- 休業損害証明書は誰が書く書類ですか?
- 勤務先の会社が書く書類です。被害者本人が書くものではなく、事故前3か月の給与と事故後に休んだ日を会社に証明してもらうためのものだからです。用紙は相手方の保険会社から送られてくるので、それを会社の担当者に渡して記入してもらいます。
- 有給休暇を使って休んだ場合も、休業損害はもらえますか?
- もらえます。本来なら別の目的に使えたはずの有給休暇を事故のために消費した以上、そこに損害が生じているからです。自賠責保険の支払基準にも「有給休暇を使用した場合」と明記されています。現実に給料が減っていなくても請求できます。
- 保険会社が計算した休業損害の額は、そのまま受け入れてよいですか?
- 通院日だけ休んだようなケースでは、そのまま受け入れないでください。事故前3か月の給与を「90日」で割った日額に実際に欠勤した日数を掛ける計算がよく使われますが、この組み合わせは休業損害を過小に評価します。下の計算ツールで、正しい計算方法との差額を確認できます。
交通事故で仕事を休むと、減ってしまった収入は「休業損害」として加害者側に請求できます。その金額を決める土台になるのが休業損害証明書です。
ところがこの書類は、書き方を少し間違えるだけで、受け取れる金額が数十万円単位で変わります。会社の担当者が書き慣れていないことも多く、有給休暇の欄が空欄のまま提出されたり、遅刻・早退が記載されずに終わったりすることが珍しくありません。
この記事では、大阪・難波の弁護士が、休業損害証明書の記載項目と書き方を記入例つきで整理したうえで、保険会社の計算が低くなる仕組み、有給・遅刻早退・賞与減額の扱い、専業主婦や自営業の場合の考え方までまとめます。自動計算ツールも用意しました。
休業損害証明書の書き方でお困りですか
難波みなみ法律事務所は年間500件以上のご相談をお受けしています。交通事故のご相談は初回無料です。
休業損害証明書とは|何を証明するための書類か
休業損害証明書とは、事故で仕事を休んだ事実と、その人の事故前の収入を、勤務先が証明する書類です。相手方の保険会社に休業損害を請求するときの、いちばん基本的な資料になります。
休業損害の金額は、おおまかに次の式で決まります。
このうち基礎日額を出すための給与データと、休業した日数の両方が、休業損害証明書に書き込まれます。つまりこの1枚が、金額のほぼすべてを決めているということです。
「休業補償」との違い
休業損害と休業補償は別の制度です。休業損害は加害者(相手方の任意保険・自賠責保険)に請求するもので、休業補償は労災保険から給付されるものを指すのが一般的です。仕事中や通勤中の事故であれば、両方を検討することになります。
誰が用意して、誰が書くのか
| 用紙の入手 | 相手方の任意保険会社から送られてくる。届かない場合は担当者に請求する |
|---|---|
| 記入する人 | 勤務先の会社(人事・総務・経理の担当者など) |
| 提出する人 | 被害者本人(または代理人の弁護士)から保険会社へ |
| 一緒に出す書類 | 事故前年分の源泉徴収票 |
なぜ源泉徴収票まで必要なのか
被害者が本当にその会社で働いていたかを確認するためです。休業損害証明書は勤務先が作る書類なので、それだけでは客観性が足りないと考えられています。そのため自賠責保険の実務では、事故前年分の源泉徴収票をあわせて提出させる運用になっており、任意保険会社との示談交渉でも同じ書類が求められます。
源泉徴収票をなくしてしまった場合は、勤務先に再発行を依頼してください。それも難しいときは、市区町村で取得できる課税証明書(所得証明書)で代替できることが多いです。
休業損害証明書の記載項目11点
休業損害証明書は、自賠責保険の統一様式が使われます。保険会社ごとにロゴや細部は違っても、聞かれている中身は同じです。2020年3月に改訂された様式では、記載方法の説明書が添付されることもあります。
記入欄は、大きく次の11か所です。金額に直結するのは4・5・7・11番だと考えてください。
| # | 記載項目 | 内容と注意点 |
