コラム
公開日: 2026.10.07

後遺障害の異議申立て|非該当を覆す進め方と医証

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。大阪弁護士会所属(登録番号49544)、大阪中小企業診断士会所属(登録番号 420113)、幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回、15回、75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコム、ココナラ、弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

後遺障害の異議申立て 非該当を覆す進め方と医証

交通事故の後遺障害で、「非該当」とされた、あるいは思ったより低い等級だった——その結果に納得できないときは、やり直しを求める手続きがあります。あきらめる前に、まず見直しを検討してください。

この記事では、後遺障害の認定結果に不服があるときの3つの不服申立て(異議申立て・紛争処理機構への申請・訴訟)と、等級が変わるカギになる「新たな医証」について、大阪の被害者側の弁護士が解説します。

結論から

Q. 後遺障害の結果に納得できないとき、やり直せますか。

やり直せます。主な方法は、①自賠責への異議申立て、②自賠責保険・共済紛争処理機構への紛争処理申請、③訴訟の3つです。まずは異議申立てから検討するのが一般的です。

Q. 同じ資料で出し直せば等級は上がりますか。

上がりにくいです。異議申立てで結果を変えるには、原則として「新たな医証」(追加の検査結果や、症状を裏づける新しい医学的資料)が必要です。同じ書類を再提出するだけでは、結論は変わりにくいのが実情です。

Q. 何回でもできますか。期限はありますか。

異議申立ては回数の制限がありませんが、紛争処理機構への申請は原則1回です。また、自賠責への請求には時効(後遺障害は原則として症状固定の翌日から3年)があるため、早めの対応が大切です。

後遺障害の結果に納得できないときの3つの不服申立て

後遺障害の等級は、提出された書類をもとに、損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)が審査して決まります。その結果に不服があるときは、次の3つの方法があります。

方法 どこへ 判断するのは 回数・特徴
① 異議申立て 自賠責保険会社(被害者請求)/相手方任意保険(事前認定) 損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)が再審査 回数制限なし。新たな医証が結論を左右する
② 紛争処理申請 自賠責保険・共済紛争処理機構 中立の紛争処理委員(弁護士・医師など) 原則1回。自賠責の判断に不服があるとき
③ 訴訟 裁判所 裁判所が独自に判断 最終手段。相手方(加害者側)に賠償を求める中で等級も争う

① 異議申立て——まず検討する方法

最初の選択肢が異議申立てです。異議申立書と、結論を見直してもらうための新たな医証等を提出し、再審査を求めます。提出先は、自分で請求した場合(被害者請求)は自賠責保険会社、相手方保険会社が手続きした場合(事前認定)は相手方の任意保険会社で、いずれも損害保険料率算出機構に送られ、自賠責保険(共済)審査会の後遺障害専門部会など、外部の専門家が加わった場で審査されます。費用はかかりません。回数の制限もなく、資料を整えて何度でも申し立てられます(事前認定で手続きしていた場合でも、被害者請求に切り替えて申し立てることができます)。

② 自賠責保険・共済紛争処理機構への紛争処理申請

自賠責の判断に不服があるときは、自賠責保険・共済紛争処理機構に紛争処理を申請できます。ここでは、弁護士や医師などの中立的な紛争処理委員が、第三者の立場で審査します。申請は原則1回とされており、異議申立てを尽くしても結論が変わらない場合の選択肢になります。

③ 訴訟

最終的には、加害者側へ損害賠償を求める訴訟の中で、後遺障害の有無や等級を争う方法があります。裁判所は自賠責の判断に拘束されず、独自に判断します。医学的な立証が整えば、自賠責で非該当だった症状が裁判で認められることもあります。

異議申立てで等級が変わるカギは「新たな医証」

異議申立てで最も大切なのが、結論を見直してもらうだけの新しい材料(新たな医証)を示すことです。同じ資料をそのまま出し直しても、結論は基本的に変わりません。ポイントは、主治医に「等級を上げてほしい」と漠然と頼むのではなく、非該当(または低い等級)となった認定理由の一つひとつに、医学的な根拠で答えてもらうことです。たとえば「画像上の器質的損傷が不明確」「自覚症状を裏づける客観的所見に乏しい」「症状・治療経過に一貫性がない」といった理由が示されていれば、それぞれに対応する説明をそろえます。具体的には、次のような資料の追加・補強が考えられます。

① 医師の意見書
主治医に、残っている症状の内容と程度/症状が出た時期/事故後から症状固定までの経過/今も症状が残っていること/事故との医学的な因果関係/症状固定後も回復が難しいと考えられる理由/認定を求める後遺障害との関係を、診療録と矛盾しない形で具体的に書いてもらうのが効果的です。漠然とした「症状が残っている」という意見だけでは足りません。

② 追加の検査結果・画像
未提出だった検査や、新たに撮影したMRIなどの画像、神経学的検査(可動域・筋力・深部腱反射など)を追加します。症状の訴えだけでなく、画像所見や他覚的所見との整合を示すことが重要です。追加検査は、症状固定から時間がたつほど事故との因果関係を示しにくくなるため、できるだけ早く行います。むちうちで等級が分かれる所見のポイントはむちうちの後遺障害の記事でくわしく解説しています。

③ 後遺障害診断書の見直し・補充
自覚症状・他覚的所見・神経学的所見が正しく反映されているかを確認し、記載が足りないときは、主治医に追記や補充説明書を作成してもらいます。診断書の書き方は後遺障害診断書の記事をご覧ください。

④ 症状固定後の通院記録・生活への支障
症状固定後もリハビリ等を続けている場合は、その通院状況・治療内容を示す医療記録が、症状の継続を裏づける資料になります。あわせて、症状が日常生活や仕事にどう影響しているかを陳述書などで具体的に示します。ただし陳述書は本人が作る資料のため、診療録などの記録と矛盾しないよう、時系列で具体的に書くことが大切です。

