コラム
公開日: 2026.08.24

法定養育費とは?2026年4月の新制度をわかりやすく解説

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。大阪弁護士会所属(登録番号49544)、大阪中小企業診断士会所属(登録番号 420113)、幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

結論

法定養育費は、2026年4月1日に始まった新しい制度です。父母の間で養育費の取り決めがなくても、離婚のときから、子ども1人につき月額2万円を法律上当然に請求できます(民法766条の3)。

さらに、養育費のうち子ども1人につき月額8万円までの部分には先取特権が与えられ(民法308条の2)、公正証書や調停調書がなくても、相手の給与や預貯金を差し押さえられるようになりました。

ただし法定養育費は取り決めができるまでの「つなぎ」の最低額です。算定表に基づく本来の額のほうが高いのが通常なので、早めに正式な取り決めをすることが大切です。

この記事でわかること
  1. 法定養育費とは何か
  2. いくらもらえるのか
  3. いつからいつまで請求できるか
  4. 取り決めをした養育費との違い
  5. 先取特権で何が変わったか
  6. 本来の養育費を早く決めるべき理由

法定養育費とは

法定養育費とは、父母が養育費の取り決めをしないまま離婚した場合に、法律上当然に発生する養育費のことです。2026年(令和8年)4月1日に施行された改正民法で新しく設けられました(民法766条の3)。

これまでは、養育費は父母が話し合って取り決めるか、家庭裁判所の調停・審判で決めるまで請求できませんでした。そのため、取り決めをしないまま離婚してしまうと、子どもを育てる側は1円も受け取れないという問題がありました。

法定養育費は、この空白を埋めるための制度です。取り決めがなくても、離婚の時点から一定額を請求できます。

法定養育費はいくらもらえるか

法定養育費の額は、子ども1人につき月額2万円です(令和7年法務省令第56号)。子どもが2人なら月4万円、3人なら月6万円になります。

この2万円は、「子の最低限度の生活の維持に要する標準的な費用」を基準にした額です。実際の養育に必要な額を全額カバーするものではありません。

いつからいつまで請求できるか

始まり:離婚のとき

法定養育費は、離婚が成立した時から発生します。別居中の生活費(婚姻費用)とは別の制度で、離婚後の子の養育を対象とします。

終わり:養育費の取り決めができるまで

法定養育費は、父母の協議や家庭裁判所の調停・審判で正式な養育費が決まるまでの「暫定的・補充的」な制度です。取り決めができれば、そこからは取り決めた額に置き換わります。

つまり法定養育費は、正式な取り決めまでの「つなぎ」と考えてください。

取り決めた養育費との違い

2つの養育費の違い

法定養育費

取り決めがなくても発生。子1人あたり月2万円という最低額。離婚から取り決めができるまでの暫定額。

取り決めた養育費

父母の協議や調停で決める。裁判所の算定表をもとに双方の収入と子の年齢・人数から算出。通常は月2万円より高い。

算定表に基づく本来の養育費は、支払う側の年収が高いほど、また子の年齢が上がるほど高くなります。多くのケースで、法定養育費の月2万円より高い額になります。だからこそ、法定養育費で満足せず、早めに正式な取り決めをすることが重要です。

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先取特権で差押えが変わった

今回の改正でもう一つ大きく変わったのが、養育費への先取特権の付与です(民法308条の2)。

これまでは、養育費が支払われなくなったときに給与や預貯金を差し押さえるには、公正証書や調停調書などの「債務名義」が必要でした。口約束だけでは差押えができなかったのです。

改正後は、養育費のうち子ども1人につき月額8万円までの部分について先取特権が認められ、債務名義がなくても差押えができ、しかも他の一般債権者に優先して回収できるようになりました。

これは、取り決めをしないまま離婚した親にとって、回収の可能性を大きく広げる改正です。

本来の養育費を早く決めるべき理由

法定養育費に頼りきらないための手順

1. まず離婚時に養育費を取り決める

離婚届を出す前に、養育費の額・支払期間・支払方法を決めておくのが理想です。法定養育費の月2万円より高い額を確保できます。

2. 取り決めは公正証書にする

強制執行認諾文言を入れた公正証書にしておけば、8万円を超える部分についても、滞納時にすぐ差押えができます。

3. 決められないまま離婚したら調停へ

取り決めができないまま離婚した場合は、法定養育費を受け取りながら、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てます。

養育費が払えない場合どうなる?減額されるケース

よくある質問

FAQ
法定養育費はいくらですか?
子ども1人につき月額2万円です(令和7年法務省令第56号)。子が2人なら月4万円、3人なら月6万円です。取り決めがなくても、離婚の時から請求できます。
法定養育費はいつから始まった制度ですか?
2026年(令和8年)4月1日に施行された改正民法(令和6年法律第33号)で新しく設けられました。それ以前に離婚した方には、原則として適用されません。
法定養育費だけで生活できますか?
月2万円は子の最低限度の生活費を基準にした額で、実際の養育に必要な額を全額まかなうものではありません。算定表に基づく本来の養育費はこれより高いのが通常ですので、早めに正式な取り決めをすることをおすすめします。
相手が法定養育費を払わない場合はどうすればいいですか?
養育費のうち子ども1人につき月額8万円までの部分には先取特権が認められたため、公正証書などの債務名義がなくても、相手の給与や預貯金を差し押さえることができます。
法定養育費と婚姻費用は違いますか?
違います。婚姻費用は別居中の生活費で、離婚が成立するまでの間、夫婦の一方が他方に支払うものです。法定養育費は離婚後の子の養育を対象とし、離婚の時から発生します。

まとめ

法定養育費は、取り決めをしないまま離婚した親と子を守るための新しい制度です。ただし月2万円はあくまで最低ラインで、本来もらえるはずの養育費より低いのが通常です。「法定養育費があるから大丈夫」ではなく、離婚のときに正式な取り決めをすること、それが難しければ早めに調停を申し立てることが大切です。

難波みなみ法律事務所は、大阪メトロ「なんば駅」から徒歩3分、「心斎橋駅」から徒歩5分の大阪市中央区西心斎橋にあります。初回相談30分無料、受付9:00〜22:00(土日祝・夜間も対応。時間帯によってはメッセージでのご返信となる場合があります)。養育費の取り決めや回収について、お気軽にご相談ください。

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