コラム
更新日: 2026.08.23

交通事故の症状固定はいつ?誰が決めるかと打ち切りとの違い

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。大阪弁護士会所属(登録番号49544)、大阪中小企業診断士会所属(登録番号 420113)、幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

保険会社から「そろそろ症状固定ですね」「今月末で治療費の支払いを終了します」と言われた——この記事を読んでいる方の多くは、いまその場面にいらっしゃると思います。

まず、はっきりさせておきたいことがあります。保険会社が治療費を打ち切った日は、症状固定日ではありません。この2つは別のものです。しかし実務では、打ち切られた日がそのまま症状固定日として扱われてしまうことが少なくありません。

症状固定日は、入通院慰謝料の対象期間、休業損害の終期、逸失利益の計算の起点、後遺障害を申請できる時期、そして時効の起算点——このすべてを決める日です。ここがずれると、賠償額の全体がずれます。

結論から

Q. 症状固定は、誰が決めるのですか?

出発点は主治医の判断です。後遺障害診断書の症状固定日欄に記載された日とするのが原則とされています。ただし、最終的には法的な判断です。裁判では、医師の判断の合理性を検討したうえで、記載された日とは異なる日を症状固定日と認定した裁判例が相当数あります。診断書に書かれた日付が、動かせないわけではありません。

Q. 保険会社に治療費を打ち切ると言われました。症状固定ということですか?

違います。治療費の打ち切りは、保険会社が病院への支払い(一括対応)をやめるという通告にすぎません。治療の必要性・相当性を判断するのは、第一に医師であって保険会社ではありません。医師が治療の継続が必要と判断するなら、治療は続けるべきものです。

Q. まだ痛みが残っています。それでも症状固定になるのですか?

なります。症状固定とは「治った」という意味ではありません。症状が残っているかどうかにかかわらず、これ以上治療を続けても改善が期待できない状態になれば症状固定です。通院すると楽になるけれど数日で元に戻る、という状態も、症状固定と判断される典型例とされています。

症状固定とは何か

症状固定とは、事故後、医学上相当と認められる期間にわたって治療を続けたにもかかわらず、これ以上治療を継続しても症状の改善が認められない状態になったことをいいます。治療を続けてもそれ以上よくならない、一進一退の状態に達した時点です。

「治った」=「元どおりになった」ではありません

ここが、もっとも誤解の多いところです。

労災保険では、傷病が「治ったとき」を「治ゆ」(症状固定)と呼びます。厚生労働省は、その意味を次のように説明しています。

身体の諸器官・組織が健康時の状態に完全に回復した状態のみをいうものではなく、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態をいう。
したがって、「傷病の症状が、投薬・理学療法等の治療により一時的な回復がみられるにすぎない場合」など症状が残存している場合であっても、医療効果が期待できないと判断される場合には、「治ゆ」(症状固定)として、療養(補償)等給付を支給しないこととなっている。

つまり、症状が残っていても症状固定になります。交通事故でケガを負わされた以上、治るまで治療費を払ってもらえてよさそうなものですが、賠償の実務はそうなっていません。症状が残っているかどうかにかかわらず、これ以上治療の効果が見られない状態になれば、症状固定と判断されます。

