相続手続きには、必ずといっていいほど戸籍謄本が必要となります。なぜなら、戸籍謄本の取り寄せをしなければ相続人が誰であるかを確定できないからです。
そのため、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人との相続関係がわかる戸籍謄本をすべて取り寄せなければなりません。
本記事では、相続手続きで必要となる戸籍謄本の取り寄せ方法について解説します。
相続に必要な戸籍を取得する4つの方法
戸籍の取得方法には、①市町村役場に出向いて取得する方法②郵送により取り付ける方法③コンビニ交付の方法④オンライン申請による方法があります。
いずれの方法で戸籍謄本を取得する場合でも、亡くなった人(被相続人)の本籍地を知っておくことが必要です。戸籍謄本は、本籍地を管轄する市町村役場しか発行できないからです。被相続人の住民票を取り付けたり、運転免許証のICチップに本籍地が登録されていますので、スマホアプリでICチップを読み取っての確認、もしくは警察署や運転免許センターの端末で調べるなどして、被相続人の本籍地を調べるようにしましょう。
以下では、相続で必要となる戸籍謄本の取得方法や特徴を見ていきましょう。
戸籍謄本を郵送で取り寄せる方法
戸籍謄本が保管されているのは、市区町村役場になります。よって、戸籍謄本を取り寄せたい場合は、役所の窓口で取り寄せることになります。しかし、遠方の場合はわざわざ足を運ぶ負担を抑える意味でも、郵送での取り寄せが非常に有効です。
以下では、戸籍謄本を郵送で取り寄せる方法についてご紹介します。
必要な書類
郵送で戸籍謄本を取得する際は、市区町村役場のホームページから、「戸籍謄抄本等交付申請書」をダウンロードしましょう。郵送用の申請書が用意されていますので、必要事項をすべて書き込み、返信用封筒を同封した上で発送しましょう。また、身分証明書を同封する必要があるため、運転免許証・マイナンバーカード・健康保険証など、住所を確認できる本人確認書類のコピーを用意します。
なお、必要事項の記載さえあれば、書式の指定まではされませんが、市区町村役場側の手続き処理の関係上、各ホームページから指定の書式を取得するのが好ましいです。
費用(発行手数料)
戸籍謄本の取得費用は、1通450円となります。郵送で申請する場合、現金を封筒に入れることはできないため、代わりに郵便局で「定額小為替」を購入し、同封しましょう。定額小為替とは、現金を直接封筒に送ることができない際に利用される「為替証書」です。簡単に言えば小切手のようなものです。定額小為替は購入手数料が100円かかります。
また、戸籍には後述するようにいくつか種類があり、「改正原戸籍(かいせいはらこせき)」、「除籍謄本」を申請する場合は、1通750円になるため注意が必要です。
郵送で戸籍謄本を申請する際は、小為替の他にも返信用封筒に切手を貼る必要があるため、往復分の切手代金(一般的には80円×2枚)が費用として必要となります。
郵送で取り寄せるメリットとデメリット
戸籍謄本を郵送で取り寄せるメリット・デメリットについても見ていきましょう。
郵送のメリット
戸籍謄本を郵送で取り寄せるメリットは、わざわざ窓口まで足を運ぶ時間と手間が省ける点です。特に、遠方の市区町村役場に足を運ぶのは大変な労力です。お仕事が忙しいなどの理由で戸籍謄本の取得に足を運ぶのが難しい方は、郵送申請を利用しましょう。
郵送のデメリット
戸籍謄本を郵送で取り寄せるデメリットは、定額小為替や切手といった費用が余計にかかってしまう点です。また、窓口ですぐに受け取れるわけではないため、市区町村役場での処理と郵送の往復期間を踏まえても、2~3週間程度かかることを見越さなければなりません。即座に戸籍謄本が手元に欲しい場合に、郵送申請は向いてないと言えるでしょう。
窓口で取得する方法
戸籍謄本は、各市区町村役場の窓口で取得することも可能です。
申請する際は、市(区・町・村)民課の窓口付近にある、戸籍謄抄本交付申請書に必要事項を記載し、受付番号を取得、自身の番号が呼ばれるまで待ちましょう。
