交通事故の示談金は、いくらが相場なのか。保険会社から金額を提示されたけれど、これが妥当なのか分からない——この記事を読んでいる方は、そのあたりで迷っておられると思います。
結論から申し上げると、示談金の相場を1つの数字で示すことはできません。示談金は、ケガの重さ・治療の期間・後遺障害の有無・過失割合・すでに支払われた額という5つの事情の組み合わせで決まるからです。
ただし、金額の「決まり方」には型があります。そして、その型を知っていれば、提示された金額のどこを見ればよいかが分かります。この記事では、示談金の中身と、提示額を見るときのチェックポイントを、公的資料と裁判例に基づいて説明します。
結論から
Q. 交通事故の示談金の相場はいくらですか?
1つの数字では示せません。示談金は、治療費・通院交通費・休業損害・慰謝料・逸失利益・物損といった損害の合計額だからです。ケガの重さ、治療の期間、後遺障害の有無、過失割合、すでに支払われた額によって、同じ「むちうち」でも金額は大きく変わります。
Q. 示談金と慰謝料は同じものですか?
違います。慰謝料は示談金の一部です。慰謝料は精神的な苦痛に対する賠償で、治療費や休業損害とは別の費目です。「示談金=慰謝料」だと思っていると、本来請求できる費目が抜け落ちます。
Q. 提示された金額が妥当か、どこを見ればよいですか?
まず、慰謝料がどの基準で計算されているかを見てください。慰謝料には自賠責保険の基準、任意保険会社の基準、裁判で用いられる基準の3つがあり、ご本人が交渉している段階では、前の2つで提示されるのが通常です。裁判で用いられる基準は、弁護士に依頼するか訴訟を起こさなければ適用されません。あわせて、通院期間の取り方、休業損害の日額、過失割合、後遺障害の申請をしたかどうかを確認します。
示談金とは、損害の合計額のことです
まず、いちばん多い誤解から解きます。
示談金は、慰謝料のことではありません。事故によって生じた損害を費目ごとに積み上げ、その合計として出てくる金額が示談金です。慰謝料は、そのなかの1つにすぎません。
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| 区分 | 主な費目 |
|---|---|
| 積極損害 (出ていったお金) | 治療費、通院交通費、入院雑費、付添看護費、装具・器具の購入費、診断書などの文書料 |
| 消極損害 (入るはずだったお金) | 休業損害、後遺障害の逸失利益 |
| 慰謝料 | 入通院慰謝料、後遺障害慰謝料 |
| 物的損害 | 車の修理費、買替差額、代車料、評価損、レッカー代 |
たとえば、通院のために使った交通費、家族が付き添った費用、後遺障害が残ったことで将来の収入が減る分。これらはいずれも慰謝料とは別に請求できる費目です。提示された示談案に、どの費目が入っていて、どれが入っていないかを確認してください。
物損と人身は、別に進むことがあります
車の修理費などの物的損害は、ケガの治療が終わるのを待たずに先に示談することが少なくありません。物損の示談書にサインしても、人身の請求ができなくなるわけではありません。ただし、書面の記載が「本件事故に関する一切の請求をしない」となっている場合は注意が必要です。何についての示談なのかを、書面で確認してください。
「相場」を1つの数字で示せない理由
ネットで「示談金 相場」と検索すると、金額表が並んでいます。しかし同じ「むちうちで3か月通院」でも、示談金は人によって変わります。理由は次の5つです。
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| 変わる事情 | 何が動くか | |
|---|---|---|
| 1 | ケガの重さと治療の期間 | 治療費、入通院慰謝料、休業損害。入院の有無でも慰謝料は変わります |
| 2 | 後遺障害が残ったか | 後遺障害慰謝料と逸失利益が加わります。ここが入るかどうかで金額の桁が変わることがあります |
| 3 | 仕事を休んだか、収入はいくらか | 休業損害。給与所得者・自営業者・主婦(主夫)で計算の仕方が違います |
| 4 | 過失割合 | 損害の合計額から、被害者の過失分が差し引かれます |
| 5 | すでに支払われた額 | 保険会社が病院に支払った治療費などが、既払金として差し引かれます |
手元に残る額は、示談金の額と違います
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
「示談金は1,000万円です」と言われても、1,000万円が振り込まれるとは限りません。むしろ、そうならないほうが多いといえます。損害の合計額が出たあと、2つの調整が入るからです。