厚生労働省が示している「症状固定」の具体例

抽象的な定義だけではイメージしにくいところですが、厚生労働省の資料には、どういう状態が症状固定にあたるのかの具体例が5つ挙げられています。

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場面症状固定とされる状態
切創・骨折創面が癒着した場合、または骨折で骨癒合した場合であって、たとえ疼痛などの症状が残っていても、その症状が安定した状態になり、その後の療養を継続しても改善が期待できなくなったとき
リハビリ骨癒合後の機能回復療法として理学療法を行っている場合に、治療施行時には運動障害がある程度改善されるが、数日経過すると元の状態に戻る、という経過が一定期間にわたってみられるとき
外傷性てんかん頭部外傷が治った後にてんかんが残る場合に、治療で発作を完全に抑制できなくても、症状が安定し、それ以上の抑制が期待できなくなったとき
片麻痺外傷性頭蓋内出血の治療後に片麻痺が残っても、症状が安定し、その後の療養を継続しても改善が期待できなくなったとき
腰の捻挫腰部捻挫による腰痛症の急性症状は消退したが、疼痛などの慢性症状が持続している場合であっても、症状が安定し、その後の療養を継続しても改善が期待できなくなったとき
色を付けた2つが、交通事故でもっとも多い場面です。
「通院した日はいくらか楽になるけれど、数日経つとまた元に戻る」「急性期の激しい痛みは治まったが、鈍い痛みがずっと続いている」——この状態は、治療の途中ではなく、症状固定と判断される状態です。
ご本人からすれば「通院すれば楽になるのだから、まだ効いているはずだ」と感じられます。しかし、賠償の場面で問われるのは「一時的に楽になるか」ではなく「治療によって症状そのものが改善していくか」です。

症状固定は、損害を2つに切り分けるための線引きです

では、なぜこんな概念があるのでしょうか。

症状固定は、損害を「傷害に関する損害」と「後遺障害に関する損害」に分けて算定するための、法的な区切りだからです。症状固定日を境に、請求できる項目が入れ替わります。

事故日 症状固定日 傷害に関する損害 治療費・通院交通費 入通院慰謝料・休業損害 後遺障害に関する損害 後遺障害慰謝料 後遺障害逸失利益 ← ここまでが「治療期間」 実務では「将来」と呼ばれます → 消滅時効は、症状固定日から進行します

症状固定日を境に、請求できる損害の中身が入れ替わります

症状固定までが休業損害であり、症状固定後は後遺障害による逸失利益として算出されます。そのため、症状固定日を確定させることは、損害賠償請求のうえで欠かせない作業になります。

症状固定日が動かす5つの数字

症状固定日は、ただの区切りではありません。次の5つを、すべて同時に決めてしまう日です。

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項目症状固定日との関係
入通院慰謝料事故日から症状固定日までの期間が対象。期間が短くなればそのまま減ります
休業損害症状固定日が終期。それ以降は休業損害を請求できません
後遺障害逸失利益症状固定日が計算の起点。中間利息を控除する起算点も症状固定時とするのが裁判例の大勢です
後遺障害の申請症状固定を迎えないと後遺障害診断書を書いてもらえません。逆に、早すぎる症状固定は、症状が固まる前の申請になります
消滅時効症状固定日から進行します。後遺障害分だけでなく、全損害について症状固定時から進行すると理解されています

1か月早まると、慰謝料はいくら変わるのか

抽象的な話ではわかりにくいので、実際の金額で見てみます。大阪の裁判実務で用いられる緑本の入通院慰謝料の表です。

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通院期間緑本(通常)前月との差むちうち等
(通常の3分の2)
前月との差
通院5か月108万円72万円
通院6か月120万円+12万円80万円+8万円
通院7か月128万円+8万円85万円+5万円

症状固定日が1か月ずれるだけで、入通院慰謝料は5万円から12万円動きます。これに休業損害の1か月分が加わり、さらに後遺障害の等級が変わればその影響はもっと大きくなります。

慰謝料の計算方法そのものについては、交通事故の慰謝料|計算方法と3つの基準で、自動計算ツールつきで説明しています。

症状固定日は、誰が決めるのか

この質問に対する答えは、二段構えになります。

出発点は、主治医の判断です

症状固定の判断は、基本的には医学的な判断です。そのため、実務では、医師が作成した後遺障害診断書の症状固定日欄に記載された日を症状固定日とするのが原則とされています。

しかし、最終的には法的な判断です

ところが、話はそこで終わりません。症状固定は、傷害と後遺障害に分けて損害を算定するための法的な概念でもあります。そのため、診断書に記載された日とは異なる日を症状固定日と認定した裁判例が、相当数あります。

