コラム
更新日: 2026.06.19

【2026年最新】家賃値上げの通知時の注意点とは?通知書テンプレート・チェックリスト付き

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。大阪弁護士会所属(登録番号49544)、大阪中小企業診断士会所属(登録番号 420113)、幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

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賃料の値上げ通知は、貸主側にとっても借主側にとっても、慎重な対応が必要な場面です。

近年、物価上昇や固定資産税の増加、不動産相場の高騰を背景に、賃料の見直しを検討する大家さんが増えています。一方で、通知を受け取った借主の側も「これは拒否できるのか」「相場として妥当なのか」と不安を抱くケースが多くあります。

この記事では、貸主として通知する場合のポイント・通知書の書き方に加え、借主として通知を受け取った場合の対処法まで、双方の視点から弁護士が解説します。ご自身の立場に応じて、必要なセクションをご活用ください。

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目次
  1. 賃料値上げの法的な根拠
  2. 【借主向け】通知が届いたらまず確認すべき3つのこと
  3. 【借主向け】値上げを拒否することはできるのか
  4. 【貸主向け】賃料値上げの判断基準とタイミング
  5. 【貸主向け】通知時に押さえるべき5つの注意点
  6. 【貸主向け】通知書の書き方・テンプレート
  7. 入居者からの反論パターンと対応
  8. 合意に至らない場合の法的手続き
  9. よくある質問
  10. 賃料値上げのご相談は難波みなみ法律事務所へ

賃料値上げの法的な根拠

賃料の値上げ・値下げは、**借地借家法32条が定める「賃料増減請求権」**に基づきます。賃貸借契約で定めた賃料が、その後の事情変化により不相当になった場合、当事者(貸主・借主どちらからも)将来に向けて賃料の増減を請求できる権利です。

請求が認められる主な理由は次の3つです。

  • 租税その他の負担(固定資産税等)の増減
  • 土地・建物価格の変動
  • 近隣の賃料相場と比較して不相当になった場合

この権利は「形成権」とされ、貸主から借主への意思表示によって法的効果が生じます。ただし、借主には増額が不相当だと考える場合に異議を申し立てる権利もあり(借地借家法32条2項)、この場合、借主は「自身が相当と認める額」を支払い続けることができます。

賃料を上げない特約(不増額特約)がある場合

契約書に「賃料を値上げしない」という不増額特約がある場合、貸主は原則としてこれに拘束されます。ただし、契約締結時に予測できなかった著しい経済情勢の変動があった場合など、例外的に増額請求が認められることもあります。

【借主向け】通知が届いたらまず確認すべき3つのこと

家賃値上げの通知を受け取った場合、慌てて応じる前に、以下を確認しましょう。

✅ チェックリスト

  • 値上げの理由は明記されているか(固定資産税の増加、近隣相場の変化など具体的な根拠があるか)
  • 契約書に不増額特約がないか(特約があれば、原則として値上げは認められません)
  • 近隣の同条件物件の家賃相場はどうか(不動産ポータルサイト等で類似物件を調べる)

これらを確認したうえで、値上げの理由が乏しい、または相場とかけ離れている場合は、拒否・交渉の余地があります。

【借主向け】値上げを拒否することはできるのか

結論として、借主には値上げを拒否する権利があります。 賃貸借契約は双方の合意が原則であり、貸主が一方的に賃料を決定することはできません。

拒否しても退去させられることはない

借地借家法32条2項により、増額が正当と認める裁判が確定するまでは、借主は自分が相当と認める額を支払い続けることができます。これは家賃滞納にはあたらず、これを理由に貸主が契約解除や退去を求めることはできません。

拒否する際の対応手順

  1. 値上げ理由の説明を貸主に求める
  2. 近隣相場を自分でも調査する
  3. 拒否の意思を書面で明確に伝える(口頭だけでは「言った言わない」のトラブルになりやすいため)
  4. 必要に応じて、段階的な値上げなど代案を提示する

注意点

合意できない場合、貸主が調停や訴訟に進むことはあり得ます。最終的に増額が裁判で認められた場合、請求時点から年10%の遅延損害金が付された差額を支払う義務が生じる点には注意が必要です(借地借家法32条2項ただし書)。

こんなお悩みはありませんか?

