ担当者がこの2つを兼ねているため、被害者から見ると「支払う側」に見えますが、交渉の場面では加害者の代理人として振る舞っています。

示談代行は、もともと存在しなかった仕組みです

昭和40年代までは、賠償責任保険の保険会社が加害者の代理人として被害者と交渉することはできませんでした。示談代行が制度として組み込まれたのは、昭和49年に発売された自動車保険からで、このとき示談代行と被害者の直接請求権が約款に規定されました。

この設計は、弁護士でない者が報酬を得て法律事務を扱うことを禁じる弁護士法72条を意識したものだと説明されています。保険会社が自分の支払う保険金の額を決めるために交渉する、という当事者性を持たせることで、この問題を整理しているわけです。

治療費の一括対応は義務ではない

そもそも、治療費を病院に払う義務があるのは被害者本人です

意外に思われるかもしれませんが、病院に治療費を支払う義務を負っているのは、治療を受けた被害者本人です。これが原則です。加害者に請求できるのは、被害者が負担した治療費を損害として賠償してもらう、という形になります。

ところが実際には、被害者がいったん立て替えて後から保険会社に請求するのではなく、相手方の保険会社が病院から請求を受けて直接支払うのが通常です。そのため、被害者が窓口で治療費を払うことは基本的にありません。この対応を、実務では一括対応(一括払い)と呼びます。

一括対応には法律上・約款上の根拠がない

多くの方が「保険会社は治療費を払う義務がある」と理解されていますが、これは正確ではありません。

対人賠償保険は二階建てになっています。一階部分が自賠責保険、二階部分が任意保険です。自賠責から支払われる分は、任意保険の約款上の支払対象ではありません。本来なら、被害者は自賠責と任意保険の両方に別々に請求しなければならないことになります。それでは煩雑なので、任意保険会社がまとめて支払い、あとで自賠責分を回収する。これが一括対応です。

ここが重要です。一括対応は昭和48年に導入されましたが、そのための約款改正は行われていません。法律上も約款上も根拠がなく、保険会社のサービスとして行われていると説明されています。

裁判例も、治療費を医療機関に直接支払っていることが医療機関に請求権を与えるものではなく、保険会社に一括対応の義務はないという立場をとっています(大阪高裁平成元年5月12日判決、東京高裁平成29年7月20日判決)。

「サービスだから打ち切られても仕方がない」という話ではありません。治療の必要性があるかどうかと、保険会社が一括対応を続けるかどうかは、別の問題だということです。打ち切られたからといって、治療費を請求する権利がなくなるわけではありません。この点は症状固定と治療費の打ち切りで詳しく説明しています。

「同意書」に署名する意味

一括対応を始めるとき、保険会社から同意書の提出を求められます。これは、保険会社が病院から診断書や診療報酬明細書(レセプト)を取り寄せられるようにするためのものです。

治療の内容が相手方に筒抜けになる、という意味でもあります。署名しないという選択もできますが、その場合は一括対応が受けられず、治療費を立て替えることになります。署名するかどうかではなく、署名した以上は治療経過が見られていることを前提に、通院の仕方を整えるのが現実的です。

相手方に見られているのは、通院の頻度、治療の内容、症状の推移です。整骨院中心の通院で医師の診察が途切れていると、症状の経過が資料から辿れなくなります。整骨院への通院で、この点を具体的に説明しています。

なぜ打ち切られるのか|120万円という枠

打ち切りには、保険会社の側の事情があります。ここを知っておくと、通告の受け止め方が変わります。

相手方の保険会社が立て替えた治療費は、自賠責保険から回収できます。ただし回収できるのは、自賠責の傷害部分の限度額である120万円までです。治療費・休業損害・慰謝料を合計して120万円ですから、治療が長引くほどこの枠は埋まっていきます。

枠が埋まると、そこから先は相手方保険会社の自己負担になります。そのため、治療費の負担が大きくなってくると、通常よりも早い時期に打ち切りを通告してくる傾向があります。

また、軽微な事故であるほど早期に打ち切られる傾向もあります。症状がどれだけ残っているかとは別に、事故の大きさから「この程度の事故で治療が続くはずがない」という見方をされるためです。

打ち切りの時期は、症状の重さだけで決まっているわけではないということです。医学的に治療の必要があるかどうかと、保険会社が支払を続けるかどうかは、別の理屈で動いています。

過失や因果関係に争いがあると、一括対応がされないことがあります

次のような場合、相手方保険会社は最初から一括対応をしないことがあります。

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場面なぜそうなるか
過失割合に争いがある過失相殺で相手方の支払額が小さくなるため、立て替える意味が乏しくなります
けがが事故によるものか疑わしい因果関係が争点になるため、支払を留保します
車両の損傷がごく軽微普通乗用車で修理費が10万円程度だと、症状が残るほどのけがだったとは評価されにくい傾向があります