裁判所は、症状固定日に関する医師の判断を踏まえたうえで、その合理性を次の7つの観点から検討し、不合理であれば別途適切な時期を症状固定日と判断していると指摘されています。

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 裁判所が検討する観点
傷害および症状の内容
症状の推移
治療・処置の内容
治療経過
検査結果
当該症状につき症状固定に要する通常の期間
交通事故の状況

むちうちで症状固定の時期が争われる場面では、さらに具体的に、次の事情が考慮されているとされます。

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 むちうちで症状固定日を認定する際の考慮要素
事故による衝撃の程度
事故日から症状固定とされた日までの期間
その間の症状および治療内容の変化
他覚所見の有無
症状固定診断の経緯
訴訟で症状固定時期が争われるとき、何が起きているか。
被害者側は、後遺障害診断書に基づいて主張するのが通常です。症状固定日を別にする複数の診断書が提出されることもあります。これに対して加害者側は、診療録などの医療記録に記された具体的な症状から、診断書の記載とは異なる症状固定時期を主張してくることが多いとされています。双方から医師の意見書が出されることもあります。
つまり、争点になるのは「診断書に何と書いてあるか」だけではなく、「診療録に何が記録されているか」です。

症状固定日として、最終通院日が機械的に書かれることがあります

実務では、症状固定日として最終通院日が記載されることが一般的です。しかし、その日が後遺障害診断書を受け取りに行くだけの日で、実質的な診療がされていない場合もあると指摘されています。
診断書の日付は、必ずしも「その日に医学的な判断が行われた」ことを意味しません。

医師が、打ち切り日を症状固定日と考えていることがあります

そして、これが実務でもっとも見落とされている点です。

主治医の判断にかかわらず、保険会社が短期間で症状固定と独自に判断し、治療費の支払を打ち切る事例が多く、また、医師も保険会社が打ち切った時期を症状固定時期だと誤解しているケースも多いと指摘されています。

この意味を、順に追ってみてください。

保険会社が「今月末で打ち切ります」と通告する。病院への支払いが止まる。主治医は「保険会社が終了と言うのだから、症状固定なのだろう」と受け取る。そのまま後遺障害診断書に、打ち切られた月の最終通院日が症状固定日として記載される。

すると、休業損害の終期も、逸失利益の起点も、時効の起算点も、すべてその日にそろってしまいます。

「保険会社が支払いをやめた日」と「医学的に治療の効果が期待できなくなった日」は、本来まったく別のものです。その区別を主治医に伝えられるのは、実際には被害者側だけです。ここが、この記事でもっともお伝えしたい点です。

治療費の打ち切りと症状固定は、別のものです

あらためて整理します。

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 治療費の打ち切り症状固定
誰の判断か保険会社第一に医師(最終的には法的判断)
意味病院への支払い(一括対応)をやめるという通告これ以上治療を続けても改善が期待できない状態になったこと
通院はどうなるかやめる必要はありません。健康保険に切り替えて続けられます治療の終了時点。以後は後遺障害の問題になります
治療費は後から必要な治療だったと主張して請求する余地があります症状固定後の分は原則として対象外です

治療の必要性・相当性を判断するのは、第一に医師であって保険会社ではありません。医師が継続した治療が必要だと判断するのであれば、当然に治療は継続されるべきものであり、その治療費は加害者が負担すべきものです。

打ち切りの時期を左右しているもの

では、なぜ打ち切りの時期は人によってこれほど違うのでしょうか。

他覚所見の乏しいむちうちの事案では、保険会社によって扱いがまちまちです。実務上、次の4つによって時期が変わります。

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 打ち切り時期を左右する要素
事故の状況(軽微な事故か、重大な事故か)
症状の具体性
生活への支障の程度
保険会社の医療照会に対する、主治医の回答内容

