コラム
更新日: 2026.08.21

車と自転車の接触事故|過失割合と相手に保険がないとき

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。大阪弁護士会所属(登録番号49544)、大阪中小企業診断士会所属(登録番号 420113)、幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

車と自転車がぶつかったとき、多くの人が「自動車同士の事故と同じように進むのだろう」と考えます。実際には、まったく別の手続きになります。

この記事では、車と自転車の事故で過失割合がどう決まるのかを事故の型ごとに示したうえで、立場によって手続きがまったく変わるという点を説明します。2026年4月から始まった自転車の青切符にも触れます。

はじめに、あなたの立場を確認してください。同じ「車と自転車の事故」でも、あなたが自転車に乗っていたのか、車に乗っていたのかで、使える手続きが正反対になります。
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あなたの立場相手自賠責保険後遺障害の等級認定過失を立証する側
自転車に乗っていて、車にぶつけられた自動車使える使える相手側
(自賠法3条)
車に乗っていて、自転車にぶつけられた自転車ない手続きがない自分の側
(民法709条)
けがをしたのが自転車の側であれば、自動車同士の事故と同じ手続きが使えます。相手の自賠責保険から後遺障害の等級認定を受けられますし、加害者の過失も相手側が「注意を怠らなかった」ことを証明しなければなりません。
この記事の【1】【2】は、相手が自転車だった場合の話です。自転車に乗っていて車にぶつけられた方は、過失割合の章から読んでいただいて構いません。

結論から

Q. 車と自転車、どちらが悪いのですか?

一律には決まりません。事故の型ごとに基本の割合があり、そこに修正要素を足し引きして決まります。ただし自転車は免許が不要で、速度も車と歩行者の中間にあることから、車より保護される方向で基準がつくられています。

Q. 立場によって、何がいちばん違いますか?

相手が自転車だと、自賠責保険がないことです。後遺障害の等級を公的に認定してもらう手続きが使えず、加害者の過失も被害者側が立証しなければなりません。逆に、自転車に乗っていて車にぶつけられた場合は、どちらも使えます。

Q. 相手が自転車で、保険に入っていないようです。

「自転車保険」という名前でなくても構いません。自動車保険や火災保険の特約、共済、勤務先やPTAの団体保険、クレジットカードの付帯保険に個人賠償責任保険が付いていることがあります。順に確認してください。

相手が自転車だと、自動車同士の事故と何が違うのか

ここからは、あなたが車の側にいて、相手が自転車だった場合の話です。相手が自転車になるだけで、次の点が変わります。

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項目相手が自動車相手が自転車
自賠責保険あるない
後遺障害の等級認定公的な認定手続きがある手続き自体が存在しない
過失を立証する側加害者側(自賠法3条)被害者側(民法709条)
任意保険加入率が高い加入していないことがある
交渉の相手保険会社の担当者本人のことがある
運転者免許を持っている免許が不要。子どもも運転する

右の列がすべて不利に働きます。だからこそ、順番を間違えないことが大切になります。以下、影響の大きい2つから説明します。

【1】相手が自転車だと、後遺障害の等級認定が使えません

※ ここから【2】までは、相手が自転車だった場合の説明です。自転車に乗っていて車にぶつけられた方には当てはまりません。

自動車同士の事故では、けがが治りきらずに症状が残ったとき、損害保険料率算出機構が後遺障害の等級を認定します。この等級が、後遺障害慰謝料と逸失利益を計算する土台になります。等級が付けば話が進み、付かなければ争う、という形で交渉が組み立てられます。

ところが、この手続きは自賠責保険があることを前提にした仕組みです。

自転車には自賠責保険がありません。したがって、相手が自転車の事故では、後遺障害の等級を公的に認定してもらう手続きそのものが存在しません。

弁護士の視点

相手方が自転車であれば自賠責保険がないため、自賠責の後遺障害の手続きができません。そのため、後遺障害の有無や程度を公的に証明しにくいという問題が生じます。

診断書やカルテ、検査画像といった医学的な資料を自分の側で積み上げ、最終的には裁判所に個別に判断してもらうことになります。治療の初期から、症状を記録に残しておくことの重みが、自動車同士の事故とは比べものになりません。

実務上、ここが分かれ目になります。症状を医師に正確に伝えて診療録に残す、必要な検査を受けておく、症状の推移が飛び飛びにならないように通院を続ける。自動車事故なら等級認定でカバーされる部分を、最初から訴訟を見据えて自分でつくっておく必要があります。