計算は3つの段階に分かれています
実務では、次の順序で計算します。
- 過失相殺の前に差し引くものを差し引く
健康保険を使って通院した場合、治療費は全額が損害として計上され、そのうえで健康保険組合が負担した分が、過失相殺の前に差し引かれます。健康保険の給付は社会保障的な性質が強いためです。その結果、被害者が加害者に請求する治療費は、自己負担分だけになります。 - 過失相殺をする
損害の合計額に、加害者側の過失割合を掛けます。被害者に3割の過失があれば、請求できるのは7割です。治療費も休業損害も慰謝料も、まとめてこの割合が掛かります。 - 過失相殺の後に差し引くものを差し引く
自賠責保険と対人賠償保険(任意保険)からすでに支払われた額は、過失相殺をした後に差し引きます。保険会社が病院に直接支払った治療費も、ここに含まれます。
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| すでに支払われたもの | 差し引くタイミング |
|---|---|
| 健康保険(療養給付) | 過失相殺の前 |
| 自賠責保険・対人賠償保険(任意保険) | 過失相殺の後 |
具体的に計算してみます
損害の合計額が1,000万円、被害者の過失が40%、保険会社がすでに病院などに支払った額が300万円だとします。
損害1,000万円・過失40%・既払300万円の場合
「示談金がいくらか」と「いくら振り込まれるか」は、別の数字です。保険会社の示談案には、損害の総額と、そこから既払金を差し引いた今回のお支払額の両方が書かれています。どちらの数字を見ているのかを、まず確認してください。
過失があると、治療費の一部を負担することになります
上の例で、300万円の既払金が保険会社から病院に支払われた治療費だったとします。
被害者が受け取った価値は、治療費300万円と振込300万円で、合わせて600万円です。損害1,000万円のうち600万円ですから、過失40%が差し引かれた計算と一致します。
健康保険を使って通院していれば、この負担は小さくなります。健康保険組合が負担した分は過失相殺の前に差し引かれるため、その部分には過失相殺がかからないからです。
過失が争われそうな事故では、健康保険を使うかどうかが、最終的な手取りに響きます。
そもそも交通事故に健康保険は使えます
病院の窓口で「交通事故に健康保険は使えません」と言われることがあります。しかし、これは誤りです。
全国健康保険協会は、自動車事故等の第三者行為によりケガをしたときの治療費は本来は加害者が負担するのが原則だが、業務上や通勤災害によるものでなければ健康保険を使って治療を受けることができるとしています。この場合、加害者が支払うべき治療費を健康保険が立て替えて支払うことになります。
健康保険が立て替えた治療費を、後から加害者側に請求するために必要な届出です。事故発生状況報告書、同意書、交通事故証明書を添えて提出します。
どのくらい違うのか
健康保険を使うと、保険診療になるため、治療費の総額そのものが下がります。自由診療は診療報酬の単価が高く設定されているためです。この点も含めて比べてみます。
自由診療なら治療費200万円かかる治療が、健康保険を使うと100万円で済むとします。その他の損害は800万円、被害者の過失は20%とします。
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| 自由診療 | 健康保険 | |
|---|---|---|
| 治療費 | 200万円 | 100万円 |
| その他の損害 | 800万円 | 800万円 |
| 損害の合計額 | 1,000万円 | 900万円 |
| 過失相殺の前に差し引く額 (健康保険組合の負担分) | ― | 70万円 |
| 過失相殺の後の額 | 800万円 | 664万円 |
| 既払金の控除 | 200万円 | ― |
| 振り込まれる額 | 600万円 | 664万円 |
| 窓口で払った自己負担 | 0円 | 30万円 |
| 手元に残る額 | 600万円 | 634万円 |
差は34万円です。治療費の総額が下がることと、健康保険組合が負担した分に過失相殺がかからないことの、2つが効いています。
健康保険を使うと、自己負担分は被害者がいったん立て替えることになります。上の例では30万円です。被害者に過失がない事故では、相手の保険会社に治療費を払ってもらったほうが、持ち出しがなく負担も軽くなります。
過失が争われそうか、自己負担分を立て替えられるか。この2つで判断が変わります。
自賠責の支払基準が下限になります
