親としては、子供の養育費は何歳までもらえるのか気になるところです。
養育費が何歳まで貰えるのかは民法で規定されているものではありません。
養育費は、親の子どもに対する扶養義務を根拠としますので、子供が未成熟である間はもらうことができます。具体的には、養育費の終期は子供が20歳になる時とされています。ただし、常に養育費の終期が20歳までとなるわけではありません。
本記事では、養育費は何歳まで?と疑問に感じている人に向けて、弁護士が養育費について解説します。
養育費とは何か?
養育費とは、子供が社会生活を送る上で必要となる費用を言います。養育費には、衣食住の生活費だけではなく、医療費や教育費も含まれています。
親は、子供に対する扶養義務を根拠に、未成熟の子供の養育費を支払う義務を負います。
養育費の計算方法
養育費の計算する方法は、養育費算定表を用いる方法と標準算定方式を用いる方法があります。
養育費算定表は裁判所が公開する計算表です。養育費算定表に父母の収入を当てはめることで簡易的に養育費を算出することができます。ただ、正確な数値までを導くことはできません。
標準算定方式は、基礎収入割合、生活費指数などの数値を用いて、養育費の詳細な金額を計算する方法です。
参照|裁判所の養育費算定表
養育費は何歳まで?
養育費の支払期間については、父母間で合意ができれば問題は生じません。
しかし、親権者となる親はできるだけ多く、できるだけ長く養育費を受け取りたいと考え、他方で親権者にはならない親はできる限り自分自身の負担を小さくしたいと考えがちです。
養育費の終期と成年年齢の引き下げについて説明します。
養育費の終期は20歳まで
養育費の支払い期間は通常、子どもが20歳になるまでとされています。
そもそも、養育費は、子供が社会生活を送る上で必要となる生活費全般です。衣食住の生活費だけでなく、医療費や教育費も含まれています。
養育費の根拠は、親の子供に対する扶養義務です。
養育費の取り決めを行う際に、「子どもが20歳になるまで毎月支払う」という内容で取り決められることが一般的です。
成人年齢の引き下げと養育費の影響
養育費の終期は、成年年齢の引き下げによっても影響を受けることなく20歳とされるのが実務です。
たしかに、令和4年4月1日から、成人年齢は20歳から18歳に引き下げられました。
しかし、養育費は未成熟の子どもに対して、扶養義務を負う親が負担するものです。ただ、子供の大学進学率は年々増加しており、他方で、高卒後に就職する割合は低い水準となっています。そのため、たとえ成年年齢が20歳から18歳に引き下げられても、未だ子供は親の援助を必要とする未成熟な状態にあると考えられます。
このような理由から、成年年齢の引き下げがあっても、養育費の終期はこれまでと同様に20歳とされるのが通常です。
養育費の終期が20歳未満となるケース
養育費は通常20歳まで支払われるとされていますが、場合によっては20歳未満で終期を迎えることもあります。
養育費の終期が、20歳よりも早まる理由にはさまざまな場合が考えられます。例えば、子どもが経済的に自立した場合や親権者の再婚相手と養子縁組をした場合などが該当します。
このような特別なケースについて、以下で詳しく見ていきます。
子どもが経済的に自立した場合
子どもが経済的に自立した場合、養育費の支払いは終期を迎える可能性があります。
養育費は、そもそも未成熟な子供を援助するために支払われるものです。
そのため、子どもが自らの収入で生活できる場合には、親による援助を要しないと判断されます。よって、たとえ子供が20歳を迎えていなかったとしても、養育費は打ち切りとなる可能性があります。
例えば、子どもが高校卒業後に正社員として就職し、安定した収入を得ている場合、その時点で養育費の支払いが終了することがあります。
このように、子どもが経済的に自立することによって、養育費の支払いが終了するケースがあることを理解しておくことが重要です。
子どもが親権者の再婚相手と養子縁組をした場合
子どもが親権者の再婚相手と養子縁組をする場合、元の親からの養育費支払いは終了することがあります。
再婚相手と子供が養子縁組をすることで、養親となる再婚相手が第一次的な扶養義務を負うことになります。そのため、二次的な扶養義務を負うことになる実親の養育費の支払義務はなくなります。ただ、養子縁組をしたとしても、実親の扶養義務は無くならないため、養親に十分な扶養能力がなければ、実親は養育費を負担しなければなりません。
詳細は後述します。
養育費の終期が20歳以上となる場合
養育費は基本的には20歳までとされていますが、例外的に20歳以上でも支払いが継続される場合があります。ここでは、具体的なケースについて詳しく解説します。
子どもが大学に進学した場合
子どもが大学に進学した場合、養育費の支払い期間が延長されることがあります。
昨今では、養育費の終期を20歳までとした上で、子供が大学に進学する場合には、22歳に達した後最初に到来する3月末日としたり、大学を卒業するまでとすることもよくあります。このような合意がある中で子供が大学に進学すれば、養育費は22歳まで、あるいは、大学卒業時とされます。
養育費を20歳までと取り決めしている場合
単に20歳までとする養育費の合意をした後に、大学に進学することになった場合でも、養育費の終期を22歳まで伸長するべき理由があれば、養育費の終期を22歳まで伸長することを求めることができます。
例えば、以下の事情を踏まえて検討されます。
- 子供の年齢
- 同居中大学進学に同意していたか
- 親の収入や資産
- 親の学歴
- 大学進学した理由や事情
例えば、子供がまだ幼稚園や小学生で、大学進学まで数年の期間がある場合には、養育費の終期を22歳とすることは難しいでしょう。
また、父母の同居中に、大学進学を見据えて私立高校に進学している場合や大学予備校に通っている場合には、大学進学に明示又は黙示の同意があると解することができます。
子供が障害や病気で働けない場合
子供が障害や病気で働けない場合、養育費の終期は20歳よりも長くなる可能性があります。
養育費は、未成熟な子供に対して支払われるものです。そのため、子供が20歳を過ぎても、障害や病気を理由に就労することができず、未成熟な状態が続くのであれば、親の養育費の支払義務はなくなりません。
再婚した場合の養育費は何歳まで?