|---|---|---|
| 1 | 源泉徴収票の貼付欄 | 用紙の上部に、前年度分の源泉徴収票を貼る欄がある |
| 2 | 職種・役職・氏名・採用日 | パート・アルバイトも同じ用紙を使う |
| 3 | 休業した期間 | 遅刻・早退した日も含めた期間を書く |
| 4 | 内訳(欠勤・年次有給休暇・遅刻・早退) | 最重要。欠勤○日、年次有給休暇○日、遅刻○回、早退○回。有給の欄が空欄だと、その分が丸ごと請求から抜け落ちます |
| 5 | 休んだ日のカレンダー | 休んだ日に○、勤務先の所定休日に×、遅刻・早退に△を記入する |
| 6 | 休んだ日の給与の支給有無 | 全額支給した/全額支給しなかった/一部支給・減給した(+その額と内訳) |
| 7 | 事故前3か月の月例給与 | 最重要。月ごとに稼働日数/本給/付加給/社会保険料/所得税/差引支給額を書く |
| 8 | 給与の締切日 | 締切日によって「事故前3か月」の範囲が変わる |
| 9 | パート・アルバイトの算定基礎 | 所定勤務時間と、月給・日給・時給のどれかを選ぶ |
| 10 | 社会保険からの給付の有無 | 傷病手当金・休業補償費を受けたか、手続中か、受けていないか |
| 11 | 裏面:時間有給・遅刻早退の明細 | 見落とし多発。時間単位の有給、遅刻・早退の日付と時間数を書く欄。ここが空欄だと時間単位の損害が請求できません |
「付加給」とは何か
付加給とは、基本給以外に支給される手当のことです。残業手当、通勤手当、役職手当、資格手当などが該当します。休業損害の基礎日額は本給と付加給を合計した額から計算するので、付加給の欄が空欄だと、その分だけ日額が下がります。
休業損害証明書の書き方|記入の4ステップ
- 用紙を受け取る相手方の任意保険会社から送られてきます。届かない場合は担当者に「休業損害証明書の用紙を送ってください」と伝えれば発行されます。会社に渡す前に、コピーを1部取っておくと後で確認しやすくなります。
- 勤務先に依頼する人事・総務・経理の担当者に渡します。書き慣れていない担当者も多いので、「有給を使った日も必ず書いてください」「遅刻・早退は裏面にも書いてください」の2点を口頭で伝えておくと、書き直しを防げます。
- 記載内容をチェックする受け取ったら、そのまま出す前に自分で確認します。下のチェックリストを使ってください。
- 源泉徴収票を添えて提出する事故前年分の源泉徴収票をあわせて保険会社へ送ります。紛失していれば勤務先に再発行を依頼するか、市区町村の課税証明書で代替します。
提出前チェックリスト
- 欠勤日数だけでなく、年次有給休暇の日数が書かれているか
- 遅刻・早退の回数が書かれ、裏面に日付と時間数が入っているか
- 事故前3か月の稼働日数が各月とも埋まっているか(空欄だと正しい日額が出せません)
- 付加給の欄に手当が入っているか(給与明細と一致するか)
- カレンダー欄の○×△が、実際の出勤状況と合っているか
- 事故前年分の源泉徴収票を添付したか
- 会社の記名・代表者印が入っているか
【自動計算】あなたの休業損害はいくらか
職業と、休業損害証明書に書かれた数字を入れると、裁判基準(弁護士基準)と自賠責基準を同時に計算します。通院日だけ休んだ場合は、保険会社がよく使う計算方法との差額も表示されます。
※この計算は目安です。実際の認定額は、傷病の内容、休業の必要性、過失割合、既払金の有無などによって変わります。自賠責保険の傷害部分には120万円の上限があり、治療費・慰謝料と合算して判断されます。
90日で割るか稼働日数で割るか|ここで金額が変わる
休業損害の計算で最も差が出るのが、基礎日額の分母をどう取るかです。保険会社の提示額が思ったより低いとき、原因はたいていここにあります。
組み合わせは4通りある
基礎日額の出し方が2通り、掛ける日数の数え方が2通りあるので、組み合わせは4通りになります。このうち筋が通っているのは2通りだけです。
| 基礎日額の分母 | 掛ける日数 | 評価 | |
|---|---|---|---|
