コラム
更新日: 2026.09.16

財産分与とは?2026年民法改正のポイント(請求期限5年・2分の1ルール・対象財産)を弁護士が解説

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。大阪弁護士会所属(登録番号49544)、大阪中小企業診断士会所属(登録番号 420113)、幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回、15回、75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコム、ココナラ、弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

まず結論
財産分与とは何ですか?
離婚時に、夫婦が結婚生活で協力して築いた財産を公平に分ける制度です。名義がどちらであっても対象になります(民法768条)。
どのくらいの割合で分けますか?
原則として2分の1ずつです。専業主婦(主夫)でも家事等の貢献が評価され、2分の1が基本です。
いつまでに請求できますか?
2026年4月1日以降に成立した離婚は、離婚から5年以内です(改正前に成立した離婚は2年以内)。

財産分与は、離婚のときにお金や不動産の取り分でもっとも揉めやすい問題です。2026年4月1日に施行された民法改正で、請求できる期間が2年から5年に延び、「2分の1」で分ける考え方や、相手の財産を開示させる仕組みが整えられました。この記事では、対象になる財産・ならない財産、割合と計算方法、住宅ローン・退職金・年金の扱い、財産隠しへの対処、手続きと期限までを、大阪・なんばの弁護士がわかりやすく解説します。

財産分与とは|結婚後に築いた財産を公平に分ける制度

財産分与とは、離婚に伴い、婚姻中に夫婦が協力して形成・維持した財産(共有財産)を清算して分ける制度です(民法768条)。預貯金や不動産の名義が一方だけであっても、実質的に夫婦の協力で得た財産であれば対象になります。財産分与には次の3つの性質があります。

① 清算的財産分与

婚姻中に築いた共有財産を清算して分ける、中心的な部分。財産分与の大半はこれです。

② 扶養的財産分与

離婚後の生活が困窮する側を一定期間支える趣旨で加える場合。高齢・病気・収入格差が大きいときに問題になります。

③ 慰謝料的財産分与

不貞やDVなどの慰謝料を財産分与に含めて調整する場合。慰謝料を別途請求することもできます。

2026年の民法改正で変わった3つのポイント

① 請求期限が「2年」から「5年」に延長
離婚後に請求できる期間が2年から5年に延びました(改正民法768条2項ただし書)。2026年4月1日以降に成立した離婚が対象で、それ以前に成立した離婚は従来どおり2年です。
② 分与割合「2分の1」の明確化
夫婦の寄与の程度は、それが異なることが明らかでないときは相等しい(=2分の1)とされました(改正民法768条3項)。専業主婦(主夫)でも原則2分の1が基本です。
③ 財産の情報開示の仕組み
財産分与の裁判手続で、家庭裁判所が当事者に財産状況の情報開示を求められる仕組みが整えられ、正当な理由なく応じない場合の制裁も設けられました。相手が財産隠しをしにくくなります。
注意:期限の起算は「離婚成立の日」です。2026年4月1日より前に離婚した場合は、猶予が2年のままなので、心当たりがある方は早めにご確認ください。

財産分与でいくらもらえる?計算の考え方

財産分与の額は「夫婦の共有財産の合計(プラスの財産からマイナスの債務を引いた純資産)を、原則2分の1ずつ分ける」という考え方で決まります。次は考え方を示すための計算例です(金額は説明用の仮の設定です)。

夫名義の預貯金800万円
妻名義の預貯金200万円
自宅(時価)3,000万円
住宅ローン残債−2,000万円
夫の独身時代からの貯金(特有財産)−300万円
分与対象となる共有財産(純資産)1,700万円
各自の取り分 = 1,700万円 ÷ 2 = 850万円ずつ

