コラム
公開日: 2026.08.23

交通事故で整骨院に通っていい?慰謝料と後遺障害への影響

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。大阪弁護士会所属(登録番号49544)、大阪中小企業診断士会所属(登録番号 420113)、幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

交通事故のあと、整骨院に通ってもよいのか。保険会社に「整骨院は認めません」と言われた。整骨院に通うと後遺障害で不利になるらしい——この記事を読んでいる方は、そのあたりで迷っておられると思います。

結論から申し上げると、整骨院に通うこと自体は問題ありません。自賠責保険の支払基準にも、柔道整復師が行う施術費用は損害として明記されています。

ただし、条件があります。そして後遺障害の話になると、注意すべき点がはっきりあります。この記事では、施術費が認められるための条件と、後遺障害の判断で実際に見られている事情を、公的資料と裁判例に基づいて説明します。

結論から

Q. 交通事故のケガで整骨院に通ってもいいですか?

通えます。自賠責保険の支払基準には「免許を有する柔道整復師…が行う施術費用は、必要かつ妥当な実費とする」と明記されています。ただし「必要かつ妥当」という限定がついており、原則として医師の指示が必要とされています。

Q. 保険会社に「整骨院は認めない」と言われました。

認められる余地はあります。施術費が損害と認められるかは、①施術の必要性 ②有効性 ③施術内容の合理性 ④施術期間の相当性 ⑤施術費の相当性という5つの観点から判断されます。全額か全否定かではなく、一部の期間だけ認めた裁判例もあります。

Q. 整骨院に通うと後遺障害が認定されにくくなりますか?

「整骨院に通うと認定されない」は言い過ぎです。実務上も、整骨院や接骨院への通院がほとんどであっても認定率が大きく下がるとはいえない、と評価されています。ただし、他覚所見がない事案で整骨院ばかりに通うのは、14級を目指すうえで不利な組み合わせです。認定は、事故の衝撃の大小、症状の程度と経過、生活への支障の具体性などを総合して判断されますが、これらを記録に残せるのは原則として医師が作成する資料だからです。理由は本文で説明します。

整骨院の施術費は、賠償の対象になります

まず、いちばん基本的なところを確認します。

自賠責保険の支払額は、金融庁と国土交通省の告示で定められています。その「傷害による損害」の治療関係費の項目に、次の定めがあります。

⑧ 柔道整復等の費用
免許を有する柔道整復師、あんま・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師が行う施術費用は、必要かつ妥当な実費とする。

整骨院での施術が一律に対象外ということはありません。柔道整復師は国家資格であり、公的な基準にも正面から書かれています。

ただし「必要かつ妥当な実費」という限定があります

問題はここから先です。「必要かつ妥当」といえるかどうかが、実際には争われます。

参考:国家資格ではない施術との違い
カイロプラクティック療法は米国発の施術ですが、日本では民間資格にとどまっています。そのため、原則として治療としての必要性を欠き、相当因果関係が否定されるとの指摘があります。
柔道整復師が国家資格であることは、この点で大きな違いです。

施術費が認められるための条件

原則として、医師の指示が必要です

柔道整復・鍼灸・あん摩・マッサージ・指圧などの施術が、事故と相当因果関係のある損害として認められるための要件として、実務では次のように整理されています。

第一に、原則として施術を受けるにつき医師の指示が必要であるとされています。ただし、医師の指示がなくても施術が認められるべき場合もあるとされており、指示がなければ一切だめ、という趣旨ではありません。

第二に、5つの要件が問われます

医師の指示の有無にかかわらず、次の5つが必要であるとされています。

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 要件実際に問われること
施術の必要性その症状に対して施術を受ける必要があったか
施術の有効性症状の内容・程度に照らして有効といえるか
施術内容の合理性行われた施術の中身が症状に見合っているか
施術期間の相当性その期間まで続ける必要があったか
施術費の相当性金額として妥当な範囲か

