「借金を5分の1にできる」「自宅を手放さずに済む」――個人再生には魅力的なメリットがある一方、手続きの複雑さ・費用の高さ・ブラックリスト登録・保証人への影響など、見過ごせないデメリットも存在します。
「個人再生をすれば借金が減るなら、すぐにでも利用したい」と思って飛びついてしまうと、後から「こんなはずではなかった」と後悔するケースも少なくありません。個人再生は、メリットとデメリットを正確に天秤にかけた上で、自分の状況に適しているかを慎重に判断すべき手続きです。
この記事では、大阪なんば・心斎橋の難波みなみ法律事務所の弁護士が、個人再生の10のデメリットと、それぞれのデメリットを軽減・回避する方法、そして個人再生が向いていない方のための代替手段までを、実務経験に基づいて詳しく解説します。
そもそも個人再生とは
デメリットを理解する前に、個人再生の基本的な仕組みを簡単に確認しておきましょう。
個人再生とは、裁判所を通じて借金を原則5分の1(最低100万円)まで減額してもらい、減額後の金額を3〜5年かけて分割返済する債務整理手続きの一つです。民事再生法に基づく法的手続きで、小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類があります。
最大の特徴は、住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用すれば、マイホームを手放さずに借金を整理できる点です。この点で、自己破産とは大きく異なります。
▶関連記事:個人再生の住宅ローン特則とは?持ち家を残して借金を5分の1にする条件を弁護士が解説
個人再生の10のデメリット
デメリット1:信用情報に事故情報が登録される(ブラックリスト)
個人再生をすると、信用情報機関に事故情報が登録され、いわゆる「ブラックリスト」に載った状態になります。
登録期間は信用情報機関によって異なります。
| 信用情報機関 | 加盟会社 | 登録期間 |
| CIC | クレジットカード会社・信販会社など | 再生計画の完済後5年 |
| JICC | 消費者金融など | 再生計画の完済後5年 |
| KSC(全国銀行個人信用情報センター) | 銀行・信用金庫・信用保証協会など | 官報公告日から7年 |
登録されている期間中にできないこと
- 新たなクレジットカードの発行・利用
- 住宅ローン・自動車ローン・カードローンなどの借入れ
- 携帯電話端末の分割払い(機種代金の分割)
- 信販会社系の家賃保証会社の審査通過
- 他人のローンの保証人・連帯保証人
個人再生の場合、手続き開始から返済完了まで3〜5年かかるため、実質的には7〜10年間、クレジットカードやローンが使えない状態が続きます。
【対応方法】
- デビットカード・プリペイドカード(バンドルカード、Kyashなど)を活用する
- 家族カードを作成してもらう(家族の信用情報がクリーンであれば作成可能)
- 家賃保証会社は、信販系以外(LICC加盟系、独立系)を選ぶ
デメリット2:官報に氏名・住所が掲載される
個人再生をすると、国が発行する官報に氏名・住所・事件番号が3回掲載されます。
| 掲載回数 | タイミング | 申立てからの目安 |
| 1回目 | 再生手続開始決定時 | 約2週間後 |
| 2回目 | 再生計画案の書面決議または意見聴取時 | 約69日 |
| 3回目 | 再生計画認可決定時 | 約100日 |
とはいえ、官報を日常的に読むのは士業・金融機関・信用情報機関・一部の公務員などごく限られた人のみですので、一般の家族・友人・職場の同僚に官報から個人再生を知られる可能性は極めて低いのが実情です。
ただし、次のようなリスクはあります。
- 闇金業者からのダイレクトメールが届くようになる(官報掲載情報を基にターゲティングするため)
- 金融機関勤務の方、税務関係の職業の方などが身近にいると発覚のリスクあり
- 官報公告費用として15,120円程度を別途負担する必要がある
【対応方法】
- 官報公告後は、ポストをこまめに確認し、怪しいDMが来たら即破棄する
- 闇金DMが届いても絶対に連絡しない
- どうしても官報掲載を避けたい場合は、任意整理への切り替えを検討
デメリット3:手続き費用が高額(50〜80万円程度)
個人再生は、3つの債務整理手続き(任意整理・個人再生・自己破産)の中で最も費用がかかる手続きです。
弁護士費用の目安は、40〜60万円程度を要し、任意整理や自己破産よりも高額になることが多いです。
また、大阪地裁の場合、次の費用が必要です。
| 項目 | 金額 |
| 申立手数料(印紙代) | 1万円 |
| 官報公告費 | 15,120円 |
| 郵便切手 | 1,400円 |
| 個人再生委員への予納金 | 30万円(大阪地裁は弁護士代理であれば再生委員は原則選任されません。) |
