保険会社の示談提示に納得できないとき、最後の選択肢が裁判(訴訟)です。裁判というと「時間もお金もかかって大変」という印象があるかもしれません。しかし交通事故(被害者側)では、訴訟にすると示談の提示より賠償額が増えることが多いのが実務です。裁判基準での認定、弁護士費用相当額の上乗せ、遅延損害金の3つが働くためです。この記事では、訴訟を検討すべき場面、手続きの流れ、期間と費用、当事者尋問の負担、そして「訴訟で賠償が増える仕組み」を、被害者側の視点で解説します。
Q. 裁判をすると、賠償は増えるのですか?
A. 増えることが多いです。訴訟では裁判基準(赤い本・緑本の水準)で認定されやすく、加えて弁護士費用相当額(認容額の約1割)と、事故日からの遅延損害金が上乗せされます。
Q. 裁判はどれくらいの期間・費用がかかりますか?
A. 期間は平均で約1年が目安です。費用は訴え提起の印紙代などの実費が中心で、当事務所は交通事故(被害者側)を着手金無料でお受けしています。
Q. なぜ弁護士に相談すべきなのですか?
A. 訴訟にする価値があるか(増える見込みと時間・負担の釣り合い)の見極めと、立証の組み立てが結果を大きく左右するからです。
訴訟にすると賠償が増えやすい3つの理由
示談交渉が決裂しても、あきらめる必要はありません。訴訟には、示談にはない次の3つの上乗せがあります。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 裁判基準での認定 | 裁判所は、慰謝料などを弁護士基準(赤い本・大阪基準=緑本の水準)で判断します。保険会社が示談で提示する任意保険基準の額より高くなるのが一般的です |
| 弁護士費用相当額の上乗せ | 不法行為に基づく賠償では、過失相殺をした後の認容額の約1割が弁護士費用相当の損害として認められます(最高裁昭和44年2月27日)。示談では通常もらえない、訴訟特有の上乗せです |
| 遅延損害金 | 賠償金には事故の日から年3%(2020年4月1日より前の事故は年5%)の遅延損害金がつきます。訴訟は解決まで時間がかかる分、判決時まで積み上がります |
この3点セットにより、時間がかかるという訴訟のデメリットは、金額面では一定程度カバーされます。相手方が「これ以上は出せない」と譲らない場合でも、裁判所の判断を求める価値は十分にあります。
過失や素因の主張に、正面から反論できる
示談交渉では、相手方の保険会社が「被害者にも過失がある」「もともとの持病(素因)で損害が拡大した」と主張して減額を求めてくることがあります。交渉の場では水掛け論になりがちですが、訴訟なら、ドライブレコーダーや実況見分調書、診療記録といった証拠に基づいて、裁判所に判断してもらえます。とくに、被害者側の過失(過失相殺)や素因減額といった減額の主張は、それを求める相手方(加害者側)が立証すべき事柄であり、根拠が薄ければ裁判所は認めません。減額の当否を客観的に争える点も、訴訟の大きな意味です。
こんなときは訴訟を検討します
すべての事故で訴訟が必要なわけではありません。次のような場面では、訴訟を検討する価値が大きくなります。
- 過失割合で争いがある(相手方が車側に有利な割合に固執している)
- 後遺障害の等級に納得できない(非該当・低い等級で、賠償額の差が大きい)
- 慰謝料・逸失利益の提示額と適正額の開きが大きい
- 重い後遺障害や死亡事故で、賠償額そのものが大きい
- 保険会社が低額提示のまま譲らない
逆に、争点が小さく増える見込みが乏しい場合は、時間・負担を考えて示談で妥結した方がよいこともあります。ここは弁護士と一緒に損得を見極める場面です。
示談・ADR・調停・訴訟の違い
もめたときの解決手段は、訴訟だけではありません。費用や時間、増額の見込みが違うので、事案に合った方法を選びます。
| 手続き | 特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 示談交渉 | 当事者どうしの話し合い。早く柔軟に解決できるが、任意保険基準の低い提示にとどまりやすい | 争点が小さく、提示額に納得できるとき |