全額か全否定か、ではありません

東京地方裁判所 平成21年6月17日

この5つの要件を検討したうえで、柔道整復師の施術費のうち、事故から約1か月間の分を損害として認めました。

全額でも全否定でもなく、一部の期間だけを認めるという結論です。「認められるか、認められないか」の二択で考えないほうが実態に合っています。

保険会社が整骨院を警戒する背景

実務では、整骨院(接骨院)の施術費について、医療機関より頻回で長期にわたる施術が行われ、高額の請求がなされていることが問題として指摘されています。
保険会社が整骨院への通院に慎重な姿勢を示す背景には、この事情があります。目の前の施術所がそうだという話ではありませんが、保険会社がそういう目で見ている、ということは知っておいてください。

整形外科と整骨院は、役割が違います

ここが、この記事でいちばん誤解の多いところです。整形外科と整骨院は「どちらに行くか」という並列の選択肢ではありません。できることが違います。

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 整形外科(医師)整骨院(柔道整復師)
診断(傷病名をつける)できるできない
診断書の作成できるできない
後遺障害診断書の作成できるできない
画像検査(X線・CT・MRI)できるできない
投薬・注射できるできない
徒手的な神経学的検査
(腱反射・筋力・誘発テスト)
できる検査自体は行える
検査結果を後遺障害診断書に記載できるできない
施術(手技による処置)できる
神経学的検査そのものは、整骨院でも行われることがあります。腱反射、筋力、ジャクソンテストやスパーリングテストといった徒手的な検査を柔道整復師が行うことを禁じる規定は、柔道整復師法にはありません。
ただし、その結果を後遺障害診断書に記載できるのは医師だけです。自賠責が判断材料とするのは、医師が作成した診断書と後遺障害診断書です。
なお、X線・CT・MRIといった画像検査は、法律上、医師・歯科医師・診療放射線技師でなければ行えません(診療放射線技師法24条)。薬品の投与も、柔道整復師法16条で禁じられています。
後遺障害の申請には、医師が作成した後遺障害診断書が必要です。整骨院がどれだけ丁寧に施術をしてくれても、この書面は書けません。
整骨院は、整形外科の「代わり」ではなく「補完」として位置づけてください。これがこの記事の実務上の結論です。

「整骨院に行くと後遺障害が認定されない」は本当か

ネットで検索すると、この断定をよく見かけます。結論から言うと、言い過ぎです。そして実務でも、はっきりそう指摘されています。

むち打ち損傷において、柔道整復(接骨院、整骨院)、鍼灸、マッサージ等の施術費は、症状により有効かつ相当な場合、ことに医師の指示がある場合などは賠償の対象として認められる傾向にあると説明されている。
ところが実務の一部においては、以上の説明を拡大解釈し、病院での治療を至上主義的に扱い、あたかも柔道整復師による施術ばかりでは認定がなされないかのような説明をする例もみられる。しかしながら、そのような見方は正しいとはいえない。

通院先と後遺障害の認定の関係

むち打ち損傷の後遺障害申請では、通院先によって認定率がどう変わるかが検討されてきました。実務上の評価は、次のようなものです。

整骨院または接骨院への通院がほとんどであっても認定率が大きく下がるとはいえない。他方、通院先が病院のみであっても認定率が格段に上がるとまではいえない。

そして総括として、「柔道整復師による施術ばかりでは認定がなされない」という命題は、そういう傾向があるという限度では正しいものの、緩やかな傾向にとどまっているとされています。

ただし、この評価の読み方には注意が必要です。
この検証は、他覚所見の有無で分けたものではありません。むち打ち損傷の申請事例全体を対象としているため、画像や神経学的検査で異常が確認できる事案(12級13号が問題になる事案)も含まれています。
他覚所見があれば、客観的な材料がありますから、通院先や通院回数によって等級認定が大きく左右されにくいといえます。問題は、他覚所見がない事案です。

他覚所見がない事案では、話が変わります

ここからが、この記事の核心です。

14級9号は「治療状況、症状経過」で決まります

むち打ちで問題になる等級は12級13号と14級9号で、この2つを分けるのは他覚(的)所見の有無です。ところが、画像等の客観的な他覚所見は乏しいことが多く、非該当と14級、12級と14級の分かれ目は微妙だとされています。

では、他覚所見がないときに何で決まるのか。自賠責の認定結果を伝える「認定票」には、決まり文句があります。

14級9号を認定するときの文例

「…提出の診断書上、本件事故による骨折等の外傷性の異常所見は認め難く、後遺障害診断書上からも明らかな神経学的異常所見は認められず、他覚的に神経系統の障害が証明されるものとは捉えられませんが、治療状況、症状経過等を勘案すれば、将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられることから、『局部に神経症状を残すもの』として別表第二第14級9号に該当するものと判断します。」