この場合は、原則どおり被害者が窓口で治療費を支払い、損害が確定した段階で他の費目とあわせて交渉することになります。健康保険を使えば自己負担を抑えられます。

ご自身の保険契約に人身傷害保険特約が付いている場合には、人身傷害保険から治療費等を受けられることがあります。相手方の対応を待たずに支払を受けられるうえ、過失の有無にかかわらず約款所定の基準で支払われます。

ご自身の自動車保険の証券を確認してください。相手方の一括対応がない事故では、ここが実際の支えになります

過失が大きい場合

ご自身の過失が大きい事故でも、相手方保険会社が一括対応を拒否することがあります。相手方が支払う金額が過失相殺で小さくなるため、立て替える意味が乏しくなるからです。

この場合は、健康保険を使って治療を受け、自賠責保険への請求を先に進める形になります。過失があっても自賠責は原則として支払われます(減額されるのは被害者の過失が7割以上の場合です)。健康保険は使えないと言われることがありますが、交通事故でも健康保険は使えます

一括対応が、かえって不利に働くとき

示談するまで、自賠責の分も受け取れません

一括対応には、あまり知られていない側面があります。窓口が相手方保険会社に一本化されるということは、示談が成立するまで一円も受け取れないということでもあります。自賠責から支払われるはずの部分も、一括対応の中に取り込まれているからです。

交渉が長引くほど、収入が途絶えている方には重い状態が続きます。相手方は急ぎません。時間が経つほど、生活のために低い金額でも受け入れざるを得なくなる。この構造そのものが、交渉の材料になってしまうことがあります。

一括対応を解除して、自賠責に直接請求する

この場合の選択肢が、一括対応を解除して、自賠責保険に被害者請求をするという方法です。自動車損害賠償保障法16条に基づき、被害者が自賠責保険会社に直接請求する手続きです。

一括対応の解除は、相手方保険会社にその旨を伝えれば足ります。同意が必要なものではありません。解除したうえで、治療費・休業損害・慰謝料を自賠責の枠内(傷害部分は120万円が限度)で先に受け取り、超える部分を任意保険会社と交渉する形になります。

当事務所は、後遺障害の申請でも被害者請求を積極的に使っています。相手方保険会社を通す事前認定と違い、被害者請求ではどの資料を出すかを自分の側で決められます。この違いは、後遺障害の認定で詳しく説明しています。

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項目一括対応のまま解除して被害者請求
治療費の支払保険会社が病院へ直接払う健康保険を使い、自己負担分を後から請求する
受け取れる時期示談成立まで受け取れない示談前に自賠責分を受け取れる
出す資料保険会社が病院から取り寄せる自分の側で選んで出せる
手間少ない書類を自分で集める必要がある

どちらが有利かは事案によります。治療が順調で早期に示談できそうなら一括対応のままで足りますし、争いが見込まれる場合や後遺障害が残りそうな場合は、切り替えを検討する価値があります。判断に迷われたら、切り替える前にご相談ください。

場面別|言われることと、確認すべきこと

交渉は、段階ごとに論点が変わります。よく言われることと、そのときに確認すべきことを整理します。

治療中に言われること

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言われること確認すべきこと
そろそろ治療費を打ち切ります主治医が治療の必要性をどう見ているか。症状固定の判断は医師がするもので、保険会社が決めるものではありません
通院の回数が多すぎます医師の指示に沿っているか。頻度は医学的な必要性で決まります
近くの整骨院に変えてはどうですか医師の診察が途切れないか。症状の経過を医証で辿れなくなると、後で不利に働きます
もう治っているのではないですか診断書とカルテに症状の推移が記録されているか
健康保険は使えません誤りです。交通事故でも健康保険は使えます

打ち切りを通告されたら、まずすること

ここが最も大事な点です。治療の必要性と相当性を判断するのは、第一に医師であって、保険会社ではありません。医師が治療を続ける必要があると判断するのであれば、治療は続けられるべきですし、その費用は加害者が負担すべきものです。

打ち切りを通告されたときの対応は、次の順です。

  1. 主治医に、治療を続ける必要性を書いた診断書か意見書を作ってもらう。「まだ治療が必要」という医師の判断を、口頭ではなく書面にしてもらいます。これを保険会社に提出します。
  2. 症状固定の見込み時期を示して、そこまでの負担を求める。「あと何か月で症状固定の見込み」という見通しを医師から聞き、その時期までは治療費を負担してほしいと交渉します。期限のない要求より通りやすくなります。
  3. それでも打ち切られ、高額の治療費を自分で負担することになる場合は、仮払いの仮処分を検討する。裁判所に対し、判決を待たずに治療費の支払を命じてもらう手続です。使う場面は限られますが、選択肢としてあります。

