離婚調停中にやってはいけないことがあります。心身に大きなストレスを感じる離婚調停中には特に注意が必要です。調停を円滑に進めるために、いくつかの避けるべき行動があるからです。
多くの人にとって離婚調停は初めての経験になると思います。早期に解決したい、直視したくない等の理由から、安易に合意するのは最もしてはいけないことです。
本記事では、離婚調停中にしてはいけない、9つの注意点について弁護士が解説します。調停で不利になってしまわないためにも、必ず頭に入れておきたい内容を紹介しています。
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離婚調停とは?
離婚調停とは、夫婦間での話し合いによる離婚、つまり、協議離婚が成立しない場合、家庭裁判所の裁判官と調停委員2人(男性1人・女性1人)を交え、改めて話し合いをする手続きです。
正式名称を「夫婦関係調整調停(離婚)」といい、双方が合意すれば離婚成立となります。
離婚調停では、離婚それ自体だけでなく、子供の親権・養育費、財産分与、慰謝料請求(不貞行為・DV)、面会交流、年金分割といった幅広い法律問題が協議されます。
また、離婚調停とセットで、婚姻費用分担請求の調停申し立てが行われることも非常に多いです。婚姻費用とは、社会生活を送る上で必要となる生活費をいいます。
離婚調停の期間と回数
離婚調停を含めた婚姻関係の調停手続き(審判含む)の解決までの期間は、司法統計によれば6か月から1年が平均的です。離婚調停が解決までに実施される回数は、1回から3回の割合は50.84%、4回から10回の割合は39.49%、11回から20回の割合は2%となっています。
関連記事:離婚調停の期間は6か月から1年|最短解決に必要な条件を弁護士が解説 – 大阪なんば・心斎橋の弁護士に相談なら難波みなみ法律事務所
離婚調停における不利な発言・言葉とは
離婚調停は、話し合いを通じて離婚条件の合意を目指す手続きです。ただ、話し合いだからといって、好き勝手に発言をしても良いわけではありません。
できるだけ有利に調停手続きを進めるためにも、調停委員や裁判官の心証を害さないよう、不利になる発言を確認しておくことが大事です。
虚偽・誇張・矛盾する発言を行う
事実に反する嘘の発言や、嘘ではないとしても誇張するような発言は厳に慎むべきです。虚偽の発言を行うと、調停委員から信用を得られず有利に事を運べなくなります。また、以前の発言とは矛盾するような発言も、発言の信用性に疑いの目を向けられるため控えましょう。
相手方を非難・批判する発言を行う
夫婦関係が悪化している状態ですから、相手方をついつい非難する発言をしがちです。しかし、離婚調停手続きは夫婦喧嘩をする場ではありません。相手方を非難する発言を繰り返してしまうと、解決できるものも解決しにくくなってしまいます。詳細は後述します。
異性との交際に言及する
後述するように、別居や離婚調停をしているからといって、配偶者以外の異性との交際が常に許容されるわけではありません。異性との交際に言及すると、不貞慰謝料を請求される可能性があります。また、有責配偶者として離婚請求が認められなかったり、婚姻費用の請求に不利に働いたりするケースもあります。言う必要のないことは言わないようにしましょう。
感情心情的・抽象的な発言ばかり行う
具体性に欠ける発言に終始することは控えるべきです。感情的・抽象的な発言ばかりしていると、自身の主張が調停委員に全く伝わりません。具体的な事実関係に沿って、端的に主張を伝えるべきです。
質問に対して回答しない
離婚調停手続きでは、調停委員から調停に至った事情や家族関係、離婚条件に関する質問が行われます。調停委員の質問に対して適格に回答しなければなりません。質問に対して率直に回答せずに関連のない発言ばかりしていると、限られた時間を無駄に使ってしまい、伝えたい事項を伝えられません。
離婚調停中にやってはいけないこと|9つの注意点
