- 相場は通常より高くなる傾向:通常150万円 → 妊娠中は180〜200万円が目安(+30〜50万円)
- 流産や精神疾患を伴う場合は300万円を超える慰謝料が認められることも
- 証拠の確保が最重要:ラブホテルの出入り・LINE・調査報告書などが有力
- 夫だけでなく浮気相手にも慰謝料請求が可能(合計額は変わらない点に注意)
妊娠中に夫の浮気に直面した妻は、「生まれてくる子どものために大変な思いをしているのに」と、許せない気持ちになるのは当然です。妊娠中の浮気は、離婚や慰謝料請求の問題に発展することも少なくありません。
妊娠中は、さまざまな事情から夫が浮気しやすい状況にあることも否定できません。もちろん妻の妊娠によって夫の浮気が正当化されるわけではありませんが、なぜ浮気が起きやすいのかを知り、兆候を早めに見抜くことも大切です。
この記事では、妊娠中の浮気を原因とする慰謝料請求や離婚問題について弁護士が詳しく解説します。夫が妊娠中に浮気をする理由、浮気の兆候チェックリスト、慰謝料の相場、そして2026年4月施行の共同親権制度との関係まで、妻の立場で知っておきたいポイントを整理します。
1妊娠中に夫が浮気をする4つの理由
妻の妊娠中に夫が浮気をしてしまう主な理由は、次の4つです。背景を知ることは、兆候の把握や再発防止にも役立ちます。
① 性的な接触の減少(セックスレス)
妊娠中はどうしても夫婦間の性的な接触・スキンシップが減少するため、夫が欲求不満を抱えて浮気に走りやすくなります。一般的に安定期までは性交渉を控えるべきとされ、安定期に入っても体調や体型の変化、胎児への影響などの不安から性生活に積極的になれない女性が多いものです。男性もそのことは理解していますが、性的な接触を全面的に拒絶されると不満が残り、浮気の大きな原因となることがあります。
② 夫とのコミュニケーションの減少
妊娠中は夫婦間のコミュニケーションが減少しやすく、夫が寂しさから浮気に走ってしまうこともあります。妊娠中の女性は、お腹の中の赤ちゃんを第一に考えるようになり、つわりで辛くても家事や仕事をこなさなければなりません。会話も、夫のことより赤ちゃんや妻の体調が中心になりがちです。夫は妻の苦労を理解しつつも「かまってくれない」という寂しさを感じ、そんなときに寂しさを癒やしてくれる女性が現れると浮気に走る可能性が否定できません。
③ 妻のホルモンバランスの変化
妊娠中のホルモンバランスの変化で妻が情緒不安定になり、それに耐えきれなくなった夫が浮気に走ることもあります。妊娠初期から16週頃までは女性ホルモンが大量に分泌され、つわりなどの身体的症状だけでなく精神的にも不安定になりがちです。本来は夫が支えるべきですが、夫自身も仕事などでストレスを抱えていることが多く、家庭でも些細なことで八つ当たりをされると耐えきれず、他の女性に癒やしを求めてしまうことがあります。
④ 父親になることへの不安
子どもができることは夫にとってもうれしいことのはずですが、父親になる不安から浮気に走る夫も少なくありません。妻は胎児が日々成長するのを実感して自然に母親の自覚が芽生えますが、夫は赤ちゃんが生まれるまで実感を持ちにくいものです。それにもかかわらず周囲から「もうすぐ父親なんだから」と言われるとプレッシャーを感じ、気持ちが空回りしてストレスとなり、浮気の原因となることもあります。
2妊娠中に浮気をする割合
妻の妊娠中に夫が浮気をする割合について、公的な調査結果は見当たらないため正確な数値は不明です。ただし、ある企業のインターネット調査では、不倫を始めた時期は結婚後1〜3年目が圧倒的に多いという結果が出ています。結婚後1〜3年目は妻が妊娠・出産する割合が多い期間と重なるため、妊娠中に夫が浮気をする割合は一般的な浮気の割合より高いと考えられます。
3妊娠中の浮気の兆候チェックリスト
夫の浮気を見破るために、妊娠中の浮気で現れやすい兆候を紹介します。次のうち複数が当てはまる場合には、浮気を疑ってみたほうがよいかもしれません。
- 出張や深夜残業が不自然に増えた/飲み会が急に増えた
- 休日出勤が増えた(役職・職場に変動がないのに増えている場合は要注意)
- 1人で外出することが増えた(帰宅後の話に矛盾がないか確認を)
- 生まれてくる子どもへの関心が薄くなった
- LINEのポップアップ通知を突然オフにした
- LINEにパスコード(暗証番号ロック)を設定した
浮気相手と会っている場合、行き先などについて嘘をついている可能性が高いため、帰宅後にさりげなく尋ねてみて、答えに困ったり矛盾する話が出てきたら要注意です。ただし、夫が妊娠中の妻の体調を気遣って1人で外出しているケースもあるため、決めつけずに注意深く見守ることが大切です。
4妊娠中に浮気をした場合の慰謝料請求
妊娠中の浮気が発覚した場合は、離婚する・しないにかかわらず慰謝料を請求できます。損をしないために、次のポイントを押さえておきましょう。
慰謝料額の相場
