子あり夫婦のセックスレスによる離婚について、まず結論をお伝えします。
- 相手が合意すれば:セックスレスだけでも協議離婚・調停離婚できる
- 相手が拒否する場合:セックスレス単独では裁判での離婚は認められにくい
- 不倫・DV・長期別居が加わると:離婚原因として認められる可能性が高まる
2022年の司法統計によると、離婚調停の申立て動機のうちセックスレスを含む「性的不調和」が理由だったものは、夫側で全体6位(1,669件)、妻側で全体7位(2,733件)。子あり夫婦にとって他人事ではない問題です。
セックスレスとは
セックスレスという言葉を耳にする機会が増えています。一体セックスレスとはどのような状態を指しているのでしょうか。
一般的に、セックスレスとは夫婦間で性交渉がない、あるいは極端に少ない状態が続いている状況を意味します。具体的には、1ヶ月に1回未満の性交渉頻度である場合や、半年以上性交渉がない場合などがセックスレスに該当すると考えられています。
セックスレスが長期化すると、夫婦間のコミュニケーション不足や感情的な乖離を引き起こし、最終的には離婚に至るケースも少なくありません。実際、セックスレスが原因で離婚を選択する夫婦は年々増加傾向にあるのです。一般社団法人日本家族計画協会の調査によると、47.2%の夫婦がセックスレスの範疇にあり、夫婦のセックスレスは年々増加しています。
セックスレスの原因と子供の出産
セックスレスの原因は多岐に渡ります。仕事や育児による疲労・ストレス、パートナーへの不満、性的な不一致、年齢による衰え、健康上の問題など、様々な要因が複合的に絡み合っているケースが多いのです。特に、子育て中の夫婦は、育児による心身の疲れやプライベートな時間の不足から、性的な交流が減少しやすい傾向にあります。
一般社団法人日本家族計画協会のアンケート調査によると、セックスに対して積極的になれない理由は以下の結果になっており、男女問わず、子供の出産がセックスレスに影響していることが分かります。
男性では、
- 「仕事で疲れている」35・2%
- 「家族(肉親)のように思える」12・8%
- 「出産後何となく」12・0%
女性では
- 「面倒くさい」22・3%、
- 「出産後何となく」20・1%、
- 「仕事で疲れている」17・4%
セックスレスで離婚はできるか
セックスレスで離婚をすることは可能なのでしょうか。結論からお伝えすると、セックスレスだけを理由とした離婚については、相手方の合意があれば問題ありませんが、相手方が拒否する場合には、強制的に離婚できるだけの理由にはなりにくいでしょう。
セックスレスだけでは離婚原因にはなりにくい

セックスレスはそれだけで離婚原因とはなりにくいのが現状です。
相手方が離婚に応じない場合、民法で定められた離婚原因が存なければ離婚することはできません。
法定の離婚原因とは、以下の事由をいいます。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- 婚姻を継続しがたい重大な事由
セックスレスは1から4の事由には当たりませんから、5の婚姻関係を継続し難い事由に該当するかが問題となります。
しかし、5項に該当するためにはおよそ夫婦関係を修復できない程度に夫婦関係が破綻していることを客観的に説明できなければいけません。例えば、性交渉を求めてもかなりの長期間に及んで性交渉を拒否し続けている場合には、セックスレスは離婚原因になるでしょう。
ただ、セックスレスを理由に夫婦関係が破綻していることを証明できないことが多くあります。なぜなら、セックスレスのような家庭内で、かつ、センシティブな問題を事後的に客観的な証拠を基に説明することができないことがほとんどだからです。
セックスレスに不倫やDV・モラハラがあれば離婚原因となる
セックスレスに加えて、配偶者の不貞行為やDV・モラルハラスメントなどがあった場合は、離婚原因になります。
セックスレスが原因となり、夫婦仲が悪化することで、不貞行為やDVなどの有責行為に発展することがあります。
配偶者がほかの異性と性行為を行う不倫は、明らかな離婚原因の1つです。加えて、配偶者への暴力や著しい侮辱や人格非難など、婚姻を継続しがたい重大な背信行為があれば、裁判所はセックスレスと総合的に判断して離婚を認める可能性が高くなります。
セックスレスが原因で長期間別居していれば離婚原因となる
セックスレスにより夫婦仲が悪くなり、別居に至った場合、その別居が長期間に及べば、離婚原因は認められます。
長期間の別居により、夫婦関係が破綻するに至ったと判断できれば、夫婦関係を継続し難い重大な事由に該当します。この場合、別居期間の長短に加えて、同居期間、別居に至る経緯、別居期間中の夫婦の交流などの事情を総合的に判断します。
そのため、別居に至る原因がセックスレスである場合、セックスレスと長期間の別居との掛け合わせにより離婚原因が認定される可能性があります。
こんなお悩みはありませんか?