離婚調停中にやってはいけない注意点は、主に以下の9つです。
離婚調停中の9つの注意点 1.安直な合意 2.調停の無断欠席 3.相手や調停委員への暴言や批判 4.全く譲歩しない姿勢を示すこと 5.調停の録音・録画 6.嫌がる相手への接触(直接連絡) 7.子どもを連れ去ること 8.異性との浮気・不倫(不貞行為) 9.財産を勝手に処分すること ▶関連記事:離婚調停の服装|調停手続の流れや調停委員との話し方を弁護士が解説 |
安直な合意
離婚調停では、安直な合意は絶対にしてはなりません。
そもそも調停というのは、裁判所を利用した話し合いの延長線でしかありません。極端な話をすれば、どちらか一方でも離婚条件等に合意しなければ、離婚調停は不成立で終了します。お互い譲歩をしなければ調停は成立しないのが現実です。
しかし、早く終わらせたいあまり、過度な譲歩はするべきではありませんし、納得できない条件があるのであれば、無理に合意する必要もありません。
安直な合意による不利益
たとえ本意ではないとしても、調停を成立させてしまうと当事者双方は調停の内容に拘束されます。調停の成立により作られる調停調書は、確定判決と同様の効力を持つため強制執行可能となります。
そのため、合意事項を守らない場合には、差押えを受ける可能性があります。例えば、預貯金や給与の差押えが行われるリスクがあります。
合意は撤回できない
もし、納得できない条件があるにも関わらず、安直な合意をしてしまうと後から覆すことができなくなってしまいます。たとえ弁護士に依頼したとしても、一度成立してしまった調停は簡単には覆せません。安直な合意だけは絶対にしてはなりません。
調停の無断欠席
離婚調停では、無断欠席だけはしないようにしてください。無断欠席をすると、裁判官や調停委員の心証に著しい悪影響を与えてしまいます。また、離婚調停を正当な理由もなく欠席してしまうと5万円以下の過料を科される可能性もあります。
そもそも調停は1か月に1回程度、1日に2~3時間程度、平日の日中に開かれます。
初回については申立人側の予定を考慮しつつも、裁判所側が相手方の都合を考慮せずに一方的に期日指定します。そのため、初回期日については、相手方がその都合により出席できないことは比較的多くあります。
しかし、2回目以降は裁判所・調停委員・申立人・相手方と、全員の予定を調整した上で決められます。弁護士がついているのであれば、ここに弁護士の予定も踏まえて調整するため、欠席をすると全員に迷惑をかけることになります。どうしても調停に参加できない予定ができたとしても、無断欠席だけはしないようにしてください。
相手や調停委員への暴言や批判
離婚調停では、相手や調停委員への暴言は絶対に吐かないようにしてください。離婚調停で見極めようとしているのは、結婚生活を破綻させる原因となった経緯と具体的な事実です。相手への不満をぶつけるだけでは、調停委員が事実関係を判断するのは困難であり、調停が好転することはありません。どうしても気持ちが収まらない場合は、原因を示す具体的な事実を伝えるようにしましょう。
制御されていない感情を爆発させると、その行為自体が「結婚生活の継続を困難にさせている」と捉えられかねません。また、調停委員を批判するような言動も厳に慎むべきです。
離婚調停は感情的になり易い
離婚調停では、夫婦関係が悪化した夫婦間の争いです。そのため、ただでさえ感情が昂り冷静な対応は難しい状況です。
調停委員が相手の肩を持つと誤認
当事者双方は、調停手続で直接対面して協議することはできません。そのため、一方当事者の言い分は、調停委員を通じて他方当事者に対して伝わります。これはあくまでも調停委員の主張や意見ではなく、当事者のうち一方の主張を伝達するだけです。
しかし、当事者の言い分であるにも関わらず、調停委員の意見と勘違いしてしまい、調停委員が相手の肩を持っていると誤認してしまうケースが非常に多いです。暴言や批判に発展しかねないため、冷静に考えるようにしましょう。