短いケースでは事故から1か月で打ち切りを通告されることもあれば、6か月を超えて通院できることもあります。

④について、知っておいていただきたいことがあります。
保険会社は、主治医に対して医療照会をかけています。症状の推移、治療の効果、今後の見通しなどを書面で問い合わせ、その回答を見て打ち切りの時期を決めています。
被害者の方は、この照会が行われていること自体をご存じないことが多くあります。そのため診察のときに、痛みが強い日のことを言いそびれたり、気を遣って「だいぶ楽になりました」と答えたりする。その一言が回答書に反映され、打ち切りの時期を早めることがあります。
診察のときは、よい日ではなく、いまの状態をそのまま伝えてください。どの動作でどう痛むのか、仕事や家事のどこに支障が出ているのか。具体的に伝わっているかどうかが、そのまま治療期間に跳ね返ります。

これに対し、骨折や、他覚所見のある靱帯損傷の場合は、骨癒合するまで、靱帯損傷が治癒するまで通院を認めてもらえることが多くなります。画像などで異常が客観的に確認できるかどうかが、打ち切りの早さを分ける最大の分岐点です。

ここで、先ほどの7つの観点を思い出してください。①事故の状況、②症状の内容と推移、③治療の内容、⑤検査結果——保険会社が見ているものと、裁判所が見ているものは、ほとんど同じです。
だからこそ、打ち切りを覆したいのであれば、裁判所が見るのと同じ材料を、同じように揃えるしかありません。

症状固定までの期間の目安

裁判所が見る観点の⑥に「当該症状につき症状固定に要する通常の期間」が挙げられていたとおり、傷病ごとに、おおよその目安はあります。ただし、一律ではありません。

むちうち(頸椎捻挫・頸部外傷性症候群)

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 内容
医学的な指摘昭和40年代から、むち打ち損傷の80%以上が3か月以内に治癒すると指摘されています
実務上の目安必要とされる相当な治療期間の例として、事故後およそ6か月が挙げられます。強いむちうちであれば6か月程度が一つの基準とされます
長期化した場合治療が1年を超えてくると、特段の事情がない限り、治療効果があるとして裁判所に治療費を認めてもらうのは相当厳しいとされています
ただし裁判例は、必ずしも3か月に制限しているわけではありません。数日という短いものもあれば、長期にわたるものもあります

骨折・他覚所見のある靱帯損傷

骨癒合するまで、靱帯損傷が治癒するまでは、通院を認めてもらえることが多くなります。画像で確認できる変化があるため、治療の必要性を説明しやすいからです。

「6か月」という数字が独り歩きしていることがあります。これは、むちうちについて実務上よく挙げられる目安であって、6か月で自動的に症状固定になるという意味ではありません。逆に、6か月経っていなければ打ち切られないという意味でもありません。
期間だけで決まるものではない、というのが正しい理解です。

通院を長く空けると、争われることがあります

事故後すぐに受診せず相当日数が経ってから治療を始めた場合や、治療を中断してしばらく経ってから再開した場合、加害者側から「その通院は事故と因果関係がない」と主張されることがあります。
裁判所は、①中断や初診の遅れに合理的な理由があるか、②治療や診断がされていたか、③既存の障害など因果関係を疑わせる事情があるか、④その期間中も症状が続いていたかといった事情を検討して判断しています。
痛みがあるのに「忙しいから」と通院を空けてしまうと、後から不利に働くことがあります。