【2】過失を立証するのは、被害者側です

これも見落とされやすい点です。相手が自動車か自転車かで、「どちらが証明しなければならないか」が逆になります。

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相手が自動車相手が自転車
根拠となる条文自賠法3条(運行供用者責任)民法709条(一般の不法行為)
誰が立証するか加害者側被害者側
中身加害者は「自分も運転者も運行に関し注意を怠らなかったこと」などを証明しなければ責任を免れない被害者が、加害者に故意または過失があったことを証明する

自賠法3条は、加害者の側に「注意を怠らなかった」ことの証明を求めています。証明できなければ責任を負うという構造です。これを立証責任の転換と呼びます。

自転車はこの条文でいう「自動車」に当たりません。したがって自賠法3条は適用されず、民法709条の一般原則に戻ります。

弁護士の視点

自転車であれば自賠法の適用がないため、立証責任の転換がありません。自賠法3条にあるような中間責任は自転車事故には適用されず、被害者側が民法709条にもとづいて、加害者に故意や過失があったことを立証する必要があります。

この違いが、証拠の重みを決定的に変えます。自動車事故なら「相手が説明できなければ相手の負け」だった場面が、自転車事故では「こちらが説明できなければこちらの負け」になります。

だから、事故直後の記録がすべてになります

被害者側が立証する以上、集めるべきものははっきりしています。

①実況見分調書 警察が人身事故として受理したときに作成されます。現場を計測して図面に落とし込んだ記録で、事故態様を争うときの最も強い資料です
②ドライブレコーダー 自車のものだけでなく、後続車や周辺の車のものも含めて早めに保全を依頼します
③防犯カメラ コンビニ、店舗、マンションのもの。上書きされる前に動く必要があります
④目撃者 その場で連絡先を聞いておきます
⑤写真 車両の損傷、自転車の損傷、現場の状況、路面の痕跡
①が作られるかどうかは、人身事故として届け出たかどうかで決まります。物損事故のままだと実況見分調書は作られず、簡易な書面が残るだけです。相手が自転車の事故では、この差が自動車事故のとき以上に重くのしかかります。

人身事故への切り替えは、期限を過ぎると受理されにくくなります

過失割合はどう決まるのか

まず、自転車がどう位置づけられているか

自転車は軽車両であり、道路交通法上の車両として扱われます(道交法2条1項8号・11号)。交差点での他の車両との関係(同法36条)、灯火(同法52条)、酒気帯び運転の禁止(同法65条)などは、自動車と同じように適用されます。

一方で、自転車には自動車にない特徴があります。実務で使われている基準は、次の3点を自転車の性質として挙げています。

①免許が不要で、交通法規に詳しくない子どもも運転する
②速度は、通常、自動車の速度と歩行者の速度の中間になる
③交差点以外の場所で道路を横断するなど、自転車特有の事故の起こり方がある

この3点があるため、過失割合の基準はバイクよりも自転車に有利に修正するが、歩行者と同じところまでは修正しないという位置づけで組み立てられています。

前提となる速度は時速15km程度です。これより遅い、普通の人が小走りする程度以下(おおむね時速10km以下)であれば歩行者と同視できる余地があります。逆に時速15kmを大幅に超えていた場合は、後述する著しい過失・重過失として修正されます。
なお、自転車を押して歩いている人は「歩行者」です(道交法2条3項)。乗っていたか押していたかで、適用される基準そのものが変わります。

交差点の出合い頭|信号機がある場合

A=自転車、B=自動車です。数字は基本の割合で、ここから修正要素を足し引きします。

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自転車の信号自動車の信号自転車 : 自動車
0 : 100
10 : 90
30 : 70
60 : 40
80 : 20
自転車が赤信号で進入していても、自動車の負担がゼロになることはありません。自転車が赤・自動車が青という最も自転車に不利な組み合わせでも、自動車側に20%が残ります。青信号で進行する自動車にも、前方を注視する義務があるからです。

信号の見方には注意点があります。普通自転車が横断歩道を進行する場合は、車両用信号ではなく歩行者用信号に従います(道交法施行令2条1項)。横断歩道以外を横断する場合は、「歩行者・自転車専用」の標示がある信号機があればそれに従い、なければ車両用信号に従います。どちらの信号を見ていたかで、赤だったか青だったかの評価が変わることがあります。