| ① | 90日(休日を含む) | 休業期間の日数(休日を含む) | 続けて休んだ場合に妥当 |
| ② | 実稼働日数(休日を含まない) | 実際に休んだ日数(休日を含まない) | とびとびに休んだ場合に妥当 |
| ③ | 90日(休日を含む) | 実際に休んだ日数(休日を含まない) | 過小評価。保険会社の提示でよく見る |
| ④ | 実稼働日数(休日を含まない) | 休業期間の日数(休日を含む) | 過大評価 |
①と②は、分母と分子で休日の扱いをそろえています。③と④は片方だけ休日を含むためつじつまが合いません。とくに③は実務でよく目にする計算ですが、妥当な方法ではありません。
③がなぜ低く出るのか
とびとびに休んだ場合、休んだのは平日だけです。ところが日額を90日で割ると、その90日には土日祝が含まれています。分母だけが水増しされるので、日額が目減りします。週休2日なら、おおむね7分の5まで下がる計算です。
具体例で見る
月給28万円(本給25万円+手当3万円)の会社員が、通院のためにとびとびで18日欠勤したケースで比べます。
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| 計算方法 | 基礎日額 | 休業損害 | 差 |
|---|---|---|---|
| ③保険会社がよく使う | 84万円 ÷ 90日 = 9,333円 | 16万8,000円 | — |
| ②正しい計算 | 84万円 ÷ 62日 = 1万3,548円 | 24万3,871円 | +7万5,871円 |
提示された休業損害が正しいか確認しませんか
休業損害証明書と保険会社の計算書をお持ちいただければ、その場で計算方法を確認します。
それでも弁護士が入ると金額が変わるのは、①分母の取り方を正す②有給・遅刻早退・賞与減額の取りこぼしを拾う③主婦や自営業のように、そもそも計上されていない損害を立ち上げる——この3点によるものです。「基準を変える」のではなく「抜けを埋める」のが休業損害の実務だとお考えください。
基礎収入は「額面」で計算する|手取りではない
休業損害の基礎日額は、社会保険料・住民税・所得税を引く前の支給額(額面)で計算します。手取り額ではありません。ここを手取りで計算されると、1〜2割ほど低い金額になります。
「事故に遭わなければ手取り分しか受け取れなかったのだから、手取りで計算すべきではないか」と思われるかもしれません。しかし、次の3つを分けて考えると、額面で計算しなければ被害者が損をすることが分かります。
| 項目 | 額面で計算すべき理由 |
|---|---|
| 社会保険料 | 健康保険料や厚生年金保険料の額はあらかじめ決まっており、欠勤で給与が減っても自動的には下がりません。給与を受け取っていなくても、従業員負担分の支払からは免れません。手取りベースで賠償を受けると、そこからさらに社会保険料を払うのと同じことになります |
| 住民税 | 住民税は前年の所得を基礎に算出されます。今年欠勤して給与が減っても、当面は減額前の収入で計算された住民税を払い続けなければなりません |
| 所得税 | 控除すべきかどうか議論はありましたが、現在の実務は控除前の給与額を基礎とすることで固まっています |
自賠責基準の休業損害|1日6,100円の計算方法と上限
自賠責保険の休業損害は、原則として1日6,100円です。実際の収入がいくらであっても、まずこの定額が基準になります。相手方が任意保険に入っていない場合や、被害者請求で先に受け取りたい場合に使う計算です。
6,100円を超える金額を受け取るには
立証すれば、1日19,000円を限度に実額を受け取れます。自賠責保険の支払基準は次のように定めています。
(自賠責保険の支払基準・平成13年告示第1号 第2の2(3)。施行令3条の2の限度額は1日1万9,000円)
この「立証資料」が、まさに休業損害証明書と源泉徴収票です。日額の出し方は、事故前3か月の支給総額を90日で割るのが自賠責の基本的な積算方法になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原則の日額 | 6,100円(令和2年4月1日以後に発生した事故。それ以前の事故は5,700円) |
