コラム
公開日: 2026.09.15

相続登記の義務化とは?3年以内の申請義務・過料10万円・過去の相続の期限を弁護士が解説

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。大阪弁護士会所属(登録番号49544)、大阪中小企業診断士会所属(登録番号 420113)、幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回、15回、75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコム、ココナラ、弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

まず結論
相続登記はいつまでにすればよいですか?
不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記申請する義務があります(2024年4月1日から義務化)。
過去に相続した不動産も対象ですか?
対象です。2024年3月31日以前に相続した未登記の不動産は、2027年3月31日までに登記する必要があります。
登記しないとどうなりますか?
正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり、放置すると売却・担保設定ができず、相続人が増えて手続きが複雑化します。

2024年4月1日から、相続した不動産の登記(名義変更)が義務になりました。これまで任意だった相続登記に期限と過料が設けられ、過去の相続にもさかのぼって適用されます。この記事では、いつまでに何をすべきか、間に合わないときの簡易策(相続人申告登記)、手続きの流れと必要書類、放置のリスクまでを弁護士がわかりやすく解説します。

相続登記の義務化とは|3年以内の申請義務

相続登記の義務化とは、不動産を相続した人に対し、相続によって所有権を取得したことを知った日から3年以内に、法務局へ登記の申請を義務づける制度です(不動産登記法76条の2第1項)。所有者不明土地の増加を防ぐため、2024年4月1日に施行されました。正当な理由なく期限内に申請しないと、10万円以下の過料(不動産登記法164条1項)の対象になります。

項目内容
施行日2024年(令和6年)4月1日
義務の内容不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請
遺産分割の場合分割協議がまとまった日から3年以内に、その内容の登記を申請
過去の相続施行前に発生した相続も対象。2027年3月31日までに申請
違反時正当な理由なく怠ると10万円以下の過料

いつまでに登記が必要か|期限の早見表

原則(2024年4月1日以降の相続)
被相続人が亡くなり、自分が不動産を相続すると知った日から3年以内。
過去の相続(2024年3月31日以前)
すでに発生していて未登記のものは、2027年(令和9年)3月31日まで。
遺産分割がまとまったとき
協議・調停で不動産の取得者が決まった日から3年以内にその登記を申請。
特に注意:「昔、親名義のままの実家がある」というケースは、過去の相続分として2027年3月末が期限です。相続人が兄弟から甥・姪へと広がると必要書類も同意も一気に増えるため、早めの着手が有利です。

3年以内に間に合わないとき|相続人申告登記

遺産分割がまとまらず3年以内に本来の登記ができない場合の簡易策として、相続人申告登記(不動産登記法76条の3)が新設されました。「自分が相続人である」ことを法務局に申し出れば、いったん義務を果たしたものとして扱われ、過料を回避できます。

ポイント:相続人申告登記は義務を一時的に満たすための暫定措置です。持分の売却や担保設定はできないため、最終的には遺産分割を行い、正式な相続登記を完了させる必要があります。

「正当な理由」があれば過料は科されない|認められる5つの例

過料が科されるのは「正当な理由なく」義務を怠った場合に限られます。しかも、いきなり過料になるわけではなく、登記官が相当の期間を定めて申請を促す催告を行い、それでも正当な理由なく申請しないときに、はじめて裁判所へ過料通知がされます(不動産登記法164条1項)。なお、ここでいう過料は行政上の秩序罰であり、前科が付く刑事罰(罰金・科料)とは異なります。法務省の通達では、申請期間内に次の①〜⑤のような事情があれば、一般に「正当な理由」があると認められるとされています。

