不倫・浮気は、1人では行えません。
不貞行為を行った配偶者だけでなく、その相手となった不貞相手の存在があって初めて不貞行為を行えます。
そのため、被害を受けた配偶者は不貞配偶者と不貞相手に対して不貞慰謝料を請求することができます。
しかし、不貞配偶者と不貞相手の両方から慰謝料を二重取りすることは原則として認められません。
本記事では、不貞行為の慰謝料を二重取りできるのかを弁護士が解説します。
不貞行為とは何か
不貞行為とは配偶者以外の異性と性行為を行うことです。昨今では、異性ではなく同性との性的接触も不貞行為に含める考えもあります。さらに、性行為に類似する行為(口淫や手淫、前戯等)も不貞行為に含める考えもあります。
ただ、基本的には、不貞行為とは挿入行為を伴う性行為を指します。
不倫とは何か
不貞行為と似た概念として不倫があります。
不倫の方が不貞行為よりも馴染みのあるワードかと思います。
不倫は、性行為だけでなく、性交類似行為、デートする行為、愛情表現を含むLINEやメールのやりとりも含まれる可能性があります。
不貞は、民法で規定された離婚原因の一つですが、不倫は法律上の用語ではありません。
関連記事|不貞行為とは何か?どこからが不貞行為かを弁護士が解説します
慰謝料の二重取りはできない
慰謝料の二重取りとは、被害配偶者が、不貞配偶者から不貞慰謝料を受け取りながら、不貞相手からも不貞慰謝料を受け取ることです。
不貞慰謝料の法的性質
不貞行為は、不貞配偶者と不貞相手による共同で行う不法行為です。
そのため、不貞配偶者と不貞相手は、被害配偶者に対して、連帯して不貞慰謝料を負担します。不貞慰謝料額が150万円の場合、不貞配偶者Xと不貞相手Yは両者共に被害配偶者Aに対して、不貞慰謝料150万円を支払う義務を負います。
XとYのどちらかがAに対して、不貞慰謝料を支払えば、他方の不貞の当事者に対してもその効力が及びます。例えば、XがAに対して不貞慰謝料全額を支払えば、Aの不貞相手Yに対する不貞慰謝料も消滅することになります。
不貞配偶者と不貞相手が連帯して負担する債務を、法律上不真正連帯債務と言います。
求償権
不貞当事者のいずれかが不貞慰謝料を支払った場合、他方の当事者に対して支払った金額のうち5割前後の返還を求めることができます。これを求償といいます。不貞行為は、不貞配偶者と不貞相手の共同の不法行為であるからです。
XがAに対して不貞慰謝料150万円を支払った後、Yに対して半分の75万円前後を支払うように求めることができます。
二重取りは不当利得となる
不貞慰謝料は、どちらかが支払えば消滅します。
既に弁済により不貞慰謝料が消滅している以上、改めて不貞慰謝料を受け取る理由はありません。
そのため、不貞慰謝料の全額を受け取っておきながら、さらに不貞慰謝料の名目で金銭を受け取ることは不当利得となり、受け取った不貞慰謝料を返還する義務を負います。
二重取りができてしまう理由
被害配偶者が他方の当事者に秘密裏に不貞慰謝料の請求を行うことで不貞慰謝料の二重取りができてしまいます。
訴訟外の交渉であれば、請求を受けた不貞当事者が、他方の不貞当事者にこの事実を報告することなく不貞慰謝料を支払った後、他方の不貞当事者も、不貞慰謝料が既に支払われていることを知らずに不貞慰謝料の支払いに応じてしまうことがあります。特に、口外することや接触することを禁止する内容の合意書を作成する場合には、不貞慰謝料を支払ったことを不貞当事者間で共有されないことがあり、不貞慰謝料の二重払いを生じる原因となります。
二重取りを防ぐためには
二重取りができてしまう理由は、被害配偶者と不貞当事者の一方が秘密裏で交渉を行い、その内容や結果を他方の不貞当事者と共有しないことにあります。
そこで、不貞慰謝料を支払う場合には、事前又は事後の通知をすることで、不貞当事者の二重払いを防ぐことが大切です。
二重取りにならないケース
不貞配偶者と不貞相手の両方から慰謝料を回収しても二重取りにならないケースもあります。
全額の不貞慰謝料ではないケース
不貞当事者の一方が不貞慰謝料を支払ったとしても、それが本来認められる不貞慰謝料の全額に達しない場合です。この場合、全額の支払いを受けていない訳ですから、残りの部分を他方の不貞当事者に対して請求することは認められます。
例えば、不貞慰謝料額として150万円が妥当なケースにおいて、不貞配偶者から100万円の支払いを受けた後、不貞相手から残りの50万円を支払いを受けることは認められます。