  • 家賃の値上げ通知が届き、相場として妥当か判断できない(借主)
  • 賃料を値上げしたいが、入居者にどう伝えればよいかわからない(貸主)
  • 値上げ交渉が平行線で、調停・訴訟も視野に入れたい

貸主様・借主様、どちらのお立場でもご相談いただけます

【貸主向け】賃料値上げの判断基準とタイミング

賃料値上げのタイミングに法的な定めはありませんが、実務上よく使われるタイミングは以下の通りです。

  • 賃貸借契約の更新時に合わせて通知する
  • 賃料合意から長期間が経過している
  • 固定資産税等の租税公課が増加した

ただし、長期間が経過しているという事実だけでは値上げ理由になりません。前述の3つの正当な理由(租税負担の増減・物件価格の変動・近隣相場との乖離)のいずれかが必要です。

【貸主向け】通知時に押さえるべき5つの注意点

図解:賃料値上げ通知の進め方

① 値上げ根拠の整理
   (固定資産税資料・近隣相場データを収集)
        ↓
② 通知書の作成・送付
   (内容証明郵便を推奨/2〜3か月前に通知)
        ↓
③ 借主からの応答を待つ
   (合意 → 合意書作成で完了)
   (拒否・無反応 → ④へ)
        ↓
④ 再通知・交渉
   (内容証明郵便で再通知、代理人を立てることも検討)
        ↓
⑤ 民事調停(調停前置)
        ↓
⑥ 訴訟(鑑定意見書等で適正賃料を立証)

① 口頭ではなく書面(できれば内容証明郵便)で通知する

口頭通知は「言った言わない」のトラブルの元です。内容証明郵便であれば、いつ・誰が・誰に・どんな内容を送ったかを郵便局が公的に証明してくれるため、法的証拠能力が高くなります。

② 冷静な対応を心がける

値上げ通知は借主にとって受け入れにくいものです。高圧的な態度は避け、事実に基づいた冷静な説明を心がけましょう。

③ 増額時期に余裕を持たせる(目安:2〜3か月前)

通知から増額までの猶予期間を設けることで、借主側の心の準備や収支計画の時間を確保でき、円満な合意につながりやすくなります。

④ 増額の理由・根拠を客観的データで示す

「物価が上がったから」では不十分です。固定資産税評価額の推移、近隣賃料相場、修繕費の増加など、客観的なデータを添えましょう。

⑤ 相場とかけ離れた高額請求は避ける

過大な値上げ要求は不信感を招き、交渉が長期化・法的手続きへ発展するリスクを高めます。

【貸主向け】通知書の書き方・テンプレート

通知書に含めるべき必須項目

項目内容
宛名・差出人賃借人の住所氏名、賃貸人の氏名・住所・連絡先
発送日通知書を発送した日付
表題「賃料改定のお願い」など
契約情報契約締結日、現行賃料額、物件情報、関連特約
増額理由客観的根拠(税負担増・相場変動など)
新賃料・適用時期いくらに、いつから増額するか
回答期限借主からの回答が必要な場合の期限

通知書テンプレート(例文)

宛名・差出人・日付・表題の例文

〒000―0000
兵庫県神戸市中央区○○丁目○○号
難波 一郎 様
賃料改定のお知らせ
令和●年●月●日
〒000―0000
大阪府大阪市中央区○○丁目○○号
電話 06-●●●●-○○○○
FAX 06-●●●●-○○○○
通知人 株式会社○○エステート 