| ADR(交通事故紛争処理センター) | 中立の機関が無料で示談をあっせん。訴訟より手軽。あっせん・審査の結果に保険会社が原則従う | 過失や金額に軽い争いがあり、訴訟までは望まないとき |
| 民事調停 | 裁判所で調停委員を交えて話し合う。合意できなければ不成立 | 話し合いの余地は残しつつ、第三者に入ってほしいとき |
| 訴訟(裁判) | 裁判基準で認定され、弁護士費用相当額と遅延損害金が上乗せされる。時間はかかる | 増額の見込みが大きく、相手が譲らないとき |
どれを選ぶかは、増える見込みと時間・負担の釣り合いで決まります。訴訟が最善とは限らず、ADRや調停が適することもあります。
交通事故の裁判(訴訟)の流れ
訴訟は次のように進みます。多くは判決の前に、裁判所からの和解の打診(和解勧試)で解決します。
- 訴状の提出:管轄の裁判所に訴状を出して提訴します。
- 第1回口頭弁論・答弁書:相手方(被告)が答弁書で反論します。
- 争点整理:弁論準備手続で、双方が主張と証拠を出し合い、争点を絞ります。ここが最も時間を使う段階です。
- 集中証拠調べ(当事者尋問):必要な場合、原告・被告らが法廷で尋問を受けます。
- 和解勧試:裁判所が和解案を示すことが多く、双方が受け入れれば和解で終了します。
- 判決:和解しなければ判決が出ます。不服があれば控訴できます。
どこの裁判所に起こせるか(管轄)
交通事故の損害賠償は、加害者の住所地だけでなく、事故が起きた場所や、被害者(原告)の住所地を管轄する裁判所にも起こせるのが一般的です(義務履行地などによる)。遠方の相手でも、お住まいの近くの裁判所で進められる可能性があります。請求額が140万円以下なら簡易裁判所、それを超えると地方裁判所が窓口です。どこに起こすのが有利かも含めて検討します。
裁判にかかる期間の目安
交通事故の損害賠償訴訟の審理期間は、平均で約1年が目安です(最高裁判所の公表資料)。約6割が1年以内に解決し、争点が少なければ半年程度で終わることもあります。一方、過失割合や後遺障害を激しく争う事案、鑑定や複数回の尋問が必要な事案では、2年以上かかることもあります。
裁判にかかる費用
訴訟の費用は、大きく「裁判所に納める実費」と「弁護士費用」に分かれます。
| 費目 | 内容 |
|---|---|
| 訴え提起の手数料(印紙代) | 請求する金額に応じて増える収入印紙。訴状に貼付します |
| 郵便切手(予納郵券) | 裁判所からの書類送付に使う実費 |
| 鑑定・文書取得などの実費 | 必要に応じて。医療記録の取得費用など |
| 弁護士費用 | 当事務所は交通事故(被害者側)を着手金無料でお受けしています。報酬は解決後の回収額等に応じた成功報酬です |
前述のとおり、認容額の約1割が弁護士費用相当額として相手方への賠償に上乗せされるため、費用倒れのリスクは実務上抑えられます。個別の見込みは相談時にお伝えします。
当事者尋問とは|負担と対策
争点によっては、法廷で当事者尋問(本人が質問を受ける手続き)が行われます。「うまく答えられるか不安」という方が多いですが、事前に弁護士と入念に打ち合わせをして臨みます。聞かれるのは体験した事実であり、記憶のとおり答えれば足ります。すべての訴訟で尋問があるわけではなく、書面と証拠で足りる事案では行われません。
判決と和解|どちらで終わることが多いか
交通事故の訴訟は、判決まで行かず、途中の和解で終わることが多いです。和解は、双方が譲歩して早期に解決できる、控訴されて長期化するリスクを避けられる、といった利点があります。もっとも、和解案が適正でなければ受け入れる必要はなく、判決を求めることもできます。和解で妥結すべきか判決を求めるべきかも、見込みを踏まえて判断します。
人身傷害保険がある場合の訴訟