非該当とするときの文例

「…(同じく12級を否定したうえで)…治療状況、症状経過等を勘案しても、将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられず、自賠責保険における後遺障害には該当しないものと判断します。」

2つの文例を並べると、違いは1か所だけです。
「治療状況、症状経過等を勘案すれば」なのか、「勘案しても」なのか。
他覚所見がない事案では、ここだけが勝負どころです。そして、その治療状況と症状経過を示す資料が医証(医師が作成した診療録・診断書)です。

整骨院通院が多いと、何が起きるのか

この点は、実務上、次のように指摘されています。

整骨院通院が多い場合は、施術費が損害と認められるかどうかという問題とともに、医証によって症状経過が辿れない等の問題もある。

整骨院の問題は、2つあるということです。

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 問題通院回数を増やせば解決するか
1施術費が損害と認められるか施術期間の相当性が問われるため、回数を重ねれば認められるという関係にはありません
2医証によって症状経過が辿れない整骨院だけでは医学的な証拠が不十分なことが多く、回数では補いにくい部分です
整骨院の施術証明書も、判断材料にはなります。診断書や施術証明書に症状の「軽減」等の記載があると自賠責では非該当とされることが多い、という指摘もあり、施術証明書がまったく見られていないわけではありません。
ただし、他覚所見の有無を判断できるのは医師が作成した資料であり、症状の推移を医学的に評価した記載も医師でなければ作成できません。そのため、整骨院だけでは医学的な証拠が不十分なことが多いといえます。

同じ100回でも、結論が逆になります

当事務所が取り扱った事案から

整骨院に100回以上通いながら、整形外科の受診はごく少数回にとどまっていた事案では、14級は認定されませんでした。

他方で、整骨院には一度も通わず整形外科だけに通った事案では、14級が認定されています。これは1件だけの話ではなく、同じような経過をたどった事案が複数あります。

いずれも、他覚所見のないむち打ちの事案です。

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通院の内訳整骨院整形外科14級
整骨院に集中100回以上ごく少数回否定
整形外科に集中0回100回認定された

通院回数の水準は変わりません。それでも結論が分かれています。回数そのものが結論を決めているわけではない、ということです。

誤解のないように申し添えます。整形外科に100回通えば必ず後遺障害が認定される、というものではありません。このあと見るとおり、通院実日数も治療期間も補助的な要素にすぎず、単体で結論を決める要素は見当たりません。回数を増やすこと自体が目的ではありません。
結論を分けているのは、通院先や回数だけではありません。事故の衝撃の大小、症状の程度とその後の経過、症状によって日常生活や仕事にどのような支障が生じているかの具体性——こうした事情が組み合わさって、判断が左右されています。
そして、これらを記録に残せるのは、原則として医師が作成する資料です。整骨院だけでは医学的な証拠が不十分なことが多い、というのは、この意味においてです。

では、整骨院に通ってはいけないのか

そうではありません。両方に通えばよいのです。実際、そうして14級が認定された裁判例があります。

東京地方裁判所 平成28年3月16日

追突事故で頸椎捻挫・腰椎捻挫を負った被害者の頸部痛・腰痛について、自賠責は「症状の存在を裏付ける他覚的所見は認めがたく、他覚的に神経系統の障害が証明されるものと捉えることは困難」としながら、治療状況などを勘案して14級9号を認定しました。

その治療状況が、次のとおりです。

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通院先通院期間実通院日数
鍼灸整骨院22か月349日
整形外科22か月127日
クリニック6か月2日

判決も、医療記録上、事故に起因すると思われる画像上または神経学上の所見は見当たらず、症状は専ら自覚症状に基づくものとしたうえで、労働能力喪失率5%・5年間の逸失利益を認めています。素因減額もされていません。

この事例の読み方が、そのまま結論になります。
整骨院に349日という多数回通っています。しかし、整形外科にも22か月にわたって127日通い続けています。
整形外科の受診が22か月にわたって続いていたため、「治療状況、症状経過」を勘案する材料がそろっていたと読むことができます。判決がそう述べているわけではありませんが、他覚所見がないなかで14級が認められた事案として、示唆的です。
つまり、「整骨院に通うな」ではありません。「整形外科を切らすな」です。