なお、頚椎捻挫(むちうち)の場合、事故からおよそ6か月が相当な治療期間の目安とされ、この時期に打ち切りを通告されることがよくあります。目安であって、上限ではありません。症状と治療の経過によって、必要な期間は変わります。

打ち切られた後、自費で通院を続けるかどうか

打ち切りを通告された時点で症状が強く残っていて、事故の態様などからも後遺障害が認定される可能性がある場合、健康保険を使って自分で治療費を立て替えてでも通院を続けるかどうかという判断を迫られます。

判断材料になるのは、治療期間の長さです。事故から半年に満たない時点で治療を終えてしまうと、症状が残っても後遺障害の認定では不利に働きます。ここで通院をやめるかどうかは、あとの結果を大きく左右します。

ただし、立て替えた治療費を回収できないことがあります。治療の必要性が認められなければ、その期間の治療費は賠償の対象になりません。自費で続けた分がそのまま自己負担になる可能性がある、ということです。

当事務所では、この点をご説明したうえで、通院を続けるかどうかはご本人に決めていただくようにしています。金額の見込みと回収できないリスクの両方をお伝えします。

「症状固定」という言葉が保険会社から出てきたら、注意が必要です。症状固定は治療の終わりを意味し、その後の治療費は原則として賠償の対象になりません。しかも、症状固定日は休業損害の終わりであり、後遺障害の申請ができる時期の始まりでもあります。誰が決めるのかを含めて、症状固定で説明しています。

示談の段階で言われること

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言われること確認すべきこと
これが当社の基準ですどの基準で計算しているか。自賠責の支払基準と、裁判所が用いる基準は別のものです
この金額が限度です内訳の各費目が何を根拠にいくらとされているか。合計額だけを見て判断しないこと
過失割合は8対2です何を根拠にその割合としているか。事故態様の認識が事実と合っているか
裁判をしても変わりません基準が違えば結論は変わります。少なくとも、そう言われて判断する必要はありません
期限までに返事をください示談に期限はありません。時効の期間内であれば検討できます

提示額の見方は示談金の相場と内訳で、示談書にサインする前の確認事項は示談の進め方で説明しています。

提示額が低いのは、担当者の対応が悪いからではありません。使っている基準が違うからです。代理人弁護士が就いていない段階では、自賠責基準か任意保険基準で計算されるのが通常です。弁護士に依頼するか訴訟を起こさなければ、裁判所が用いる基準で計算し直されることは通常ありません。この構造を理解しないまま「もっと出してほしい」と伝えても、話は動きません。

やり取りの記録を残す

交渉は電話で進むことが多く、記録が残りません。あとから「そんなことは言っていない」となる場面は実際にあります。手間はかかりますが、次の3つを習慣にしてください。

  1. 電話のあと、要点をメモに残す。日付、担当者名、言われたこと、こちらが答えたこと。これだけで十分です。手帳でもスマートフォンのメモでもかまいません。
  2. 重要なことは書面かメールで求める。「治療費を打ち切る」「この金額が限度」といった話は、口頭ではなく書面でくださいと伝えてください。書面にできない内容であれば、それはその程度の話だということです。
  3. 提示を受けたら、必ず内訳の書面をもらう。合計額だけを口頭で伝えられて判断してはいけません。費目ごとの金額と、その計算根拠が書かれた書面を求めてください。

担当者が交代することもあります。引き継ぎで話が変わってしまったときに、こちらの記録が効きます。記録は、交渉のためというより、事実を確定させるためのものだとお考えください。

交渉がまとまらないときの選択肢

話し合いで折り合えない場合、裁判しかないわけではありません。段階に応じて次の選択肢があります。

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手続特徴費用
交通事故紛争処理センター弁護士である嘱託が和解のあっせんを行う。まとまらない場合は審査会の裁定に進む無料
日弁連交通事故相談センター弁護士による示談あっせん。一定の場合は審査に進む無料
民事調停簡易裁判所で調停委員を交えて話し合う低額
訴訟裁判所が判断する。弁護士費用と遅延損害金が加算されうる訴額に応じた印紙代