時間的な制限による不満
1回の調停期日は2時間前後という時間的な制約の下で進行されます。当事者の双方が入れ替わりで調停室に入室し、調停委員と裁判官との評議が行われます。そのため、第1回調停期日における1人当たりの持ち時間は30分から40分程となってしまいます。
当事者としては、『もっと話を聞いてほしい、言い分を述べたい。』と考えます。しかし、時間的な制約があるため、言い分を述べる十分な機会を得ることができません。そのため、調停委員の対応に不満を抱き、暴言を吐くことがあります。
調停委員との良好な関係を築く
離婚調停を有利に進めるためには、調停委員との良好な関係を構築するのがポイントです。間接的に目にするあなたの身なりや言動は調停委員の反応に多少の影響を与えます。良識のある服装、丁寧で敬意を込めた言動を心掛けましょう。
「暴言を吐くことが自身を不利な状況に招く」とわかっていても、離婚調停はただでさえ相手への不満が爆発しやすく、感情的になりやすい場です。自分でうまく感情をコントロールできなくなる恐れがあるため、暴言だけは吐かないよう心に強く言い聞かせてください。
調停期日においては、調停委員とは必ず対面することになります。調停委員に対して暴言を吐いてしまえば、そのまま裁判官へと伝わりますし、調停不成立となった後の離婚裁判に悪影響を及ぼす危険もあります。
調停委員は、あくまでも中立な立場にあることを頭に入れて、離婚調停中は、いつも以上に冷静さを失わないように心掛けてください。
全く譲歩しない姿勢を示すこと
離婚調停は、裁判所において調停委員を通じて話し合い、合意に至るための手続きです。ですから、調停を成立させたいのであれば、お互いが譲歩し合う必要があります。一方のみが譲歩して成立させる調停は通常考えられません。
それにもかかわらず、一歩も譲らない強硬な姿勢を取ると、およそ調停には馴染まないと判断され、調停が不成立となる可能性があります。調停が不成立となれば離婚訴訟を提起することになります。しかし、離婚訴訟は離婚調停と比べて時間も労力も要します。
一定程度強気な態度も必要ですが、強気な態度にも限度があります。事案の流れを踏まえて、時には歩み寄る姿勢を見せることも重要です。離婚調停は対話の場であり、円満な合意を見つけるための重要なプロセスと考えましょう。
調停の録音・録画
離婚調停では、録音・録画することは認められていません。
家事調停の手続の期日における写真の撮影、速記、録音、録画又は放送は、裁判長の許可を得なければすることができない(家事事件手続規則第126条2項、民事訴訟規則第77条)
録音することで調停の様子を後から見返したいと感じる方も中には多くいらっしゃいます。しかし、どのような理由があったとしても録音・録画が認められることは基本的にはありません。
裁判官が許可した場合は可能ですが、まず許可することはないと考えておきましょう。
そのため、裁判所内の写真撮影や動画撮影は絶対に行わず、メモ用紙と筆記具を持参して、事後に忘れないように記録を取ることを心掛けてください。
嫌がる相手への接触(直接連絡)
離婚調停中は、嫌がる相手への接触はしないようにしてください。
そもそも離婚調停は、調停委員が当事者の話を交互に聞くことで話し合いが進んでいくことから、基本的に顔を合わせることはありません。そのため、なかなか話し合いが進まないことに苛立ってしまい、直接相手と連絡を取ってしまう方が多くいらっしゃいます。
しかし、2人だけの話し合いで解決しないから、調停へと話し合いの場を移していることを鑑みれば、本末転倒であると誰もが容易に理解できるはずです。子どもがいる場合、一切接触しないというのは不可能ですが、離婚調停に関する話題は積極的に出すべきではありません。特に、嫌がっている相手に対して、つきまといや嫌がらせをするなどの接触を持つことは控えましょう。
接近禁止命令が出る場合も