| 実額の上限 | 1日1万9,000円(自賠法施行令3条の2) |
| 対象日数 | 実休業日数が基準。傷害の態様・実治療日数などを勘案し、治療期間の範囲内で決まる |
| 家事従事者 | 収入の減少があったものとみなされるので、勤務先の証明は不要 |
| 有給休暇 | 使用した場合も対象になる |
傷害部分は120万円が上限
被害者の過失が7割以上だと2割減額される
自賠責保険には重過失減額という仕組みがあります。被害者側の過失が大きい場合に、支払額を一定割合で減らすものです。任意保険や裁判のように過失割合どおりに減らすのではなく、次のように段階的に決まっています。
| 被害者の過失割合 | 傷害に係るもの (休業損害・治療費・慰謝料) | 後遺障害・死亡に係るもの |
|---|---|---|
| 7割未満 | 減額なし | 減額なし |
| 7割以上8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
| 8割以上9割未満 | 2割減額 | 3割減額 |
| 9割以上10割未満 | 2割減額 | 5割減額 |
有給休暇を使った場合も休業損害は請求できる
有給休暇を使って休んだ日も、休業損害として請求できます。給料が減っていないので損害はないと思われがちですが、そうではありません。
理由は、本来なら旅行でも家族の用事でも自由に使えたはずの有給休暇を、事故のために消費してしまったからです。事故に遭わなければ、その日に有給を使う必要はありませんでした。使ってしまった有給という財産的な価値が失われている以上、そこに損害が認められます。
自賠責保険の支払基準にも明記されている
これは弁護士側の主張にとどまる話ではありません。国土交通省・金融庁の告示である自賠責保険の支払基準そのものに、次のとおり書かれています。
(自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準・平成13年告示第1号 第2の2)
ですから、保険会社に「有給を使ったので収入減はありませんね」と言われても、引き下がる必要はありません。計算方法も欠勤の場合とまったく同じで、欠勤と同じように扱って基礎日額を掛ければ足ります。
認められないことがある有給もある
遅刻・早退・半休の休業損害を取りこぼさない
丸1日休んでいなくても、通院のために遅刻・早退した時間は休業損害になります。実際、むちうちなどで仕事を続けながら通院する方は、丸1日の欠勤より遅刻・早退のほうが多くなります。
計算方法は時間単価で出す
休業損害 = 時間単価 × 遅刻・早退した合計時間
先ほどの例(3か月の支給総額84万円・実稼働日数62日・1日8時間)で、通院のため合計16時間の早退をした場合はこうなります。
時間単価 1万3,548円 ÷ 8時間 = 1,694円
1,694円 × 16時間 = 2万7,097円
証明書のどこに書いてもらうか
- 表面4番の内訳に、遅刻○回・早退○回と回数を記入
- 表面5番のカレンダーで、遅刻・早退した日を△で記入(欠勤の○とは区別する)
- 表面6番で、遅刻・早退によって減額された給与額を記入
- 裏面の「遅刻・早退」欄に、日付と時間数を1件ずつ記入
- 時間単位の有給を使った場合は、裏面の「時間有給休暇」欄に日付と時間数を記入
賞与が減ったら「賞与減額証明書」を出す
事故で欠勤した結果ボーナスが減った場合、その減額分も休業損害として請求できます。ただし休業損害証明書には賞与の欄がないため、別に「賞与減額証明書」を作ってもらう必要があります。
多くの会社は、賞与の支給額を決めるときに一定期間の出勤実績を基礎にしています。そのため事故で欠勤すると、月々の給与が減るだけでなく、次の賞与まで下がることがあります。給与の減額だけを請求して終わってしまうと、この分をまるごと取りこぼします。