紛争処理センターの使いどころ

交通事故紛争処理センターは、公益財団法人が運営する機関です。相談も和解のあっせんも無料で、あっせんを担当するのは弁護士です。あっせんがまとまらない場合は、法律学者、裁判官経験者、経験豊富な弁護士から選任された審査員による審査会に進み、裁定が出されます。

この制度には、被害者側に有利な非対称があります。

センターの公表によれば、協定を結んでいる保険会社は審査会の裁定を尊重することになっており、申立人(被害者)が裁定に同意すれば和解が成立します。裁定の内容に納得できなければ、被害者側は同意せずに訴訟へ進むこともできます。

また、和解のあっせんと審査会の裁定は、裁判所の判例やセンターの裁定例を参考に行われるとされています。保険会社の社内基準ではない水準で判断されるということです。

センターの公表によれば、和解の成立率は3回までのあっせんで70%前後、5回までで90%前後とされています。訴訟に比べて短期間で終わることが多く、費用もかかりません。

ただし、万能ではありません。あっせん案が示されても、こちらが納得できる水準とは限りません。争点が過失割合や後遺障害の等級そのものにある場合や、事実関係に大きな対立がある場合は、訴訟のほうが適していることもあります。どの手続を選ぶかは、争点が何かによって決まります。

訴訟を選ぶ意味

訴訟には時間がかかりますが、示談交渉では得られないものがあります。ひとつは遅延損害金、もうひとつは弁護士費用相当額です。判決では、認容額の1割程度が弁護士費用として加算されるのが一般的な扱いです。示談ではこの2つは付きません。

費用と回収額の関係は交通事故の弁護士費用で説明しています。

やってはいけない5つのこと

  1. 電話口で金額に同意しない。「その金額で結構です」と口頭で伝えただけでも、合意が成立したと扱われる余地があります。金額の話は、書面で受け取ってから検討すると伝えてください。
  2. 納得しないまま示談書に署名しない。署名すると原則としてその金額で確定します。あとから増額を求めることは、通常できません。
  3. 人身事故への切替を後回しにしない。物損事故のままだと実況見分調書が作成されず、事故とけがの因果関係を説明しにくくなります。
  4. 治療を自己判断で中断しない。症状が残っているのに通院が途切れると、症状の一貫性が疑われ、後遺障害の判断でも不利に働きます。
  5. 録音を残さないまま重要な話をしない。「言った・言わない」は実際に起こります。担当者との電話は、要点をメモに残す習慣をつけてください。日付と担当者名も記録します。

直接やり取りしないという選択

相手方保険会社と直接話すことが負担になる方は少なくありません。治療中に何度も電話が入り、そのたびに症状を説明し、打ち切りの話をされる。それ自体が回復の妨げになることもあります。

代理人弁護士が就く場合や、ご自身の保険会社が示談代行をする場合には、相手方保険会社との直接のやり取りを断ることができます。約款も、被害者が相手方保険会社と直接折衝することに同意しない場合を、示談代行を行わない場合として挙げています。窓口を代理人に一本化すれば、相手方からの連絡は代理人に入るようになります。

示談代行は、被害者の同意があって初めて成り立つ仕組みです。相手方保険会社が当然に交渉窓口になるわけではありません。

そのため、担当者の対応が不誠実なときは、示談代行を断って、加害者本人に対して請求するという方法があります。契約者である加害者本人が保険会社に働きかけ、そこから話が一気に進むこともあります。

もっとも、加害者本人に直接請求するのは、相手との関係を考えると簡単ではありません。担当者との関係が行き詰まったときの選択肢として、こういう手段があると知っておいていただければ十分です。実際に使うかどうかは、事案によります。

相手が任意保険に入っていない場合

相手方が任意保険に加入していなければ、示談代行をする保険会社がありません。加害者本人と直接やり取りすることになり、支払能力の確認や、支払方法を書面で確定させることが必要になります。自賠責保険からの回収と、ご自身の人身傷害保険や無保険車傷害保険が使えないかも確認します。

ただし、もらい事故では、ご自身の保険会社は示談代行ができません。過失がゼロの事故では、ご自身の保険会社に支払う義務が生じないため、代理人として交渉する立場に立てないからです。この場合に窓口を作るには、弁護士に依頼することになります。示談の進め方でも触れています。

弁護士を入れるタイミング

「示談の話が出てから」と考えておられる方が多いのですが、治療中に相談していただいたほうが打てる手は多いのが実際です。

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時期できること
事故直後人身事故への切替、健康保険の使用、通院先の選び方の確認
治療中打ち切り予告への対応、通院の整え方、一括対応の解除と被害者請求の検討
症状固定のころ後遺障害診断書の内容確認、被害者請求による申請
提示を受けた後提示額の検算、増額交渉、訴訟の検討