住宅ローン特則を利用する場合は、弁護士費用がさらに5〜10万円程度加算されることが多いです。
【対応方法】
- 弁護士費用は分割払いに対応している事務所を選ぶ(当事務所も分割可)
- 経済状況によっては法テラスの民事法律扶助制度が利用可能
- 受任通知後、他債権者への返済が止まるため、その期間中に費用を積み立てる
デメリット4:手続き期間が長い
個人再生は、大阪地裁であれば申立てから再生計画認可確定まで100日程度かかります。そのため、自己破産の同時廃止事件と比べると長めの期間となります。また、個人再生の手続きが完了してからも、3~5年にわたって返済しなければなりません。
【一般的なスケジュール】
- 弁護士受任〜申立準備:3〜6ヶ月
- 申立て〜再生手続開始決定:約1〜2週間
- 開始決定〜再生計画認可:約3ヶ月
- 認可決定〜確定:約1か月
- 返済開始〜完済:3〜5年
任意整理が3〜6ヶ月、自己破産(同時廃止事件)が3〜6ヶ月で済むのに比べると、個人再生は手続きが長期化しやすい傾向があります。その間、家計収支表の提出や財産状況の確認など、申立人にも継続的な対応が求められます。
【対応方法】
- 弁護士依頼時に必要書類を速やかに揃える
- 家計管理を徹底し、毎月の家計収支表を正確につける
- 個人再生委員や裁判所からの指示に迅速に対応する
デメリット5:安定した継続収入がなければ利用できない
個人再生は、減額後の借金を3〜5年かけて分割返済する手続きです。そのため、将来にわたって継続的・安定的な収入があることが絶対的な要件となっています。
具体的には以下のような方は個人再生の利用が難しくなります。
- 無職・求職中の方
- 収入が著しく不安定な方
- 専業主婦(主夫)で独自の収入がない方
- 年金のみで、減額後の借金を返済する余裕がない方
特に給与所得者等再生は、過去2年間の収入変動が20%を超えると認められない可能性があります。個人事業主やフリーランスの方は、小規模個人再生のみが選択肢となります。
再生計画に基づく返済原資を確保できない場合は、自己破産を検討することになります。
デメリット6:借金が完全には消えない(最低100万円は残る)
個人再生は、借金を減額する手続きであって、自己破産とは異なり支払い責任を完全に免除する手続きではありません。最低でも次の金額を支払う必要があります。
法定最低弁済額(民事再生法231条2項)
| 借金総額(住宅ローン除く) | 最低弁済額 |
| 100万円未満 | 借金総額全額 |
| 100万円以上〜500万円未満 | 100万円 |
| 500万円以上〜1500万円未満 | 借金総額の5分の1 |
| 1500万円以上〜3000万円以下 | 300万円 |
| 3000万円超〜5000万円以下 | 借金総額の10分の1 |
さらに、清算価値保障の原則により、「自己破産した場合に債権者へ配当される金額」以上を弁済しなければなりません。持ち家のアンダーローン部分、退職金見込額、預貯金、保険解約返戻金などが清算価値に加算されます。
給与所得者等再生の場合は、加えて可処分所得の2年分以上を弁済する必要があります。
【対応方法】
- 家計収支を見直して、十分な返済原資を確保する
- 小規模個人再生と給与所得者等再生の有利な方を選ぶ
デメリット7:保証人・連帯保証人に返済請求がいく
個人再生をすると、保証人・連帯保証人に借金の全額が請求されます。個人再生はあくまで主債務者の借金を減額する手続きですので、保証人には効力が及びません。
保証人に請求された場合、保証人は、全額を一括返済する、保証人自身も任意整理・個人再生・自己破産をする、貸金業者と分割返済の交渉をするといった対応を求められます。
特に問題となるケースは以下のようなケースが挙げられます。
- 親族(親・子・兄弟)が保証人になっている奨学金・教育ローン
- 配偶者が連帯保証人の銀行カードローン
- 友人・知人に頼み込んで保証人になってもらった借金
【対応方法】
- 保証債務がある借金が少額なら、事前に整理してから個人再生を申し立てる(ただし偏頗弁済にならないよう要注意。弁護士と相談)
- 保証人にも事前に事情を説明し、必要なら保証人側でも債務整理を検討
- 保証人付きの借金だけ任意整理で残す選択肢は、個人再生ではできない(債権者平等の原則で不可)
デメリット8:整理する債権者を選べない(全債権者対象)
任意整理では「整理したい会社だけ」を選べますが、個人再生ではすべての債権者を手続きの対象にしなければなりません(債権者平等の原則)。
そのため、次のような「特定の借金だけ残したい」というニーズには応えられません。
- 自動車ローン(引き揚げされたくない)
- 家族や友人からの借金
- 保証人付きの借金
- 会社からの借金(社内融資など)