交差点の出合い頭|信号機がない場合

見とおしがきかない交差点を基本とした割合です。

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状況自転車 : 自動車
同じ幅の道路20 : 80
自転車が広い道路・自動車が狭い道路10 : 90
自転車が狭い道路・自動車が広い道路30 : 70
自動車の側に一時停止規制がある10 : 90
自転車の側に一時停止規制がある40 : 60
自転車が優先道路を走行10 : 90
自動車が優先道路を走行50 : 50
自動車が一方通行違反10 : 90
自転車が一方通行違反50 : 50
「一時停止」の意味は厳格です。車輪の回転が完全に止まることをいい、速度を落として左右を見ただけでは一時停止をしたことになりません。停止すべき位置は停止線の直前、停止線がなければ交差点の直前です(道交法43条)。
「徐行」も同じです。直ちに停止できる速度をいい(同法2条1項20号)、裁判例では時速10km以下と解するのが大勢です。

右折車と直進車|対向方向から進入した場合

いわゆる右直事故です。自転車が右折していたかどうかで、割合が大きく変わります。

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信号自転車が直進・自動車が右折自転車が右折・自動車が直進
双方が青10 : 9050 : 50
直進が黄・右折車は青で入り黄で右折40 : 6020 : 80
双方が黄20 : 8040 : 60
双方が赤30 : 7030 : 70
直進が赤・右折車は青で入り赤で右折70 : 30
直進が赤・右折車は黄で入り赤で右折50 : 50
直進が赤・右折車は青矢印で進入80 : 20
信号機がない10 : 9050 : 50

なぜ「自転車が右折」だと一気に不利になるのか

自転車が交差点を右折するときは、あらかじめできる限り道路の左側端に寄り、交差点の側端に沿って徐行しなければなりません(道交法34条3項)。いわゆる二段階右折です。

① 二段階右折(正しい方法)

A 左側端に寄って直進 → 向こう側で向きを変える

② 自動車と同じ右折(違反)

A 斜めに横切る → 右折方法違反になる

自転車が①の方法で右折していた場合は、基準上「直進車」として扱われます。上の表で「自転車が右折」とあるのは、②のように自動車と同じ方法で右折した場合、つまり右折方法違反があることを前提にした割合です。

左右の方向から進入した右折事故|信号機がない場合

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状況自転車が直進・自動車が右折自転車が右折・自動車が直進
同じ幅の道路20 : 8030 : 70
右折車が狭い道路から広い道路に出る10 : 9040 : 60
右折車が広い道路から、直進車が来た狭い道路に入る30 : 7020 : 80
右折車が広い道路から、直進車の向かう狭い道路に入る30 : 7030 : 70
直進車の側に一時停止規制、右折車が右方から35 : 6530 : 70
直進車の側に一時停止規制、右折車が左方から40 : 6020 : 80
右折車の側に一時停止規制10 : 9045 : 55
右折車が非優先道路から優先道路に出る10 : 9050 : 50

修正要素|ここで割合が動きます

基本の割合に、事故ごとの事情を足し引きします。検索されることの多い「逆走」「一時停止無視」「信号無視」「飛び出し」は、すべてこの修正要素の問題です。

逆走(右側通行)は、いつも加算されるわけではありません

自転車を含む軽車両は、道路の左側部分を通行しなければなりません(道交法17条4項)。車両通行帯のない道路では、左側端に寄って通行します(同法18条1項)。路側帯も、左側部分に設けられたものしか通行できません(同法17条の3第1項)。

この規制に違反した右側通行、いわゆる逆走は自転車に不利な修正要素になります。ただし、いつでも加算されるわけではありません。

① 左方から進入 → 加算する

A B 右側を逆走 Bから見えている時間が短い

② 右方から進入 → 加算しない

A B 右側を逆走 Bから見えている時間はむしろ長い

加算されるのは①だけです。②のように自動車から見て右方から進入する場合は、自転車が左側を走っているときよりも自動車が自転車を認識できる時間がむしろ長くなるため、逆走が事故の回避を困難にしたとはいえないからです。

さらに重要な例外があります。信号機のある交差点の事故では、逆走を修正要素として考慮しません。信号による規律を最も重視すべきだからです。
また、その交差点やその付近に自転車横断帯があるときは、自転車はそこを通行しなければならないため(道交法63条の7第1項)、自転車横断帯を通行していた場合も逆走の修正には当たりません。