認定に本当に効いているもの

むち打ちによる後遺障害は、外貌の醜状や手足の欠損と違い、障害それ自体を直接目で見て確認することができません。そのため、認定結果に影響するといわれる要素は、いずれも単体では決定的な意味を持ちにくいとされています。

治療期間と通院実日数は、補助的な要素です

「何日通えばよいか」「何か月通えばよいか」は、よく問題になります。しかし実務上は、治療期間も通院実日数も、認定判断に影響する要素ではあるものの、あくまで補助的な要素にとどまると評価されています。

理由は、相当数の逆転現象がみられるからです。通院期間や実日数が長いほうが非該当となり、短いほうが認定される事案が少なくないため、通院実日数が多いほうが認定されやすい、とまではいい難いとされています。

ただし、治療期間が半年に満たない場合は、非該当となる可能性が高いとされています。ここだけは意識しておいてください。
逆に、半年以上であれば長いほうが認定されやすい、とまではいえないとされています。期間を引き延ばすことに意味はありません。
「たくさん通えば認定される」わけではありません。
適正な等級を得るには、それぞれの要素がどう作用するかを理解したうえで、なるべく多くの要素を集め、事実を曲げることなくありのままに資料として提出できるよう準備しておくことが要点になります。

そのほかに見られている事情

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事情実務でどう見られているか
初診までの日数事故から初診まで1〜2週間経っていると、納得できる説明がない限り14級を認めるのは難しいとされています
車両の損傷が軽微修理費が数万円程度といったごく軽微な損傷であれば、後遺障害は否定されやすいとされています
事故態様が激しい画像所見が乏しくても、症状の改善傾向がなければ14級が認定されることが少なくないとされています
リハビリを続けても改善しない頑張ってリハビリを続けているにもかかわらず改善傾向が乏しい場合は、他覚所見がなくても14級が認定されることが比較的多いとされています
神経ブロック等が行われているブロック注射やトリガーポイント注射、リリカやノイロトロピンの処方は、痛みが強い場合や投薬で効果が得られない場合に選択されるため、14級か非該当かを左右しているように思える事案があるとされています
症状の一貫性事故から相当期間が経ってから訴えられた症状や、増悪傾向にある症状、軽減傾向が明らかな症状は非該当となる可能性が比較的高いとされています
これらの多くは、整骨院では記録に残りません。投薬も注射も医療機関でなければ行えず、画像検査も医師・歯科医師・診療放射線技師に限られています。徒手的な神経学的検査は整骨院でも行われることがありますが、その結果を後遺障害診断書に記載できるのは医師です。そのため、整骨院だけでは、医学的な証拠が不十分なことが多くなります。
整形外科に通い続けることには、施術を受けること以外に、記録が残るという意味もあります。

整骨院に通うときにすること

ここまでを踏まえて、実際に何をすればよいかを順番に整理します。

  1. まず整形外科を受診してください
    事故直後に受診するのは整形外科です。診断名をつけられるのは医師だけで、ここで作成される診断書が、その後のすべての出発点になります。事故から初診まで1〜2週間空くと、納得できる説明がない限り14級を認めるのは難しいとされています。痛みが軽くても、その日のうちか翌日には受診してください。
  2. 整骨院に行く前に、医師に相談してください
    施術費が認められるには、原則として医師の指示が必要とされています。「整骨院にも通いたいのですが」と主治医に相談し、了解を得たことが診療録に残るようにしてください。紹介状や指示書を書いてもらえるなら、それがいちばん確実です。
  3. 整形外科の受診を切らさないでください
    ここがもっとも重要です。整骨院に通い始めると、通いやすさから整形外科の足が遠のきがちです。しかし整骨院だけでは医学的な証拠が不十分なことが多く、他覚所見がない事案で14級を得るのは難しくなります。月に1回でも構いません。整形外科の受診を続けてください。
  4. 診察のときは、症状を具体的に伝えてください
    自覚症状が医証から確認できることが、まず必要です。「痛い」ではなく、どこがどのように痛むのかを伝えてください。「右上肢のしびれ」より「右肩から右手指にかけてのしびれ」のほうが、後遺障害診断書の記載として意味を持ちます。しびれや痛みでできなくなった動作を具体的に伝えるのも有効です。
  5. 保険会社に、整骨院に通うことを事前に伝えてください
    後から「聞いていない」となると、その分の施術費について争いになりやすくなります。医師の了解を得ていることをあわせて伝えておくと、話が進みやすくなります。
  6. 施術録と領収証を保管してください
    施術費が争われたとき、いつ・どのような施術を・いくらで受けたかを示す資料が必要になります。捨てずにまとめて保管してください。
整骨院に通うこと自体を否定する趣旨ではありません。手技による施術で楽になる方は実際におられますし、自賠責の基準にも明記されています。
お伝えしたいのは、整形外科と整骨院は役割が違うので、両方を続けてください、ということです。