ご自身の人身傷害保険を使うときは、使い方と訴訟の順序で手取りが変わります。裁判基準で計算した損害と人身傷害保険金の差額を相手方へ請求できるとする考え方(裁判基準差額説)が最高裁で認められており(最高裁平成24年2月20日)、過失がある事案では特に有利に働きます。詳しくは関連記事で解説しています。
訴訟のデメリットと注意点
- 時間がかかる(平均約1年。ただし遅延損害金は加算されます)
- 必ず全額が認められるとは限らない(主張・立証の内容によります)
- 当事者尋問の負担がある場合があります
- 控訴の可能性(相手方が控訴すると、さらに時間がかかることがあります)
これらを踏まえても、増える見込みが大きい事案では訴訟の価値は高くなります。デメリットと増額見込みを並べて検討することが大切です。
訴訟の前にしておきたいこと
- 人身事故として届け出て、実況見分調書を残す。事故態様の重要な証拠になります。
- ドライブレコーダー・目撃者・現場写真を確保する。過失割合の立証で決め手になります。
- 通院を継続し、症状固定まで治療を受ける。後遺障害の立証につながります。
- 示談提示の内容を保管する。どこに争いがあるかを整理する出発点になります。
弁護士に相談するメリット
訴訟は「増える見込みと、時間・負担の釣り合い」を見極めたうえで選ぶものです。適正な損害額を裁判基準で組み立て、過失割合や後遺障害を立証し、和解か判決かを判断する——この一連の作業で結果が大きく変わります。弁護士費用特約を使えば自己負担なく依頼できる場合もあります。ご自身や家族の保険に付いていないか確認してみてください。
よくある質問
裁判をすると、示談より本当に賠償は増えますか?
増えることが多いです。訴訟では裁判基準(赤い本・緑本の水準)で認定されやすく、認容額の約1割の弁護士費用相当額と、事故日からの遅延損害金が上乗せされます。ただし事案により結果は変わるため、見込みを踏まえて判断します。
裁判にはどのくらいの期間がかかりますか?
交通事故の損害賠償訴訟は平均で約1年が目安です(最高裁判所の公表資料)。争点が少なければ半年程度、過失や後遺障害を激しく争うと2年以上かかることもあります。
費用倒れになりませんか?
当事務所は交通事故(被害者側)を着手金無料でお受けしています。加えて認容額の約1割が弁護士費用相当額として相手方への賠償に上乗せされるため、費用倒れのリスクは実務上抑えられます。個別の見込みは相談時にお伝えします。
必ず法廷に出て話さないといけませんか?
すべての訴訟で尋問があるわけではありません。書面と証拠で足りる事案では当事者尋問は行われません。必要な場合も、事前に弁護士と打ち合わせて臨み、体験した事実を記憶のとおり答えれば足ります。
裁判は判決まで行くのですか?
多くは判決の前に、裁判所の和解勧試による和解で終わります。和解案が適正でなければ受け入れず、判決を求めることもできます。
相手が判決に不服なら、どうなりますか?
相手方は控訴できます。控訴されると解決までさらに時間がかかることがあります。控訴の可能性も含めて、和解か判決かを検討します。
示談してしまった後でも裁判はできますか?
いったん示談が成立すると、原則としてその内容に拘束され、上乗せの請求は困難になります。だからこそ、提示に納得できないうちにサインせず、先に相談することが大切です。
時効はいつまでですか?
人身の損害賠償請求権は、原則として症状固定など損害と加害者を知った時から5年です。物損は3年です。時効が近い場合は早めにご相談ください。
訴訟にすべきかどうかは、増える見込みと時間・負担の釣り合いで決まります。難波みなみ法律事務所は交通事故(被害者側)を着手金無料でお受けし、元裁判官の弁護士が損害算定や立証、和解・判決の見立てをお伝えします。初回相談30分無料、電話・メール・LINEで対応します。
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監修:難波みなみ法律事務所 代表弁護士 南 宜孝(大阪弁護士会)。大阪市中央区西心斎橋2-4-3 難波御堂筋ビル403/電話 06-6786-8103(受付9:00〜22:00)。初回相談30分無料。