示談金には、下限があります。自賠責保険から支払われる額です。
自賠責保険の支払限度額は、被害者1名につき次のとおり定められています。
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| 区分 | 限度額 |
|---|---|
| 傷害による損害 | 120万円 |
| 死亡による損害 | 3,000万円 |
| 後遺障害(介護を要するもの・第1級) | 4,000万円 |
| 後遺障害(介護を要するもの・第2級) | 3,000万円 |
| 上記以外の後遺障害 | 第1級3,000万円 〜 第14級75万円 |
自賠責の基準は、あくまで最低限の補償です
自賠責保険は、被害者に最低限の補償を確保するための制度です。そのため、支払基準も必要最小限の水準に設定されています。
慰謝料の算定には、自賠責保険の基準、任意保険会社が独自に定める基準、裁判で用いられる基準の3つがあり、この順に金額が上がります。
裁判で用いられる基準は、弁護士に依頼するか、訴訟を起こさなければ適用されません。保険会社が最初から裁判基準で提示してくることは、まずありません。
つまり、提示額が低いのは担当者の対応が悪いからではなく、使っている基準が違うからです。
提示額を見るときの5つのチェックポイント
示談案が届いたら、次の5つを順に見てください。
- 慰謝料はどの基準で計算されているか
自賠責の基準か、任意保険会社の基準かを確認します。ここがいちばん差が出るところです。ただし、裁判で用いられる基準に上げるには、弁護士に依頼するか訴訟を起こす必要があります。ご本人での交渉では、この基準にはなりません。 - 通院期間と実通院日数の取り方は正しいか
入通院慰謝料は通院期間をもとに計算しますが、通院が少ない場合には実日数をもとに調整されることがあります。治療を中断した期間があると、そこで区切られていることもあります。 - 休業損害の日額は正しいか
給与所得者なら事故前3か月の収入をもとに計算します。主婦(主夫)の家事労働も休業損害の対象です。賞与や昇給が反映されているかも確認してください。 - 過失割合は妥当か
過失割合が10%動くだけで、金額は大きく動きます。損害1,000万円なら、10%で100万円です。相手の言い分をそのまま前提にしていないかを確認してください。 - 後遺障害の申請をしたか
症状が残っているのに後遺障害の申請をしていなければ、後遺障害慰謝料と逸失利益がまるごと抜け落ちます。治療を終える前に、申請の要否を検討してください。
1つは事故日からの遅延損害金、もう1つは弁護士費用相当額です。弁護士費用は、認容額の1割程度が認められる運用になっています。示談では、いずれも加算されません。
示談金はいつ提示されるか
示談金の話が出てくる時期は、ケガの経過によって変わります。
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| 経過 | 示談の時期 |
|---|---|
| ケガが治った場合 | 治療の終了後。損害が確定するため、そこから示談交渉が始まります |
| 症状が残った場合 | 症状固定と後遺障害の認定結果が出た後。後遺障害慰謝料と逸失利益が確定しないと、損害の総額が出せません |
| 物的損害 | 修理費が確定した時点。人身より先に示談することが少なくありません |
治療がまだ続いている段階では、最終的にいくらの損害になるかが分かりません。この段階で示談してしまうと、後から増えた分を請求できなくなるおそれがあります。
健康保険を使って治療している場合は、もう1つ理由があります。健康保険は加害者が支払うべき治療費を立て替えているため、被害者が先に示談してしまうと、立て替えた分を加害者に請求できなくなるおそれがあります。全国健康保険協会も、加害者と示談する場合は事前に報告すること、白紙委任状を渡さないこと、金品を受け取った場合は必ず報告することへの同意を求めています。
示談金に税金はかかるか
原則として、かかりません。
国税庁は、交通事故などのために被害者が受け取る治療費、慰謝料、損害賠償金などについて、これらは非課税となるとしています。
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| 受け取るもの | 課税 | 備考 |
|---|---|---|
| 治療費 | 非課税 | 医療費控除を受ける場合は、支払った医療費から差し引きます |
| 慰謝料 | 非課税 | 心身に加えられた損害についての賠償だからです |
| 休業損害 | 非課税 | 負傷して働けないことによる収益の補償だからです |