- ✓ セックスレスで離婚を考えているが、子どもへの影響が心配
- ✓ 相手が離婚に応じてくれない。セックスレスを理由に離婚できるか知りたい
- ✓ 慰謝料を請求したいが、証拠の集め方がわからない
センシティブな問題だからこそ、専門家に相談することが重要です
セックスレスで離婚することと子どもの親権は別問題
離婚の理由が何であれ、親権の判断基準は「子どもの利益」のみです。 セックスレスという夫婦間の問題は、親権決定に直接関係しません。
裁判所が親権者を判断する際に考慮する主な要素:
- これまでの監護状況(主に子どもの世話をしてきたのはどちらか)
- 子どもとの心理的な結びつき
- 子どもの年齢・意思(10歳前後から参考にされ、15歳以上は意見聴取が義務)
- 各親の監護能力・経済力
- 別居後の監護状況
セックスレスを理由に離婚した場合でも、それだけで親権が不利になることはありません。ただし、別居前に子どもを連れて家を出ることが非常に重要です。子どもを置いて出て行くと、相手に監護実績が積み重なり、親権争いで不利になります。
親権の判断基準について詳しくは「父親の親権獲得を有利に進める方法」「親権争いで母親が負けるケース」もご参照ください。
セックスレスで慰謝料請求できるか?
慰謝料が認められる条件
| 状況 | 慰謝料請求 |
|---|---|
| 正当な理由なく一方的に性交渉を拒否し続けた | ✅ 認められる可能性あり |
| DV・不貞行為など他の有責行為もある | ✅ 認められる可能性が高い(上積みも) |
| 双方が性行為を望んでいなかった | ❌ 難しい |
| 病気・高齢による性的機能の問題 | ❌ 難しい |
東京地裁 平成27年8月18日
交際期間・同居期間・婚姻期間を通じて夫が一度も性交渉に応じず、キスやハグなどの身体的接触すらなかった事案。妻が不安を伝えても夫は態度を変えなかったことを理由に、裁判所は元夫に50万円の慰謝料支払いを命じました。
慰謝料の相場
セックスレスを主な理由とした場合、認められても高額にはなりにくいとされていますが、DV・不倫などが加わると大幅に上積みされます。
- セックスレスのみ:数十万円〜100万円程度
- DV・不倫等が加わる場合:100万〜300万円程度
慰謝料の金額は、セックスレスの期間・原因・相手の有責性・婚姻期間・精神的苦痛の程度を総合的に考慮して決定されます。
証拠の集め方
セックスレスはセンシティブな問題で証拠の確保が難しいため、早い段階から計画的に記録しておくことが重要です。
証拠の種類と具体的な方法
| 証拠の種類 | 具体的な方法 |
|---|---|
| セックスレス | 日記・カレンダーに拒否された日・状況・言葉を記録。カウンセリング記録 |
| 不貞行為 | 写真・動画・メールやLINEのやり取り。探偵への依頼 |
| DV・モラハラ | 暴力の痕跡写真、医療機関の診断書、録音データ |
| 全般 | 拒否の際のやり取りの録音・メッセージのスクリーンショット |
セックスレスが性的DVに該当する可能性についても確認しておきましょう。詳しくは「DVとモラハラの違いとは?」をご参照ください。
子あり夫婦が離婚する際の注意点
親権:子どもを連れて別居することが最優先
前述の通り、親権を希望するなら子どもを連れて別居を開始することが極めて重要です。子どもを置いて出て行くと、継続性の原則により著しく不利になります。ただし、子を連れて別居するにしても、あまりにも強引な方法で子を連れ去ることは、親権や監護権の判断において不利な事情として働くため、子を連れて出て行く場合には、可能な限り配偶者との協議を経ておくことが大切です。
養育費:必ず書面(公正証書)で取り決める
離婚後、非親権者は養育費を支払う義務があります。子どもの年齢・人数・双方の収入をもとに、裁判所の養育費算定表で目安を確認できます。口頭の約束では後々トラブルになるため、離婚協議書・公正証書に必ず明記しましょう。
養育費については「養育費を払わないとどうなる?」もご参照ください。
財産分与:婚姻期間中の共有財産が対象
結婚後に取得した共有財産(預金・不動産・保険・年金など)が対象です。結婚前の財産・相続・贈与で得た財産は対象外。通帳・不動産の登記簿謄本・年金の情報などを事前に収集しておきましょう。
離婚後の経済的安定を図る
子どもを引き取る親は、離婚後の生活設計を早めに立てることが重要です。
- 再就職・資格取得の準備
- 新居の確保
- ひとり親支援制度の活用(児童扶養手当・医療費助成など)
シングルマザーが受けられる支援については「シングルマザーの手当は?」をご参照ください。
