コラム
公開日: 2025.02.12

妻からのDVで離婚する時に夫が注意するべき点は?弁護士が徹底解説|難波みなみ法律事務所

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

妻からのDV(ドメスティックバイオレンス)は、近年その被害例が増加傾向にある深刻な問題です。被害を受けている夫が離婚を検討する際には、特有の注意点があります。本記事では、妻からのDV被害が増加傾向にある実情や、実際に被害を受けている時に考えるべきこと、離婚手続きに関わる注意点などを詳しく整理します。

夫が自身の安全と子どもの幸せを守るために知っておきたいポイントを、可能な限り具体的にまとめました。DV被害に悩む方の参考になれば幸いです。

初回相談30分無料

無料相談
ご予約はこちら

【電話相談受付中】

受付時間 9:00〜22:00

【来所不要・土日祝も対応】

電話・LINE・ウェブでの相談可能です
1人で悩まずに弁護士に相談ください

妻からのDV被害は増加傾向

妻から夫へのDVは、珍しいケースと思われがちですが、実際にはDV被害件数が年々増加している傾向があります。DVと聞くと “夫から妻へ” のイメージが強い一方で、警視庁の統計などでも「妻によるDV」が一定数存在していることがわかります。そのため、近年は、夫が「妻からのDV」を理由に離婚を検討する夫が確実に増えています。

妻からの逆DVの割合

警視庁のデータによると、配偶者による暴力事案は年々増加傾向にあり、被害相談の男女比については、72.1%が女性となっており、男性が被害者となる割合は小さくなっています。ただ、男性の被害相談件数については、令和元年が17,815件に対して令和5年が24,684件となっており増加傾向にあることがわかります。

令和元年17815件
令和2年19478件
令和3年20895件
令和4年22714件
令和5年24684件
参照:令和5年におけるストーカー事案、配偶者からの暴力事案等、児童虐待事案等への対応状況について

妻のDVの種類

配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)の1条では、身体的な暴力だけでなく精神的な暴力もDVとして定義されています。

特に、妻からのDVにはさまざまな形があります。一般的には妻よりも夫の方が筋力的に優位なことが多いですが、それでもなお、妻による身体的な暴力はないわけではありません。ただ、妻のDVは身体的な暴力よりも精神的な暴力の方が多い傾向です。

妻のDVの典型的なものを挙げると以下のとおりです。

  • 精神的暴力:人格を否定する暴言、謝罪や土下座の強要、無視をする、親族・子どもへの悪口の吹き込みなど
  • 経済的暴力:小遣いの制限、金銭管理をすべて掌握して夫に自由を与えないなど
  • 身体的暴力:物を投げる、故意に家具やドアを乱暴に扱う、場合によっては凶器を見せつける示威行為など

これらはいずれも夫に重大なストレスを与え、夫婦関係を破綻させる深刻な行為です。暴言であってもDVになるため、心身に負担を感じているなら早めに対策を考えることが大切です。

LINEで法律相談 こちらから友達追加
クレジットカード利用可

妻のDVを受けている時にするべきこと

妻からのDV被害に直面した際に、夫としてはどのように行動するのが望ましいのでしょうか。ここでは、まず冷静に考えておきたい重要なポイントを紹介します。早期の対処が自身の身を守るだけでなく、将来的な離婚手続きや子どもへの悪影響の防止にもつながります。

安易に別居しない(証拠が確保できない)

配偶者からのDV被害に苦しんでいると、一刻も早く離れたいと考えるのは当然です。

しかし 安易に別居をすると、証拠収集が不十分になる 可能性があります。離婚の手続きでは客観的な証拠が非常に重要です。DV加害の事実があるにもかかわらず、無計画に別居してしまうと、DVの証拠を十分に確保することができなくなり、DVの被害を証明できなくなるリスクがあります。さらに、DVの証拠が不十分な状況で安易に別居することで「悪意の遺棄」だと主張されてしまうリスクもあり、慎重な判断が欠かせません。

DVに暴力で応じない

妻から精神的・身体的な暴力を受けた場合でも、暴力で対抗してしまうと、逆に「夫が加害者」とされる可能性が出てきます。特に、女性側がDV被害を訴えると、『DVは夫から妻に』という固定観念から、夫が一方的な加害者であると誤解されてしまいがちです。