賞与減額証明書に書いてもらう項目
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 賞与の支給年月日 | いつ支給された賞与か |
| 賞与の支給対象期間 | 期間と、その支給対象日数 |
| 欠勤期間 | 期間と、その欠勤日数 |
| 平常に勤務していた場合の支給額 | 金額と、その計算式 |
| 欠勤により減額した額 | この金額が休業損害になります。減額の計算式もあわせて記入 |
| 差引支給額 | 実際に支給された額 |
| 賞与減額の根拠 | 就業規則/賞与減額規則/労働組合との協定書など。該当する規定の写しを添付してもらう |
専業主婦・主夫は休業損害証明書が要らない
専業主婦・主夫(家事従事者)には、休業損害証明書は必要ありません。勤務先がなく、証明してもらう相手がいないからです。そして収入がなくても休業損害は請求できます。
これも自賠責保険の支払基準に、はっきり書かれています。
(自賠責保険の支払基準・平成13年告示第1号 第2の2(1)ただし書)
基礎収入は賃金センサスを使う
家事労働には値段がついていないので、賃金センサス(賃金構造基本統計調査)の女性労働者・学歴計・全年齢平均の賃金を基礎収入とするのが裁判実務の扱いです。大阪の裁判所でも、この考え方は変わりません。
| 基準年 | 年収額 | 日額(÷365日) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 令和6年 | 419万4,400円 | 約1万1,492円 | — |
| 令和7年 | 437万700円 | 約1万1,975円 | 2026年3月公表。前年比+17万6,300円 |
日数の数え方が争点になる
基礎収入より揉めるのは、何日分を認めるかです。専業主婦は仕事を「休んだ日」がはっきりしないため、次の2つの考え方の間で調整されます。
| 考え方 | 内容 |
|---|---|
| 通院期間で数える | 事故日から症状固定(または治癒)までの日数。上限の目安になる |
| 実通院日数で数える | 実際に病院へ行った日数。下限の目安になる |
| 逓減方式 | けが直後は100%、その後は70%、50%……と段階的に下げていく方法。実務で最もよく使われます |
けがの直後ほど家事ができず、回復するにつれてできることが増えていくのが実際です。ですから期間の経過に応じて割合を下げる逓減方式が、実態にいちばん近い認定になります。
自営業・個人事業主の場合
自営業の方も休業損害証明書は使いません。かわりに確定申告書等で収入を立証します。
用意する書類
- 確定申告書(事故前年分。可能なら3年分あると変動を説明しやすい)
- 収支内訳書(白色申告の場合)または青色申告決算書(青色申告の場合)
- 書面で申告した場合は、税務署の収受印が押された控え
- 電子申告の場合は、受付日時・受付番号が印字された確定申告書等。印字がなければ受付通知もあわせて
所得金額だけで計算しない
基礎収入は申告した所得金額が出発点ですが、そこに固定費を上乗せできます。休業していても払い続けなければならない費用があるからです。
(例:店舗・事務所の家賃、リース料、損害保険料、従業員の給与、減価償却費など)
休業損害はいつもらえるか|もらえないケース
支払いは示談成立時が原則
休業損害は、示談が成立したときに他の損害とまとめて支払われるのが原則です。治療が終わり、損害額の全体が確定してから精算するためです。事故から半年以上先になることも珍しくありません。
ただし、生活が立ちゆかなくなる場合には次の方法があります。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 内払い・先払い | 示談前に、任意保険会社が休業損害を毎月払ってくれることがある。自動では始まらないので、こちらから求める必要があります |
| 自賠責への被害者請求 | 自賠法16条により、被害者から自賠責保険へ直接請求できる。傷害部分は120万円が上限 |