再婚すると養育費の支払いにどのような影響があるのでしょうか?ここでは、再婚した場合の養育費の終期について詳しく解説します。
親権者か非親権者のどちらが再婚するかによって結論に差が出てきますので、以下では、親権者の再婚の場合と非親権者の再婚の場合にそれぞれ分けて解説します。
親権者ではない親が再婚した場合
親権者ではない親が再婚した場合でも、養育費の支払い義務は消えません。
非親権者が再婚をしたとしても、子供との親子関係は何ら変わらず残りますので、再婚後も子供に対する扶養義務を負い続けます。
そのため、非親権者が再婚をしても、子供に対する養育費は消えないため、養育費の終期に影響はありません。ただし、再婚や再婚後の養子縁組・子供の出産があれば、養育費の金額が減額される可能性はあります。
親権者が再婚した場合
親権者が再婚した場合でも、養育費の支払義務は残ります。
親権者が再婚したとしても、親権者ではない親と子供の親子関係は残りますし、扶養義務も残ります。
そのため、親権者の再婚によって当然に養育費の支払いが止まるわけではありません。
しかし、親権者が再婚しただけでなく、再婚相手が子供と養子縁組をした場合には、再婚相手と子供は法律上の親子関係を持つことになり、再婚相手は第一次的な扶養義務を負います。そのため、養子縁組をした場合には、養育費は20歳よりも早い時期に打ち切りとなる可能性があります。
養育費を取り決める時の注意点
養育費を取り決める際には、双方にとって不都合が生じないように適切にプロセスを進める必要があります。
以下では、養育費を取り決める際の注意点について解説します。養育費を取り決める際の注意点としては、金額や条件を明確にすること、そして合意書や公正証書を作成することが挙げられます。以下にそれぞれのポイントについて詳しく説明します。
養育費の金額や条件を明確にする
養育費の金額や条件を明確にすることは重要です。
養育費の問題においては、養育費の金額だけでなく、何歳まで(つまり養育費の終期)、特別な事情が生じた時の対応等を明確にしておく必要があります。特に、養育費の終期については、単に20歳までとするのか、大学進学した場合に終期を伸ばすのか、伸ばすとして22歳とするのか、大学卒業時とするのかをしっかりと協議しておくべきです。また、大学進学時の入学金や授業料の負担について、折半とするのか収入比率に応じた負担とするのか、単に別途協議すると留めておくのかを明確にしておく必要があります。
抜け漏れがあると、合意したとしても改めて協議をしなければならない事態が生じてしまいます。将来に生じる出来事を予想しながら抜け漏れがないように話し合いを進めていきましょう。
合意書や公正証書を作成する
養育費に関する取り決めを文書で明確にすることが重要です。
口頭での合意は後日トラブルに発展する可能性があり、書面化することで証拠として利用しやすくなります。すなわち、合意書や公正証書を作成すれば法的な拘束力が生じ、相手方が養育費の支払いを勝手に止めたり、減額を要求したりするのを防ぐことができます。これにより、子供の生活費や教育費の安定確保が図られ、不安やトラブルを未然に防ぐことができます。
できれば、単なる私人間の合意書ではなく、公証人が作成する公正証書としておくことが理想です。
なぜなら、公正証書を作成しておくことで、養育費の支払を拒否されたとしても直ちに義務者の預貯金や給与債権を差し押さえることができるからです。つまり、わざわざ養育費の支払いを求める調停や民事訴訟を提起する必要がありません。
他方で、公正証書ではなく単なる合意書であれば、たとえ養育費の不払いがあっても直ちに強制執行に着手することはできず、調停や訴訟の手続きを進める必要があります。
養育費の支払を拒否された場合の対応
養育費の支払いを拒否された場合、養育費の取り決めがある場合とない場合とで、取るべき対応が異なります。
取り決めがある場合
まず、養育費の取り決めがあるにも関わらず、養育費の支払いを拒否する場合、取り決めが公正証書、確定判決、調停調書に基づくのであれば、相手方の財産を差し押さえることで、強制的に養育費を回収します。
他方で、単なる合意書により取り決めをしている場合には、民事訴訟や調停により養育費の支払いを求めることになります。
取り決めがない場合