打ち切りを通告されたら、すること

順番があります。上から順に進めてください。

  1. まず、通院をやめないでください
    打ち切りは、保険会社が病院への支払いをやめるという通告にすぎません。痛みが続いているのに通院を止めてしまうと、「その時点で症状固定だった」「その後の症状は事故と関係ない」と主張される材料になります。健康保険を使えば、自己負担3割で通院を続けられます。
  2. 主治医に、治療の継続が必要であることを書いてもらう
    打ち切りを通告されたときの基本の対応は、主治医に、継続した治療の必要性を示した診断書または意見書を作成してもらい、保険会社に提出することです。「まだ痛い」ではなく「医学的に、治療を続ける必要がある」と医師の言葉で示すことに意味があります。
  3. 症状固定の見込み時期を示して、そこまでの負担を交渉する
    「いつまで続くかわからない」という状態は、保険会社がもっとも受け入れにくい形です。近い将来の症状固定時期の見込みを示し、その時期までは治療費を負担してもらうよう交渉するという進め方があります。あと2か月で症状固定の見込みだと示せれば、延長に応じてもらえることがあります。
  4. 健康保険に切り替えて、記録を残しながら通院する
    交渉が決裂しても、通院自体はやめない。第三者行為による傷病届を提出すれば健康保険を使えます。後から「必要な治療だった」と主張して、その分の治療費を請求する余地があります。領収証は必ず保管してください。
  5. 自己負担が大きいときは、仮払いの仮処分も検討する
    それでもなお治療費が打ち切られ、被害者自身が高額の治療費を負担しなければならない場合には、速やかに仮払い仮処分を申し立てることも検討するとされています。手術が必要な場合など、負担額が大きいケースでの選択肢です。
  6. 当面の資金が必要なら、自賠責への被害者請求という手があります
    加害者側との交渉がまとまらなくても、被害者側から直接、自賠責保険に請求できます(自賠法16条)。傷害分の限度額は120万円です。生活費や治療費の当座をしのぐ選択肢になります。
これらを、ご自身だけで進める必要はありません。医師への依頼の仕方、意見書に何を書いてもらうか、保険会社への伝え方——どれも、経験のある人間が入ると結果が変わりやすい部分です。打ち切りを通告された時点でご相談いただければ、間に合うことが多くあります。

症状固定と言われた後にできること

症状固定後の治療費は、原則として請求できません

症状固定後の治療費は、損害とは認められないのが原則です。治療をしても症状の改善が見込めない以上、原状回復のための相当な行為とは認められないからです。

ただし、例外があります。
症状固定後も治療を施さないと症状が悪化するおそれがある場合など、その支出が相当なときは、症状固定後の治療費も損害として認められることがあります。
改善のための治療ではなく、悪化を防ぐための治療であれば、認められる余地があるということです。

後遺障害の申請に進みます

症状固定を迎えたら、次は後遺障害等級の申請です。ここで作成してもらうのが後遺障害診断書で、そこに記載される症状固定日が、これまで見てきたすべての起点になります。

診断書に何をどう書いてもらうかで結論が変わるため、後遺障害診断書|書いてもらう前に確認することもあわせてご覧ください。

労災を使える事故なら、症状固定後の制度があります

通勤中・業務中の事故で労災保険を使える場合、症状固定後にも2つの制度があります。

再発

いったん症状固定と認められた後に再び発症した場合、次のいずれも満たすときは「再発」として、再び療養(補償)等給付を受けられます。

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 再発と認められるための要件
その症状の悪化が、当初の傷病と相当因果関係があると認められること
症状固定の時の状態からみて、明らかに症状が悪化していること
療養を行えば、その症状の改善が期待できると医学的に認められること

アフターケア

症状固定後も、診察・保健指導・薬剤の支給などを無料で受けられる制度です。都道府県労働局長から交付される「アフターケア手帳」を医療機関に提示して利用します。

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対象となる傷病(抜粋)対象者の目安
せき髄損傷原則として第3級以上
頭頸部外傷症候群、頸肩腕障害、腰痛原則として第9級以上
脳の器質性障害原則として第9級以上
外傷による末梢神経損傷(激しい疼痛が残る場合)第12級以上
大腿骨頸部骨折・股関節脱臼原則として障害給付を受けている方
人工関節・人工骨頭に置換した場合障害給付を受けている方