自転車横断帯と横断歩道は、扱いが違います

自転車横断帯とは、道路標識等によって自転車の横断のための場所と示された部分です(道交法2条1項4号の2)。自転車横断帯がある場所の付近では、自転車はそこで横断しなければなりません(同法63条の6)。

自転車横断帯を通行する自転車に対して、自動車は横断歩道上の歩行者に対するのと同程度の注意義務を負います(同法38条)。そのため、自転車が自転車横断帯を通行していた場合は、自転車に有利に大きく修正されます。

範囲は少し広く取られます。自転車横断帯の端から外側おおむね1〜2m以内の場所は自転車横断帯と同視してよく、自転車横断帯に隣接して設けられている横断歩道も自転車横断帯と同視してよいとされています。

一方、自転車横断帯がなく横断歩道だけを通行していた場合も自転車に有利に修正されますが、自転車横断帯の場合より修正の幅は小さくなります。道路交通法上、横断歩道における自転車は、自転車横断帯におけるほど強い保護の対象とはされていないためです。

逆に、自転車が歩道や横断歩道を走っていたことを理由に、自転車に不利な修正をすることは相当でないとされています。歩行者との事故のときとは考え方が違います。

著しい過失・重過失|「飛び出し」の正体はここです

基本の割合は、その事故の型で通常想定される程度の過失を織り込んで決められています。それを超える過失があったときに、著しい過失・重過失として修正されます。

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著しい過失にあたる例
脇見運転などの著しい前方不注視
著しく不適切なハンドル・ブレーキ操作
携帯電話を通話のために使用し、または画像を注視しながらの運転
おおむね時速15km以上30km未満の速度違反
酒気帯び運転

一般道では、制限速度を時速30km以上超えたかどうかが、著しい過失と重過失を分ける基準とされています。

自転車には制限速度の定めがありません。そこで自転車については、普通の速度である時速15kmを大幅に超えていた場合に、著しい過失または重過失として修正します。「大幅に上回る」かどうかは一律には決まらず、車線数・道路の幅員・制限速度などの事情に応じて判断されます。
この場合の修正の上限は、バイクと自動車の事故の基本割合です。速度が出ていれば出ているほど、自転車はバイクに近い扱いに寄っていく、という設計になっています。

相手方から「自転車が飛び出してきた」と言われたときは、この枠組みで反論できます。飛び出しという言葉自体が基準にあるわけではなく、実際には速度と前方不注視の問題です。速度がどの程度だったかを、損傷の状況や現場の痕跡から詰めていくことになります。

子ども・高齢者は、自転車に有利に修正されます

年齢による修正には、はっきりした定義があります。

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用語定義
幼児6歳未満の者(道交法14条3項)
児童6歳以上13歳未満の者(同項)
高齢者おおむね70歳以上の者

自転車に乗っていたのが児童・幼児・高齢者だった場合、自転車の割合は減る方向に修正されます。監護者が付き添っているかどうかは問いません。

普通自転車が歩道を通行できるのは、次の3つの場合です(道交法63条の4第1項)。
① 道路標識等で歩道を通行できるとされている場合
② 運転者が児童・幼児・70歳以上の者・身体障害者福祉法別表に定める障害がある者である場合
③ 車道や交通の状況に照らして、安全を確保するため歩道を通行することがやむを得ないと認められる場合

修正要素の一覧

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要素働く向き目安
夜間自転車に不利+5
逆走で、自動車から見て左方から進入(信号機のない交差点)自転車に不利+5
自転車の著しい過失自転車に不利+5〜10
自転車の重過失自転車に不利+10〜15
自転車が一時停止しなかった(規制がある側)自転車に不利+10
児童・幼児・高齢者自転車に有利−5〜10
自転車横断帯を通行していた自転車に有利−5〜10
横断歩道を通行していた自転車に有利−5〜10
自転車の明らかな先入自転車に有利−5〜15
自動車が徐行しなかった(右折事故)自転車に有利−5〜10
自動車の速度違反(時速15km以上/30km以上)自転車に有利−10/−20
自動車が一時停止しなかった(規制がある側)自転車に有利−10
自動車の著しい過失自転車に有利−5〜10
自動車の重過失自転車に有利−10〜20