そのため、実際に身の危険を感じる場面でも、すぐに手を出すのではなく、まずは身を守るために離れる、証拠を録音するなど、対応を慎重に考えるようにしましょう。ここで反撃をしてしまうと、後々の離婚調停や裁判でも不利になることがあります。

妻のDVの原因や程度を考えてみる

妻がDVを行う背景には、精神的不安定やプライドの高さ、また実家との問題や過去のトラウマ、更年期障害など多様な要因が存在します。DVの原因や程度を冷静に見極めることで、今後夫が取るべき行動がはっきりするケースもあります。

単なる夫婦喧嘩では片づかない深刻な状況かどうか、特に人格否定や過度な束縛などが頻繁に行われている場合は早い段階で弁護士やカウンセラーに相談することをおすすめします。

DV妻との関係を修復できるか考えてみる

離婚の前に、DVを行う妻との関係を修復する可能性を探ることも一つのアプローチです。

夫側が離婚に踏み切る前に、話し合いやカウンセリングを通じて妻の気持ちを理解し、問題解決の糸口を見つける場合もあります。ただし相手が改善に前向きでない、あるいは暴力が常習化していて生活に支障が出るほどであるならば、早めに離婚へ動くことも対策となります。状況によって最適な道は変わるため、専門家の意見も取り入れながら判断しましょう。

カウンセリングや病院に通う

DV被害を受けている場合、心身の健康を守るためにもカウンセリングや病院など専門的な機関を利用することを検討しましょう。

また、医療記録や相談記録は後の離婚手続きでDV被害の証拠にもなります。その上、自身の心を安定させることは、今後の冷静な対応や離婚手続にもプラスに働きます。特に精神面でのダメージが大きいと、正常な判断が難しくなることもあり得ます。早めのケアが肝心です。

DVをする妻の特徴

DVを行う妻には、共通している特徴や背景が見られます。これらの特徴を理解しておくことで「なぜDVに至っているのか」を客観的に把握しやすくなります。ここでは代表的な特徴をいくつか挙げますが、あくまでも一例であり、すべてのケースに当てはまるわけではありません。

精神的に不安定

精神的に不安定な妻は、ストレスや不安を夫に対する暴言や暴行で発散してしまう場合があります。ホルモンバランスの乱れや自分の生い立ちからくるトラウマなど、多角的な原因が考えられます。夫の何気ない言動に過剰に反応し、気分の浮き沈みが激しく、冷静な話し合いが成り立たないこともしばしばです。夫側が理解を示そうとしても、急に感情が爆発してしまうため調整が難しい局面が多くなります。

DVや虐待を受けて育ってきた

過去にDVや虐待の被害を受けてきた経験がある場合、その影響で攻撃的な言動や不安定な対人関係を繰り返してしまう人もいます。

幼少期の苦い経験を持った妻は、自分でもコントロールが難しい衝動的な言動を起こしてしまうことがあり、被害を受けている夫としては大変苦しい状況になります。

他者からの評判は良い

DVを行う妻の中には、外面が良く、職場や友人、近所など周囲からは「明るくて良い人」「優しい人」という評価を得ている場合があります。普段は上品で人当たりの良い女性であっても、家庭内で夫に対して暴言や暴力をふるっており、夫が周囲に訴えても「そんなことをする人には見えない」と軽視されてしまうことも少なくありません。これが夫の孤立感を深め、誰にも相談できないままDV被害が悪化する原因になります。

束縛が強い

夫の行動を執拗に制限しようとするのも、DV妻の特徴の一つです。

仕事中に頻繁に連絡をしたり、会社や同僚に電話かけるなどして、会社関係にも迷惑をかけることも珍しくありません。また、少しでも帰宅時間が遅くなると、厳しく叱責したり、『誰と一緒にいたのか?』など詰問をするようなこともあります。

このようにDVをする妻は、夫の行動を必要以上に制限して、監視する特徴を持っています。

妻からのDVで離婚する場合の注意点

もし妻からのDVが深刻化して、夫が離婚を決断するに至った場合、いくつかの注意点があります。単に「別れてしまえばいい」というわけにはいきません。DVを理由に離婚するからこそ、手続きや証拠集めなど、適切に進めておくべきポイントが多々存在します。以下解説しますので、離婚を考える際の参考にしてください。