| 車の修理費など | 非課税 | 資産に加えられた損害についての賠償だからです |
| 必要経費を補てんする部分 | 課税 | 各種所得の収入金額とされます |
治療費として受け取った金額は、医療費控除を受けるときに、支払った医療費の金額から差し引きます。ただし、その治療費を補てんしてなお余りがあっても、他の医療費から差し引く必要はありません。
また、事業をしている方は例外に注意してください。商品(棚卸資産)の損害に対する賠償金や、店舗の補修期間中の仮店舗賃借料の補償は、非課税とはならず事業所得の収入金額になります。
示談する前に確認すること
いったん示談すると、原則としてやり直せません
示談は契約です。いったん成立すると、後から「やはり足りなかった」と言って追加を請求することは、原則としてできません。
最高裁判所 昭和43年3月15日
この判決は、示談の効力について次のように述べています。一般に、被害者が一定額の支払を受けることで満足し、その余の賠償請求権を放棄したときは、示談当時にそれ以上の損害が存在したとしても、あるいはそれ以上の損害が事後に生じたとしても、示談額を上回る損害については事後に請求しえない趣旨と解するのが相当である。
ただし、例外が認められた事案があります
同じ判決は、続けて次のように述べています。
最高裁判所 昭和43年3月15日(続き)
全損害を正確に把握し難い状況のもとにおいて、早急に少額の賠償金をもって満足する旨の示談がされた場合においては、示談によって被害者が放棄した損害賠償請求権は、示談当時予想していた損害についてのものと解すべきであって、その当時予想できなかった不測の再手術や後遺症が事後発生した場合その損害についてまで、賠償請求権を放棄した趣旨と解するのは、当事者の合理的意思に合致するものとはいえない。
この事案は、事故から9日目の入院中に、当時の見立てでは比較的軽いケガと考えて、保険金10万円を受け取り「以後一切の請求をしない」という示談をしたところ、1か月以上経ってから当初の予想よりはるかに重いことが判明し、再手術と後遺症に至ったというものです。
この判決を「示談してもやり直せる」と読むのは誤りです。全損害を把握できない状況で、早急に少額の示談をした場合という、限られた場面についての判断です。原則は、示談したら覆せません。
だからこそ、示談書にサインする前に確認することが大切になります。
時効にも期限があります
損害賠償を請求できる期間は、法律で決まっています。
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| 請求の内容 | 期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 人身の損害(ケガ・後遺障害・死亡) | 5年 | 民法724条の2 |
| 物的損害(車の修理費など) | 3年 | 民法724条1号 |
| いずれも、不法行為の時から | 20年 | 民法724条2号 |
示談金の提示を受けた方、金額に納得できない方へ
難波みなみ法律事務所では、交通事故の被害者側のご相談を初回30分無料でお受けしています。示談案は、どの基準で計算されているか、どの費目が抜けているか、過失割合が妥当かを見れば、増額の余地があるかどうかが分かります。そして、いったん示談してしまうと、原則としてやり直せません。サインをする前にご相談ください。ご加入の保険に弁護士費用特約があれば、費用のご負担を抑えてご依頼いただけます。
よくある質問
Q. 交通事故の示談金の相場はいくらですか?
1つの数字では示せません。示談金は、治療費、通院交通費、休業損害、慰謝料、逸失利益、物的損害といった損害を費目ごとに積み上げた合計額だからです。ケガの重さ、治療の期間、後遺障害が残ったかどうか、仕事を休んだか、過失割合、すでに支払われた額という6つの事情によって、同じ傷病名でも金額は大きく変わります。
Q. 示談金と慰謝料は同じものですか?
違います。慰謝料は示談金の一部です。慰謝料は精神的な苦痛に対する賠償であり、治療費や休業損害、逸失利益とは別の費目です。示談金イコール慰謝料だと考えていると、通院交通費や付添看護費、逸失利益といった費目が抜け落ちたまま示談してしまうおそれがあります。
Q. 示談金の額が、実際に振り込まれる額と違うのはなぜですか?
損害の合計額が出たあとに、過失相殺と既払金の控除という2つの調整が入るからです。実務では、まず過失相殺の前に差し引くべき既払金を差し引き、次に過失相殺をし、最後に過失相殺の後に差し引くべき既払金を差し引いて計算します。保険会社の示談案には、損害の総額と、そこから既払金を差し引いた今回のお支払額の両方が書かれています。