すでに一方が多く持っている場合は、差額を金銭で支払って調整します(代償金)。特有財産(独身時代の貯金・相続財産など)は先に除外してから計算するのがポイントです。

財産分与の対象になる財産・ならない財産

区分具体例対象
共有財産
(対象)
婚姻中に貯めた預貯金、婚姻中に買った不動産・自動車・家財、株式・投資信託、婚姻中の保険の解約返戻金、婚姻中に積み立てた退職金・企業年金など私的年金(※公的年金は「年金分割」で処理)分ける
特有財産
(原則対象外)
独身時代の貯金、婚姻前から持っていた財産、親などから相続・贈与で得た財産分けない
債務住宅ローン、生活のための借入れなど、共有財産の形成に伴う借金はマイナスとして考慮(ギャンブル等の個人的な借金は原則対象外)考慮する
ポイント:特有財産でも、婚姻中の維持・増加に配偶者の貢献があった場合は、その増加分が考慮されることがあります。名義や口座が別でも「実質的に夫婦で築いたか」で判断します。

いつの時点の財産が対象?(基準時)

対象となる財産を確定する基準時は、原則として別居した時点です。別居後に一方が自分の給料で貯めた財産は、原則として分与の対象になりません。一方、不動産や株式などの評価額は、実際に分けるとき(協議成立時・裁判時)に近い時点の価格を用いるのが一般的です。

2分の1ルールが修正されるケース

原則は2分の1ですが、次のような事情があるときは、割合が修正されたり、対象から除かれたりすることがあります。

  • 医師・経営者・スポーツ選手など、一方の特別な才能や努力によって高額の資産が築かれた場合(割合が修正される裁判例があります)
  • 一方の特有財産(相続財産など)が元手になっている部分
  • 婚姻期間が極端に短い場合
  • 別居後に一方が浪費・隠匿した財産(相手方に不利に考慮されることがあります)

住宅ローンが残る自宅の財産分与

自宅は、売却額(時価)と住宅ローン残債の大小で扱いが変わります。まず自宅の時価とローン残高を確認しましょう。

状態内容分与の考え方
アンダーローン時価がローン残債より大きい(売れば手元に残る)残る価値(純資産)を原則2分の1で分ける
オーバーローン時価がローン残債より小さい(売っても残債が残る)差額の債務をどう負担するかを協議。分与対象財産としては0円評価とするか、マイナス評価をしてプラスの財産と相殺(通算)する

住宅ローンが残る自宅の財産分与は、ペアローンや連帯保証、住み続ける場合の名義変更・借換えなど論点が多く、専門的な検討が必要です。詳しくは「オーバーローンの自宅不動産の財産分与」をご覧ください。

退職金・年金の扱い

婚姻期間に対応する退職金は、将来受け取る分でも財産分与の対象になり得ます。定年がかなり先で受給が不確実な場合は対象外とされることもありますが、近く支給される見込みが高いほど対象になりやすい傾向です。

一方、厚生年金や共済年金は財産分与ではなく年金分割で分けます。年金分割には次の2種類があります。

種類内容割合
合意分割当事者の合意または裁判所の決定で按分割合を定める。婚姻期間全体が対象上限2分の1
3号分割2008年4月以降の第3号被保険者(扶養されていた配偶者)期間について、請求により自動的に分割2分の1

財産分与と慰謝料はどう違う?

財産分与は「夫婦で築いた財産の清算」、慰謝料は「不貞やDVなど有責行為による精神的損害の賠償」で、目的が異なる別の請求です。両方に理由があれば、離婚時に一括して話し合い、まとめて取り決めることもできます。財産分与を受け取っても、別に慰謝料を請求できる場合があります。

相手が財産を隠しているときの対処

財産分与は相手の財産が分からなければ適正に分けられません。次の手段で財産を明らかにできます。

情報開示の仕組み(2026改正)