DVの証拠を確保する

離婚が認められるためには、DVがあったことを客観的に示す証拠が何よりも重要です。特に妻の暴言や嫌がらせの録音・録画データ、物を投げられたあとの写真、受診した場合の医療記録などは大きな意味を持ちます。

証拠が不十分だと、妻が逆に「夫の方がDVやモラハラをしていた」と主張する事態も想定されます。

離婚調停や離婚裁判での主張を裏付けるうえでも、証拠の存在が結果を大きく左右します。DVの被害を受けている人は日々の記録をこまめにつける習慣を大切にしてください。

別居後に婚姻費用が発生する可能性がある

夫婦が正式に離婚していない状態で別居をすると、基本的に婚姻費用分担義務が続きます。

これは夫が被害者の立場であっても、妻に対して婚姻費用を支払わなければなりません。DVを受けているにもかかわらず支払い義務が生じる理不尽さを感じるケースもあるでしょう。ですが法律上は、離婚が成立するまで夫婦には互いを扶養する義務があるとされています。DVの証拠を十分に確保することなく安易に別居すると、後から多額の婚姻費用が発生するリスクがあるため、弁護士のアドバイスを受けながら慎重に手続きを進めてください。

子供の親権を取れないことも多い

母親側にDVの事実があったとしても、法律上、子どもの親権は母親へ渡ることが多い現状があります。日本では母性優先の傾向が根強いからです。

しかし、子どもにも暴力が及んでいるような状況であれば、夫が親権を得る可能性も十分にあります。また、子供に対する直接の暴力がなかったとしても、子供の面前で暴力が行われている場合には、子供に対する面前DVとなるため、母親の親権者としての適格が否定されることもあります。いずれの場合も、客観的な記録や証拠に基づいて子どもにとって最善の環境を確保するための主張を行うことが大切です。

妻の共有財産を把握しておくこと

DVをする妻の中には、夫に知られないよう財産を保有し、離婚直前や別居直前に勝手にお金を引き出したり、隠してしまったりする例もあります。夫側は離婚を意識したタイミングで、口座情報や金融資産の情報、保険契約の情報などを正確に把握するようにしましょう。財産分与を求める際にも、これらの情報が正しいかどうか明確でないと後々の手続きで混乱するだけでなく、正当に得られる権利を放棄する結果にもなりかねません。事前の把握と、正しい手順での対応が必須です。

保護命令の申立てを検討する

妻からのDVを受けている場合には、保護命令の申立てを検討しましょう。

保護命令とは、配偶者からの暴力を防ぐため、被害者の申立てにより、裁判所が加害者に対し、6か月間の被害者への接近禁止などを命じる裁判をいいます。

保護命令には、被害者への接近禁止命令、退去命令、電話等禁止命令、子への接近禁止命令、親族等への接近禁止命令が含まれています。

ただし、保護命令が認められるためには、妻の暴力を受けた事実やその程度を客観的な証拠により立証しなければなりません。また、保護命令の対象には、生命に対する脅迫以外の精神的な暴力は含まれていません。さらには、身体的な暴力を受けていても、生命や身体に重体な危害を受けるおそれが大きい場合に限られます。

そのため、女性被害者の場合と比べて男性被害者のケースでは、保護命令の条件を立証することが難しくなることが多いでしょう。

妻のDVの問題は難波みなみ法律事務所へ

親身に対応します お一人で悩まずにお気軽に相談ください。 初回相談30分無料 離婚問題ならお任せください。

妻からのDVは思いのほか深刻な被害をもたらし、周囲の理解も得られにくいことで夫が孤立するケースが多いです。

離婚を考える場合は客観的な証拠の確保や子どもの親権問題など慎重に進める必要があります。また、早めの専門家相談やカウンセリングは心の安定を取り戻すためにも有効です。自分一人で抱え込まず、確実に行動を起こしていきましょう。

DV被害を受けて離婚を検討している夫の方は、まずは弁護士に連絡するなど、具体的なアクションを起こしてみてください。弁護士のサポートを得ることで精神的にも法的にも安心して対策を講じられます。

よく読まれている記事

PAGE TOP