本文の例文

拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
通知人株式会社○○エステート(以下「通知会社」といいます。)は貴殿に対して、後述の賃貸借契約に係る賃料増額請求について御連絡申し上げます。
さて、通知会社は貴殿との間で、平成●年●月●日、別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」といいます。)を対象物件、賃料額を月額10万円とする賃貸借契約を締結しました(以下、同契約を「本件契約」といいます。)。
しかし、本件契約の賃料は、契約締結時である最終合意時から現在に至るまで一度も改定することなく長期間にわたり据え置かれています。ところが、最終合意時の平成●年から既に○○年が経過し、その間物価は大きく上昇しました。また、本件建物の固定資産税評価額は○○万円から○○万円にまで上昇しており、これに伴い固定資産税などの公租公課も大幅に上昇いたしました。さらには、近傍類地の相場賃料額は○○万円であり、現行賃料額は著しく低い水準となっています。このような事情から、本件契約の現行賃料は著しく不相当なものとなりました。
つきましては、令和○○年○月分より、賃料を月額金○○○○円に増額させていただきますので、本書をしてご通知申し上げます。本書を受領されてから何らのご対応も頂かない場合には、調停申立てや訴訟提起等の法的対応をせざるを得ませんので、悪しからずご了承ください。
敬具

⚠️ この例文をそのまま使う際の注意

物件・金額・理由は必ず実際の状況に合わせて修正してください。誤った内容で送付すると、後の交渉や法的手続きで不利になる可能性があります。心配な方は弁護士に文面のチェックを依頼することをお勧めします。

入居者からの反論パターンと対応

借主からの反論貸主側の対応
「理由を明らかにしてほしい」通知書の理由について、客観的データを添えて改めて文書で説明する
「一切応じない」客観的根拠を再提示。話し合いが平行線なら弁護士への相談も検討
「以前の家賃を払い続ける」直ちに滞納にはならない(借地借家法32条2項)。受領時は「適正賃料の一部として受領する」旨を書面で示す
「弁護士に相談する」と言われた交渉経緯を記録・保全。貸主側も弁護士への相談を検討する
「段階的な値上げなら応じる」期間と金額を明示した合意書・変更契約書を作成し、書面化する
通知を無視・放置された電話や郵便で再確認 → 内容証明での再通知 → 民事調停の申立てへ

合意に至らない場合の法的手続き

内容証明郵便による再通知

普通郵便やメールで初回通知をしていた場合、内容証明郵便での再通知は心理的プレッシャーとなり、交渉が動き出すきっかけになることがあります。

民事調停(調停前置)

賃料増額請求は、いきなり訴訟を提起することはできず、まず調停を経る必要があります(調停前置)。裁判官1名・調停委員2名で構成される調停委員会が、非公開・柔軟な形で話し合いを仲介します。合意に至れば「調停調書」が作成され、確定判決と同じ効力を持ちます。

訴訟

調停が不成立の場合、訴訟に進みます。不動産鑑定士の鑑定意見書が重要な証拠となり、解決まで1年以上かかることも珍しくありません。

よくある質問

Q. 家賃値上げの通知が来ましたが、無視してもいいですか?

A. 無視を続けても直ちに不利益はありませんが、貸主が調停・訴訟に進む可能性があります。早めに意思表示(合意するか、拒否するか)を書面で伝えることをお勧めします。

Q. 値上げに納得できない場合、今までの家賃を払い続けて大丈夫ですか?

A. はい。借地借家法32条2項により、増額を正当とする裁判が確定するまでは、自身が相当と認める額を支払えば、これを理由に契約解除されることはありません。

Q. 貸主側ですが、どのくらいの増額幅なら認められやすいですか?

A. 一律の基準はなく、固定資産税の増加分や近隣相場との乖離幅など、個別事情によります。相場とかけ離れた請求は紛争化しやすいため、不動産鑑定士の意見等を踏まえた合理的な金額設定が望ましいです。

Q. 値上げ通知は内容証明郵便でなければ無効ですか?

A. 無効ではありません。普通郵便や手渡しでも法律上は有効です。ただし、証拠力の高さから内容証明郵便が推奨されます。

賃料値上げのご相談は難波みなみ法律事務所へ

賃料の値上げは、貸主にとっては収益と物件価値を維持するための重要な経営判断であり、借主にとっては生活・事業に直結する重要な問題です。どちらの立場であっても、感情的な対立を避け、客観的根拠に基づいた冷静な交渉が円満な解決への近道です。

交渉が難航する場合は、内容証明郵便での再通知、民事調停、訴訟といった法的手段がありますが、いずれも時間と費用がかかり、当事者間の関係を損なうおそれもあります。早めに弁護士へご相談いただくことで、よりスムーズな解決が見込めます。

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