目安であり、事故の型によって適用される要素も数値も変わります。実際の事案では、どの型に当てはめるかの争いが先に来ることが多くあります。

過失割合の決まり方そのものは、こちらで詳しく説明しています

相手に保険がないとき、どこを探すのか

自転車が加害者の事故で最初にぶつかる壁が、これです。相手が「保険には入っていません」と言っても、そこで終わりにしないでください。

探しているのは個人賠償責任保険です。これは「自転車保険」という名前で単体で売られているほか、まったく別の保険の特約として付いていることが非常に多いものです。本人が自覚していないケースが珍しくありません。

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種類具体的にどこに付いているか
個人賠償責任保険自転車向けの保険(単体の商品)
自動車保険の特約
火災保険の特約
傷害保険の特約
共済全労済、市民共済など
団体保険勤務先など団体の構成員向けの保険
PTA・学校が窓口となる保険
TSマーク付帯保険自転車の車体に付帯(点検整備を受けた際に付く)
クレジットカードの付帯保険カード会員向けに付帯

大阪府が自転車保険の加入確認のために示している分類にもとづいています。

相手に確認してもらうのは「保険証券や加入証」です。記憶ではなく書面を見てもらってください。自動車保険や火災保険の証券に個人賠償責任特約が付いていれば、その保険会社が対応します。同居のご家族の契約でカバーされることもあります。個人賠償責任保険は、契約者本人だけでなく生計を同じくする親族が加害者になった場合も対象とするものが多いためです。
保険が見つかっても、示談交渉まで任せられるとは限りません。個人賠償責任保険には示談代行サービスが付いていないものがあります。その場合、賠償額を決める交渉は被害者と加害者が直接することになります。自動車保険のように担当者が窓口になってくれる前提で考えないでください。
ご自身の保険で埋められないかも確認してください。ただし人身傷害補償保険は自動車保険の一部であるため、自転車による事故を支払いの対象外としているものも少なくありません。近年は約款の改訂が頻繁なので、加入している保険の約款をそのつど確認する必要があります。
なおTSマーク付帯保険は、点検整備を受けた自転車に貼られるマークに付く保険で、有効期限は点検日から1年です。購入後に定期点検を受けている例は多くないため、実際に機能する場面は限られます。

大阪府では、自転車保険への加入が義務です

大阪府自転車条例により、大阪府内で自転車を利用する人は、自転車保険に加入しなければなりません。ここでいう自転車保険とは、自転車事故によって生じた他人の生命または身体の損害を補償できる保険または共済をいいます。

条例は平成28年4月1日に施行され、保険加入の義務は同年7月1日から始まっています。自転車販売店には、購入者が保険に加入しているかを確認する努力義務があります。
ただし罰則はありません。加入の確認が難しいためです。「義務だから入っているはず」とは考えず、実際に証券を確認してもらう必要があります。

こうした条例は大阪府だけのものではありません。平成31年2月に国が自転車損害賠償責任保険等への加入促進に関する標準条例を示したことをきっかけに、各都道府県や政令指定都市で条例化が進みました。多くの条例に罰則はありません。

加害者が保険に入っていなかったことが、賠償額の算定で加害者に不利に考慮されることは、あまりありません。自動車事故で無保険だった場合と同じです。条例違反であることを理由に賠償額が増えるわけではないと考えておいてください。

加害者が子どもだったら、親に請求できるのか

自転車は免許が要らないため、加害者が小学生や中学生であることがあります。この場合、本人に賠償能力はまずありません。

民法は、未成年者に責任能力がなければ本人は責任を負わないと定めています(民法712条)。そして本人が責任を負わない場合、監督義務者である親権者などが責任を負います(民法714条1項)。

責任能力の目安は、一般に小学生までは認められないとされています。自転車事故の裁判例でも中学1年生前後で判断が分かれており、小学生については責任能力が否定される場合が多くなっています。
監督義務者は、義務を怠らなかったことなどを証明すれば責任を免れます(民法714条1項ただし書)。もっとも親権者は生活全般で他人に危害を加えないよう指導教育する義務を負うと考えられているため、免責が認められる場合はほとんどないといわれています。

神戸地裁 平成25年7月4日判決

平成20年9月、神戸市内で、歩道を歩いていた67歳の女性に、対向してきた11歳の男児が運転する自転車が正面衝突しました。女性は急性硬膜下血腫・脳挫傷・頭蓋骨骨折などの傷害を負い、植物状態になりました。