財産分与の裁判手続で、家庭裁判所が相手に財産状況の開示を求められます。応じない場合の制裁もあります。

弁護士会照会・調査嘱託

弁護士を通じて金融機関等へ照会し、口座や残高を調べる手段があります。

早めの証拠保全

別居前に、通帳・保険証券・給与明細・不動産資料などの写しを控えておくことが有効です。

財産分与と税金

場面課税の扱い
財産分与を受け取る側原則として贈与税はかからない(清算のための給付のため)。ただし分与額が過大な場合や、税逃れ目的と認められる場合は例外
不動産を分与する側財産分与で不動産を渡すと、渡した時の時価で譲渡したものとして扱われ、取得時より値上がりしていれば譲渡所得税がかかる場合がある(売却しなくても、分与による移転自体が課税対象)
登記不動産の名義変更には登録免許税・必要書類の準備が必要

財産分与でやってはいけないNG行動

  • 財産の全体像を把握しないまま離婚を急ぐ(あとから取り戻すのは困難)
  • 口約束で済ませる(後日の不払いに備え、公正証書などの書面に残す)
  • 別居後に共有財産を使い込む・隠す(不利に考慮され、トラブルの原因に)
  • 感情的になって「財産はいらない」と安易に放棄する
  • 期限(改正後は離婚から5年)を過ぎてしまう

財産分与の進め方(手続きの流れ)

  1. 財産の洗い出し夫婦双方の預貯金・不動産・保険・退職金・負債を、基準時(原則、別居時)の残高で一覧にします。
  2. 評価額の確定不動産は査定、保険は解約返戻金、退職金は在職期間の対応分など、金額を確定します。
  3. 協議分け方を話し合い、合意できたら離婚協議書(できれば公正証書)に残します。
  4. 調停・審判協議がまとまらなければ家庭裁判所の調停・審判で決めます。改正後は財産の情報開示の仕組みも活用できます。

財産分与・離婚のお金の問題は難波みなみ法律事務所へ

大阪・なんばの弁護士が、財産の調査から評価・交渉・書面化までご一緒します。初回相談30分無料・夜間土日も対応。

財産分与に関するよくある質問

財産分与の割合は必ず2分の1ですか?
原則2分の1です。2026年の改正で、寄与の程度が異なることが明らかでないときは相等しいとされました。ただし、一方の特別な才能や努力で多額の資産を築いた場合など、事情により割合が修正されることもあります。
専業主婦(主夫)でも財産分与を受けられますか?
受けられます。収入がなくても、家事・育児による貢献が評価され、原則2分の1が基本です。
財産分与はいつまでに請求すればよいですか?
2026年4月1日以降に成立した離婚は離婚から5年以内、それ以前に成立した離婚は2年以内です。期限を過ぎると請求できなくなるため注意が必要です。
別居後に貯めたお金も分ける必要がありますか?
原則として分ける必要はありません。財産分与の対象は原則「別居時」に存在した共有財産で、別居後に各自が得た財産は対象外とされるのが一般的です。
相手が財産を隠している場合はどうすればよいですか?
改正により、財産分与の裁判手続で家庭裁判所が財産の情報開示を求められる仕組みが整えられました。弁護士会照会や調査嘱託などの手段もあり、別居前に資料の写しを控えておくことも有効です。
不倫した側からでも財産分与は請求できますか?
できます。財産分与は財産の清算であり、離婚原因を作った側からでも請求できます。ただし慰謝料とは別に整理されます。
独身時代の貯金や相続した財産も分ける必要がありますか?
原則として分ける必要はありません。これらは特有財産にあたり、婚姻中に夫婦で築いた共有財産とは区別されます。
自宅に住み続けたい場合はどうなりますか?
住み続ける側が相手の持分に相当する代償金を支払う、または住宅ローンを引き受ける等の方法があります。ローンの名義・連帯保証の整理が必要で、金融機関の同意が要る場合もあります。
財産分与でもらったお金に税金はかかりますか?
通常、財産分与を受けた側に贈与税はかかりません。ただし不動産を分与した側に譲渡所得税がかかる場合や、分与額が過大な場合など例外もあるため、個別の確認が必要です。

本記事は2026年9月時点の情報に基づき、難波みなみ法律事務所が作成しました。計算例の金額は説明のための仮の設定です。個別の事案の結論は具体的な事情により異なります。最終的な判断は弁護士にご相談ください。

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