保険会社に「整骨院は認めない」と言われたら

この場面は、治療費の打ち切りを通告されたときと同じ構造です。

まず、通院をやめないでください

保険会社が支払いを拒むことと、その施術が損害として認められないことは、別の問題です。最終的に判断するのは保険会社ではありません。先ほど見たとおり、一部の期間だけを認めた裁判例もあります。

医師の指示を書面にしてください

争いになったときに効くのは、主治医が「施術の継続が必要である」と書いた書面です。診断書でも意見書でも構いません。「本人が楽になると言っている」ではなく「医学的に必要である」という形にすることに意味があります。

健康保険への切替も検討してください

自由診療のまま自己負担で通い続けると、金額が膨らみます。第三者行為による傷病届を提出すれば、健康保険を使えます。負担を抑えながら通院を継続し、後から必要な施術だったと主張して請求する余地があります。

治療費の打ち切り全般については、交通事故の症状固定はいつ?誰が決めるかと打ち切りとの違いで、打ち切りを通告されたときの手順を詳しく説明しています。

整骨院に通うべきか迷っている方、「認めない」と言われた方へ

難波みなみ法律事務所では、交通事故の被害者側のご相談を初回30分無料でお受けしています。整骨院の問題は、施術費が認められるかどうかだけではありません。他覚所見がない事案では、通院の組み立て方がそのまま後遺障害の結論に直結します。そして、この点は後から取り返すのが難しい部分です。通院を始めた段階、あるいは「認めない」と言われた段階でご相談いただければ、打てる手があります。ご加入の保険に弁護士費用特約があれば、費用のご負担を抑えてご依頼いただけます。

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よくある質問

Q. 交通事故のケガで整骨院に通ってもいいですか?

通えます。自賠責保険の支払基準には「免許を有する柔道整復師、あんま・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師が行う施術費用は、必要かつ妥当な実費とする」と明記されており、整骨院での施術が一律に対象外ということはありません。ただし「必要かつ妥当」という限定があり、原則として医師の指示が必要とされています。

Q. 整骨院の施術費が認められる条件は何ですか?

第一に、原則として施術を受けるにつき医師の指示が必要とされています。ただし医師の指示がなくても認められるべき場合もあるとされています。第二に、医師の指示の有無にかかわらず、①施術の必要性 ②施術の有効性 ③施術内容の合理性 ④施術期間の相当性 ⑤施術費の相当性の5つが必要とされています。

Q. 保険会社に「整骨院は認めない」と言われました。あきらめるしかないですか?

あきらめる必要はありません。保険会社が支払いを拒むことと、その施術が損害として認められないことは別の問題です。東京地方裁判所平成21年6月17日判決は、5つの要件を検討したうえで、柔道整復師の施術費のうち事故から約1か月間の分を損害として認めています。全額か全否定かの二択ではありません。主治医に施術継続の必要性を示す書面を作成してもらい、提出することが基本の対応になります。

Q. 整骨院に通うと後遺障害が認定されにくくなりますか?

「認定されない」は言い過ぎです。むち打ち損傷の後遺障害申請の実務では、整骨院または接骨院への通院がほとんどであっても認定率が大きく下がるとはいえない、他方で通院先が病院のみであっても認定率が格段に上がるとまではいえない、と評価されています。そして「柔道整復師による施術ばかりでは認定がなされない」という命題は、そういう傾向があるという限度では正しいものの、緩やかな傾向にとどまっているとされています。