| 労災保険の休業補償給付 | 通勤中・業務中の事故なら利用できる。休業4日目から、給付基礎日額の60%+特別支給金20% |
| 健康保険の傷病手当金 | 業務外の事故で、連続3日の待期の後、4日目から標準報酬日額の3分の2 |
労災の特別支給金20%は、賠償金から差し引かれない
通勤中・業務中の事故なら、労災保険と加害者への賠償を合わせて最大120%を受け取れる可能性があります。労災の休業補償には性質の違う2つの給付が含まれているためです。
| 労災からの給付 | 割合 | 賠償金との調整 |
|---|---|---|
| 休業補償給付 | 60% | 損害を填補する性質があるため、加害者への請求から差し引かれる |
| 休業特別支給金 | 20% | 差し引かれない。被災労働者の福祉の増進を図るための給付で、損害を填補する性質を持たないため |
したがって、加害者から休業損害の全額(100%)を受け取ったうえで、労災の特別支給金20%を重ねて受け取れます。通勤中・業務中の事故で労災を使っていない方は、この20%をそのまま取り逃していることになります。
休業損害が認められにくいケース
- 休業の必要性が説明できない——法的な必要性の判断は、被害者が思っているより厳しいのが実情です。軽微な打撲で長期間休んだ場合など、診断書の内容と休業日数が釣り合わないと否定されます
- 通院していない期間の休業——病院に行っていない期間の休業は、必要性を認めてもらいにくくなります
- 症状固定後の休業——症状固定後は休業損害ではなく、後遺障害の逸失利益として扱われます
- 治療費打ち切り後の休業——保険会社が治療費を打ち切ると、休業損害も止まるのが通常です
- 休んでも給与が全額支払われた——有給を使った場合を除き、収入が減っていなければ休業損害は発生しません
休業損害に税金はかかるか
休業損害は非課税です。受け取っても所得税はかからず、確定申告も年末調整での申告も必要ありません。
根拠は所得税法9条1項18号と同法施行令30条です。国税庁も、「負傷して働けないことによる収益の補償をする損害賠償金」は非課税になると明示しています。慰謝料も治療費も同じ扱いです。
自営業の方だけ、課税される部分がある
この記事では自営業の基礎収入に家賃・リース料・損害保険料などの固定費を上乗せできると説明しました。この上乗せ分は、まさに必要経費を補填するための金額です。受け取った休業損害のうち固定費に対応する部分は、事業所得の収入金額に算入して申告する必要があります。
逆に言えば、固定費を上乗せして請求した以上、その分は経費として落としつつ収入にも立てるという処理になります。損得の話ではなく、申告漏れにならないよう整理しておく必要がある、という意味です。金額が大きい場合は、税理士にも確認してください。
難波みなみ法律事務所の解決事例
専業主婦の休業損害が計上されていなかったケース|提示20万円が80万円に
| ご相談者 | 30代・専業主婦 |
|---|---|
| 傷病 | 頸椎捻挫(後遺障害は非該当) |
| 保険会社の提示額 | 20万円 |
| 解決額 | 80万円 |
| 期間 | 約3か月 |
この事案で何が起きていたか
保険会社の提示内容は、自賠責基準の通院慰謝料だけでした。専業主婦の休業損害は、はじめから計上されていなかったのです。後遺障害も非該当だったため、このまま示談していれば20万円で終わっていました。主婦の休業損害を具体的に主張したことで、4倍の解決額になっています。
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休業損害証明書のよくある質問
休業損害証明書とは何ですか?
事故で仕事を休んだ事実と、事故前の収入を勤務先が証明する書類です。相手方の保険会社に休業損害を請求するときの基本資料になります。用紙は保険会社から送られてきますので、勤務先の人事・総務・経理の担当者に記入してもらい、事故前年分の源泉徴収票と一緒に提出します。被害者本人が書く書類ではありません。
有給休暇を使った場合も休業損害はもらえますか?
