交通事故のあと、「どのくらいの頻度で通院すればいいのか」「いつまで通えるのか」「忙しくて通院を減らしても大丈夫か」と迷う方は多いです。実は、通院の仕方は、最終的に受け取る賠償額を大きく左右します。通院の間隔が空いたり自己判断で中断したりすると、慰謝料が減るだけでなく、治療費の打ち切りや後遺障害の非該当につながることがあるからです。この記事では、適正な通院の頻度・期間、通院を減らす危険、整形外科と整骨院の通い分け、通院交通費の請求まで、被害者側の視点で「損をしない通い方」を解説します。慰謝料の金額計算やむちうちの詳細など、個別の論点は関連記事へリンクします。
Q. 通院はどのくらいの頻度で行けばいいですか?
A. 医師の指示に従うのが原則です。目安として週2〜3回程度の通院が一つの基準になりますが、間隔が空くと不利になりやすいので、自己判断で減らさないことが大切です。
Q. 忙しいので通院を減らしても大丈夫ですか?
A. おすすめできません。通院が低頻度・断続的だと、慰謝料が実通院日数を基準に減らされたり、治療の必要性を疑われて打ち切りを招いたりします。
Q. 通院はいつまで続けられますか?
A. 症状固定(これ以上よくならない状態)までです。時期は主治医の判断が出発点で、保険会社が一方的に決めるものではありません。
通院の頻度|間隔が空くと生じる3つの不利益
通院の頻度は、単なる「治療のペース」ではなく、賠償の場面で次の3つに直結します。
| 不利益 | 内容 |
|---|---|
| 慰謝料が減る | 入通院慰謝料は原則として治療期間で計算されますが、通院が長期で低頻度だと、実際に通院した日数を基準に減額して評価されやすくなります |
| 治療費を打ち切られる | 通院間隔が空くと「もう治療の必要がない」と見られ、保険会社が治療費の支払いを打ち切る口実になります |
| 後遺障害が認定されにくい | 症状の連続性を示す通院実績が乏しいと、後遺障害等級の認定で不利になります |
つまり、通院の間隔を空けることは、そのまま受け取る賠償を減らすことにつながりかねません。
適正な通院ペースの考え方
適正な通院の頻度は、医師の指示に従うのが大原則です。そのうえで、実務では週2〜3回程度の通院が一つの目安とされることがあります。ただし、これはあくまで目安で、ケガの内容や回復状況によって変わります。回復しているのに漫然と長期間通い続ける「過剰通院」は、逆に治療の必要性を否定される原因になります。必要な治療を、必要な頻度で、症状固定まで継続する——これが基本です。
通院はいつまで続けられるか
通院を続けられるのは、原則として症状固定までです。症状固定とは、これ以上治療を続けても症状がよくならない状態のことで、その時期は主治医の医学的判断が出発点になります。保険会社から「そろそろ症状固定では」と打診されても、必要な治療が続いているなら、それに応じる義務はありません。もっとも、治療費が賠償されるのは症状固定までに行われた「必要かつ相当な」範囲の治療に限られます。だからこそ、医師の指示のもとで必要な通院を継続することが大切です。症状固定の時期や打ち切りへの対処は、関連記事で詳しく解説しています。
通院を自己判断で減らす・中断する危険
「痛みが少し引いたから」「通うのが大変だから」と、自己判断で通院を減らしたり中断したりするのは危険です。治療の中断期間があると、事故とケガの因果関係を争われます。中断後に症状が悪化しても「事故とは別の原因では」と反論され、賠償の対象から外されるおそれがあります。通院をやめる・減らすかどうかは、必ず主治医と相談して決めてください。
整形外科と整骨院の通い分け
むちうちなどでは整骨院(接骨院)に通う方も多いですが、注意点があります。医師による受診ができるのは整形外科で、診断書の作成や後遺障害の判断は医師にしかできません。整骨院の施術費を賠償に含めるには、整形外科(医師)の受診を継続したうえで、医師の同意・指示のもとで整骨院を併用するのが安全です。整形外科への通院が途絶えて整骨院だけになると、施術費が否認されたり、後遺障害の認定がされにくくなる傾向もあります。整骨院に通う際の詳しい注意点は、関連記事をご覧ください。
通院先は自分で選べる・転院もできる
どの病院に通うかは、被害者自身が自由に選べます。保険会社から特定の病院を勧められても、それに従う義務はありません。通いやすさや専門性で選んで問題ありません。治療の途中で転院することも可能ですが、転院するとそれまでの経過が新しい医師に引き継がれにくくなるため、紹介状(診療情報提供書)を書いてもらい、症状の経過が途切れないようにしてください。むやみな転院の繰り返しは、治療の一貫性を欠くとみられることがあるので、必要な範囲にとどめます。
通院交通費は請求できる
通院にかかった交通費は、原則として全額が損害として認められます。証明の仕方は交通手段で変わります。
| 交通手段 | 証明の仕方・ポイント |
|---|---|
| 電車・バス(公共交通機関) | 通院先・通院日・利用区間・往復運賃を書いた「通院交通費明細書」があれば、領収証がなくても一般に認められます |
| 自家用車 | 距離に応じたガソリン代(実務では1kmあたり15円程度が目安)+駐車場代・高速代。走行距離を記録しておきます |
| タクシー | ケガの程度などから利用の相当性が必要。明細書だけでは足りず、領収証で利用日時・金額を証明します |
いずれも、実際に通院した日を明らかにする必要があるため、通院日と交通費はこまめに記録・保管してください。将来も通院が必要な場合は、将来の通院交通費が認められることもあります。