細かな取得方法については市区町村役場によって若干異なりますが、窓口にて申請書の内容を確認し、不備がなければ別の会計窓口で費用を支払えば戸籍謄本を取得できます。
もしわからないことがあれば、近くの職員に尋ねるのが良いでしょう。
窓口で取り寄せるメリット
窓口で取り寄せる場合、市町村役場の職員が申請用紙の書き方や費用などを丁寧に教えてもらえます。誤記や間違いがあっても、その場で修正できる点もメリットといえます。
窓口で取り寄せるデメリット
窓口で取り寄せる場合、市町村役場まで出向く必要があるため、出向くための時間・労力・費用を要します。近場の役場であれば別ですが、遠方の場合にわざわざ出向くことはデメリットが大きいといえるでしょう。
コンビニ交付の方法
戸籍謄本は、コンビニでも取得することができるようになりました。これを「コンビニ交付」と言います。
コンビニ交付は、マイナンバーカード又は住民基本台帳カードを用いて全国のコンビニのキオスク端末から戸籍謄本や住民票等の公的な書類を取得できるサービスを言います。居住する市区町村と本籍地の市区町村が異なる場合でも、申請手続きを行うことで戸籍謄本を取得することができます。また、土日祝日や早朝・深夜でも取得することができる点で、その他の取得方法よりも便利です。
コンビニ交付により取得できる書類は次の書類があります。
- 住民票
- 印鑑登録証明書
- 戸籍証明書(全部事項証明書、個人事項証明書)
- 戸籍の附票
他方で、除籍謄本、改製原戸籍、住民票の除票を取得することは出来ないため注意が必要です。
コンビニで取り寄せるメリット
キオスク端末の設置された全国のコンビニで利用できます。本籍地ではないコンビニでも戸籍謄本を取り寄せることができる点でメリットがあります。また、役場で開いていない時間(早朝から夜まで)や土日でも利用できる点もメリットといえます。
コンビニで取り寄せるデメリット
コンビニで戸籍謄本を取り寄せるためには、マイナンバーカードの発行を受けていること、戸籍謄本のコンビニ交付に市町村役場が対応していることが必要となります。また、本籍地が異なる場合には、事前の申請をすることが必要となるため、時間と手間がかかります。
オンライン申請により取り寄せる方法
スマートフォンやパソコンから、戸籍謄本の取り寄せができます。
署名用電子証明書を格納したマイナンバーカードを持っており、それを読み取れるスマートフォンやパソコンを持っていれば、戸籍謄本の取り寄せをオンラインで行うことができます。
発行手数料と郵送料をクレジットカード決済またはオンラインID決済等で支払います。
オンライン申請のメリット
スマートフォン等の電子機器からオンライン申請できるため、わざわざ窓口に出向くことなく手軽に戸籍謄本の取り付けをすることができる点はメリットといえます。
オンライン申請のデメリット
スマートフォンやパソコンを自分自身で操作して、オンライン申請を行う必要があるため、窓口交付のような職員によるサポートはありません。また、署名用電子証明書を格納したマイナンバーカードを持っていない場合には利用することができません。
相続手続きで戸籍謄本が必要な理由
相続手続き戸籍謄本が必要な理由は、主に以下の2つです。
- 相続人を漏れなく確認するため
- 戸籍謄本の提出を求められるため
①相続人を漏れなく確認するため
相続人を漏れなく確認するためにも戸籍謄本の取得は必須です。
というのも、過去に被相続人が別の誰かと婚姻していて、その間に子どもがいたとなれば、その子どもは相続人となります。また、婚姻していなかったとしても、家族の誰も存在を知らない子を認知している可能性だってあります。このように相続では、家族の誰も知らなかった相続人が、後になって出てくるケースは決して珍しいことではありません。相続人を漏れなく確認するためにも、必ず被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得しましょう。
関連記事|法定相続分とは?法定相続分を分かりやすく弁護士が解説します
②戸籍謄本の提出を求められるため