やみくもに出し直すのではなく、「なぜ非該当・低い等級になったのか」を分析し、その穴を埋める資料をそろえることが結果につながります。結論を変えるには主治医の協力が欠かせません。必要な記載内容を具体的に伝えて意見書や補充資料を作成してもらうことがポイントです(ただし意見書は医学的な判断に基づく内容であることが前提で、「この等級にしてほしい」という結論だけを医師に求めるものではありません)。どの検査・医証が足りないかの見極めも含め、交通事故の後遺障害に慣れた弁護士に相談すると整理しやすくなります。後遺障害の認定の仕組みは後遺障害等級認定の記事、むちうち特有の注意点はむちうちの後遺障害の記事をご覧ください。

異議申立ての流れと注意点

手続きの流れ

おおまかな流れは、①認定結果と理由の確認 → ②不足している医証の洗い出し → ③追加の検査・診断書の準備 → ④異議申立書の作成・提出 → ⑤再審査・結果の通知です。①では、後遺障害等級認定票や後遺障害事案整理票を取り寄せ、「なぜ非該当・その等級になったのか」という判断理由をまず分析することが出発点になります。結果が出るまでには、通常は数か月程度かかることがあります。

まず取り寄せ・確認したい資料と請求先

認定理由を分析するために、次の資料を取り寄せて確認します。

資料・情報 内容
後遺障害等級認定票(1枚目+別紙) 認定結果と、調査項目ごとの認定理由。別紙に理由が書かれます。非該当のときも作成され、何が足りなかったかが分かります
後遺障害事案整理票 認定の判断の基礎になった資料・整理。理由だけでは趣旨が分かりにくいときに取り寄せます
書面での詳しい説明・追加情報 認定理由だけでは判断の趣旨が不明なとき、詳しい説明や必要な追加情報を求めることができます

これらの請求先は、保険会社です。自分で請求した場合(被害者請求)は自賠責保険会社へ、相手方保険会社が手続きした場合(事前認定)はその任意保険会社へ求めます(損害保険料率算出機構に直接請求するのではありません)。開示を受けたら、提出資料に漏れがないか・資料の評価が適正か・認定理由の論理に矛盾がないかを点検します。

注意したい3つのポイント

(1)時効に注意。自賠責への請求には時効があり、後遺障害分は原則として症状固定の翌日から3年です。異議申立てを重ねるうちに時効が近づくこともあるため、早めの着手が大切です。

(2)同じ資料の再提出では変わりにくい。結論を動かすには新たな医証が要となります。

(3)むちうち(14級・非該当)は特に立証が難しい。画像に異常が写りにくいため、症状の一貫性を他の資料で示すことが重要になります。具体的には、事故直後から症状固定までの診療録・カルテ・診断書・レセプトをそろえ、各受診日の症状・通院頻度・投薬内容の推移を時系列で整理して、診療録の記載と食い違いがないかを確かめます。初診が事故から遅い・治療が長く途切れている場合は因果関係が問われやすいので、その点の説明も用意します。

(4)費用は無料。ただし医証の作成費用はかかる。異議申立ての手続自体に費用はかかりません。追加の診断書などを作成する実費は必要ですが、異議申立てのための診断書作成料を、事故と相当因果関係のある損害と認めた裁判例もあります(東京地裁令和5年3月20日判決)。

「非該当だったが納得できない」「どの検査・医証を足せばよいか分からない」——大阪市・なんば・心斎橋の難波みなみ法律事務所が、認定理由を分析し、異議申立ての戦略を一緒に組み立てます。初回相談は30分無料、LINE・Zoom相談や土日祝・夜間のご相談にも対応しています。

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よくある質問

後遺障害が非該当でも、やり直せますか。

やり直せます。自賠責への異議申立て、自賠責保険・共済紛争処理機構への紛争処理申請、訴訟という3つの方法があります。まずは新たな医証をそろえて異議申立てを検討するのが一般的です。

異議申立ては何回でもできますか。

異議申立てに回数の制限はありません。一方、自賠責保険・共済紛争処理機構への紛争処理申請は原則1回です。ただし、同じ資料で繰り返しても結論は変わりにくいため、新たな医証の準備が重要です。

同じ書類を出し直せば等級は上がりますか。

基本的に上がりません。異議申立てで結論を見直してもらうには、追加の検査結果や診断書の補強など、新たな医証が原則として必要です。

異議申立てに期限はありますか。

異議申立て自体の回数制限はありませんが、自賠責への請求には時効があり、後遺障害分は原則として症状固定の翌日から3年です。時効が近いときは早めの対応が必要です。

紛争処理機構と訴訟は、どちらを選べばよいですか。

一般には、異議申立てを尽くしても結論が変わらない場合に、中立機関の判断を求める紛争処理申請や、裁判所が独自に判断する訴訟へ進みます。どちらが適切かは、争点や証拠の見通しによって変わるため、弁護士に相談して判断するのが安全です。

異議申立てに費用はかかりますか。

異議申立ての手続自体は無料です。追加の診断書などを作成する実費はかかりますが、異議申立てのための診断書作成料を、事故と相当因果関係のある損害と認めた裁判例(東京地裁令和5年3月20日判決)もあります。

弁護士に頼むとどう変わりますか。

認定理由を分析し、どの検査・医証が足りないかを見極めたうえで、必要な資料の収集や異議申立書の作成、訴訟での立証まで一貫して対応できます。立証の要点を押さえることで、結果が変わる可能性が高まります。

本記事は一般的な解説です。異議申立ての可否や必要な医証は、傷病の内容・認定理由・資料の状況によって異なります。具体的な事案は弁護士にご相談ください。

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