セックスレスの離婚の進め方
ここでは、セックスレスの離婚を進めていく上で重要なポイントを順を追って説明していきます。
離婚や子供の影響を真摯に考えてみる
セックスレスを理由に離婚手続きを進めていく前に、離婚が自分自身や子供にどのような影響を与えるのかを慎重に考えるべきです。特に幼い子供がいる場合、離婚によって子供の心理面に大きな影響を与える可能性があります。
そのため、離婚後の生活設計や子供に与える影響を、十分に検討しておくことが重要です。場合によっては、カウンセリングを受けるなどして、専門家のアドバイスを参考にすることも必要です。
離婚協議の申し入れをする
離婚を決意したら、まずは配偶者に対して離婚協議の申し入れをします。その際、離婚の理由や離婚条件について、冷静に説明することが大切です。
離婚の話し合いに際しては、財産分与や子供の親権、養育費などについて話し合います。離婚それ自体に加えて離婚条件について合意ができれば、その内容を記した合意書を作成してください。
合意書は、後々のトラブルを防ぐためにも、弁護士に相談しながら作成することをおすすめします。
離婚調停の申立てをする
離婚協議が不調に終わった場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。調停では、調停委員が双方の主張を聞き、話し合いを進めていきます。
セックスレスが離婚の理由である場合、調停委員に対してセックスレスの事実を詳しく説明し、離婚理由があることを主張することが重要です。調停で合意に至らない場合は、離婚訴訟へと進むことになります。
離婚裁判をする
調停でも離婚の合意に至らない場合は、離婚訴訟を提起することになります。裁判では、セックスレスの事実を証明する証拠を提出し、離婚の正当性を主張します。
裁判の過程では、弁護士を代理人に選任した上で、適切な主張や立証を行うことが重要です。裁判の結果、離婚が認められれば、離婚が成立することになります。
以上が、子あり夫婦がセックスレスを理由に離婚する際の基本的な流れです。離婚は、夫婦だけでなく子供にも大きな影響を与える重大な決定です。十分に時間をかけて検討し、適切な手順を踏んで進めていくことが大切だと言えるでしょう。
よくある質問
Q. セックスレスを理由に離婚したいですが、夫(妻)が拒否しています。どうすればいいですか?
A. まず協議・調停を試みます。調停でも不調の場合は訴訟ですが、セックスレス単独での裁判離婚は認められにくいため、不倫・DV・長期別居など他の事情と組み合わせて主張できるかが重要です。弁護士にご相談ください。
Q. セックスレスの証拠はどうやって集めればいいですか?
A. 日記・カレンダーへの記録が基本です。拒否された際のやり取りの録音、LINEのメッセージ、カウンセリング記録なども有効です。後から作成したものは証拠の信用性が弱まるため、日常的に記録する習慣をつけることが重要です。
Q. セックスレスの原因は夫の不倫かもしれません。どうすれば確かめられますか?
A. 不貞行為を認められるためには、これを裏付ける証拠が必要です。LINE・メール・SNSのやり取り、写真・動画、探偵への依頼などが証拠になります。不倫が確認できれば、離婚原因および慰謝料請求の根拠になります。詳しくは「不貞行為とは」をご参照ください。
Q. 相手のDVもあります。セックスレスとDVを合わせて離婚できますか?
A. はい。DVはそれだけでも離婚原因になり得ますし、セックスレスと組み合わせることで婚姻関係の破綻の主張がより強化されます。詳しくは「DVとモラハラの違いとは?」をご参照ください。
Q. 離婚前に別居しようと考えています。婚姻費用はどうなりますか?
A. 別居中でも婚姻費用分担義務は継続します。収入の多い方が少ない方に婚姻費用を支払う義務があり、養育費と同様に算定表で目安が確認できます。
子あり夫婦の離婚問題は難波みなみ法律事務所へ

セックスレスは、多くの夫婦が抱えている深刻な問題です。これが理由に離婚を考える人も少なくありません。また、セックスレスを要因に別の有責行為を招くこともあります。
しかし、子供がいる夫婦では、離婚によって子供に対して生じる様々な影響を考慮せざるを得ません。父母が離れて暮らすことによる心理的な影響は大きく、離婚後の経済的な不安定により生活環境が悪化する可能性もあります。そのため、セックスレスで離婚を考えている場合、本当に離婚するべきか、修復の余地がないかを真摯に考えてみるべきでしょう。
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