嫌がる相手へ接触しようとしていると、裁判所から接近禁止命令が出される可能性があります。接近禁止命令とは、6か月間、被害者の身辺につきまとったり、自宅等の付近を徘徊したりしないように命じる保護命令です。
配偶者に対して身体に対する暴力や生命等に対する脅迫を行っていることを前提としますが、離婚調停となっているのに、執拗に接触すると、被害者による申立てがあれば裁判所から接近禁止命令が発令される可能性が高いです。
保護命令が出ているにも関わらず、つきまといを辞めなければ、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金を課される可能性があります。
慰謝料請求の状況証拠になることも
接近禁止命令等の保護命令が出されている状況は、DV等の離婚原因を裏付けます。
さらには、DVの慰謝料請求を根拠付ける証拠にもなり得ます。
そのため、離婚調停が係属している状況で、相手に執拗に接触することは、不利になることはあっても有利になることはありません。相手への理由のない接触は絶対に控えましょう。
子どもを連れ去ること
子どもと別居して暮らしている親が、離婚調停中に面会交流の際に子どもを連れ去ってしまうケースがあります。離婚調停中に子どもを無断で連れ去る行為は、夫婦の信頼関係だけでなく、その後の離婚協議や子どもの成長にもマイナスの影響を与える可能性があります。さらに、親権者として「不適格」と見なされるだけでなく、面会交流の実施が困難と判断される可能性があります。
また、実の親による子供の連れ去りであっても、「未成年者略取及び誘拐罪」に問われるリスクがあります。このように、子どもの一方的な連れ去りは、法的な問題をさらに引き起こす恐れがあります。親権や面会交流に関する問題は、離婚調停の重要な焦点となりますので、慎重に対処する必要があります。
異性との浮気・不倫(不貞行為)
異性との交際についても注意するべきです。
調停申立後の異性との交際は、婚姻関係の破綻後の行為として、慰謝料請求の対象にはなりにくいことが多いでしょう。
ただ、調停申立ての時期と別居の時期が近い場合、調停申立後の交際であっても、別居前から交際関係があったと推認される、つまり、不貞行為であると認定されるケースもあります。さらに、調停申立てをしていたとしても、事情によっては婚姻関係の破綻が否定されるケースも中にはあります。
有責配偶者となることも
離婚調停中の不貞行為であっても、不貞行為の時期や不貞相手との関係性等から、別居前から不貞関係にあったと認定されてしまうと、有責配偶者になってしまうリスクがあります。
有責配偶者とは、不貞行為をしたり暴力(DV)を振るったりするなど、自ら離婚原因を作り出した配偶者をいいます。有責配偶者による離婚請求については、かなり条件が厳しく設けられており、交渉が非常にハードになりがちです。
有責配偶者と認定されないようにするためには、異性との交際には十分に注意をするべきです。
TIPS!有責配偶者による離婚請求 有責配偶者の離婚請求が認められるためには以下の条件を満たすことが必要です。 ①未成熟子がいないこと ②別居期間が相当長期に及んでいること ③離婚したとしても相手方が苛酷な状態とならないこと |
財産を勝手に処分する
財産分与は、婚姻生活中に夫婦で築いた財産を、離婚の際にそれぞれの貢献度に応じて配分する制度です。離婚時には、法律によって一方の配偶者が他方に対し財産の分与を請求できる権利が与えられています。(民法第768条1項)したがって、離婚調停中に財産を勝手に処分してはいけません。
財産が一方の配偶者の名義で登録されている場合でも、夫婦の協力によって築かれたのであれば、実質的には共有の財産であり、財産分与の対象となります。
離婚後、一方の配偶者が他方に対し財産の分与を求める制度です。
▶︎関連記事:財産分与と割合とは?離婚問題に精通する弁護士が解説
参考情報:財産分与について|法務省