自動車ローンについては、個人再生を申し立てると信販会社・ディーラーが自動車を引き揚げるのが原則です。対処法としては、家族に立替払いを依頼して完済後に個人再生を申し立てる、別除権協定(信販会社との継続合意)を締結した上で裁判所から弁済許可を得る方法がありますが、いずれもハードルが高いです。
【軽減方法】
- 申立て前に、自動車ローンを第三者に立替えてもらう(ただし偏頗弁済や清算価値増加に注意)
- 別除権協定の可能性を弁護士に相談
- どうしても選別が必要な場合は、任意整理を優先検討
デメリット9:小規模個人再生は債権者の反対で不認可となる可能性
小規模個人再生では、再生計画案が認可されるために、債権者の消極的同意が必要です。具体的には、次の両方の基準を満たす必要があります。
- 反対する債権者の頭数が債権者総数の半数未満
- 反対する債権者の債権額が債権総額の2分の1以下
つまり、大口債権者1社が反対するだけで、再生計画案が否決されるリスクがあります。
反対しやすい債権者の例
- 日本政策金融公庫・商工中金などの政府系金融機関
- 過去に個人再生を反対した実績のある一部の消費者金融
- 個人債権者(元交際相手・元取引先など感情的対立がある相手)
- 楽天カード・アプラスなど、個別の反対傾向が実務で知られる債権者
反対を受けた場合は、給与所得者等再生への切り替えが可能ですが、こちらは可処分所得の2年分以上の返済が必要となり、返済額が大幅に増える可能性があります。
【軽減方法】
- 申立前に債権者構成を確認し、反対リスクを評価
- 大口債権者が反対傾向の業者である場合は、最初から給与所得者等再生を選択
- 弁護士と協議し、反対された場合の代替プランを準備
デメリット10:手続き中の借入・財産処分が制限される
個人再生手続中は、申立人の行動に様々な制限が加わります。特に、自宅等の財産処分等については、再生手続に影響が生じる可能性があるため、事前に弁護士に確認した上で、行うべきでしょう。
禁止・制限される行為
- 新たな借入れや返済(偏頗弁済)
- 不動産・自動車などの処分(財産状況が変わるため)
- 保険の解約(解約返戻金が清算価値に影響)
- 退職や転職(再生計画の履行可能性に影響)
- 高額商品のクレジット購入(事実上不可能)
個人再生のデメリットが特に大きい人(向いていない人)
以下に該当する方は、個人再生のデメリットが大きく、他の手続きを検討すべきケースが多いです。
借金総額が100万円以下の方
借金が100万円未満であれば、法定最低弁済額ルールにより借金が減額されません。むしろ50〜80万円の手続き費用を払うだけ損になります。このような方は任意整理で十分です。
安定収入がない方
無職・求職中・専業主婦で独自収入がないなどの方は、返済原資を確保することが難しいため、個人再生を利用できません。自己破産を検討することになります。
保証人に絶対迷惑をかけたくない方
個人再生では保証人に請求がいくため、保証債務がある場合は保証人と同時に債務整理することを検討する必要があります。保証人を守りたい場合は任意整理(保証付き借金を対象外にできる)が適しています。
手元に資産が多い方(清算価値が高い方)
自宅(アンダーローン)・高額な保険・多額の預貯金などがあると、清算価値保障原則により弁済総額が増えることがあります。場合によっては、個人再生の実益が失われます。
個人再生以外の選択肢
個人再生のデメリットが大きいと判断した場合には以下の代替手段があります。
任意整理
任意整理は、費用が比較的安く、対象とする債権者を任意に選択できますが、元本等を圧縮することができない点でデメリットがあります。十分な余剰がある場合や借入額が100万円を下回るなど、僅少である場合には任意整理を検討します。
メリット
- 官報掲載なし
- 裁判所を使わないため手続きが簡便
- 整理する債権者を選べる
- 費用が安い(1社あたり4.4万円程度〜)
デメリット
- 元本は減額されない(将来利息のみカット)
- 3〜5年で完済する必要がある
- 安定収入が必要
▶関連記事:任意整理とは|手続きの流れ・費用・デメリットまで完全ガイド
自己破産
圧縮後の借入額を3~5年で返済できない場合や借入額が5000万円を超える場合には、個人再生ではなく自己破産を選択します。ただ、免責不許可事由がある場合には、管財事件に移行する可能性もありますし、状況によっては免責不許可になるリスクもあります。
メリット
- 借金が全額免除される(原則)
- 手続き期間が比較的短い(同時廃止で3〜6ヶ月)
デメリット
- 持ち家・20万円超の財産は処分される
- 一部職業で資格制限がある
- 免責不許可事由に該当するとハードル高い
- 官報掲載あり・ブラックリスト登録あり
▶関連記事:自己破産できない5つのケース|免責不許可事由と裁量免責の判断基準
よくある質問
Q1. 個人再生のデメリットの中で最も大きいものは何ですか?
