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【弁護士解説】子供を連れて別居すると不利になるのか? 

子連れ別居

子供のいる夫婦が別居する際に、子供を連れて別居をする際、相手方の同意を得る必要はないのでしょうか?

結論としては、同意を得ずに別居を開始させても違法とならないことが多いでしょう。

特に、別居前に子供の監護を担っていた母親の場合ですと、違法とならないことがほとんどです。

他方で、別居を開始後に相手方の監護下にある子供を、その相手方の同意なく子供を連れ去ることは違法と判断されることが多いです。

今回はよく相談を受ける子供を連れた別居について解説します。

子連れ別居がなぜ問題となるのか?

監護者の指定を求める

別居に際して、子供と離れて暮らすことになった親(別居親)は、子供と一緒に暮らしてその子を監護したいと希望することがあります。

この場合、別居親は、子供と一緒に暮らしている親(同居親)に対して、別居親自身が子供の監護権者としてふさわしいと主張して、子供の引き渡しを求める裁判を行うことがあります。

別居の経緯が争点となる

別居親は、監護権者として自分が適格であると裁判所に認めてもらうために、これに関連するいろいろな事情を主張します。

例えば、別居する前の監護実績や監護補助者の存在、子供の意思、収入状況等といった事情を主張します。

これに対して、子供と暮らす同居親も、同じように、別居する前の監護実績などの主張をします。

これに加えて、別居後の監護実績も主張します。

別居後の生活状況が安定している場合には、別居後の安定した生活状況を維持させようとする考え方があるからです。

これを踏まえて、別居親は、同居親が行った子連れ別居が違法であり、これを理由に同居親は監護権者として失格であるとか、別居後の監護実績は考慮するべきではないと主張します。

このような経緯から、子連れ別居が許容されるのかが問題となります。

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母親による子連れ別居は違法となりにくい

これまで子供の世話を行ってきた母親が、子供を連れて別居を開始させたとしても、この子連れ別居が違法であると認められることはほとんどありません。

その理由としては、今でも、母親が中心となって子供の世話を行うことが多く、別居後も母親によって子供の監護が行われることが子供の福祉に適うという考えが根底にあると思われます。

また、母親も共同親権を有しているため、別居を開始して引き続き子供を監護することは母親の親権に基づくものということができます(最判平成5年10月19日)。

裁判例の紹介

例えば、大阪高裁平成17年6月22日の裁判では、母親による子連れ別居について、このように判断しています。

『母親が今後も監護を継続する意思で、未成年者とともに家を出るのは、むしろ当然のことであって、それ自体、何ら非難されるべきことではない』

また、東京高決平成17年6月28日の裁判においても、子供の年齢や別居までの監護状況を踏まえれば、母親が別居とともに子供を同行させることはやむを得ないと判断しています。

監護者(監護権者)とは

親権者というワードは聞き慣れている方も多いと思います。

これに似た概念として監護権者というものがあります。

監護権者も子供と一緒に暮らして子供の世話をする者を言います。

親権者との違いは、監護権者には、子供の財産管理をする権限を含まないのに対して、親権者にはこれを含む点です。

ただ、実務上、監護権は離婚する前の別居状態において子供を養育監護する場合、他方で、親権は離婚後の子供の養育監護する場合に用いられる概念といえます。

父親が子連れ別居した場合

父親が子連れ別居をした場合に、母親の子連れ別居の場合とは様相が変わってきます。

まず、父親が子連れ別居をする理由について見ていきましょう。

父親が子連れ別居をする理由

父親は親権者になりにくい

現在の裁判実務において、父親が監護権者や親権者として指定されるのは、かなりハードルが高いのが現状です。

母親が子供を連れて別居した場合、母親が子供に暴力を振るったり、育児放棄をするといった特殊な事情がない限り、ほとんどケースで父親が親権者や監護権者となれません。

別居後の監護実績を作る

父親が子供の親権者や監護権者となるケースのほとんどは、父親が子供を連れて別居している場合です。

この場合、子連れ別居をした上で、別居後の監護実績を積み上げることで、父親は、子供の監護権者として適任であると主張することが多いです。

子連れ別居がマイナス評価になることも

かつてと比べると、父親が育児に参加する機会は増えました。

しかし、現代社会においてもなお、父親は別居前の主たる監護者ではないことが多いのが実情です。

別居までの子供の監護状況を踏まえて、別居後も同じ親に監護されることが、子供の健全な成長につながるという考えが根底にあります。

そのため、主たる監護権者ではない父親が、母親の同意なく子連れ別居をした場合、子供の福祉を害するとして、別居後の監護実績をプラスに評価してもらえないことがあります。

東京高裁平成29年2月21日決定

【事案】

母親が、別居中で、子供を監護する夫に対して、監護権者指定と子の引き渡しを求める事案

【内容】

父は母とのいさかいが続き、非難されることに耐えられず、未成年者を巻き込んで家を出たものと認められる。

その行動には、未成年者の監護養育を第一に考え、夫婦間で真摯に話し合い、関係の修復に努力しようとする姿勢はみられず、別居を決めるに際して未成年者の福祉を考慮したとは認められない。

その結果、未成年者に環境を激変させる負担を与えたほか、母との連絡を絶っていることも、未成年者の成育に極めて不適切である。

父が未成年者を連れて家を出た行為は、父の監護者としての適格について、大いに疑問を抱かせるものであり、また、平成28年5月以降の父による監護がこのような経過で開始されたものである以上、その実績や継続性を尊重することはできない。