離婚調停で重要な4つのポイント
離婚調停では、以下の重要な4つのポイントを押さえることで、話し合いを自身に有利な方向へ持っていける場合があります。
4つの重要なポイント ・調停委員の心証を良くすること ・陳述書を作成すること ・冷静さを失わないこと ・メモを用意しておくこと |
調停委員・裁判官の心証を良くする
離婚調停では、調停委員の心証がそのまま裁判官に伝わります。常に裁判官が話し合いの場にいるのは稀ですが、最終的な判断を下せる立場にあります。調停委員・裁判官の心証は、離婚調停を有利に進めたいのであれば非常に重要です。
陳述書を作成する
1回の調停手続きは、1時間20分から2時間程しかありません。限られた時間の中で、矛盾なく適格に発言をするのはそう簡単ではありません。限られた時間の中で的確に離婚条件を提示して、言い分を述べるために陳述書を作成して提出するようにします。
関連記事:離婚調停の陳述書の書き方とは?陳述書の目的・注意点や文例を弁護士が解説
冷静さを失わない
離婚調停の場では、冷静さを失わないように常に心掛けておきましょう。怒りや悲しみが高まり、物事が進展しづらくなるケースがありますが、感情的にならず、冷静な態度を保つことが重要です。
感情的になってしまうと、調停委員に与える心証が悪くなるばかりか、自らの発言で自らの首を絞めることにもなりかねません。ご自身が感じたこと、主張については積極的に発言していくべきですが、冷静さを失った状態での発言は避けるようにしてください。
心情的な主張を一切しないのは難しいかもしれませんが、相手に対する悪口や主観的な主張に固執するあまり、主張するべき事項を主張しないような事態は避けなければなりません。
さらに、直接的には関係がない過去の過ちや争いを引きずらないように注意が必要です。これは、調停中の対話を妨げるだけでなく、解決策を見つけるための時間やエネルギーを浪費することにもなります。感情をうまくコントロールし、常に冷静さを失わないように話し合いを進めていきましょう。
メモを用意しておく
上述したとおり、調停中は録音・録画は認められていません。しかし、メモを取ることは禁止されていないため、自分用の備忘録を残したいのであれば、ノートや筆記用具を持ち込んでメモを取っておきましょう。
また、調停期日に備え、自身が考えていること、伝えたいこと、主張したいことなどをメモにまとめておき、当日持参するのもおすすめです。特に、調停の場で緊張してしまい、言いたいことがまとまらなくなってしまう方は、あらかじめメモを用意しておけば調停の場で頭の中を整理できるメリットがあります。
さらに、調停期日の終了時に調停委員から、次回期日までに準備する書面や書類とこれらの提出期限が指示されることが多くあります。メモをして、指定された期限までに書面等の準備をして提出するようにしましょう。
離婚調停の流れ
上記で説明した「やってはいけないこと」を踏まえながら、離婚調停の流れを解説していきます。
調停申立前の準備
調停手続きは、調停委員を介した話し合いの場ではあります。話し合いといっても、調停手続きを有利に進めるためには、離婚原因や慰謝料の根拠などを客観的な証拠で裏付けることが非常に大事です。
収集しておくべき証拠の一例は次のとおりです。
- 不貞行為の証拠(LINEメッセージ、写真・動画、探偵社の調査報告書)
- 配偶者の財産の資料
- DV被害の資料(診断書、動画・写真、診断書)
- モラハラの日記
家庭裁判所への調停申立て
離婚調停は、家庭裁判所へ申立をすることではじまります。
調停の申立てに際して準備する必要書類は以下のとおりです。
申立時に必要な書類
- 調停申立書
- 事情説明書
- 戸籍謄本
- 年金分割の情報通知書
- 収入印紙代
- 郵便切手代
一般的には、離婚を希望する側が、相手方となる配偶者の住所地の家庭裁判所に調停申立書と事情説明書を提出します。