症状固定は「もう何もしてもらえなくなる日」ではありません。労災を使える事故かどうかについては、交通事故で労災は使えるか|自賠責との使い分けで説明しています。

時効に注意してください

最後に、もっとも取り返しがつかない話をします。

消滅時効は、症状固定日から進行します。後遺障害による損害だけでなく、それ以外の損害を含めた全損害について、症状固定時から進行すると理解するのが圧倒的多数です。損害の全体が確定する時を起算点とするのが公平であり、一度の訴訟で解決できるからです。

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損害の種類時効期間根拠
人の生命または身体を害する不法行為(ケガ・死亡)5年民法724条の2
車の修理費などの物的損害3年民法724条

異議申立てをしている間も、時効は止まりません

ここが、実際に事故になりやすいところです。
最高裁は平成16年12月24日の判決で、症状固定の診断を受けた時には、後遺障害の存在を現実に認識し、加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に、それが可能な程度に損害の発生を知ったものというべきだとしました。
そして、事前認定が非該当となり、その後の異議申立てによって等級が認定されたという事案について、自賠責の等級認定は保険金額を算定することを目的とする損害の査定にすぎず、被害者の加害者に対する損害賠償請求権の行使を何ら制約するものではないから、そうした経緯は結論を左右しないと判断しています。
つまり、「等級が決まってから数えればいい」わけではありません。異議申立てを繰り返している間も、時効は症状固定日から進み続けています。

5年は、長いようで長くありません。症状固定を迎え、後遺障害を申請し、非該当だったので異議申立てをし、それでも変わらず紛争処理機構に申し立て、そこから示談交渉を始める——この流れをたどっていると、あっという間に過ぎます。

「そろそろ症状固定です」と言われたら

難波みなみ法律事務所では、交通事故の被害者側のご相談を初回30分無料でお受けしています。症状固定は、賠償額の全体を決めてしまう分かれ目です。打ち切りを通告された段階、あるいは後遺障害診断書を書いてもらう前にご相談いただければ、打てる手が残っています。診断書に症状固定日が記載されてしまうと、後から動かすのは格段に難しくなります。ご加入の保険に弁護士費用特約があれば、費用のご負担を抑えてご依頼いただけます。

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よくある質問

Q. 症状固定とは何ですか?

事故後、医学上相当と認められる期間にわたって治療を続けたにもかかわらず、これ以上治療を継続しても症状の改善が認められない状態になったことをいいます。治療を続けてもそれ以上よくならない、一進一退の状態に達した時点です。傷害に関する損害と後遺障害に関する損害を分けて算定するための、法的な区切りでもあります。

Q. まだ痛みが残っていますが、症状固定になりますか?

なります。症状固定は「治った」という意味ではありません。厚生労働省の資料でも、身体が健康時の状態に完全に回復した状態のみをいうものではなく、症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行ってもその医療効果が期待できなくなった状態をいう、と説明されています。症状が残っていても、これ以上治療の効果が見られない状態になれば症状固定と判断されます。

Q. 通院すると楽になります。それでも症状固定ですか?

症状固定と判断される典型例です。厚生労働省の資料には、骨癒合後の機能回復療法として理学療法を行っている場合に、治療施行時には運動障害がある程度改善されるが、数日経過すると元の状態に戻るという経過が一定期間にわたってみられるとき、という例が挙げられています。問われるのは「一時的に楽になるか」ではなく「治療によって症状そのものが改善していくか」です。

Q. 症状固定日は誰が決めるのですか?

出発点は主治医の判断で、後遺障害診断書の症状固定日欄に記載された日とするのが原則です。ただし最終的には法的な判断であり、記載された日とは異なる日を症状固定日と認定した裁判例も相当数あります。裁判所は、傷害および症状の内容、症状の推移、治療・処置の内容、治療経過、検査結果、当該症状につき症状固定に要する通常の期間、交通事故の状況という観点から医師の判断の合理性を検討しています。