裁判所は、母親が自転車の運転に関する十分な指導や注意をしていたとはいえず監督義務を果たしていなかったとして、民法714条1項にもとづき約9,520万円の賠償を命じました。

主な損害項目として、治療費など約400万円、休業損害約140万円、傷害慰謝料300万円、後遺障害慰謝料2,800万円、後遺障害逸失利益約2,200万円、将来の介護費約4,000万円などが認定されています。

この判決が、自治体による自転車保険の義務化が全国に広がるきっかけになりました。自転車の事故だから金額が小さい、ということはありません。相手が子どもであっても、賠償額が1億円近くになることがあります。

子どもが加害者の場合、親が加入している火災保険や自動車保険の個人賠償責任特約でカバーされることが多くあります。学校を通じて加入するPTA保険が使えることもあります。探す先は前の章と同じです。

2026年4月から、自転車にも青切符が導入されました

制度が大きく変わっています。

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時期内容
令和6年11月1日自転車の「ながらスマホ」と酒気帯び運転に罰則が整備された
令和8年(2026年)4月1日自転車の交通違反に交通反則通告制度(青切符)が導入された

青切符の対象は16歳以上です

警察官が自転車の交通違反を認めた場合、基本的には指導警告が行われます。ただし、事故の原因となるような悪質・危険な違反であったときは取締りが行われます。

取締りの対象は16歳以上の運転者です。16歳未満の者には原則として指導警告が行われます。
反則金を期限内に納付すれば刑事手続には進みません。納付しなければ刑事手続に移行します。

令和6年11月から整備された罰則

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行為罰則
運転中のながらスマホ(手に持って通話、画面を注視)6月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金
同上で交通の危険を生じさせた場合1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
酒気帯び運転3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
自転車を提供した者3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
酒類を提供した者・同乗した者2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金

停止中の操作は、ながらスマホの対象外です。また、ながらスマホと酒気帯び運転は自転車運転者講習制度の対象になります。

賠償の場面との関係でいうと、青切符が切られたこと自体が賠償額を決めるわけではありません。民事の責任は民事の基準で判断されます。
ただし、ながらスマホや酒気帯び運転は、過失割合の修正要素である「著しい過失」の典型例として挙げられているものです。取締りの記録が残っていれば、事故態様を裏づける資料として意味を持ちます。

けががないように見えても、その場で警察を呼んでください

自転車との接触では、その場では「大丈夫です」と言われて別れてしまうことがよくあります。これがいちばん危険です。

警察に届け出ていなければ、実況見分調書が作られません。先に見たとおり、相手が自転車の事故では被害者側が加害者の過失を立証しなければなりません。事故態様を裏づける公的な記録がないまま、あとから痛みが出て請求しようとしても、極めて不利な位置から始めることになります。

その場で必ずしてほしいことは4つです。

①警察を呼ぶ(道交法72条1項の報告義務があります)
②相手の氏名・住所・連絡先を確認する。免許がないため身分証で確認します
③保険の加入状況を聞く。「自転車保険」だけでなく、自動車保険・火災保険の特約も含めて
④写真を撮る。車両と自転車の損傷、現場の状況、相手の自転車の全体

数日たってから痛みが出た場合は、人身事故への切り替えを検討してください。

切り替えには事実上の期限があります

自転車の事故こそ、弁護士費用特約の出番です

ここまで見てきたとおり、自転車が相手の事故は手間がかかるわりに、相手から回収できるかどうかが読みにくいという特徴があります。だからこそ、費用の心配をせずに動ける状態をつくることが重要になります。

弁護士費用特約は、自動車保険に付いているものでも、相手が自転車の事故に使えるのが一般的です。ご自身の契約だけでなく、同居のご家族の契約に付いている特約を使えることもあります。まず証券を確認してみてください。

自転車との事故で、相手の保険が分からないとき

難波みなみ法律事務所では、交通事故の被害者側のご相談を初回30分無料でお受けしています。「相手が保険に入っていないと言っている」「相手が子どもだった」「過失割合に納得できない」といった段階でのご相談で構いません。弁護士費用特約をお使いいただけます。

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よくある質問

Q. 車と自転車の事故は、どちらが悪いのですか?

一律には決まりません。事故の型ごとに基本の割合があり、そこに修正要素を足し引きして決まります。自転車は免許が不要で、速度も自動車と歩行者の中間にあることから、自動車より保護される方向で基準がつくられています。