費用を心配される方が多いのですが、弁護士費用特約を使える場合があります。ご自身の自動車保険だけでなく、家族の保険や火災保険、クレジットカードに付いていることもあります。弁護士費用特約で、誰が使えるかを整理しています。

よくある質問

Q. 相手方の保険会社の担当者は、中立の立場ですか。

A. 中立ではありません。任意保険の約款は、示談代行について「被保険者のために」折衝、示談、調停、訴訟の手続を行うと定めています。被保険者とは加害者のことです。費用は保険会社が負担し、弁護士を選任することもできます。

Q. 治療費を払ってくれているのは、保険会社の義務ですか。

A. 義務ではありません。治療費を医療機関へ直接支払う一括対応には、法律上も約款上も根拠がなく、保険会社のサービスとして行われています。裁判例も保険会社に一括対応の義務はないとしています(大阪高裁平成元年5月12日判決、東京高裁平成29年7月20日判決)。

Q. なぜ治療の途中で打ち切りを通告されるのですか。

A. 相手方保険会社が立て替えた治療費は自賠責保険から回収できますが、回収できるのは傷害部分の限度額である120万円までです。治療が長引いて枠が埋まると、そこから先は保険会社の自己負担になるため、通常より早い時期に打ち切りを通告してくる傾向があります。軽微な事故であるほど早期に打ち切られる傾向もあります。

Q. 一括対応を打ち切られたら、治療費は請求できなくなりますか。

A. なりません。一括対応が終わることと、治療費を賠償として請求できるかどうかは別の問題です。治療の必要性があった期間の費用は、示談交渉や訴訟の中で請求できます。

Q. 治療費の打ち切りを通告されました。どうすればよいですか。

A. 治療の必要性と相当性を判断するのは第一に医師であって、保険会社ではありません。主治医に治療を続ける必要性を書いた診断書か意見書を作成してもらい、保険会社に提出してください。あわせて症状固定の見込み時期を示し、その時期までの負担を求めて交渉します。それでも打ち切られ、高額の治療費を自分で負担することになる場合は、仮払いの仮処分を検討することもあります。

Q. 交通事故で健康保険は使えますか。

A. 使えます。使えないと言われることがありますが、誤りです。第三者行為による傷病届を提出して使用します。過失がある場合や一括対応を受けられない場合は、健康保険を使うほうが自己負担を抑えられます。

Q. 示談するまで一円も受け取れないのですか。

A. 一括対応を続けている間は、自賠責の分も含めて示談成立まで受け取れないのが通常です。一括対応を解除して自賠責保険に被害者請求をすれば、示談の前に自賠責の枠内で受け取ることができます。

Q. 一括対応の解除に、保険会社の同意は必要ですか。

A. 必要ありません。相手方保険会社にその旨を伝えれば足ります。ただし解除後は治療費を立て替えることになりますので、健康保険の使用とあわせて検討してください。

Q. 過失が大きいと一括対応をしてもらえないのですか。

A. 相手方保険会社が一括対応を拒否することがあります。過失相殺で相手方の支払額が小さくなるためです。その場合でも自賠責保険は原則として支払われます。減額されるのは被害者の過失が7割以上の場合です。

Q. 相手方の担当者と直接やり取りしたくありません。

A. 代理人弁護士が就く場合や、ご自身の保険会社が示談代行をする場合には、直接のやり取りを断ることができます。約款も、被害者が直接折衝することに同意しない場合を、示談代行を行わない場合として挙げています。

Q. もらい事故でも自分の保険会社が交渉してくれますか。

A. できません。過失がゼロの事故では、ご自身の保険会社に支払義務が生じないため、代理人として交渉する立場に立てないからです。窓口を作るには弁護士に依頼することになります。

Q. 提示額に期限を切られました。応じなければいけませんか。

A. 応じる必要はありません。示談に期限はなく、時効の期間内であれば検討できます。なお、保険会社が示談交渉に応じて金額を提示した場合は、時効との関係で「承認」にあたると解されることが多いと考えられています。

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治療中の打ち切り予告、提示額への対応、一括対応を解除して被害者請求に切り替えるかどうか。判断が必要な場面ほど、早い段階でご相談いただいたほうが打てる手は多くなります。難波みなみ法律事務所では、交通事故の被害者の方の初回相談を30分無料でお受けしています。

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監修:難波みなみ法律事務所 代表弁護士 南 宜孝(大阪弁護士会・登録番号49544/中小企業診断士)。大阪市中央区西心斎橋2-4-3 難波御堂筋ビル403。交通事故の被害者側のご相談を大阪で承っています。

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