浮気(不貞行為)による慰謝料の相場は、離婚するかどうかによって次のように変わります。
| 状況 | 慰謝料の相場 |
|---|---|
| 同居を継続する場合 | 数十万円〜100万円程度 |
| 別居している場合 | 120万円〜150万円程度 |
| 離婚する場合 | 150万円〜200万円程度 |
実際の金額は、浮気の期間や不貞行為の回数、夫婦の年齢や婚姻期間、未成年の子どもの有無など、さまざまな事情を総合的に考慮して決められます。
【重要】妊娠中の浮気は慰謝料の増額理由になる
慰謝料とは精神的苦痛に対する損害賠償です。妻が妊娠して大変な思いをしているにもかかわらず、夫が妻を顧みずに浮気に走った場合、妻の精神的苦痛は通常より深いと考えられます。そのため、妊娠中の浮気であることは慰謝料を増額する理由となります。
妻が精神的ショックで流産したり、うつ病などの精神疾患に陥ったりした場合には、300万円を超える慰謝料が認められることもあります。
不倫相手にも慰謝料請求できる
浮気は配偶者と浮気相手との共同不法行為なので、妻は夫だけでなく浮気相手にも慰謝料を請求できます。ただし、慰謝料の二重取りは認められません。300万円が認められるケースでも、夫と浮気相手の2人から受け取れる合計額が300万円になります。浮気相手から300万円全額を受け取った場合、浮気相手は夫に対して基本的に半分の150万円を請求できます。この権利を「求償権」といい、離婚しない場合は求償権を行使されると家計全体では半分しか残らない点に注意が必要です。
浮気の証拠を確保する
妊娠中の浮気を理由に慰謝料請求をするには、浮気の証拠を確保する必要があります。「浮気しているかも」という主観的な疑いだけでは不貞行為の証拠になりません。妊娠中の大変な時期ですが、計画的に証拠を集めましょう。1人で証拠収集をするのが難しい場合は、探偵社への依頼も検討すべきです。
- 性行為の写真・動画
- 探偵事務所の調査報告書
- ラブホテルの入退室の写真や動画
- 性行為に関するLINEメッセージ等のやり取り
- 性行為を認める音声
- 浮気を認める反省文・誓約書・示談書
[問い合わせバナー(tel/mail/line)]
5【2026年4月改正】妊娠中の離婚と共同親権制度
2026年4月1日に施行された改正民法により、離婚後の共同親権制度が導入されました。妊娠中に離婚を検討する場合は、この新制度の影響を理解しておくことが重要です。
共同親権制度とは
従来は、離婚時に父母のいずれか一方を親権者と定める「単独親権」のみでした。改正後は、父母の協議や家庭裁判所の判断により、離婚後も父母の双方が親権を持つ「共同親権」を選べるようになりました。どちらにするかは、子の利益を最優先に判断されます。
- それぞれの親が子どもの健全な成長環境を提供できるか
- これまでの主たる監護(世話)の実績
- 父母の関係性や、共同で親権を行使できる状況かどうか
親権・監護権・面会交流の違い
妊娠中の離婚では、次の3つを混同しないことが大切です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 親権 | 子どもの財産管理や重要事項を決める法律上の権利・義務。共同親権も選択可能に |
| 監護権 | 子どもと一緒に生活し、日常的に養育する権利。親権とは別に定めることもある |
| 面会交流(親子交流) | 離れて暮らす親が子どもと定期的に会う権利。原則認められるが、事情により制限も |
2026年4月の改正では、養育費を取り決めていない場合でも一定額を請求できる「法定養育費」(子1人あたり月額2万円)の制度も新設され、財産分与の請求期限も離婚から2年→5年に延長されました。妊娠中の離婚で経済面が不安な方は、これらの新制度も踏まえて条件を検討しましょう。
6妊娠中の浮気を防ぐために
妊娠中の浮気は、未然に防ぐに越したことはありません。妻としても、次のような工夫を心がけるとよいでしょう。
① コミュニケーションを円滑に行う
夫婦間のコミュニケーション不足は、浮気や離婚の原因になりがちです。不安に思っていることや困っていることを言葉にして伝え、夫にもできる簡単な家事を頼んでみましょう。その際、やり方を具体的に教えてあげることがポイントです。夫の悩みや愚痴を聞いてあげることも、良い関係を保つうえで大切です。
② 子どもの名付けや出産について話し合う
子どもの名前を一緒に考えたり、出産準備の買い物に2人で行ったりすることは、コミュニケーションになるだけでなく、夫に父親としての自覚を持ってもらうことにも役立ちます。出産準備に2人で取り組むことで、夫が浮気をする暇がなくなるという効果も期待できます。
③ 定期検診に同行してもらう
定期検診に同行してもらうと、エコー画像や胎児の心拍音を通じて子どもの成長を実感でき、父親としての自覚が育ちます。主治医から話を聞くことで妻の苦労を理解し、日常生活で気遣ってくれるようになることも期待できます。