Q. それなら整骨院だけに通っても大丈夫ですか?

他覚所見がない事案では、大丈夫とはいえません。上記の評価は他覚所見の有無で分けたものではなく、画像や神経学的検査で異常が確認できる事案も含まれています。他覚所見がない事案で14級9号を得るには「治療状況、症状経過等を勘案すれば、将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられる」と判断される必要があり、その治療状況と症状経過を示すのは医師が作成した医証です。実務でも、整骨院通院が多い場合は医証によって症状経過が辿れないという問題が指摘されています。

Q. 整骨院にたくさん通えば、その分だけ有利になりますか?

なりません。当事務所が取り扱った事案でも、整骨院に100回以上通いながら整形外科の受診がごく少数回にとどまっていた事案では14級が認定されず、他方で整骨院に一度も通わず整形外科だけに通った事案では14級が認定されています。もっとも、結論を分けているのは回数だけではありません。事故の衝撃の大小、症状の程度と経過、日常生活や仕事への支障の具体性なども判断を左右しています。そして、これらを記録に残せるのは原則として医師が作成する資料であり、整骨院だけでは医学的な証拠が不十分なことが多くなります。

Q. 整骨院と整形外科の両方に通ってもいいですか?

それが望ましい形です。東京地方裁判所平成28年3月16日判決は、他覚的所見は認めがたいとしながら、鍼灸整骨院に22か月・実通院349日、整形外科に22か月・実通院127日、クリニックに6か月・実通院2日通院していた治療状況を勘案し、14級9号を認めています。整骨院に多数回通いながら、整形外科の受診を22か月にわたり続けていたことがポイントです。

Q. 整形外科にはどのくらいの頻度で通えばよいですか?

頻度そのものより、受診を切らさないことが重要です。実務上、通院実日数が多いほうが認定されやすいとまではいい難く、あくまで補助的な要素にとどまると評価されています。相当数の逆転現象がみられるためです。他方で、治療期間が半年に満たない場合は非該当となる可能性が高いとされていますので、通院の間隔を空けすぎないようにしてください。

Q. 整骨院で後遺障害診断書を書いてもらえますか?

書いてもらえません。診断や診断書の作成は医師の業務であり、柔道整復師は行えません。後遺障害の申請には医師が作成した後遺障害診断書が必要ですので、整形外科の受診が欠かせません。なお、腱反射やジャクソンテストといった徒手的な神経学的検査は整骨院でも行われることがありますが、その結果を後遺障害診断書に記載できるのは医師です。X線・CT・MRIの画像検査は医師・歯科医師・診療放射線技師でなければ行えず(診療放射線技師法24条)、薬品の投与も柔道整復師法16条で禁じられています。

Q. 事故から時間が経ってから整骨院に通い始めても大丈夫ですか?

早いほうが安全です。事故から初診まで1〜2週間経っていると、納得できる説明がない限り14級を認めるのは難しいとされています。また、治療を中断して相当日数が経ってから再開した場合、加害者側から因果関係を争われることがあります。痛みがあるのに通院を空けることは避けてください。

Q. 鍼灸やマッサージも同じ扱いですか?

同じ枠組みで判断されます。自賠責の支払基準でも、柔道整復師、あんま・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師が行う施術費用として一括して定められており、必要かつ妥当な実費とされています。認められるための要件も、医師の指示と5つの要件という同じ整理になります。なお、カイロプラクティック療法は日本では民間資格にとどまるため、原則として治療としての必要性を欠き、相当因果関係が否定されるとの指摘があります。

Q. 整骨院に通った日数は、慰謝料の計算に入りますか?

施術が損害として認められる範囲では、通院期間・通院日数として考慮されます。ただし施術費自体の必要性・相当性が否定された期間については、通院として評価されない可能性があります。慰謝料の計算方法については、あわせて別の記事をご覧ください。

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この記事は、難波みなみ法律事務所の弁護士 南 宜孝(大阪弁護士会・登録番号49544)が執筆しました。記載内容は、自動車損害賠償保障法、金融庁・国土交通省告示による自動車損害賠償責任保険の支払基準、公表裁判例および交通事故賠償の実務の取扱いによります。個別の事案の見通しは事情により異なりますので、詳細はご相談ください。

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