調停申立書の請求欄には、離婚請求のほか、①子の親権者、②子の養育費、③財産分与、④慰謝料請求、⑤年金分割を選択する欄があるため、希望する請求にチェックを入れます。
さらに、離婚調停の申立は、「戸籍謄本」、「年金分割を求める情報通知書」といった添付書類の他、印紙と郵券を裁判所窓口に提出することで受け付けてもらえます。
TIPS! 提出する裁判所(管轄裁判所)
離婚調停の申し立てをする家庭裁判所は、申立人の住所地ではなく相手方の住所地の家庭裁判所となります。例えば、申立人が大阪市に居住、相手方が東京都に居住していれば、大阪家庭裁判所ではなく東京家庭裁判所となります。
離婚調停の申立ての費用
離婚調停の申立てをする場合には、離婚調停の申立書と事情説明書といった必要書類と共に、印紙と郵便切手を提出することを要します。
また、申立書の添付書類として夫婦の戸籍謄本も提出しなければなりません。
そのため、申立てにあたって必要となる費用は、印刷・郵便切手・戸籍謄本の取寄費用となります。
申立手数料(収入印紙代) | 1200円 |
郵便切手代 | 1,130円分(140円、84円×5枚、50円×5枚、20円×10枚、10円×10枚、1円×20枚*大阪家庭裁判所の場合) |
戸籍謄本 | 450円程 |
呼出状の発送
離婚調停の申し立てが受理されると、当事者双方へ家庭裁判所から呼び出し状が発送されます。呼び出し状には、初回の調停期日の日時が記載されています。
裁判所から発送される呼び出し状には、申立人が提出した離婚調停申立書の写し等の書類が添付されるだけでなく、家庭裁判所の場所や調停の日時、担当書記官名や担当部署の連絡先などが記載された書面も同封されます。
照会書(答弁書)の提出
離婚調停の申立てがあった場合、裁判所から相手方に対して、調停期日の呼出状を送付します。その他、申立書の写しや照会書等も同封されています。申立に至る詳細な理由の記載された事情説明書は同封されていないことがありますので、その場合には家庭裁判所に謄写申請を行います。
照会書には、離婚、子の親権や養育費、財産分与等の離婚条件について幅広く質問事項が記載されています。
相手方は、相手方の主張等を照会書や答弁書に記載して裁判所に提出するようにします。
第1回目の調停期日
調停期日では、申立人と相手方は、別々の待合室で待機します。調停委員から、交互に呼ばれますので、調停室に入室します。申立人と相手方が同室することはなく、離れた待合室で待機しますので、裁判所内で顔を合わせないように配慮してもらえます。
調停委員から、別居に至る経緯や離婚原因等について聴き取りを受けますのでの、上記の注意点を留意しながら回答していきます。
1回の調停期日の時間は1時間半から2時間程度ですので、調停室で話をする1人当たりの時間はおおよそ30分から45分です。
・午前の部 10時〜11時20分
・午後①の部 13時20時〜14時40分
・午後②の部 15時〜16時20分
次回期日の日程調整
双方から時間の範囲内で聴き取りを終えれば次回期日を調整します。次回期日は1か月半前後先の日程となります。日程調整時には、調停委員から次回期日までの宿題や提出書類の案内が行われます。
2回目以降の調停期日
2回目以降の調停期日においても、初回期日と同様の流れで進行します。
調停委員の仲裁を通じて、離婚や財産分与、親権といった各種問題に合意できれば、調停が成立します。双方が合意できなければ、調停手続きを続行させ、調停期日を重ねます。
調停成立
当事者双方が合意できれば、その内容で調停が成立します。調停の成立により調停離婚となります。
調停成立時には、担当裁判官が調停の内容を読み上げていきます。この調停内容(調停条項)を読み上げる際には、当事者双方が同室することが原則となります。
調停成立時には、担当する裁判官が調停条項の読み上げを行います。調停条項とは、調停調書に記載する合意内容をいいます。
調停成立後の手続き
調停成立となった場合は、裁判所により「調停調書」と呼ばれる書面が作成されます。