Q. 保険会社に治療費を打ち切ると言われました。症状固定ということですか?

違います。治療費の打ち切りは、保険会社が病院への支払い(一括対応)をやめるという通告にすぎません。治療の必要性・相当性を判断するのは第一に医師であって保険会社ではなく、医師が継続した治療が必要と判断するのであれば治療は継続されるべきものです。通院をやめる必要はありません。

Q. 打ち切りを通告されたら、まず何をすればよいですか?

主治医に、継続した治療の必要性を示した診断書または意見書を作成してもらい、保険会社に提出することです。あわせて、近い将来の症状固定時期の見込みを示し、その時期までは治療費を負担してもらうよう交渉します。それでも打ち切られ、高額の自己負担が生じる場合には、仮払い仮処分の申立てを検討することもあります。いずれの場合も、通院自体はやめないでください。

Q. 症状固定までの期間はどのくらいですか?

むちうちについては、医学的には昭和40年代から、むち打ち損傷の80%以上が3か月以内に治癒すると指摘されています。実務では、必要とされる相当な治療期間の例として事故後およそ6か月が挙げられ、治療が1年を超えると特段の事情がない限り治療費を認めてもらうのは相当厳しいとされます。ただし裁判例は必ずしも3か月に制限しておらず、期間だけで決まるものではありません。骨折や他覚所見のある靱帯損傷では、骨癒合するまで、靱帯損傷が治癒するまで通院が認められることが多くなります。

Q. 打ち切りの時期は、何で決まっているのですか?

他覚所見の乏しいむちうちの事案では、保険会社によってまちまちです。事故の状況が軽微か重大か、症状の具体性、生活への支障の程度、そして保険会社の医療照会に対する主治医の回答内容によって変わります。短いケースでは1か月で打ち切りを通告されることもあれば、6か月を超えて通院できることもあります。保険会社が主治医に医療照会をかけていることは知っておいてください。

Q. 症状固定日が1か月ずれると、金額はどのくらい変わりますか?

入通院慰謝料だけで、5万円から12万円程度変わります。大阪の裁判実務で用いられる緑本では、通院5か月が108万円、6か月が120万円、7か月が128万円です。むちうち等で他覚所見がない場合はこの3分の2となり、5か月72万円、6か月80万円、7か月85万円です。これに休業損害の1か月分が加わり、後遺障害の等級が変われば影響はさらに大きくなります。

Q. 症状固定後の治療費は請求できますか?

原則として認められません。治療をしても症状の改善が見込めない以上、原状回復のための相当な行為とは認められないからです。ただし、症状固定後も治療を施さないと症状が悪化するおそれがある場合など、その支出が相当なときは、例外として損害と認められることがあります。

Q. 症状固定後は、何もしてもらえないのですか?

そうではありません。後遺障害等級が認定されれば、後遺障害慰謝料と逸失利益を請求できます。また労災を使える事故であれば、症状が明らかに悪化し療養によって改善が期待できるなどの要件を満たせば「再発」として再び療養補償を受けられますし、せき髄損傷や脳の器質性障害などの一定の傷病では「アフターケア」として症状固定後も無料で診察等を受けられます。

Q. 時効はいつから数えるのですか?

症状固定日からです。後遺障害による損害だけでなく、全損害について症状固定時から進行すると理解するのが圧倒的多数です。ケガや死亡についての請求権は5年(民法724条の2)、車の修理費などの物的損害は3年(民法724条)です。最高裁平成16年12月24日判決は、事前認定が非該当でその後の異議申立てで等級が認定された事案について、自賠責の等級認定は保険金額を算定するための損害の査定にすぎず賠償請求権の行使を制約するものではないとして、そうした経緯は時効の起算点を左右しないと判断しています。

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この記事は、難波みなみ法律事務所の弁護士 南 宜孝(大阪弁護士会・登録番号49544)が執筆しました。記載内容は、民法、自動車損害賠償保障法、厚生労働省の公表資料、公表裁判例および交通事故賠償の実務書によります。個別の事案の見通しは事情により異なりますので、詳細はご相談ください。

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