コラム
公開日: 2026.10.15

有責配偶者とは?離婚できる条件と別居期間を弁護士が解説

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。大阪弁護士会所属(登録番号49544)、大阪中小企業診断士会所属(登録番号 420113)、幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回、15回、75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコム、ココナラ、弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

有責配偶者 離婚できる条件と別居期間 大阪なんば・心斎橋 難波みなみ法律事務所
まず結論
Q. 有責配偶者とは何ですか。
A. 不貞行為や悪意の遺棄など、夫婦関係が破綻した主な原因をつくった側の配偶者をいいます。民法が定める離婚原因にあたる行為をした配偶者、と言い換えることもできます。どちらにも責任がある場合は、より責任の重い側が有責配偶者とされるのが一般的です。
Q. 有責配偶者でも離婚できますか。
A. 自分から離婚を求める場合、原則として認められません。もっとも、最高裁判所の判例により、一定の要件を満たせば有責配偶者からの離婚請求も認められます。相手が離婚に同意すれば、要件にかかわらず協議離婚は可能です。
Q. 別居期間はどのくらい必要ですか。
A. 「何年以上」という一律の基準はありません。別居期間が、夫婦の年齢や同居していた期間との対比で「相当の長期間」に及んでいるかが、事案ごとに総合的に判断されます。

「自分が原因で夫婦関係が壊れてしまったが、もうやり直せない。離婚したい」――そう考えても、原因をつくった側からの離婚は簡単には認められません。原因をつくった側の配偶者を有責配偶者といい、その離婚請求には高いハードルがあります。この記事では、有責配偶者とは何か、なぜ原則として離婚できないのか、それでも離婚が認められる要件、別居期間や未成熟子の考え方、婚姻費用・財産分与への影響まで、大阪・難波の弁護士が整理して解説します。

有責配偶者とは何か

有責配偶者とは、夫婦関係が破綻した主な原因をつくった配偶者のことです。法律用語として条文に定義があるわけではありませんが、実務では「民法が定める離婚原因にあたる行為をした側」を指します。

裁判で離婚が認められる原因(法定離婚事由)は民法770条1項に定められており、有責配偶者の「有責性」は、主に次の行為によって生じます。

典型的な有責性根拠(民法770条1項)具体例
不貞行為1号配偶者以外の人と肉体関係を持つこと(不倫・浮気)
悪意の遺棄2号正当な理由なく家を出る、生活費を渡さないなど、夫婦の同居・協力・扶助義務を果たさないこと
その他婚姻を継続し難い重大な事由4号DV(暴力)・モラハラ・犯罪行為など、婚姻関係を破綻させる重大な行為

※令和6年の民法改正により、旧4号の「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」という事由は削除され、2026年4月1日の施行後は「その他婚姻を継続し難い重大な事由」が4号となりました。本記事は改正後の号数で記載しています。

ポイントは、「どちらに主な責任があるか」で判断されるという点です。夫婦の双方に落ち度がある場合は、より責任の重い側が有責配偶者とされるのが一般的です。逆に、相手にも同程度以上の責任があるときは、自分が一方的な有責配偶者とは評価されないこともあります。不貞行為そのものの意味や慰謝料については、記事末尾の関連記事で詳しく解説しています。

なぜ有責配偶者からの離婚請求は原則認められないのか

有責配偶者が自分から離婚を求めても、裁判では原則として認められません。かつての最高裁判所の判例は、「自分で夫婦関係を壊しておきながら、離婚を求めるのは身勝手だ」という考え方(いわゆる踏んだり蹴ったり判決。最高裁昭和27年2月19日判決)を示し、有責配偶者からの離婚請求を長く否定してきました。

これは、信義誠実の原則(信義則)に基づく考え方です。婚姻を破綻させた本人が、その破綻を理由に離婚を求めることは、誠実さに欠け、相手配偶者の立場をあまりに軽視する――そうした価値判断が背景にあります。

注意:「原則として認められない」のは、あくまで相手が離婚に反対し、裁判で争う場合です。相手が離婚に同意してくれるのであれば、有責配偶者であっても協議離婚や調停離婚は問題なく成立します。実務では、相手が納得できる条件を提示して合意を目指すことが、現実的な解決になることも多くあります。

それでも離婚が認められる場合|最高裁が示した3つの要件

もっとも、長期間にわたって夫婦関係が完全に壊れ、形だけの婚姻が続いている場合にまで離婚を認めないのは、かえって不自然です。そこで最高裁判所は、最高裁昭和62年9月2日の大法廷判決で考え方を変更し、一定の要件を満たせば、有責配偶者からの離婚請求も認められるとしました。

この判決は、次の3つの事情を総合的に考慮して、信義誠実の原則に照らして判断するとしています。

考慮される事情内容
① 相当の長期間の別居夫婦の別居が、両当事者の年齢および同居期間との対比において「相当の長期間」に及んでいること。
② 未成熟の子がいないこと夫婦の間に、経済的に自立していない子(未成熟子)が存在しないこと。
③ 相手が過酷な状態に置かれない離婚によって、相手配偶者が精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれるなど、離婚を認めることが著しく社会正義に反するといえる特段の事情がないこと。