養育費の取り決めをしていない場合には、まずは養育費の合意に向けて話し合いを行います。
しかし、既に養育費の支払いを拒否したり、無視されている場合には、話し合いによる合意は期待できません。
その場合には、養育費の支払いを求める調停や審判の申立てを行います。
取り決めた養育費の終期を変更する方法
養育費の取り決めは一度決めたらそのままではなく、取り決めをした時に想定していなかった事情の変更状況があれば、取り決めの内容を見直すことが必要な場合もあります。ここでは、養育費の終期を変更する具体的な方法を解説します。
当事者間で協議する
養育費の終期を変更するためには、まず当事者間で協議するようにしましょう。調停手続よりも当事者間の協議の方が、早期に解決を実現させることができます。
ただ、父母間の直接の交渉は、当事者にとって大きな精神的な負担となることもよくあります。時に感情的な対立を招き、解決を困難にさせることもあります。
弁護士を通じて話合いをする
養育費の終期を変更する際、弁護士を通じて話し合うことも非常に有効です。法的な知識や経験を持つ弁護士が代理人となることで、直接の協議に伴う精神的な負担を軽減させることができます。また、専門的な知識が入ることで、誤った判断による不利益を避けることができます。
さらに、弁護士を介して話し合いをすることで、養育費の終期の変更がスムーズに進む可能性も高まります。個別のケースに応じた最適な対応策を提案してもらえるため、安心して交渉を進めることができるでしょう。養育費の問題は非常にセンシティブな事項ですので、弁護士の助けを借りることで、納得のいく解決を見つけることが期待されます。
家庭裁判所に調停を申し立てる
養育費の終期についての意見が対立し、当事者間での話し合いが難航する場合、家庭裁判所に調停を申し立てることが有効です。
中立公正な立場にある家庭裁判所の調停委員が当事者の仲裁をすることで、互いに冷静に話し合いに応じることができ、紛争の解決を実現させることができます。
養育費の終期を伸ばしたい場合には、養育費の終期を伸長させる事情を具体的に主張し、これを裏付ける客観的な資料を速やかに提出するようにしましょう。
調停委員の仲裁の結果、養育費の終期の延長について合意ができれば調停が成立します。
しかし、調停委員の仲裁の甲斐なく合意に至らない場合には、調停手続は不成立となり審判手続に移行します。審判手続では、裁判官が当事者の主張と証拠を踏まえて最終的な判断を示します。
具体的な事例から考える
養育費が何歳までもらえるのかが争点になった事例を紹介したいと思います。
同居時点で大学の予備校に通学していたケース
離婚調停が不成立となり、離婚裁判において裁判上の和解により離婚した事案でした。
同居時点では大学に在籍しておらず、高校3年時でした。
同居時から子供は、大学進学のために予備校に通っていました。相手方である父親は、予備校の通学に異論なく、予備校の費用を負担していました。さらに、子供が通っている高校では、ほとんどの学生が大学に進学するような進学校でした。
そのため、相手方は、子供の大学進学に黙示的に同意していたと主張したところ、裁判所も当方の主張を踏まえて養育費の終期を22歳に達した日から最初に到来する3月末日とする和解を勧告しました。
これを受けて、裁判上の和解が成立しました。
子どもが小学校低学年であったケース
当方依頼者は義務者である父親で、相手方から大学卒業時までの養育費を支払うように求められて離婚調停となっているケースでした。
しかし、子供が未だ小学校低学年であり、大学進学までに期間があるために、大学への進学が定かではないことを主張しました。
調停委員の仲裁を経て、養育費の終期を20歳までとする離婚調停が成立し終結しました。
まとめ
養育費は子供の健全な成長のために必要なものです。
大学等に進学しているために、20歳を過ぎても未成熟な状態が続いているのであれば、養育費の終期を伸ばすように求めましょう。他方で、20歳になるまでに子供が経済的に独立している場合や再婚相手と養子縁組している場合には、養育費の支払いは終了しますので、離婚後も子供の動向はできる限り注視しておくべきでしょう。
養育費の支払期間を変更することは、一筋縄に行かないことも多々あります。
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