④ 出産前に外出や旅行を計画する
妊娠中は妻自身のストレス発散も大切です。夫婦での外出や旅行を出産前の思い出づくりとして計画すると、コミュニケーションが深まり、夫が他の女性に癒やしを求めるリスクを下げることができます。体調に配慮し、無理のない範囲で行いましょう。


7妊娠中の浮気を理由とした離婚
妊娠中に夫が浮気した場合、離婚を考える方もいるでしょう。ここからは、妊娠中の浮気を理由とした離婚問題について解説します。
浮気は法定離婚事由になる
妊娠中に限らず、配偶者が浮気をして他の人と性的関係を結ぶこと(不貞行為)は、法定離婚事由となります(民法第770条1項1号)。法定離婚事由とは、相手が離婚に同意しなくても裁判で強制的に離婚が認められる離婚原因のことです。したがって、妊娠中に夫が浮気をした場合、離婚するかどうかは妻の意思で決めることが可能です。
離婚の手続き
離婚の手続きは、一般的に夫婦での話し合い(離婚協議)から始まり、まとまらなければ調停・裁判へと進みます。
協議離婚の場合
離婚届を提出する前に、慰謝料などの離婚条件を取り決め、離婚協議書を作成しましょう。離婚協議書は、できる限り公正証書(強制執行認諾文言付き)で作成するのがおすすめです。こうしておくと、相手が金銭を支払わない場合に、裁判をせずに給料や預貯金などの財産を差し押さえることが可能となります。
調停離婚の場合
夫婦だけで話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所へ離婚調停を申し立てます。中立・公平な立場の調停委員が話し合いを仲介するため、冷静な協議がしやすくなります。なお、離婚請求は裁判を起こす前に必ず調停を申し立てなければなりません(調停前置主義)。
裁判離婚の場合
調停でも合意できなかった場合は、家庭裁判所に離婚請求訴訟を提起します。裁判では、浮気(不貞行為)の事実を証拠で証明できれば、判決で離婚や慰謝料の支払いなどが命じられます。
離婚によって生じる問題
妊娠中の浮気を理由に離婚する場合は、次の離婚条件について検討し、話し合いか裁判で取り決める必要があります。
生まれてくる子どもの親権
妊娠中に離婚する場合、生まれてくる子どもの親権者は基本的に母親となります。出産後に離婚する場合も、母親が親権者となることが多いでしょう(前述の共同親権制度も参照)。
子どもの養育費
離婚後300日以内に子どもが生まれた場合は、元夫が子の父親とされるため、元夫に養育費を請求できます。金額は裁判所が公表する「養育費算定表」を参照して決めるのが一般的です。2026年4月以降の離婚では、取り決めがなくても月2万円の法定養育費を請求できる制度も利用できます。
子どもの面会交流(親子交流)
元夫から面会交流を求められたら、基本的には応じる必要があります。ただし、子どもが乳幼児のうちは写真・動画の交換やビデオ通話といった間接的な交流に制限されることもあり、母親が同席するケースもあります。元夫がDVをしていたような場合には、面会交流を拒否できる可能性もあります。
離婚それ自体の慰謝料
浮気が理由で離婚する場合の慰謝料は、厳密には「浮気の慰謝料」と「離婚それ自体の慰謝料」に区別できます。ただし、不貞慰謝料の相場は離婚する場合のほうが高くなっており、実務上この2つを厳密に区別して請求することは一般的ではありません。
8よくある質問(FAQ)
- 妊娠中の浮気だと慰謝料は必ず高くなりますか?
- 必ず高くなるわけではありませんが、増額の方向に働く重要な事情です。妻の精神的苦痛が大きいと評価されるため、通常のケースより上乗せされる傾向があります。流産や精神疾患を伴えば、さらに高額になることもあります。
- 離婚せずに慰謝料だけ請求することはできますか?
- できます。離婚するかどうかにかかわらず、不貞行為に対する慰謝料は請求可能です。ただし、同居を継続する場合は離婚する場合より相場が低くなる傾向があります。
- 証拠が「浮気しているかも」という疑いだけでも請求できますか?
- 主観的な疑いだけでは不貞行為を立証できず、請求は難しくなります。ラブホテルの出入りの写真、LINEのやり取り、調査報告書など、客観的な証拠を確保することが重要です。
不貞行為の証拠
①性行為の写真・動画
②探偵事務所の調査報告書
③ラブホテルの入退室の写真や動画
④性行為に関するLINEメッセージ等のやり取り
⑤性行為を認める音声
⑥浮気を認める反省文・誓約書・示談書
浮気した夫と早く別れたいと思っても、慰謝料などの離婚条件は離婚成立までに取り決めておくことが重要です。あとから請求するのは難しくなることがあります。
離婚問題に詳しい弁護士にご相談いただければ、請求できる慰謝料額の見通しや、浮気の証拠の集め方について有益なアドバイスが得られます。慰謝料請求や離婚請求の手続きを、弁護士に一任することも可能です。
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