離婚慰謝料であるケース
慰謝料には、離婚原因慰謝料と離婚自体慰謝料の二種類があります。
離婚原因慰謝料と離婚自体慰謝料
離婚原因慰謝料とは、離婚原因となった行為により受けた精神的苦痛に関する慰謝料です。離婚自体慰謝料とは、離婚するに至ったこと自体により受けた精神的苦痛に対する慰謝料です。
不貞行為であれば、離婚原因慰謝料は、不貞慰謝料を指し、不貞配偶者と不貞相手の両方に対して請求することができます。
不貞行為によって離婚するに至った場合には、配偶者に対してのみ離婚自体慰謝料を請求することができます。
離婚自体慰謝料を請求する
不貞行為によって離婚する至った場合、不貞相手から離婚原因慰謝料として不貞慰謝料の支払いを受けた後、不貞配偶者から離婚自体慰謝料の支払いを受けることは認められます。
ただ、不貞慰謝料は、離婚するに至った結果も考慮されて算定されている場合もあり、離婚原因慰謝料と離婚自体慰謝料を厳密に区別することは難しいことが多いでしょう。
また、離婚に際して、財産分与が支払われており、その財産分与の中に慰謝料的要素も含まれている場合には、離婚自体慰謝料を別途請求することはできません。
財産分与として支払われているケース
不貞配偶者が被害配偶者に対して、離婚時に金銭を支払っていたとしても、それが慰謝料ではなく財産分与であれば、不貞慰謝料は清算されていません。
そのため、別途、不貞慰謝料を不貞相手に請求することは認められます。
合意により支払うケース
不貞当事者の一方が既に不貞慰謝料を弁済していることを認識しながら、さらに金員を支払うことに合意する場合には認められます。
あるいは、不貞当事者と被害配偶者の三者間で合意をして、不貞当事者がそれぞれ不貞慰謝料を支払う場合も認められます。
不貞慰謝料の請求方法
不貞慰謝料の二重取りは原則として認められません。仮に不貞慰謝料を二重取りしてしまうと、不当利得として返還を求められるリスクもあります。そのため、このリスクを踏まえた上で不貞慰謝料の請求を進めるべきです。
証拠の収集
不貞慰謝料を請求するためには、不貞行為を裏付ける客観的な証拠が重要です。不貞行為の存在は、慰謝料を請求する被害配偶者において行わなければなりません。
そのため、客観的な証拠がない状況で慰謝料請求すると、相手方がこれを積極的に認めない限り、不貞行為の証明ができず、結果として慰謝料請求は棄却されます。
不貞行為の証拠としては、性行為の写真・動画、ラブホテルの入退室の写真、探偵社の調査報告書、性行為に関するLINEメッセージ等があります。
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慰謝料請求の通知をする
不貞配偶者または不貞相手に対して、不貞行為の慰謝料請求をします。慰謝料請求は口頭でも行えますが、請求内容を明確にすると共に被害配偶者の本気度を伝えるため、内容証明郵便により慰謝料請求の通知をするべきでしょう。
交渉を行う
慰謝料請求後、相手方と交渉を進めます。
交渉の末、合意できれば合意書を作成します。合意書には、慰謝料の金額や支払方法、口外や接触の禁止などを定めます。
訴訟提起をする
交渉しても合意に至らない場合やそもそも相手方から何らの応答も得られない場合、不貞慰謝料の訴訟提起をすることになります。
訴訟手続きでは、原告と被告の双方が不貞行為に関する主張反論を繰り返し行います。
審理がある程度進んだ段階で、裁判官から和解の提案が行われます。多くの事案では、裁判官からの提案を受けて和解が成立します。
和解が成立しなければ、証人尋問(当事者尋問)を行った上で判決手続となります。
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不貞慰謝料の問題は弁護士に相談を
不貞慰謝料の請求にあたっては、証拠を計画的に収集した上で、相手方に対して慰謝料の通知を出していきます。相手方との交渉や訴訟には、多くのストレスを伴います。
不貞行為が原因となって離婚をする場合には、不貞慰謝料の問題以外の様々な法律上の問題も協議しなければならず、より一層の負担が生じます。
弁護士に依頼することで、交渉や訴訟手続きの一切を一任できます。
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