調停調書は判決と同様の法的効力を持つ書面です。調停調書にて金銭の支払いについて記載があれば、相手が支払わない場合には、強制的に財産を差し押さえることが可能です。
調停成立したとしても、以下で述べるように色々な手続きをする必要があります。
離婚届の提出
調停の成立により離婚それ自体は成立しています。しかし、戸籍には離婚の事実は自動的に反映されません。そこで、妻側が市区町村役場に離婚届と調停調書の省略謄本を提出することで、戸籍簿上も離婚が反映されます。
通常、離婚により戸籍の筆頭者である夫の戸籍から妻が除籍されます。そのため、離婚届の提出は、妻が行うことが多いでしょう。
なお、調停成立後、離婚届は10日以内に提出しなければなりません。もし届け出が遅れてしまうと、3万円以下の過料が科せられる可能性があるため、離婚届の提出は早急に行いましょう。
新戸籍の編製
離婚に伴い結婚前の苗字に戻ることになります。
これを復氏といいます。復氏の場合の戸籍の取り扱いは、結婚前の戸籍に戻る、新戸籍を編製するのいずれかになります。
婚姻中の苗字を使い続ける場合(婚氏続称)には、新戸籍を作ることになります。
氏の変更許可
戸籍謄本の処理はあくまでも妻の戸籍上の取り扱いです。たとえ妻が離婚後の戸籍の処理をしたとしても、子供については夫の戸籍に入ったままとなります。
母が親権者となる場合、家庭裁判所に対して、子供の氏の変更許可の申立てをする必要があります。
婚氏続称により母と子供の苗字が同じであっても氏の変更許可の申立てをする必要があります。
年金事務所に年金分割請求
離婚調停において年金分割をしている場合には、年金事務所に対して年金分割の請求をしなければなりません。調停成立により自動的に年金分割されるわけではありません。
年金分割は離婚成立の日の翌日から2年で請求できなくなります。
▶関連記事|離婚後の手続きを弁護士が解説|チェックリストも紹介しています。
離婚調停が不成立となる場合
調停不成立となった場合は、裁判所にて「不成立調書」と呼ばれる書面が作成されます。
その後は、再度の話し合いで協議離婚成立を目指すか、離婚訴訟を提起するかをしなければ、離婚が成立することはありません。
再度の話し合いをする場合
再度の話し合いをする場合は、離婚調停で話し合った内容を踏まえて、もう一度お互いの意見を交換するのが良いでしょう。
一度調停委員という第三者を挟んでいることからお互いの視野が広がり、新しい解決策が見つかる可能性は十分あります。
離婚裁判(離婚訴訟)を提起する場合
離婚訴訟を提起する場合、裁判所から取得できる「調停不成立調書」や「事件終了証明書」を添付し(離婚訴訟の管轄が調停と同一の場合は不要)、訴状を提出しなければなりません。
そもそも離婚というのは、「調停前置主義」といって、裁判の前に調停を経由している必要があるのです。調停を終えていなければ、原則として訴訟提起することはできません。
離婚調停の問題は弁護士に相談を
離婚調停でしてはいけない注意点に気を配っておけば、話し合いで不利になる心配はまずありません。ただ、有利になるわけでもないため、離婚調停を少しでも自身に有利に進めたいのであれば、本記事で解説した重要なポイントについて常に意識してみてください。
とはいえ、離婚というのはどうしても感情的になってしまうものです。感情をコントロールする自信がないという方は、弁護士に依頼を検討してみてください。弁護士であれば、調停の場に同席できるだけでなく、第三者の立場から代わりに落ち着いて発言してもらえます。また、調停委員も弁護士の発言には耳を傾ける傾向にあるため、話し合いを有利に進められます。
離婚調停でお悩みの方は、まずは弁護士に相談することからはじめてみましょう。当事務所では初回相談30分を無料で実施しています。対応地域は、大阪府全域・和歌山市・和歌山県・奈良県です。その他関西エリアもお気軽にご相談ください。