相続が開始すると、金融機関での預貯金の解約や払い戻し、不動産の名義変更(相続登記)といった手続きを取らなければ、相続財産を自由にすることはできません。
その際、必ず提出を求められるのが相続関係のわかる戸籍謄本一式です。
戸籍謄本が必要となる相続手続き
戸籍謄本の提出を求められる相続手続きは様々なものがあります。戸籍の添付が必要とする代表的な相続手続きは次のとおりです。
- 遺言書(自筆証書遺言)の検認手続
- 相続税の申告
- 不動産の相続登記
- 預貯金の名義変更・解約等の銀行手続
- 相続放棄申述の申立て
- 遺産分割調停の申立て
関連記事|銀行預金の相続に期限はあるのか?預貯金の相続手続きを弁護士が解説
関連記事|相続放棄の期限|相続放棄の手続きとやり方について弁護士が解説します
相続手続きで必要となる戸籍謄本の種類
相続手続きで必要となる戸籍謄本の種類は以下の3つです。
- 現在戸籍
- 除籍謄本
- 改製原戸籍
①現在戸籍
単に戸籍と表記することもありますが、他の戸籍と区別するために現在有効な戸籍であることから「現在戸籍」と呼ばれることがあります。
相続人の現在戸籍が必要となります。
②除籍謄本
1つの戸籍には1人だけでなく、複数名が入ることができますが、離婚や結婚、死亡などによって戸籍から出ていった(除籍)場合、その戸籍は「除籍謄本」と呼ばれます。
③改製原戸籍
戸籍は現在までに戸籍法の改正によって何度か様式を変更しています。様式変更前の戸籍を「改製原戸籍」といいます。
抄本とは
戸籍は謄本の他に抄本と呼ばれるものもあります。抄本とは、戸籍の中で申請時に指定された者についてのみ記載されたものです。相続手続きで戸籍抄本を使用することはほぼないため、申請する際は必ず戸籍「謄本」を取得してください。
相続の戸籍謄本は何か月以内のものが必要か?
戸籍謄本には、特段使用期限のようなものはありません。ただし、金融機関によっては、発行日から3か月以内、6か月以内などと指定をしているケースもあります。あらかじめ相続手続きの種類に応じて戸籍謄本の期限を確認しておくことが必要です。
相続手続きに必要となる戸籍謄本は何通か?
相続手続きに必要となる戸籍謄本は1通です。2通以上を求められることはありません。
ただし、各戸籍謄本を1通しか取得していないと、金融機関等へ原本を提出した後、その返却を受けるまで次の相続手続きに着手できず、手続きが停滞することがあります。そのため、相続手続きを迅速に行うために、同じ種類の戸籍謄本を2通以上取り寄せる場合もあります。
ケース別で必要となる戸籍謄本
相続人が誰かによって取得する戸籍謄本は変わります。ケース別で解説します。
相続人が配偶者と子供の場合
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍や改製原戸籍)
- 配偶者と子供の戸籍謄本
相続人が配偶者と親(直系尊属)の場合
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍や改製原戸籍)
- 被相続人の子供が既に死亡している場合には、その子供の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍や改製原戸籍)
- 配偶者と親の現在戸籍
相続人が配偶者ときょうだいの場合
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍や改製原戸籍)
- 被相続人の子供が既に死亡している場合には、その子供の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍や改製原戸籍)
- 被相続人の両親の死亡が記載された戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 配偶者と兄弟姉妹の現在戸籍
関連記事|兄弟が亡くなった時の相続権とは?兄弟の相続手続きや遺留分の問題
関連記事|子なし夫婦の相続とは?子なし・親なし・兄弟ありの相続手続き
代襲相続がある場合