通院に付き添いが必要なとき(通院付添費)
ケガの内容や被害者の状況から、社会通念上、通院に付き添いが必要と認められる場合には、通院付添費を請求できます。たとえば、足を骨折して歩行できない、高次脳機能障害がある、幼児・高齢者で一人では通院できない、といったケースです。近親者が付き添った場合も、日額で付添費が認められます。付き添った人が通院のために支出した交通費も損害の対象です。付添いが必要だったことを示すため、診断書やケガの状況を記録しておいてください。
通院日数と慰謝料の関係
入通院慰謝料は、原則として治療にかかった期間(入通院期間)をもとに計算します。もっとも、通院が長期にわたるのに回数が少ない場合には、症状や治療内容・通院頻度をふまえ、実際に通院した日数の3倍程度を慰謝料算定上の通院期間の目安として修正することがあります。だからこそ、必要な通院をきちんと継続することが、慰謝料を守ることにつながります。慰謝料の具体的な金額・計算方法や、むちうちの「実通院日数」の扱いは、関連記事で詳しく解説しています。
通院を続けるのがつらいとき
「仕事や家事が忙しい」「病院が遠い」といった理由で通院が負担になることもあります。その場合でも、通院そのものをやめるのではなく、負担を減らしながら継続する方法を考えます。自宅や職場の近くの整形外科へ紹介状をもらって転院する、リハビリの曜日や時間を通いやすく調整してもらう、といった工夫です。通院の負担を理由に自己判断で間隔を空けると、前述のとおり慰謝料の減額や打ち切りにつながります。続け方に迷ったら、通院をやめる前に弁護士に相談してください。
通院のときにしておくこと
- 医師に症状を正確に伝え、カルテに残してもらう。痛む部位は最初にすべて伝える。
- 指示された頻度で、症状固定まで通院を継続する。自己判断で中断しない。
- 通院日・交通手段・交通費を記録し、明細書や領収証を保管する。
- 整形外科の受診を続ける(整骨院は医師の同意のうえで併用)。
治療費を打ち切ると言われたら
実務では、むちうちなどの場合、比較的軽い事故で3か月ごろ、そうでなくても3〜6か月ごろに、保険会社から治療費の一括対応の打ち切りを打診されることが多いです。しかし、これはあくまで保険会社側の都合による目安で、必要な治療が続いているなら通院はやめないでください。健康保険への切り替えや被害者請求での立て替えなど、通院を継続する方法があります。打ち切りを打診されたときは、主治医の判断を踏まえて保険会社と交渉することになります。打ち切りへの具体的な対処や、症状固定との違いは関連記事で解説しています。判断に迷うときは、打ち切りに応じる前にご相談ください。
弁護士に相談するメリット
通院の仕方は、慰謝料・治療費・後遺障害のすべてに影響します。適正な通院の続け方、打ち切りへの対応、通院交通費の請求までを整えるだけで、最終的な賠償額が変わることがあります。弁護士費用特約を使えば自己負担なく依頼できる場合もあります。ご自身や家族の保険に付いていないか確認してみてください。
よくある質問
通院は週に何回くらい行けばいいですか?
医師の指示に従うのが原則です。目安として週2〜3回程度とされることがありますが、ケガの内容や回復状況で変わります。間隔が空くと慰謝料の減額や打ち切りにつながるため、自己判断で減らさないことが大切です。
忙しくて通院を減らすと、どうなりますか?
慰謝料が実通院日数を基準に減らされたり、治療の必要性を疑われて治療費を打ち切られたりします。後遺障害の認定でも症状の連続性を示せず不利になります。減らす場合も必ず主治医と相談してください。
通院はいつまで続けられますか?
原則として症状固定(これ以上よくならない状態)までです。時期は主治医の判断が出発点で、保険会社が一方的に決めるものではありません。必要な治療が続いていれば通院を続けられます。
途中で通院をやめてしまいました。もう請求できませんか?
中断期間があると事故との因果関係を争われやすくなりますが、直ちに請求できなくなるわけではありません。中断の理由や症状の経過によります。早めに弁護士にご相談ください。
整骨院だけに通ってもいいですか?
おすすめできません。診断書の作成や後遺障害の判断は医師(整形外科)にしかできません。整形外科の受診を継続し、整骨院は医師の同意・指示のうえで併用すると、施術費が認められやすくなります。
通院の交通費は請求できますか?
できます。原則として全額が損害です。電車・バスは通院交通費明細書で足り、自家用車は距離に応じたガソリン代(1kmあたり15円程度が目安)と駐車場代等、タクシーは相当性の証明と領収証が必要です。通院日と交通費を記録してください。
通院日数が多いほど慰謝料は増えますか?
慰謝料は原則として治療期間で計算し、通院日数がそのまま比例するわけではありません。ただし通院が長期・低頻度だと実通院日数を基準に減額されることがあります。必要な通院を継続することが大切です。
保険会社に治療費を打ち切ると言われました。
必要な治療は続けられます。健康保険に切り替えて通院を続ける、被害者請求で立て替えるなどの方法があります。症状固定の時期は主治医の判断が出発点です。打ち切りに応じる前にご相談ください。
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監修:難波みなみ法律事務所 代表弁護士 南 宜孝(大阪弁護士会)。大阪市中央区西心斎橋2-4-3 難波御堂筋ビル403/電話 06-6786-8103(受付9:00〜22:00)。初回相談30分無料。