重要なのは、これらは個別の「合格ライン」ではなく、総合判断の材料だという点です。3つすべてを形式的に満たさなければ一切認められない、というわけではなく、事情を全体としてみて、離婚を認めることが信義則に反しないかが判断されます。

別居期間はどのくらい必要か

有責配偶者の離婚請求で最も問題になるのが、①の別居期間です。ここで押さえておきたいのは、「何年以上なら認められる」という一律の基準は存在しないということです。

判断の軸になるのは、別居期間の長さそのものではなく、同居していた期間や夫婦の年齢との「対比(バランス)」です。たとえば、同居期間が短い若い夫婦であれば比較的短い別居でも「相当の長期間」と評価されやすく、逆に長年連れ添った夫婦では、より長い別居期間が求められる傾向があります。

実際の裁判例でも、同居期間が短い若い夫婦については、別居が2〜3年程度でも「相当の長期間」と認められた例がある一方、婚姻期間が20〜30年と長い夫婦では、別居が7年前後に及んでも「相当の長期間とはいえない」として離婚が認められなかった例もあります。同じ別居年数でも結論は正反対になり得るため、年数だけを切り取って見込みを判断することはできません。

注意:インターネット上では「別居◯年で離婚できる」といった目安が語られることがありますが、確たる基準ではありません。同じ別居年数でも、同居期間・年齢・破綻の程度・相手の生活状況によって結論は変わります。自分のケースで見込みがあるかは、具体的な事情をもとに弁護士に確認することをおすすめします。

未成熟の子がいる場合はどうなるか

②の未成熟子とは、年齢だけで決まるものではなく、経済的に自立していない子をいいます。高校生以下は原則として未成熟子にあたり、大学生などは個別に判断されます。成人していても、障害などで自立が難しい場合は未成熟子とされることがあります。

未成熟子がいる場合、子の生活の安定という観点から、有責配偶者の離婚請求は認められにくくなるのが実情です。もっとも、未成熟子がいれば一律に離婚が否定されるわけではなく、十分な養育費の確保など、子の福祉に配慮した手当てがされているかどうかも踏まえて判断されるとした裁判例もあります。ハードルは高いものの、一律に不可能というわけではありません。

有責配偶者と婚姻費用・財産分与・慰謝料の関係

有責配偶者であることは、離婚の可否だけでなく、離婚にまつわるお金の問題にも影響します。

婚姻費用|別居の原因をつくった有責配偶者の請求は制限されることがある

別居中は、収入の多い側が少ない側に生活費(婚姻費用)を分担するのが原則です。しかし、自ら不貞やDVをするなど、別居の原因をつくった有責配偶者が、自分自身の生活費を請求する場合には、その請求は信義則に反する、あるいは権利の濫用にあたるとして、制限・減額されることがあります。これは自分から家を出たかどうかにかかわらず、別居の原因をつくった側かどうかで判断されます。一方で、子どもの監護に必要な費用(養育費にあたる部分)は、親の有責性とは別に考えられ、認められる傾向にあります。

財産分与|責任の有無では原則減らない

財産分与は、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を清算する制度で、どちらに離婚の責任があるかで分与の割合が当然に変わるものではありません(原則は2分の1ずつ)。もっとも、有責配偶者が離婚に同意してもらうために、自ら相手に有利な条件を提示することは実務上よくあります。なお、財産分与を請求できる期間は、2026年4月施行の民法改正により、離婚の時から原則5年に延長されています。

慰謝料|有責配偶者は支払う側になる

不貞やDVなどで相手に精神的苦痛を与えた有責配偶者は、相手に対して慰謝料を支払う立場になります。離婚をスムーズに進めるために、相当額の慰謝料を提示することが、3つの要件のうち「③相手が過酷な状態に置かれないか」の判断でもプラスに働きます。慰謝料の相場や計算方法は、関連記事で詳しく解説しています。

弁護士の視点 有責配偶者の離婚相談で大切なのは、「裁判で勝てるか」だけに目を向けないことです。別居期間が足りないケースでも、相手が受け入れられる経済的条件(財産分与・慰謝料・養育費)を丁寧に組み立てて合意を目指すほうが、結果的に早く・円満に離婚できることが少なくありません。逆に、別居期間を積み上げる戦略をとるなら、その間の婚姻費用の負担も見据えて計画を立てる必要があります。見込みと進め方は、事案ごとに大きく変わります。