被相続人が亡くなる前に子供やきょうだいが死亡しており、その子供の子供(孫)やきょうだいの子供(甥姪)が相続人となります。これを代襲相続といいます。
この場合には、先に亡くなっている子供やきょうだいの出生から死亡までの戸籍謄本と代襲者(孫や甥姪)の現在戸籍が必要となります。
傍系親族の戸籍謄本も取れる
相続手続きで必要な場合には、傍系親族の戸籍謄本も取得できます。
戸籍謄本は、自分自身と直系親族の戸籍のみを取得できるのが原則です。つまり、自分の親・祖父母・子供・孫といった縦のラインの親族に関する戸籍謄本のみを取得できます。横の親族(きょうだいやおじ・おば)の戸籍については、親族の委任状を取得して取り付けるのが原則です。
しかし、相続手続き等に必要な場合には、委任状を得なくても傍系親族の戸籍謄本を取り付けることができます。
▶戸籍謄本の取得方法に関する大阪市の解説はこちら
法定相続情報一覧図の作成
法定相続情報一覧図とは、相続人全員を一覧にした家系図に似たもので、法務局によってその内容が証明されたものを言います。法定相続情報一覧図があれば、相続手続きの都度、必要となる戸籍謄本を取り付けて、これらを提出する必要が無くなり、相続登記や預貯金の解約手続が非常に簡便になります。
相続関係説明図との違い
法定相続情報一覧図に似た図面に「相続関係説明図」があります。相続関係説明図とは、被相続人の相続関係を整理した図面であり、誰が相続人であるのかが一覧になっている点で法定相続情報一覧図と類似しています。ただ、あくまでも相続関係説明図は、相続人またはその関係者が作成した図面であり、法定相続情報一覧図のように法務局によって証明されたものではない点で異なります。
戸籍謄本の取り寄せを弁護士に依頼するメリット
戸籍謄本の取り寄せには、相続手続きの基本的な理解が必要です。また、戸籍謄本の取り寄せをすれば相続手続きを終えることができるものではありません。
戸籍謄本の取り寄せを含め相続手続きを弁護士に依頼するメリットを紹介します。
戸籍謄本の取り寄せを一任できる
相続人が多数である場合や代襲相続・数次相続が発生している場合、必要となる戸籍謄本の種類は多岐にわたります。また、必要となる戸籍謄本を特定するためには、相続人が誰であるかを正確に把握する必要があります。
弁護士に相続手続きを一任すれば、戸籍謄本の取り寄せや前提となる相続人の特定作業を任せることができます。
遺産分割協議も一任できる
戸籍謄本の取り寄せを行い、相続人の確定ができれば、相続人間の話し合いを行う必要があります。相続人間の関係が良好であれば別ですが、疎遠になっていたり、不仲である場合には、遺産分けの話し合いには大きなストレスを招きます。また、遺産分割協議にあたっては、相続法の基本的な理解が必須です。
弁護士に一任することで、遺産分割協議を任せることができるだけでなく、自身の利益を最大化することが期待できます。仮に遺産分割協議が難航する場合には、調停手続きや審判手続きに移行せざるをえません。このような裁判所の手続一切も弁護士に一任することで、安心して手続きを進めることが可能となります。
遺産分割協議後の相続手続きを一任できる
遺産分割が成立したとしても、当然に遺産が手元に入ってくるわけではありません。金融機関の所定の手続き、不動産の相続登記等の相続手続きを行う必要があります。このような遺産分割後の諸手続きも弁護士に一任することができます。
相続問題は弁護士に相談を
戸籍の取り付けは相続人の確定に必要な作業です。ただ、相続人の確定ができれば相続手続きが終わるわけではありません。その後、遺産の調査や相続人との遺産分割協議という話し合いをしなければなりません。そのため、相続手続きには、数々の負担を生じさせます。
当事務所弁護士は、信託会社に勤務経験を持つ弁護士が在籍し、多くの相続問題の実績を持っています。
初回30分相談無料にて対応しております。一人で悩まずにまずはお問い合わせください。対応地域は、大阪府全域、和歌山市、和歌山県、奈良県、その他関西エリアお気軽にご相談ください。遺産相続の問題は当事務所にご相談を。