Q. 自転車が赤信号で進入してきました。こちらの過失はゼロになりませんか?

なりません。自転車が赤信号、自動車が青信号という最も自転車に不利な組み合わせでも、基本の割合は自転車80・自動車20です。青信号で進行する自動車にも前方を注視する義務があるためです。

Q. 自転車が逆走していました。過失割合は変わりますか?

場合によります。加算されるのは、自転車が右側を通行し、かつ自動車から見て左方から交差点に進入した場合です。右方から進入した場合は、自動車が自転車を認識できる時間がむしろ長くなるため加算されません。また、信号機のある交差点の事故では、逆走を修正要素として考慮しません。

Q. 相手が自転車だと、自動車同士の事故と何が違いますか?

大きく2つです。第一に、自転車には自賠責保険がないため、後遺障害の等級を公的に認定してもらう手続きが使えません。第二に、自賠法3条が適用されないため、加害者に過失があったことを被害者側が立証しなければなりません。ただしこれは相手が自転車の場合です。あなたが自転車に乗っていて車にぶつけられたのであれば、相手の自賠責保険も後遺障害の等級認定も使えますし、立証責任も相手側にあります。

Q. 相手の自転車に保険がありません。どこを探せばよいですか?

個人賠償責任保険を探します。単体の自転車保険のほか、自動車保険の特約、火災保険の特約、傷害保険の特約、共済、勤務先の団体保険、PTAの保険、TSマーク付帯保険、クレジットカードの付帯保険に付いていることがあります。記憶ではなく保険証券や加入証を確認してもらってください。生計を同じくするご家族の契約でカバーされることもあります。なお個人賠償責任保険には示談代行サービスが付いていないものがあり、その場合は加害者本人と直接交渉することになります。

Q. 大阪府では自転車保険への加入が義務なのですか?

義務です。大阪府自転車条例により、自転車事故で生じた他人の生命または身体の損害を補償できる保険または共済への加入が義務づけられています。条例は平成28年4月1日施行、保険加入の義務は同年7月1日からです。ただし罰則はないため、実際に加入しているかは証券で確認する必要があります。

Q. 加害者が子どもでした。親に請求できますか?

できる場合があります。未成年者に責任能力がなければ本人は責任を負わず(民法712条)、監督義務者である親権者などが責任を負います(民法714条1項)。責任能力は一般に小学生までは認められないとされ、裁判例では中学1年生前後で判断が分かれています。神戸地裁平成25年7月4日判決は、11歳の男児の自転車が歩行者に衝突して植物状態にさせた事案で、母親に約9,520万円の賠償を命じました。

Q. 自転車が横断歩道を渡っていました。扱いは変わりますか?

変わります。自転車横断帯を通行していた場合は、自動車が横断歩道上の歩行者に対するのと同程度の注意義務を負うため、自転車に有利に大きく修正されます。自転車横断帯がなく横断歩道だけを通行していた場合も有利に修正されますが、修正の幅は小さくなります。なお、自転車横断帯の端から外側おおむね1〜2m以内の場所は、自転車横断帯と同視してよいとされています。

Q. 2026年4月から自転車にも青切符が導入されたと聞きました。賠償に影響しますか?

青切符が切られたこと自体が賠償額を決めるわけではありません。民事の責任は民事の基準で判断されます。ただし、ながらスマホや酒気帯び運転は過失割合の修正要素である「著しい過失」の典型例として挙げられているため、取締りの記録は事故態様を裏づける資料として意味を持ちます。取締りの対象は16歳以上で、16歳未満には原則として指導警告が行われます。

Q. けががないように見えても警察を呼ぶべきですか?

呼んでください。警察に届け出ていなければ実況見分調書が作られません。相手が自転車の事故では被害者側が加害者の過失を立証しなければならないため、事故態様を裏づける公的な記録がないと、あとから請求するときに極めて不利になります。道路交通法72条1項の報告義務もあります。

監修:弁護士 南 宜孝(大阪弁護士会・登録番号49544)
難波みなみ法律事務所 代表弁護士。大阪市中央区西心斎橋2-4-3 難波御堂筋ビル403。交通事故の被害者側の代理人として、自動車・自転車双方が関係する事案を取り扱っています。
本記事は2026年8月時点の法令・裁判例・実務基準にもとづいて作成しています。過失割合は事故の具体的な状況によって変わりますので、個別のご判断は弁護士にご相談ください。

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