もらえます。本来なら他の目的に使えたはずの有給休暇を事故のために消費したこと自体が損害だと考えられているためです。自賠責保険の支払基準にも「有給休暇を使用した場合」と明記されています。計算方法は欠勤の場合と同じです。ただし傷病有給休暇のように使いみちが限定された休暇は、認められないことがあります。
休業損害証明書を書いてもらうと、会社に事故のことがばれますか?
会社には必ず伝わります。この書類は勤務先が作成するものなので、依頼せずに取得することはできないからです。もっとも、記入してもらうのは休んだ日と給与額だけで、事故の詳しい状況や過失割合、賠償金の額を会社に伝える必要はありません。会社に知られたくないという理由で請求しないと、受け取れるはずのお金をそのまま放棄することになります。プライベートの事故であっても、就業規則上の不利益につながることは通常ありません。
1日だけ休んだ場合も休業損害証明書は必要ですか?
必要です。休業が1日でも収入は減っており、証明書がなければ保険会社は休業の事実自体を認めないためです。金額が小さいからと省略すると、その1日分だけでなく、遅刻・早退した時間分もまとめて請求から抜け落ちてしまいます。短期間でも必ず作成してもらってください。
専業主婦でも休業損害はもらえますか?
もらえます。自賠責保険の支払基準は、家事従事者について「休業による収入の減少があったものとみなす」と定めており、裁判実務でも家事労働は金銭的に評価されるためです。基礎収入には賃金センサスの女性労働者全年齢平均(令和7年で437万700円、日額約1万1,975円)を用います。勤務先がないので、休業損害証明書は必要ありません。
休業損害はいつもらえますか?振込が遅いのですが。
示談が成立したときに、他の損害とまとめて支払われるのが原則です。治療が終わって損害の全体が確定してから精算するためで、事故から半年以上先になることもあります。生活に支障が出る場合は、任意保険会社に内払いを求める、自賠責保険に被害者請求をする(傷害部分は120万円が上限)といった方法があります。振込が遅いときは、証明書の記載不備か源泉徴収票の未提出が原因のことが多いので、まず担当者に確認してください。
傷病手当金と休業損害は、どちらが得ですか?
最終的な受取額は休業損害のほうが大きくなります。傷病手当金は標準報酬日額の3分の2ですが、休業損害は原則として減収の全額が対象になるためです。ただし傷病手当金は毎月支給されるので、示談まで待てない場合の生活資金としては有効です。同じ期間について二重取りはできず、後から調整が入りますので、どちらを先に使うかは弁護士に確認してから決めることをおすすめします。
休業損害に税金はかかりますか?
かかりません。所得税法9条1項18号により、心身に加えられた損害について支払を受ける損害賠償金は非課税とされているためです。確定申告も年末調整での申告も不要です。ただし自営業の方は、休業損害のうち家賃やリース料などの必要経費を補填する部分について、事業所得の収入金額に算入する必要があります。
労災保険を使うと、加害者からもらえる休業損害は減りますか?
休業補償給付(60%)の分は減りますが、休業特別支給金(20%)の分は減りません。最高裁は、特別支給金は損害を填補する性質を有するとはいえず損害額から控除できないと判示しています(最高裁平成8年2月23日判決)。そのため通勤中・業務中の事故では、加害者からの賠償と労災を合わせて最大120%を受け取れる可能性があります。労災を使わないままだと、この20%を取り逃すことになります。
休業損害でお困りなら、難波みなみ法律事務所へ
大阪市中央区なんば・心斎橋。年間500件以上のご相談をお受けしています。交通事故のご相談は初回無料、弁護士費用特約もご利用いただけます。
監修:弁護士 南 宜孝(大阪弁護士会 登録番号49544/中小企業診断士)。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際の賠償額は事故態様・傷病内容・過失割合等により変動します。自賠責保険の支払基準は令和2年4月1日以後に発生した事故に適用されるものを記載しています。