有責配偶者が離婚を実現するための進め方

有責配偶者が離婚を目指す場合、次の順序で進めるのが現実的です。

1まずは話し合い(協議)で合意を目指す
相手が離婚に同意すれば、有責性にかかわらず離婚できます。財産分与・慰謝料・養育費など、相手が納得できる条件を整理して提示することが出発点です。合意できたら、必ず離婚協議書(公正証書)として書面に残します。
2調停で第三者を介して話し合う
当事者同士で話がまとまらない場合は、家庭裁判所の離婚調停を申し立てます。調停委員を介することで、感情的な対立を避けながら条件を調整できます。
3訴訟(裁判)で離婚を求める
調停でも合意できなければ、離婚訴訟になります。ここで、先ほどの3つの要件(相当長期の別居・未成熟子の不存在・相手が過酷な状態に置かれないこと)を満たしているかが判断されます。別居期間の継続や、相手への誠実な条件提示の有無が結論を左右します。

有責配偶者の離婚は、「いつ・どのように動くか」で結果が大きく変わります。別居を続けるべきか、どのような条件を提示すべきか、見込みはどの程度かを早い段階で見極めるために、弁護士に相談して戦略を立てることをおすすめします。

よくある質問

Q. 有責配偶者とは何ですか。

A. 不貞行為や悪意の遺棄、DVなど、夫婦関係が破綻した主な原因をつくった側の配偶者をいいます。民法が定める離婚原因にあたる行為をした配偶者と言い換えることもできます。双方に責任がある場合は、より責任の重い側が有責配偶者とされるのが一般的です。

Q. 有責配偶者でも離婚できますか。

A. 自分から離婚を求める場合は原則として認められません。ただし、最高裁判所の判例により、一定の要件を満たせば有責配偶者からの離婚請求も認められます。相手が離婚に同意すれば、要件にかかわらず協議離婚は可能です。

Q. 有責配偶者からの離婚が認められる要件は何ですか。

A. 最高裁昭和62年9月2日の大法廷判決は、①別居が夫婦の年齢や同居期間との対比で相当の長期間に及んでいること、②未成熟の子が存在しないこと、③離婚により相手が精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれる等の特段の事情がないこと、を総合的に考慮して信義則に照らして判断するとしています。

Q. 別居期間はどのくらい必要ですか。

A. 「何年以上」という一律の基準はありません。別居期間の長さそのものではなく、同居していた期間や夫婦の年齢との対比で「相当の長期間」といえるかが、事案ごとに総合的に判断されます。

Q. 未成熟の子がいると離婚できませんか。

A. 未成熟子がいる場合は認められにくくなりますが、一律に不可能というわけではありません。未成熟子とは経済的に自立していない子をいい、十分な養育費の確保など子の福祉に配慮した手当てがされているかも踏まえて判断されるとした裁判例があります。

Q. 相手が離婚に同意している場合も要件は必要ですか。

A. 必要ありません。3つの要件が問題になるのは、相手が離婚に反対し裁判で争う場合です。相手が同意すれば、有責配偶者であっても協議離婚や調停離婚が成立します。

Q. 有責配偶者でも婚姻費用を請求できますか。

A. 自ら別居の原因をつくった有責配偶者が自分自身の生活費を請求する場合は、信義則違反や権利濫用として制限・減額されることがあります。一方、子どもの監護に必要な費用(養育費にあたる部分)は、親の有責性とは別に考えられ、認められる傾向にあります。

Q. 有責配偶者だと財産分与で不利になりますか。

A. 財産分与は夫婦が協力して築いた財産の清算であり、どちらに離婚の責任があるかで割合が当然に変わるものではありません(原則は2分の1ずつ)。もっとも、離婚に同意してもらうために自ら相手に有利な条件を提示することは実務上よくあります。

Q. ダブル不倫などお互いに責任がある場合はどうなりますか。

A. 双方に責任がある場合は、どちらがより重い責任を負うかで判断されます。相手にも同程度以上の責任があるときは、自分が一方的な有責配偶者とは評価されず、離婚請求が認められやすくなることがあります。

Q. 弁護士に相談するとどんなメリットがありますか。

A. 自分のケースで離婚が認められる見込み、別居を続けるべきかの戦略、相手が受け入れやすい財産分与・慰謝料・養育費の条件設計、合意書や公正証書の作成までを一貫して任せられます。感情的な対立を避けながら、早期の解決を目指せます。

有責配偶者の離婚・別居・条件交渉でお悩みの方は、難波みなみ法律事務所へ

有責配偶者の離婚は、「いつ動くか」「どんな条件を示すか」で結果が大きく変わります。見込みの見極めから、別居戦略・条件交渉・合意書や公正証書の作成まで、事案に即して一緒に組み立てます。元裁判官の弁護士が在籍し、裁判でのご提案も可能です。初回30分は無料です。

電話で相談する(06-6786-8103) LINEで相談する(24時間受付)

監修:難波みなみ法律事務所(大阪なんば・心斎橋)代表弁護士 南 宜孝(大阪弁護士会・登録番号49544)。初回相談30分無料。電話 06-6786-8103(受付9:00〜22:00)/LINE相談可。本記事は一般的な解説であり、個別の結論は事情により異なります。具体的な見通しは弁護士にご相談ください。

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