として、子の監護者を母と指定し、母親の求める子の引渡しを認めました。

主たる監護者でなかったとしても認められることも

父親が別居前の主たる監護権者ではなかったとしても、父親が監護権者となることはあります。

子供の意思

子供が父親との生活を希望しているような場合です。

ただ、子供の意思も絶対ではありません。

子供の年齢によっては、親の考え方や意向に強く影響を受けて、子供がその意思を表明することがあります。

そのため、裁判所では、子供の発達状況を加味しながら、10歳前後の子供の意思を判断の材料とする傾向があります。

ただし、小学校低学年の子供であるからといって、その子供の意思を全く考慮しないわけではありません。

別居前の出来事や別居後の生活状況を踏まえながら、その子供の心情は考慮されることもあります。

虐待や育児放棄

主たる監護者であった母親に監護者としての適性が乏しく、父親による監護を続けた方が子供の利益に適う場合にも、父親が監護権者となる可能性があります。

例えば、母親が子供に暴力を振るったり、子供に暴言を吐き、それらが子供のしつけのレベルを超えるような態様の場合です。

この場合、母親の監護者としての適正について、マイナス評価されます。

また、母親が不貞行為を行い、その不貞相手と遊びたいがために、子供の育児を放棄していたといえるような場合です。

なお、母親が不貞行為を行ったことのみで、監護権者や親権者としての適正が否定されるわけではありません。

別居開始後の連れ去りは違法

別居開始後の子供の連れ去りについては、別居開始時の連れ去りとは異なり厳しい判断がなされることが多いです。

その理由としては、以下の理由が挙げられます。

別居後の生活の平穏を害するから

一方的な子供の奪取により、同居する親と子供の平穏で安定した日常生活が失われてしまい、子供の利益を害してしまうと考えられるからです。

これを踏まえると、別居後の生活状況が原因でこどもの健康が害していたり、満足な義務教育を受けられないなど、子供の生活状況が子の福祉を損なっていると認められる場合には、別居後の子供の連れ去りが許容されると考えられます(最高裁判決平成6年4月26日参照)。

子の引渡しの仮処分をするべき

別居後の子供の連れ去りを安易に認めしてしまうと、法律で定められた手続を経ることもなく、自力救済を認めることになってしまいます。

つまり、子の引渡しを求めたいのであれば、子の引渡しを求める審判前の保全処分等の申立てを速やかに行い、司法の判断を通じて実現するべきと考えられます。

主たる監護者でもマイナスに

たとえ別居前の主たる監護者であったとしても、別居後の連れ去りは、監護権者の判断においてマイナスに働くおそれがあります。

この場合には、強引に子供を連れ去るのではなく、子の引渡しを求める裁判手続を速やかに行うべきです。

子供を置いて別居せざるを得なかった理由や別居前の監護状況などを具体的に主張することで、子の引渡しを認める判断がなされる可能性があります。

子の引渡しの裁判手続

審判と仮処分の申立てを行う

子供の引渡しを求めるためには、速やかに裁判手続に着手するべきです。

相手方との交渉を先行させてしまうと、必要のない時間を費やしてしまい、引渡しを求めたい別居親に不利な状況となるからです。

離婚前で別居中のご夫婦であれば、①子の引渡しを求める審判の申立てと監護者指定の審判の申立てをします。

その上で、①とセットで②審判前の保全処分という手続を行います。

離婚後で、親権者ではない親が子供を引き渡さない場合には、親権者となった親は、親権者ではない相手方に対して、❶子の引渡しを求める審判の申立てと先程の②の保全処分をセットで行います。

執行手続について

相手方が審判の内容に従わずに、子供を留め置く場合はどうすればよいのでしょうか?

履行勧告

まずは、家庭裁判所から相手方に対して、審判の内容を守るように勧告してもらうことが考えられます。

これを履行勧告といいます。

ただ、履行勧告には強制力がありません。

つまり、履行勧告に従わなかったとしても強制的に子の引渡しを実行できるわけではありません。

間接強制

次に間接強制という手続です。

子の引渡しを直接実現させるものでありません。

子供の引渡しをしない場合には、1日〇〇万円支払えと命令する方法です。

1日あたりの強制金を負担させることで、子の引渡しを促そうとするものです。

しかし、あくまでも心理的にプレッシャーを与えることで、相手方による子の引渡しを促すものですから、実効性はそれ程高くはないといえます。

直接強制

法律の改正により、間接強制を先に行わなくても、間接強制をしても引き渡すか分からない場合や不適切な監護状況にあるような場合には、強制的に子の引渡しを実現させることができます。

これを直接強制といいます。

ただ、直接強制といっても、何でも行うことが出来るわけではありません。

例えば、嫌がる子供に対して腕力を用いて連れ出すことは許されていません。

また、子供に対する直接の有形力の行使ではないとしても、子供を抱き込んでいる相手方の腕を無理矢理を解いて、子供を引き離す行為も認められないと考えられます。

直接強制の詳細は、以下のコラムをご参照ください。

弁護士に相談しよう

子連れ別居をしてもいいのか?と悩んでいる人からの相談はとても多いです。

子連れ別居が違法であると考えてしまい、別居に踏み切れず、辛い同居生活を強いられている方がいます。

しかし、そのような生活状況を我慢して続けてしまうと、過度な負担を重ねてしまいます。

また、子の引渡しの手続には、迅速な対応が求められます。

別居の方法や子の引渡しについて悩みがあれば、できるだけ早めに専門家に相談しましょう。

当事務所では初回相談30分を無料で実施しています。

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