A. 個別事情によりますが、一般的には手続き費用の高さ(50〜80万円)と圧縮後の借入を返済しなければならない点がデメリットです。ブラックリスト登録や官報掲載は他の債務整理(自己破産)でも発生するため、個人再生特有のデメリットとは言えません。
Q2. 個人再生をすると家族に影響がありますか?
A. 家族の信用情報には直接の影響はありません。ただし、家族が連帯保証人になっている借金がある場合、その家族に一括請求がいきます。また、同居家族名義のクレジットカードを家族カードとして使っていた場合、本会員の審査状況によっては利用停止になる可能性もあります。
Q3. 個人再生中に転職や結婚はできますか?
A. 可能ですが、慎重な対応が必要です。転職により収入が大幅に減少すると再生計画の履行可能性に影響し、最悪の場合再生計画が不認可となるリスクがあります。結婚自体は問題ありませんが、結婚に伴って返済資金を確保できなくなる場合には慎重に対応するべきです。
Q4. 個人再生後に住宅ローンは組めますか?
A. 信用情報から事故情報が消えれば(完済から5〜7年経過後)、申込み自体は可能です。ただし、個人再生をした金融機関や同グループの金融機関では審査に通りにくい傾向があります。また、信用情報が回復しても、勤続年数・年収・他の借入状況など総合的に審査されるため、ローン審査は厳しめに見ておいた方が無難です。
Q5. 個人再生は何回でもできますか?
A. 制度上は可能ですが、制約があります。
- 前回の給与所得者等再生認可から7年以内は、再度の給与所得者等再生は不可(民事再生法239条5項2号)
- 前回の自己破産免責確定から7年以内は、給与所得者等再生は不可(同項1号)
- 小規模個人再生には法律上の回数制限はありませんが、実務上は同一債務者の繰り返し利用には厳しい目が向けられる
Q6. 個人再生のデメリットを考えると、任意整理で済ませたいのですが?
A. 任意整理は官報掲載もなく費用も安いため、任意整理で解決できるならそちらを優先すべきです。ただし、任意整理は将来利息をカットするだけで元本は減らないため、借金総額が大きく月々の返済が苦しい場合は、結局個人再生や自己破産を選ぶことになります。借金総額と年収のバランスを弁護士と相談して決めましょう。
Q7. 個人再生が失敗するとどうなりますか?
A. 個人再生が失敗する主なパターンは次のとおりです。
- 申立て段階:要件を満たさず、申立てが認められない
- 開始決定後:再生計画案が不認可となる(債権者反対・履行可能性の欠如など)
- 認可後:再生計画の履行を怠り、計画が取り消される
再生計画の認可が取り消されると、元の借金額が復活します。失敗しないためには、弁護士と綿密に打ち合わせし、確実に履行できる計画を立てることが重要です。
Q8. 個人再生中に臨時収入があったら繰上返済できますか?
A. 可能です。完済が早まれば、信用情報の回復も早くなるメリットがあります。ただし、すべての債権者に対して平等に返済する必要があります(債権者平等の原則)。また、無理な返済をすることで、生活を逼迫させてしまい、結局、再生計画通りの弁済ができなくなると、本末転倒です。無理のない弁済を継続させることが大切です。
個人再生を検討中の方へ
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重要なのは、自分の状況に応じて、任意整理・個人再生・自己破産のどれが最適かを総合的に判断することです。特に次のような不安をお持ちの方は、早めの弁護士相談をお勧めします。
- 住宅ローンを延滞している(代位弁済の危険)
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- 保証人に迷惑をかけたくない借金がある
- 自営業で収入が不安定
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個人再生のデメリットは事前に理解・対策することで大幅に軽減できるものも多くあります。また、個人再生が向かない方には、任意整理や自己破産という代替手段があります。
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