Q. 保険会社が病院に払った治療費は、示談金から差し引かれますか?
差し引かれます。自賠責保険と対人賠償保険から支払われた額は、過失相殺をした後に既払金として差し引きます。損害の合計額が1,000万円、被害者の過失が40%、既払金が300万円の場合、1,000万円に60%を掛けた600万円から300万円を差し引いた300万円が、実際に振り込まれる額になります。
Q. 健康保険を使うと示談金は減りますか?
減りません。むしろ、被害者に過失がある事故では、手元に残る額が増えることがあります。理由は2つあります。1つは、健康保険を使うと保険診療になり、治療費の総額そのものが下がることです。もう1つは、健康保険組合が負担した治療費分が過失相殺の前に差し引かれるため、その部分には過失相殺がかからないことです。ただし、自己負担分は被害者がいったん立て替えることになります。被害者に過失がない事故では、相手の保険会社に治療費を払ってもらったほうが持ち出しがなく負担も軽くなります。
Q. 自賠責保険からはいくらまで支払われますか?
被害者1名につき、傷害による損害は120万円、死亡による損害は3,000万円が限度です。後遺障害による損害は、神経系統の機能または精神・胸腹部臓器に著しい障害を残し介護を要する場合、常時介護の第1級が4,000万円、随時介護の第2級が3,000万円です。それ以外の後遺障害は、第1級の3,000万円から第14級の75万円まで等級別に定められています。
Q. 提示された示談金が妥当かどうか、どこを見ればよいですか?
5つあります。第一に、慰謝料がどの基準で計算されているか。第二に、通院期間と実通院日数の取り方が正しいか。第三に、休業損害の日額が正しいか。第四に、過失割合が妥当か。第五に、症状が残っているのに後遺障害の申請をしていないことがないか。慰謝料には自賠責保険の基準、任意保険会社の基準、裁判で用いられる基準の3つがあり、被害者ご本人が交渉している段階では前の2つで提示されるのが通常です。裁判で用いられる基準は、弁護士に依頼するか訴訟を起こさなければ適用されません。
Q. 示談金はいつ提示されますか?
ケガが治った場合は治療の終了後、症状が残った場合は症状固定と後遺障害の認定結果が出た後です。損害の総額が確定しないと示談交渉ができないためです。物的損害は修理費が確定した時点で、人身より先に示談することが少なくありません。治療中に示談を持ちかけられた場合は、応じないでください。
Q. 示談金に税金はかかりますか?
原則としてかかりません。国税庁は、事故による負傷について受ける治療費や慰謝料、負傷して働けないことによる収益の補償をする損害賠償金は非課税としています。車の破損について受ける損害賠償金も非課税です。ただし、各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額が含まれている場合、その部分は各種所得の収入金額とされます。
Q. 治療費を受け取った場合、医療費控除はどうなりますか?
医療費控除を受ける場合は、支払った医療費の金額から、治療費として受け取った金額を差し引きます。ただし、その医療費を補てんしてなお余りがあっても、他の医療費から差し引く必要はありません。
Q. いったん示談した後で、後遺症が出たら請求できますか?
原則としてできません。最高裁判所昭和43年3月15日判決は、被害者が一定額の支払を受けることで満足しその余の賠償請求権を放棄したときは、示談額を上回る損害については事後に請求しえない趣旨と解するのが相当であるとしています。もっとも同判決は、全損害を正確に把握し難い状況のもとで早急に少額の賠償金をもって満足する旨の示談がされた場合について、その当時予想できなかった不測の再手術や後遺症が事後発生したときの損害についてまで賠償請求権を放棄した趣旨と解するのは当事者の合理的意思に合致するものとはいえない、としています。あくまで例外的な場面についての判断です。
Q. 示談交渉には期限がありますか?
あります。損害賠償請求権は、損害および加害者を知った時から、人身の損害は5年、物的損害は3年で時効により消滅します。不法行為の時から20年を経過した場合も同様です。起算点は通常は事故の日ですが、後遺障害については症状固定の日から数えるのが実務の扱いです。
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この記事は、難波みなみ法律事務所の弁護士 南 宜孝(大阪弁護士会・登録番号49544)が執筆しました。記載内容は、民法、自動車損害賠償保障法および国土交通省が公表する自賠責保険の支払限度額、国税庁が公表する所得税の取扱い、全国健康保険協会が公表する第三者行為による傷病届の取扱い、公表裁判例ならびに交通事故賠償の実務の取扱いによります。個別の事案の見通しは事情により異なりますので、詳細はご相談ください。