  • ①相続人が極めて多数にのぼり、戸籍の収集や他の相続人の把握に多くの時間がかかる場合
  • ②遺言の有効性や遺産の範囲などが相続人間で争われ、不動産を誰が取得するか定まらない場合
  • ③申請義務を負う人自身に重病など、これに準ずる事情がある場合
  • ④申請義務を負う人がDV被害者等で、生命・心身に危害が及ぶおそれから避難を余儀なくされている場合
  • ⑤申請義務を負う人が経済的に困窮し、登記に要する費用を負担できない場合
ポイント:正当な理由はこの5つに限られません。ほかにも個別の事情があれば、催告書の申告欄に具体的に記載し、裏付け資料を添えて申告できます。一方で「忙しい」「面倒」といった理由は正当な理由には当たりません。判断に迷う場合は早めに弁護士へご相談ください。

相続登記の手続きの流れ(4ステップ)

  1. 相続人と相続財産の確定被相続人の出生から死亡までの戸籍を集め、法定相続人と対象不動産(登記事項証明書・名寄帳)を確定します。
  2. 遺産分割協議誰がどの不動産を相続するかを相続人全員で話し合い、遺産分割協議書に実印で押印します(遺言がある場合は原則それに従います)。
  3. 必要書類の収集戸籍・住民票・印鑑証明書・固定資産評価証明書などをそろえます。
  4. 法務局へ登記申請管轄の法務局へ申請します。登録免許税は固定資産評価額の0.4%が目安です。

主な必要書類

  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍・改製原戸籍)
  • 相続人全員の戸籍謄本・住民票
  • 遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書(協議による場合)
  • 対象不動産の固定資産評価証明書・登記事項証明書
被相続人(親) 不動産の名義人 長男 相続・要登記 長女 相続・要登記 次男 相続放棄
相続関係のイメージ。不動産を取得した相続人に3年以内の登記義務が生じます(相続放棄した人は取得しません)。

相続登記を放置するリスク

  • 10万円以下の過料の対象になる
  • その不動産を売却・担保設定・活用ができない
  • 相続人がさらに亡くなり、権利者が兄弟から甥・姪へ拡大し、遺産分割協議が難航する
  • 相続人の一部に判断能力の低下・行方不明が生じ、手続きが停止する

実家の名義変更・相続登記のご相談は難波みなみ法律事務所へ

大阪・なんばの弁護士が、戸籍収集から遺産分割・登記の段取りまでご一緒します。初回相談30分無料・夜間土日も対応。

相続登記の義務化に関するよくある質問

相続登記の義務はいつから始まりましたか?
2024年4月1日から始まりました。施行後に発生した相続は、取得を知った日から3年以内の登記申請が義務です。
過去に相続した不動産はいつまでに登記すればよいですか?
2027年3月31日までです。2024年3月31日以前に相続して未登記のものは、施行日から3年の猶予期間内に申請する必要があります。
登記しないと必ず過料を取られますか?
正当な理由がある場合は過料の対象外です。数次相続で相続人が極めて多い、遺言の有効性を争っている等の事情があれば考慮されますが、単なる放置は正当な理由になりません。
相続人申告登記とは何ですか?
自分が相続人であることを法務局に申し出て、いったん登記義務を果たす簡易な制度です。過料は回避できますが、売却等はできないため最終的に正式な相続登記が必要です。
費用はどのくらいかかりますか?
登録免許税は固定資産評価額の0.4%が目安です。ほかに戸籍等の取得実費、専門家に依頼する場合はその報酬がかかります。
相続人同士で話がまとまらない場合はどうなりますか?
まず相続人申告登記で過料を回避し、並行して遺産分割協議・調停を進めます。まとまり次第、その内容で相続登記を申請します。
自分で登記できますか、弁護士に頼むべきですか?
単純な事案はご自身でも可能です。ただし相続人が多い・連絡が取れない・分割で揉めている場合は、交渉と登記を一体で進められる弁護士への相談が有効です。

本記事は2026年9月時点の情報に基づき、難波みなみ法律事務所が作成しました。個別の事案の見通しは、具体的な事情により異なります。最終的な判断は弁護士にご相談ください。

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